彼女たちを守るために俺は死ぬことにした
9/11(金) 穂積音和②
日野さんに連れて来られたのは倉庫舎前だった。
もちろんこんな場所、誰もいない。もし来たとしても、思い浮かぶのは2人。芦屋さんと葛西先輩。どちらにしても知り合いの顔だった。
書庫には入らず、日野さんは入り口の石段に腰掛けた。あたしもその隣に、恐る恐る腰掛ける。
「音和ちゃん、初めて会ったときのこと覚えてる?」
日野さんが優しく微笑んだ。
「……日野さんが間違えて虎蛇の扉開けたとき?」
「ち、ちがーーうっ! や、確かに初めてはそれだけど……それはもう忘れて大丈夫!」
バタバタと手を振って、思い出した情景を散らしていた。
「じゃあ……階段でパンの耳ぶちま」
「ほら! 一緒に! 帰ったとき、かな!! ……あのときあたしのこと、すっごく嫌そうだったよね」
「あ、それか。ごめんなさい……」
知ちゃんに紹介される女の子は、今もだけど嫌だ。でも日野さんのことはもう全然いやじゃないし、しんらい……してる。
「ううん。もう仲良しだもんね! 音和ちゃんは急激に変わってるよ。あたし、知実くんもだけど音和ちゃんと仲良くなれてすっごく嬉しかったんだよ」
そんなことを言われるの、初めてかも。少しこそばゆくて、もじもじしてしまう。
「音和ちゃんを見てると、自分が、本っ当にプライドが高いんだなって嫌になる……」
いつも明るい日野さんがぽつりとつぶやいた言葉が、強く、耳に届いた。
「日野さんのことそんなふうに思ったことないよ」
「ほんと!? ありがとう。大好き〜〜〜♡」
ぎゅっと抱きしめられて、頬を寄せてきて。あたしはされるがままになっていた。
「音和ちゃんには知実くんもあたしも、みんながいるからね!」
今までパパがかまってくれない分、知ちゃんが側にいてくれた。
でも、知ちゃんだけじゃなくて、あたしのこと思ってくれる人がいるんだ。
不思議に心があったかくて、大切にしたいと思った。
「そうそう、だからこれあげようと思って。お守りだよ〜」
カバンから日野さんが出したのは、小さなぬいぐるみのストラップだった。
「手作り?」
「うち貧乏だから、はぎれで作ったもので恐縮なんだけどさ! できればお姉さんのお胸をどんどん頼って欲しいんだけど、どうしても弱音が吐けないときもあるじゃん。そんなとき、音和ちゃんがひとりにならないように。この子がいるから。あたしも何度もこの子に助けられて来たんだ」
「? でもまだきれいだけど……」
「うん、三代目! 転校してきたときに作って今日までずっと持ってたんだけど、あたしより音和ちゃんのほうが必要かなって思ったから」
「三代目か」
ぬいぐるみは猫の形をしていて、つぎはぎだらけだけど縫い目もきれいで可愛い。日野さんが肌身離さず持っていたというのは、触り心地からなんとなくわかった。
「でも具体的な解決策が出てないよね。クラスのことだと、なかなかあたしたちの目も届かないしなあ。だから自衛策を授けとく!」
「え?」
「なんとなく音和ちゃんのクラスなら……考えがあるんだ。あたし実は観察眼あるかも!?」
日野さんの目が輝く。
あたしは反射的にこくこくと、頷いた。
もちろんこんな場所、誰もいない。もし来たとしても、思い浮かぶのは2人。芦屋さんと葛西先輩。どちらにしても知り合いの顔だった。
書庫には入らず、日野さんは入り口の石段に腰掛けた。あたしもその隣に、恐る恐る腰掛ける。
「音和ちゃん、初めて会ったときのこと覚えてる?」
日野さんが優しく微笑んだ。
「……日野さんが間違えて虎蛇の扉開けたとき?」
「ち、ちがーーうっ! や、確かに初めてはそれだけど……それはもう忘れて大丈夫!」
バタバタと手を振って、思い出した情景を散らしていた。
「じゃあ……階段でパンの耳ぶちま」
「ほら! 一緒に! 帰ったとき、かな!! ……あのときあたしのこと、すっごく嫌そうだったよね」
「あ、それか。ごめんなさい……」
知ちゃんに紹介される女の子は、今もだけど嫌だ。でも日野さんのことはもう全然いやじゃないし、しんらい……してる。
「ううん。もう仲良しだもんね! 音和ちゃんは急激に変わってるよ。あたし、知実くんもだけど音和ちゃんと仲良くなれてすっごく嬉しかったんだよ」
そんなことを言われるの、初めてかも。少しこそばゆくて、もじもじしてしまう。
「音和ちゃんを見てると、自分が、本っ当にプライドが高いんだなって嫌になる……」
いつも明るい日野さんがぽつりとつぶやいた言葉が、強く、耳に届いた。
「日野さんのことそんなふうに思ったことないよ」
「ほんと!? ありがとう。大好き〜〜〜♡」
ぎゅっと抱きしめられて、頬を寄せてきて。あたしはされるがままになっていた。
「音和ちゃんには知実くんもあたしも、みんながいるからね!」
今までパパがかまってくれない分、知ちゃんが側にいてくれた。
でも、知ちゃんだけじゃなくて、あたしのこと思ってくれる人がいるんだ。
不思議に心があったかくて、大切にしたいと思った。
「そうそう、だからこれあげようと思って。お守りだよ〜」
カバンから日野さんが出したのは、小さなぬいぐるみのストラップだった。
「手作り?」
「うち貧乏だから、はぎれで作ったもので恐縮なんだけどさ! できればお姉さんのお胸をどんどん頼って欲しいんだけど、どうしても弱音が吐けないときもあるじゃん。そんなとき、音和ちゃんがひとりにならないように。この子がいるから。あたしも何度もこの子に助けられて来たんだ」
「? でもまだきれいだけど……」
「うん、三代目! 転校してきたときに作って今日までずっと持ってたんだけど、あたしより音和ちゃんのほうが必要かなって思ったから」
「三代目か」
ぬいぐるみは猫の形をしていて、つぎはぎだらけだけど縫い目もきれいで可愛い。日野さんが肌身離さず持っていたというのは、触り心地からなんとなくわかった。
「でも具体的な解決策が出てないよね。クラスのことだと、なかなかあたしたちの目も届かないしなあ。だから自衛策を授けとく!」
「え?」
「なんとなく音和ちゃんのクラスなら……考えがあるんだ。あたし実は観察眼あるかも!?」
日野さんの目が輝く。
あたしは反射的にこくこくと、頷いた。
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