彼女たちを守るために俺は死ぬことにした

アサミカナエ

10/2(金) 穂積音和⑬

 おじさんの両隣に立つと、下のギャラリーが再びざわついた。おじさんも音和ではなく、俺たちの顔を驚いて見比べている。
 すうっと息を吸う。


「「音和ーーーーーー!! 愛してるぞーーーーーー!!!!」」


「ふぇ、なんで!?」


 生徒らの爆笑の渦に快感を覚える。
 ああ、やっと音和の顔が見えた。
 小柄だけど、どんな人混みに紛れていても、お前のことはすぐに見つけられるんだよ。


「どーも! 音和の保護者をしていた小鳥遊知実でっす!」

「こちらはお姫を愛して止まない、野中貴臣っ!」

「「俺らはそういう性癖で3人一緒にいるので、邪推はしないでくださーいーー!!」」


 性癖という言葉に反応して、先生たちが動転し始めた。
 野中が昨日ステージで下ネタやらかしたばかりだもんな、わはは。


「なんか文句があるヤツは、俺に直接言いに来いー! なのでお義父さん、お嬢さんを僕にください!」

「え、え!? 君みたいなカッコいい子が? うちの子で良ければ……」


 下で聞いていた女子たちの絶叫が止まらない。
 どさくさの告白だけど、野中はすっきりとした顔をしていた。


「そこ! 勝手に取引きすんなーー!」

「うーん。こんなイイオトコなのに、娘の方がどうも落ちないんだよなあ」


 笑い声、どよめき。いろいろな声に混ざって、大きな拍手。


「知実くん、野中くん。ありがとう」


 おじさんと固い握手を交わす。


「でもお義父さん。俺たちの目下の敵はそいつですよ」

「……そうだな」

「えええ!? あれ、手、痛いっすぅ!?」


 男二人の怨みがましい目が向けられる。


「……えっと、ギャグ? なに……これ??」


 後ろで七瀬がつぶやいた。

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