彼女たちを守るために俺は死ぬことにした

アサミカナエ

10/25(日) 日野 苺②

 ランチ後はみんなで回れるところに行ってみたり、虎蛇と生徒会で別行動したりして、ふたたび全員で集合したのは夜のパレード前だった。
 18時半からスタートするラストパレードは、とあるジンクスがあってひときわ人気らしい。
 そのジンクスとは。
 いつも立ち位置が変わり、どこにいるかは当日までわからないスーパーラビリンと目が合ったカップルは、生涯幸せになれる。……と、凛々姉が「常識の範疇よ」と言いながら教えてくれた。


「というわけで、いのは抜けていいわよ」
「えっ!?」
「……では生徒会長、お言葉に甘えて行きましょう」
「そんな小っ恥ずかしい!? ことをーーーーー!? あたしがーーーー!?」


 小さな吉崎は八代の小脇に抱えられ、雄叫びを上げながら雑踏へと消えて行った。
 うん? 世のカップルってああやって歩くんだっけ?


「じゃあ人も増えてきたしはぐれないように、なるべく全員で固まって歩きましょうか」


 凛々姉が残りの7人を見渡していると、


「あのっ」


 七瀬が真っ赤な顔で手をあげた。


「なに? 芦屋」


 みんなが七瀬に注目するから、より顔が紅潮してしまう。だけど、彼女はハッキリと言った。


「えっと……、あたし、ノナカと抜けたいです!」


 無言になるメンバーたち。みんな七瀬×野中の構図を知らなかったらしい。
 つかすごいな、よく勇気出したなあいつ。
 だけど野中は七瀬のこと、なんとも思ってなさそうなんだよなぁ……。


「だそうだけど?」


 凛々姉が野中に確認する。


「あーー。悪いけど……」


 と、野中が俺の肩に手を回してくる。また俺で断る気か……。
 できれば七瀬には、付き合えないなら誠実に断ってほしいけど。ここで口出せるものでもないし。


「あ、えっと……あんたもいていいから! 3人ならどう!?」


 七瀬が隣にいた鈴見の腕を捕まえた。俺は野中と顔を見合わせる。


「……? 鈴見がいるなら、まあ……」
「え、なぜ俺……。邪魔なだけでは……」
「よかった! じゃあそういうことで、後でねーっ!」


 七瀬は両側の男子たちと腕を組み、スタスタと歩いて行った。


「不思議な組み合わせだな?」


 音和も首を傾げるほどだった。


「それじゃあ、5人で行きましょう?」


 詩織先輩の声に、みんな頷く。

 パンフレットを見ながら先頭を歩く凛々姉の隣で、詩織先輩がキョロキョロと目的地を確認していた。

 詩織先輩とは休憩が多い組で結構話せたけど、何度も「楽しい」と笑ってくれてうれしかった。
 籠の外に出た小鳥みたいな彼女が、もっと自由と友だちになってくれたらいいよな。

 凛々姉は……今日はだいぶはしゃぐの抑えてたの超ウケる。
 でもあのはしゃぎっぷりを知ってるのが俺だけっていうのも、悪い気はしないけど。

 凛々姉たちの後ろで俺を挟むように、いちごと音和が歩いている。そして俺越しに会話までしている。
 二人が打ち解けてくれたのも良かった。

 特に音和。こいつは本当に頑張ってくれた。
 俺がいるのに俺以外と喋ってるこの光景。半年前には想像つかなかったし。

 いちごは面倒見が良くて気を使う子だけど、でも彼女がうれしそうに笑うときだけは、建前とかない気がするから。
 そういう時間を増やしてあげられたらいいんだけど。


 とにかく、今日が大団円で終わればいいな。みんなで遊ぶのも、これが最後だろうから。

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