彼女たちを守るために俺は死ぬことにした

アサミカナエ

7/19(日) 小鳥遊知実③

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 沖のほうで「因縁対決」とかいって泳ぎまくってる凛々姉と野中にはついていけないので、七瀬といちご、俺と音和は海の中でボール遊びをしていた。
 男ひとりに女3人。モテを錯覚するような、甘美な時間である。


「だっ!?」

「よそ見しなーい!」


 七瀬が投げたボールが俺の顔面に当たって真上に跳ねた。


「よそ見アターック!」


 それを音和が打ち、俺の側頭部に当たる。


「いってええ! ……って、音和お前同じチームだろ!」

「日野さんの胸ばっかり見てるからだよ」

「みみみ見てねーっつの!」

「えええーー!」


 顔を赤くして叫び、ざばんと肩まで海につかるいちご。


「ち、違う、確かにいちごのことは見てた! が! 敵の隙を観察……」

「エロ大臣!」

「きもい!」

「ふけつ!」

「えんがちょ!」

「いやテメーら、だから最後まで言わせろー!!」


 絶句するいちごとは対照的に、前から横から、罵詈雑言とボールが飛んでくる……。くそ! 理不尽だ!!


「ほづみん! あいつどうやって沈める?」

「んー。まずカニで挟む?」

「コラ、そんなことしてはいけません! おい七瀬、音和に変なことを吹き込むなよ!」

「ほづみん頭いいねー! なにを、挟むのかな?」

「ちょっと、なにって!? ねえどこを挟む気なのっ!!」


 やばい。ここにいると男性の象徴を持っていかれる!!


「ふえーん。いちごちゃんー助けてーー」


 海水をかき分け、泣きまねをしながら泳いで行く。もう俺にはいちごしかいない!


「やだ、こっちに来ないでー!!」


 えーーーなんで!!


「きゃははは! 残念、あんたに味方はいないようね」


 高笑いする悪魔のポニーテールが青空に揺れた。


「ごごごごめんね知実くん! 水着だし、意識したら恥ずかしくなっちゃったから! 一生近くに寄らないで!?」

「いきなり絶縁宣言!?」


 いちごも半泣きでテンパっている。なんだよもう。これ、誰も幸せにならないやつ!


「芦屋さーん。カニ捕った」


 砂浜から音和の声が聞こえたと同時に、俺は海に潜って逃走した。

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