呪われた英雄は枷を解き放つ

ないと

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 今日で最後にしようと思っていた。

 命を張ってまでしても、帰ってくる対価は極僅かなもので、生活に限界が来ていた。

 それでもここに来たのは、子供の頃からの憧れだったからだ。

 そして、僕はその入り口に立つ。

 『ダンジョン』。それは謎に包まれた、果てしなく地下へと続く迷宮。

 ダンジョンの魅力に魅せられたものは、命さえ顧みずに、その中へと飛び込んで行く。

 階層ごとに姿を変えるその謎に溢れた構造。深くへ潜って行くほど強くなっていく魔物。

 一度成功を収めてしまえばその沼から抜け出せる者は居ない。そうして成功を重ねて行った者は、いずれ”英雄”と呼ばれるようになる。

 その英雄の輝きを目にした人は、その姿に憧れ、自分もとまたダンジョンに飛び込んでいく。

 僕もそのうちの一人という訳だ。

 もっとも、正確に言えば”ダンジョンに挑んだは良いものの、結局自分の才能のなさに打ちひしがれた者”と言い換えた方が正しいだろう。

 剣の才能もなければ、魔法の才能も無い。

 だから、今日この日、才能に恵まれない僕はダンジョンを攻略することをやめることにした。

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