彼女たちを守るために俺は死ぬことにした

アサミカナエ

7/19(日) 葛西詩織①

 日が落ちる前に俺たちは、宿泊先の先輩の別宅に到着した。
 狭いです……と、申し訳なさそうな彼女に、みんな「寝られたら充分!」と励ましていたのだが。今、見事に全員の口が開いたままになっていた。
 うちはカフェ併設だし、そんなに小さいほうでもないと思うけど、それよりも、明らかにデケーーーな、この家!!


「2階の洋間は女性、男性は1階客間をお使いください」


 玄関で仕切っているのは葛西先輩の家の使用人で教育係の五百蔵鹿之助いおろいしかのすけ氏だ。


「設備は自由にお使いいただいて結構ですが、私は玄関にいちばん近い和室で待機させていただきます。それがこちらをお貸しする条件です」


 それは防犯的にも安心だし、お屋敷を貸していただいている身だしで、反対意見はもちろんない。「むしろご飯とか一緒に……」と言ってる途中で辞退されてしまった。


「それじゃ早速、お風呂貸していただけます?」


 凛々姉が玄関の先で泥を払いながら尋ねる。


「浴室は廊下突き当たりを左です。広いので皆さんでどうぞ」

「そう。ありがとう」


 女子たちは次々に、廊下の奥へと消えた。
 しかし俺がわずか数mmほど動いただけで、五百蔵は俊敏な動きで行く手を阻んだ。


「もちろん男性は女性が終わってからご利用ください」


 ぼ、防犯性高すぎっ!?
 ああ、信頼ならない俺らは、厳重な監視下に置かれているってわけですかい……。

 女子がいなくなり静かになった玄関先には、鉄壁の玄関ブロッカー五百蔵に向き合う俺と野中。そして泳がなかった葛西先輩が、間でニコニコと両者を見比べている。
 なにこの時間。気まずっ。


「あ、俺電話きてたわ。ちょっとかけてくる」


 重い空気に耐えられなかったのか本当に電話が来ていたのか知らんが、野中が先に離脱した。


「じゃあ、俺も……」


 かわいい女子とならまだしも、老年系男子と見つめ合うなんて趣味、残念ながら持ち合わせてないもんでね!
 でも一体、どこで時間を潰せばいいものやら……。と、庭の奥に見えるテラスが気になった。行ってみようかな。
 暇そうな先輩に声をかける。


「先輩、景色でも見に行きます?」

「いいですねっ」


 はーん癒し〜。レッツ・たおやか☆

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