彼女たちを守るために俺は死ぬことにした
9/17(木) 穂積音和②
┛┛┛
「あれー? なっちゃん今日は虎蛇は?」
「あー平気平気! 今日はクラスの手伝うわ」
いつも虎蛇を優先してたけど、今日はさすがに行きたくなくてクラスの準備を手伝うことにした。
「背景何パターン作るんだっけ?」
「5は欲しいなと」
「マジか大変だな……なんかいつもまともに出られなくてスマン。やろやろ」
教えてもらいながら絵の具を混ぜていると
「なっちゃーん、お客さん!」
入り口から廊下を覗くと、手すりに背中をつけて、そわそわしながら凛々姉が待っていた。
「……」
「……」
俺はしらっとした視線を送って黙っていた。だってまだ怒ってるからね。
凛々姉は手すりから離れて背中をピンとは伸ばしたけれど、視線は斜め下へと落とし、もぞもぞしながら頭をちょっとだけ下げた。
「……ごめんなさい。……昨日のこと悪かったって、謝りにきた。言葉が足りなかった」
「足りるとかじゃなくないですか」
凛々姉はちょっと頭に血がのぼってしまったら、人の気持ちを考えるとか、思いやる気持ちを置いてきてしまうところがある。
これは性格だから仕方ない。それでも俺は、最後まで凛々姉について行こうと決めたけど、昨日の件についてはもうちょっとだけ怒っていたい気持ち。
「うん。全面的にあたしに非がある。穂積が無事ならそれで良かったのに。この気持ちには偽りはないわ」
しおらしく凛々姉はうつむいた。
……はあ。仕方ないな、俺もこの辺で機嫌直しとくか。
「あっそう、そしたらもういいよ」
パッと凛々姉が顔を上げる。何かにすがろうとする表情だった。
「うぅ。もう、虎蛇に来ないんだと思った……」
「それはないよ。俺、何があっても凛々姉の味方でいるって決めてたし。凛々姉が学校で『悪の大王』と呼ばれても、俺はその手下1になるだけだしな。ふへへへへ」
「なにそれ……。でも、ありがとう」
「ん。でも今日はクラス手伝うって言ってるから、虎蛇は休ませて欲しい。ごめん」
「わかった。先約があるならそうして欲しい」
とはいえあっちも大変だろうから、クラスが終わったら仕事しに行くか。
「いいよー、なっちゃん! 実行委員行っても!」
気を利かせてくれたクラスの子が教室で叫ぶ。
「だって、いてもあんまり役に立たないしー」
「おい! むちゃくちゃやる気はあるっつーの!」
「やる気だけな〜〜」
あらひどい!!
「えっと、あんたのとこ、たしかクラス展示で……」
「『人力VR』作ってる」
「……」
凛々姉がこっそりクラスを覗く。
「右! 左! 右! 右! 左! 右!」
「はっ! はっ! はっ! はっ! はっ! はっ!」
ちょうどVR画面役の男たちが、横飛びをしながら謎の動きを練習していた。
「……チュン太、穂積のことだけど」
凛々姉は教室で見たことに対して何も触れることなく、俺を見た。
「昨日の問題について、生徒会から二度目はないと釘を刺されている」
「わかった。俺が見ておくよ」
「そうして欲しい。あの子は自分から事件を起こす子ではないから、きっと何かに巻き込まれていると思う。心当たりは?」
「うん、ある」
「そう。それで未然に防げなかったのか……」
「そこについては本当に申し訳ない。早急に対策を考えるよ」
「ああ、責めているわけじゃないの。穂積のことは気になるが、あんたがいるならひとまずまかせるわ。本人の口から聞いてないし、こう見えて手一杯だしね。……こう言うとまた虎蛇会のためしか考えてないように聞こえるかもしれないけど、あたし、穂積のこと好きよ。彼女に苦しい思いをさせたくない」
苦い顔をする彼女を見て、俺も誤解してたんだと気づいた。言葉が足りなかったと言ってたけど、自分のことよくわかってたんだな。
「でも、なにか困ったらすぐに言って。人手も知恵も多い方がいいはずよ」
「わかった。俺……」
「ねえ、1年で盗難騒ぎがあったんだって!」
通り過ぎて行く女子の声が耳に飛び込んできた。誰だよ、こんな時期に問題を起こすやつ。
「犯人、穂積って子らしいよ。職員室で先生に囲まれてた!」
……。
「凛々姉、ごめん」
「……生徒会はあたしがなんとかする。行って」
凛々姉を置いて、職員室へダッシュした。
全然シャレになってないぞ、あのギャルズ!!!
「あれー? なっちゃん今日は虎蛇は?」
「あー平気平気! 今日はクラスの手伝うわ」
いつも虎蛇を優先してたけど、今日はさすがに行きたくなくてクラスの準備を手伝うことにした。
「背景何パターン作るんだっけ?」
「5は欲しいなと」
「マジか大変だな……なんかいつもまともに出られなくてスマン。やろやろ」
教えてもらいながら絵の具を混ぜていると
「なっちゃーん、お客さん!」
入り口から廊下を覗くと、手すりに背中をつけて、そわそわしながら凛々姉が待っていた。
「……」
「……」
俺はしらっとした視線を送って黙っていた。だってまだ怒ってるからね。
凛々姉は手すりから離れて背中をピンとは伸ばしたけれど、視線は斜め下へと落とし、もぞもぞしながら頭をちょっとだけ下げた。
「……ごめんなさい。……昨日のこと悪かったって、謝りにきた。言葉が足りなかった」
「足りるとかじゃなくないですか」
凛々姉はちょっと頭に血がのぼってしまったら、人の気持ちを考えるとか、思いやる気持ちを置いてきてしまうところがある。
これは性格だから仕方ない。それでも俺は、最後まで凛々姉について行こうと決めたけど、昨日の件についてはもうちょっとだけ怒っていたい気持ち。
「うん。全面的にあたしに非がある。穂積が無事ならそれで良かったのに。この気持ちには偽りはないわ」
しおらしく凛々姉はうつむいた。
……はあ。仕方ないな、俺もこの辺で機嫌直しとくか。
「あっそう、そしたらもういいよ」
パッと凛々姉が顔を上げる。何かにすがろうとする表情だった。
「うぅ。もう、虎蛇に来ないんだと思った……」
「それはないよ。俺、何があっても凛々姉の味方でいるって決めてたし。凛々姉が学校で『悪の大王』と呼ばれても、俺はその手下1になるだけだしな。ふへへへへ」
「なにそれ……。でも、ありがとう」
「ん。でも今日はクラス手伝うって言ってるから、虎蛇は休ませて欲しい。ごめん」
「わかった。先約があるならそうして欲しい」
とはいえあっちも大変だろうから、クラスが終わったら仕事しに行くか。
「いいよー、なっちゃん! 実行委員行っても!」
気を利かせてくれたクラスの子が教室で叫ぶ。
「だって、いてもあんまり役に立たないしー」
「おい! むちゃくちゃやる気はあるっつーの!」
「やる気だけな〜〜」
あらひどい!!
「えっと、あんたのとこ、たしかクラス展示で……」
「『人力VR』作ってる」
「……」
凛々姉がこっそりクラスを覗く。
「右! 左! 右! 右! 左! 右!」
「はっ! はっ! はっ! はっ! はっ! はっ!」
ちょうどVR画面役の男たちが、横飛びをしながら謎の動きを練習していた。
「……チュン太、穂積のことだけど」
凛々姉は教室で見たことに対して何も触れることなく、俺を見た。
「昨日の問題について、生徒会から二度目はないと釘を刺されている」
「わかった。俺が見ておくよ」
「そうして欲しい。あの子は自分から事件を起こす子ではないから、きっと何かに巻き込まれていると思う。心当たりは?」
「うん、ある」
「そう。それで未然に防げなかったのか……」
「そこについては本当に申し訳ない。早急に対策を考えるよ」
「ああ、責めているわけじゃないの。穂積のことは気になるが、あんたがいるならひとまずまかせるわ。本人の口から聞いてないし、こう見えて手一杯だしね。……こう言うとまた虎蛇会のためしか考えてないように聞こえるかもしれないけど、あたし、穂積のこと好きよ。彼女に苦しい思いをさせたくない」
苦い顔をする彼女を見て、俺も誤解してたんだと気づいた。言葉が足りなかったと言ってたけど、自分のことよくわかってたんだな。
「でも、なにか困ったらすぐに言って。人手も知恵も多い方がいいはずよ」
「わかった。俺……」
「ねえ、1年で盗難騒ぎがあったんだって!」
通り過ぎて行く女子の声が耳に飛び込んできた。誰だよ、こんな時期に問題を起こすやつ。
「犯人、穂積って子らしいよ。職員室で先生に囲まれてた!」
……。
「凛々姉、ごめん」
「……生徒会はあたしがなんとかする。行って」
凛々姉を置いて、職員室へダッシュした。
全然シャレになってないぞ、あのギャルズ!!!
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