彼女たちを守るために俺は死ぬことにした

アサミカナエ

9/11(金) 穂積音和①

 日野さんはやめようと言ってくれてたけど、ちょうど1週間の今日までやりたいってあたしが言った。
 なぜか知ちゃんが号泣した。
 そして朝いつも通り、みんなにあいさつしていく。
 今日の主役はあたしじゃなくて、文化祭実行委員のアピールが目的。だから会長、しおり先輩、芦屋さんも来てくれた。


「あーーーら凛々子。あなたはこういう泥臭い活動がとてもよくお似合いだこと!」

「おはよう、いの。よだれのあとついてるわよ」

「〜〜〜〜!?」


 かいちょーに突っかかった生徒会長が自爆してた。

 たかおみは寝坊し、途中から一緒に立った。
 たかおみに挨拶されて、なぜか先生が号泣してた。

 今まで、あたしは知ちゃんが全てだった。でも少しずつ、世界に温度を感じるようになった。優しい人が思ってたよりたくさんいて、一日、一日、人との対話が不思議で、楽しくて。
 そんな世界を知ったばかりだから。あたし、まだ逃げたくない。

 ふと、中村さんたちが3人で来るのが見えた。あたしを見て、ヒソヒソしゃべって笑ってる。


「おはようございます」

「おっはようございまーす! きゃははは!」


 さっきまであんなに見てたのに、すれ違うとき目が合わなかった。


「……」


 中村さんたちと仲良くするの、諦めないとダメなのかな。


「音和ちゃん、ちょっと話さない?」


 うつむいていると、声をかけてくれたのは日野さんだった。


「二人で抜けようよ」


 と、ウインクされる。


「会長、知実くん。ちょっと音和ちゃんが体調悪そうなんで、少し休ませて来ていいですか?」

「!?」


 あたしまだ返事してない! ちょっとへこんだけど、全然大丈夫なのに。


「大丈夫か? 穂積」

「どした、無理するなよ?」


 会長も知ちゃんもあいさつを止めて、心配そうにあたしに声かけてくれた。そこに、構わず日野さんの腕が絡んで来る。


「じゃああと少しですが、よろしくお願いします。音和ちゃん借りてきまーす☆」


 すみに置いていたカバンを拾って、強制的に引きずられていく。
 しかもそっち昇降口じゃない……。あたしどこに連れて行かれるんだろ……。


「ん? 今、連れて行きますじゃなくて“借りて行きます”って言わなかった?」

「あいつ嘘下手なんですみません」


 知ちゃんが頭を下げてるっぽいのが遠目に見えた。

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