彼女たちを守るために俺は死ぬことにした
7/13(月) 葛西詩織③
┛┛┛
放課後、職員室に呼び出されたので、少し遅れて虎蛇に向かった。
虎蛇のドアの前で一瞬開けるのをためらう。
会長と野中が最悪な方向に化学反応起こしてたら面倒くさいんだよな……。いやむしろそうなら、俺が間に入らないとまずいか。
よし。最初が肝心だ。出オチで行こう!
「よー、アミーゴ&アッミーガ!!」
ばーんとドアを開けて虎蛇会室に入る。
一人ひとり見回してみるが意外と和やかにやっていたらしく、漏れなく全員の冷たい視線が突き刺さるだけだった。……葛西先輩以外は。
「凛々姉、葛西先輩は?」
「詩織? 体調不良で帰ったけど」
「マジかよ、いつ?」
「さっき、言いに来たばかりだけど」
「うわあすまん、俺のせいかも。ちょっと引き止めてくる」
事情を知っている2年メンバーたちに目配せして、俺はドアを離れて駆け出した。
とりあえず下駄箱まで来て立ち止まる。どこだ。図書室から探す? いや……校門だな。
靴を履き替えて校門の外を目指す。葛西先輩はひとりで帰らない。迎えの車を探せばいいはずだ!
しかし校門付近に車はない。となると坂の下か。
「なっちゃんじゃん! ばいばーい!」
自転車通の同じクラスの男子が、校門で声をかけてきた。
「ちょっと坂の下まで、乗せてー!」
「は!? え、ちょ! うわわわわわっ!!」
無理矢理荷台に飛び乗って、足で地面を蹴る。はじめはぐらぐらしていた自転車も、スピードが上がるにつれて安定しはじめる。
「ストップで!」
「もう!?」
坂の下まで約30秒。大きなブレーキを響かせてチャリは止まった。
青果店の斜め前に、周りの景色と不釣り合いな外車が止まっている。いたいた、五百蔵発見!
「サンキュー! またね」
「あぶねーな、また明日なー」
同級生に手を振ってから、ロールスロイスの運転席に近づいた。待っていたかのようにウインドウが音もなく開いて、くだんの老年男性が顔を見せる。
「どうも」
「どなたですか」
覚えてないのかよ!
「小鳥遊っす……」
「ああ。いつぞやの」
「忘れられて寂しいです」
「私は人生にあまり興味がない人間のことは、覚えないことにしているんだ」
「あれそーなんすか。俺と葛西先輩のラブラブ♡合宿大計画はそこまで重要じゃなかったんですね!」
「ラブ……!? ま、待て! そういえば期末テストの順位、本日発表されたそうじゃないか」
うっすらと冷徹な笑みを浮かべながらウインドウを上げたり下げたりしている。
まさか……動揺、しているっ……!?
まあご存知の通り、余裕がないのは俺も同じですがね。
「お嬢様を、休日にも引っ張り回してくれたみたいだが」
とげとげしい言い方だな……。
「結果をきちんと自分の口で伝えたくて、先輩を探していたんだよ」
「もうすぐいらっしゃるはずだ」
「分かった。じゃあ待ってるよ」
「ほう、随分良かった様子だね」
「……」
これ以上、下手なことはしゃべらないようにしよう。あとは先輩が来てから謝ればいいのだから。
五百蔵も諦めたのか、窓を閉めた。
放課後、職員室に呼び出されたので、少し遅れて虎蛇に向かった。
虎蛇のドアの前で一瞬開けるのをためらう。
会長と野中が最悪な方向に化学反応起こしてたら面倒くさいんだよな……。いやむしろそうなら、俺が間に入らないとまずいか。
よし。最初が肝心だ。出オチで行こう!
「よー、アミーゴ&アッミーガ!!」
ばーんとドアを開けて虎蛇会室に入る。
一人ひとり見回してみるが意外と和やかにやっていたらしく、漏れなく全員の冷たい視線が突き刺さるだけだった。……葛西先輩以外は。
「凛々姉、葛西先輩は?」
「詩織? 体調不良で帰ったけど」
「マジかよ、いつ?」
「さっき、言いに来たばかりだけど」
「うわあすまん、俺のせいかも。ちょっと引き止めてくる」
事情を知っている2年メンバーたちに目配せして、俺はドアを離れて駆け出した。
とりあえず下駄箱まで来て立ち止まる。どこだ。図書室から探す? いや……校門だな。
靴を履き替えて校門の外を目指す。葛西先輩はひとりで帰らない。迎えの車を探せばいいはずだ!
しかし校門付近に車はない。となると坂の下か。
「なっちゃんじゃん! ばいばーい!」
自転車通の同じクラスの男子が、校門で声をかけてきた。
「ちょっと坂の下まで、乗せてー!」
「は!? え、ちょ! うわわわわわっ!!」
無理矢理荷台に飛び乗って、足で地面を蹴る。はじめはぐらぐらしていた自転車も、スピードが上がるにつれて安定しはじめる。
「ストップで!」
「もう!?」
坂の下まで約30秒。大きなブレーキを響かせてチャリは止まった。
青果店の斜め前に、周りの景色と不釣り合いな外車が止まっている。いたいた、五百蔵発見!
「サンキュー! またね」
「あぶねーな、また明日なー」
同級生に手を振ってから、ロールスロイスの運転席に近づいた。待っていたかのようにウインドウが音もなく開いて、くだんの老年男性が顔を見せる。
「どうも」
「どなたですか」
覚えてないのかよ!
「小鳥遊っす……」
「ああ。いつぞやの」
「忘れられて寂しいです」
「私は人生にあまり興味がない人間のことは、覚えないことにしているんだ」
「あれそーなんすか。俺と葛西先輩のラブラブ♡合宿大計画はそこまで重要じゃなかったんですね!」
「ラブ……!? ま、待て! そういえば期末テストの順位、本日発表されたそうじゃないか」
うっすらと冷徹な笑みを浮かべながらウインドウを上げたり下げたりしている。
まさか……動揺、しているっ……!?
まあご存知の通り、余裕がないのは俺も同じですがね。
「お嬢様を、休日にも引っ張り回してくれたみたいだが」
とげとげしい言い方だな……。
「結果をきちんと自分の口で伝えたくて、先輩を探していたんだよ」
「もうすぐいらっしゃるはずだ」
「分かった。じゃあ待ってるよ」
「ほう、随分良かった様子だね」
「……」
これ以上、下手なことはしゃべらないようにしよう。あとは先輩が来てから謝ればいいのだから。
五百蔵も諦めたのか、窓を閉めた。
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