彼女たちを守るために俺は死ぬことにした

アサミカナエ

7/27(月) 月見里 蛍②

 UNOの途中で、ほたるはじいさんズを見回した。


「おじいさんたちは、もうすぐ死ぬの?」


 おいほたる。それはなんでも直球すぎだ!
 じいさんズは笑いながらお互いを見合う。


「ほっほ、わしがいちばん長生きじゃろうな」

「何を白岩さんがいちばんに死ぬんじゃないか」

「いや、海老沢さんが先にポックリじゃわ」


 大爆笑である。じいさんズの年の功すげーな、おい。


「私が、いちばんかもしれません」


 ほたるはそう言うと、下を向いてしまった。


「ふむ……」


 じいさんズはそれで察したのだろう。爆笑は止まった。


「おじいさんは、死ぬのに。なぜ、私や看護師さんと、話すの?」

「ほう、変なことをお聞きなさるな? ほれ、ココで鬼、じゃ。カードを出せ」

「そこはわしが持っておる。ほれ」

「ほたるちゃんは、人を愛したことがあるかな」


 なにー!! ちょっとウチのほたるにそんな話はまだ……。


「タッキー、前のめりになってる。きもいぞ落ち着け……」


 ハッ。保護者キャラが出てしまった。ザキさんにたしなめられた。


「……ない」

「そうじゃろうな。人を愛すること、愛されることは、とても気持ちのよいことだ。幸せの灯も、それに似ているのかもしれんのう」


 そう言うと、じいさんは目を細めた。昔のことを思い出しているのかもしれない。


「他人を拒絶するのは、歩み寄ってきた人を傷つけるということだ。君が知くんに無視されると辛かろう?」

「……でも、どうせ死ぬから、耐えられます」

「そんな気持ちのまま人生を終えるのかい?」

「それは、仕方ないから……」

「生は平等ではなくとも、死は平等。みんないずれ死ぬんじゃ、早かれ遅かれな。それまでに、いかに幸せな気持ちで人生を終えるか。死ぬためにみんな生きているんじゃよ」

「死ぬため……?」


 ほたるの顔が少しだけ歪む。


「そうじゃ。終わりよければ全てよしという言葉をご存知かい? ほれ、手持ちがなくなった。わしの勝ちじゃ!」

「お前さん、ずっとビリだったのにいつの間に……。まあ、そういうことじゃよ、ほたるちゃん」

「わしらも死ぬのは怖いよ。だからこうやって、無理にでも笑っていたいのかもしれんな」

「おい、琵琶さんは無理に笑っていたのか」

「ほっほっほ、どうじゃろうな~」

「……」

「死を恐れなくなることはいけない。でも、死は敵ではないんじゃよ。常に自分の隣にいる……お友だちだと思えばいい」

「まあ、難しい話よのう」

「ほたるちゃんはまだ若いから、本当はそうして欲しくはないんじゃが。わしは時がきたらゆっくりと受け入れようと思っているよ。お友だちじゃからな」


 じいさんたち……。


「タッキー、もういいだろう」


 ザキさんが首を振る。うん、と俺は頷く。
 これ以上見ていると、泣いてしまいそうだった。
 耳にイヤホンを付けてベッドに転がり、目をつむる。音楽が頭の中を流れる。
 幸せの灯か。彼女がそれを見つけられるといいなと、思った。

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