彼女たちを守るために俺は死ぬことにした

アサミカナエ

10/30(金) 日野 苺④

 
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「小鳥遊!? 保健の先生を呼んでくる!」
「いや、保健室まで運んだほうが早いから」


 先生を止めて、野中くんが男子と協力して背負う。
 ねえ、知実くんの体で一体何が起きてるの? 本当にこれって貧血なの……?


「あ、あたしも一緒に……」


 野中くんについて行こうとしてハッとした。
 ゆっくり振り返ると、口を押さえて怯えている七瀬ちゃんが目に映る。
 少し考えてから、野中くんの背中から一歩下がる。
 拳をぎゅっと握りしめ、顔を上げた。


「七瀬ちゃん! 知実くんが落ちないように隣で支えてあげてっ」


 強く名前を呼ぶ。
 すると怯えていた七瀬ちゃんは、スイッチが入ったように立ち上がった。


「そ、そだね。なっちゃんを助けなきゃ!」


 七瀬ちゃんが知実くんの背中に手をかけた。


「ありがとね、いっちー! ノナカいこっ!」


 キリッとした顔付きで一度こっちを振り返ると、教室の後ろから二人で出て行った。

 知実くんが運ばれて行った後も変わらずクラスが騒然とするなか、あたしは黙って立ち尽くしていた。

 あたし今、100点の行動だったよね。
 好きな人がかぶったときの、女子のトラブらない対処法としては、模範解答……だよね?

 でもさ、これで知実くんがもし入院して、ひとりしか面会できませんって言われても、あたしは迷わずに「七瀬ちゃん、どうぞー」って言うんだよね。
 寂しいな……。

 ……え?
 あれ……?
 もともとこの学校では、そうやって生活するつもりだったよね?
 おかしい……な。あたし、いつの間に自己主張してたんだろ……。
 あはは……そっか。じゃあ、これでよかったんだ……。


「いっちー、びっくりしたね。なっちゃん大丈……」
「うん?」
「……っ!?」


 にこりと微笑んだつもりだけど、クラスの子はなぜかあたしを見て怯えていた。
 やだなあたし、どんな顔してるんだろう。

 あのさ、授業とか、教科書に書いてあることは自分で見ておくからもういいよ。
 それよりも誰か教えて。無知なあたしのこと導いて。
 誰かの人生の邪魔になんてなりたくないの。
 だから。

 意識を消したいのにそれでも溢れてくる、悔しい気持ちと情けない気持ちは、どうしたら今すぐ消せるのかな?

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