彼女たちを守るために俺は死ぬことにした
7/27(月) 月見里 蛍①
「これが着替えで、これが宿題」
「おお、ありがとう」
「真面目に宿題とか……。あんたこの間からヘンじゃない?」
「間違えて元気になったときに、単位足りなくて進級できなかったら困るからな!」
「ふふ、そうね。で、知」
「なんだいマザー」
「あなたにしがみついてる子は一体……」
ベッドに座る俺の隣で同じくベッドの上で首に手を回してくっついている少女。俺はもう慣れたんだけど、母親には異常だったらしい。
「……誰もいないよ、気のせいじゃない?」
「えっ、その子よ! なに言ってるの!?」
「?? ザキさん誰かいる?」
「ん? いや、タッキーひとりだが」
ベッドに寝そべって雑誌を読みながら、ザキさんも俺に合わせる。
「そう言えば、なんだか首が重いような……」
「えーーえーー!?!?」
母親をからかって遊んだ。
ネタばらしをしたとたん、殴られたが。
┛┛┛
「ほたるちゃーん! ザッキーだよー!」
母親が帰ってから、今度はザキさんがちょっかいを出してくる。でもほたるは無視を決め込んでいた。
「シノザキノ、会話レベルハマダ足リナイヨウダ」
「なんでーー! お前はいいよな、イージーモードスタートで!」
イージーモードて。
ふと正面を見ると、向かい側のベッドからニコニコとこっちを見ているじいちゃんズが目に入ってきた。
「ほたる。あっちはじいちゃんズ。海老沢さん、琵琶さん、白岩さん。話してこいよ」
「……なぜ」
「友だちになれる!」
「……いらない」
相変わらず、ほたるは俺以外の前では喋らない。
「はははは、友だちはいらないかの」
「まあわしらは死にゆくだけじゃからのう」
「そりゃあ、死ぬモンには近づきたくなかろう。はははは!」
「……!」
じいさんズの談笑に、ほたるが握る手が強くなったのが分かった。
「ほたるちゃん。わしらは先が長くない。だがね、ほたるちゃんの知らない世界を知っているつもりだよ」
「そんな知識はいらんいらん! ほたるちゃん。わしらの今の楽しみはな、ごはんと人との関わりなんじゃ」
「そうそう。話すことで心がぽっとあったかくなる。そんな気持ちになったことないかな。それは幸せの灯なんじゃ」
「しあわせの……ひ?」
ほたるの手が俺から離れた。じいさんズのほうをじっと見つめている。
「うむ。苦しい治療で毎日辛いだろう。でも、幸せの灯がともることで、生きているのが辛いだけじゃないと思えんか?」
「君の慕う知くんは、君にとってどうだい?」
「幸せの……灯なの?」
俺を見上げてくるほたるの頭をなでる。
「じいさんと話すことでも、それが得られるかもしれん。行ってみろ」
「……でも……」
「なにごとも経験だ。行け」
背中をぽんと押すと、意外にも軽かった。
ほたるは自らベッドを降りて、じいさんズのほうに歩いて行った。
「まあ、年寄りのぼらんてぃあじゃと思って、付き合ってくれ」
「七並べでもするかい?」
「やり方はご存知かい?」
コクリ。と頷いている姿が見える。じいさんとほたる。なんとも微笑ましい様子だった。
「くっそう、じーさんズ抜け駆けしやがって!」
隣でレベルの足りないザキさんが嫉妬の火を燃やしていた……。
「おお、ありがとう」
「真面目に宿題とか……。あんたこの間からヘンじゃない?」
「間違えて元気になったときに、単位足りなくて進級できなかったら困るからな!」
「ふふ、そうね。で、知」
「なんだいマザー」
「あなたにしがみついてる子は一体……」
ベッドに座る俺の隣で同じくベッドの上で首に手を回してくっついている少女。俺はもう慣れたんだけど、母親には異常だったらしい。
「……誰もいないよ、気のせいじゃない?」
「えっ、その子よ! なに言ってるの!?」
「?? ザキさん誰かいる?」
「ん? いや、タッキーひとりだが」
ベッドに寝そべって雑誌を読みながら、ザキさんも俺に合わせる。
「そう言えば、なんだか首が重いような……」
「えーーえーー!?!?」
母親をからかって遊んだ。
ネタばらしをしたとたん、殴られたが。
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「ほたるちゃーん! ザッキーだよー!」
母親が帰ってから、今度はザキさんがちょっかいを出してくる。でもほたるは無視を決め込んでいた。
「シノザキノ、会話レベルハマダ足リナイヨウダ」
「なんでーー! お前はいいよな、イージーモードスタートで!」
イージーモードて。
ふと正面を見ると、向かい側のベッドからニコニコとこっちを見ているじいちゃんズが目に入ってきた。
「ほたる。あっちはじいちゃんズ。海老沢さん、琵琶さん、白岩さん。話してこいよ」
「……なぜ」
「友だちになれる!」
「……いらない」
相変わらず、ほたるは俺以外の前では喋らない。
「はははは、友だちはいらないかの」
「まあわしらは死にゆくだけじゃからのう」
「そりゃあ、死ぬモンには近づきたくなかろう。はははは!」
「……!」
じいさんズの談笑に、ほたるが握る手が強くなったのが分かった。
「ほたるちゃん。わしらは先が長くない。だがね、ほたるちゃんの知らない世界を知っているつもりだよ」
「そんな知識はいらんいらん! ほたるちゃん。わしらの今の楽しみはな、ごはんと人との関わりなんじゃ」
「そうそう。話すことで心がぽっとあったかくなる。そんな気持ちになったことないかな。それは幸せの灯なんじゃ」
「しあわせの……ひ?」
ほたるの手が俺から離れた。じいさんズのほうをじっと見つめている。
「うむ。苦しい治療で毎日辛いだろう。でも、幸せの灯がともることで、生きているのが辛いだけじゃないと思えんか?」
「君の慕う知くんは、君にとってどうだい?」
「幸せの……灯なの?」
俺を見上げてくるほたるの頭をなでる。
「じいさんと話すことでも、それが得られるかもしれん。行ってみろ」
「……でも……」
「なにごとも経験だ。行け」
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ほたるは自らベッドを降りて、じいさんズのほうに歩いて行った。
「まあ、年寄りのぼらんてぃあじゃと思って、付き合ってくれ」
「七並べでもするかい?」
「やり方はご存知かい?」
コクリ。と頷いている姿が見える。じいさんとほたる。なんとも微笑ましい様子だった。
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