彼女たちを守るために俺は死ぬことにした

アサミカナエ

10/1(木) 野中貴臣③

 そして1日目の文化祭は、つつがなく進行して終わった。
 仕事はすっごく大変だったけど、事件が起きるかと覚悟をしていた分、意外にあっけない思いだった。
 強いて面倒だったことといえば……。ちなみにいちごが今日から朝陽ヶ浜高校の制服デビューを果たしている。
 校外からも人が来る文化祭で前に立つからウチの制服を着ることにしたらしく、凛々姉が先輩からお下がりを譲ってもらってきたのだ。
 それがよっぽど嬉しかったらしい。会うたびに目を輝かせて

「知実くん!!!! どうかな!?!?」

 と自慢される羽目になったから、なるべくいちごに見つからないように仕事をこなしたのは倍疲れたな。

 あとはミスター&ミスコンに野中が引っ張り出され、ステージで真面目な顔で下ネタを言い、一瞬で女子生徒全員を敵に回したのはウケた。だがしかし、男性人気は学校始まって以来の異様な高さを誇ったという。
 ちなみに昨今の流行りを言うと、優勝ミスターは前髪重めの爽やか韓流系というのがまあ世の常なのだが、こっちの世・・・・・ではこうなる。


「優勝は、3年C組の世界 観くん! 一言どうぞ!」

「はあ……。たまたま・・・・なんで、特にないです」



………………

…………

……



「無気力系男子ねえ。俺たちより全然主役っぽいな……」


 虎蛇の窓から二人で身を乗り出し、1年のギャルにもらったチュッパチャップス食いながら優勝発表を眺めていた。


「ああいうのだぞぉ野中。お前みたいなただ顔のいいうるさくて下ネタを吐く口悪いヤンキーは、今の時代モブ扱いだからな。特に漫画じゃなくて小説になると、さらにお前のいいところ全然伝わんねーし、この待遇は異例だぞ?」

「俺はヤンキーではねえけどな。ふーん、タマがない男がいいのかね」

たまたま・・・・ってそういう意味じゃないと思う」

「なあもし今、この場がタマの取り合いが常の異世界に転送されたら、あーいうヤツでも必死の形相とかすんのかな」

「間違いなくなぜかヤツだけチートがはたらき、余計カッコいいだけだろ……」



 プログラムが全て終わったのを見届けたあと、虎蛇で最終日の打ち合わせを済ませて解散。1日目の帰宅時間は、準備期間中よりも早かった。
 朝以来に顔を合わせるいちごと音和と三人で帰宅した。三人ともぐったりしていたけれど、それは心地よい疲労だった。
 もちろんいちごに制服についての感想を求められた。
 切れそうだった。

コメント

コメントを書く

「学園」の人気作品

書籍化作品