転生までが長すぎる!
イガグリ頭の理由
先日、食堂の一角でイガグリと交わした会話だ。
海に行く。
ヤツはそう言った。
面談の翌日、俺たちは改めて食堂でそのことについて話し合っていた。
「以前にもお伝えした通り、ここからそう遠くない場所に海岸があります」
お手製のマップを指でなぞりながら、イガグリが説明する。
「教官との鬼ごっこで鍛えられた今の我々なら、二十分もかからないでしょう。そこまでの経路も調査済みです」
「手際の良さが逆に怖い」
「ケモナーの嗜みと言っておきましょう」
「関係ないよね。一応聞くけど、やばいことはしないよな?」
「大丈夫です。何も更衣室を覗こうというわけではありません。ただ、普通に海に行き、水着の女性を拝もうというだけです。血の涙を飲んで、歯を食い縛り、犯罪行為は我慢しましょう。それが人の生きる道」
「ギリギリじゃねぇか。……けど、それも難しくないか?」
「ええ。涅槃は遠く、倫理の内側に身を置くのは、とてもとても難しい」
「お前もう爪先少しはみ出てるぞ。そっちじゃなくて海に行く方だ。俺たち、訓練期間中は外出禁止だろ」
少なくとも、「海に行きたいです!」という理由で外出許可が下りるはずもない。
動機が「水着の女の子が見たいから」では尚更だ。
「外出の許可が下りないなら、手段は一つでしょう。どんな夢にも、必ず障害はある。しかし、立ち塞がる壁に立ち止まっていても、夢は叶いません。――進むのです。壁を、乗り越えて」
「それっぽく言ってるけど要するに脱走だよな」
訓練所の周囲は脱走防止の為の壁に囲まれている。
無許可で外に出ようと思えば、それを越えるしかない。
「しかし他に方法がありません。この地獄の訓練場に、水着の女性が現れることなどまずありませんし」
「そりゃそうだろうけど。目的はゴリラさんの性欲解消だろ。なんでそこまで水着に拘るかな」
「私が見たいからです」
「……」
そっか。
ゴリラさん云々は、ついでだったか。
道理で準備が良いはずだ。
……コイツらってホント、自分に素直だな。
「あなたはご存知ないようですが、ここには獣人の女性もいるんですよ。以前、たまたま見かけたことがあります」
「ふうん。まあ、自称天使もいるしな」
「素晴らしい猫耳と尻尾でした。突然の衝動に駆られ、その方のスカートに頭からダイブした結果、罰として私の髪型がこうなったわけですが……まあ、その話はいいでしょう」
「さらりと変態度を上げないでくれる?」
「彼女のもっさりした腕に殴られながら、私は思いました。――あの服の下は、どうなっているのだろうかと」
「思い出と性癖は胸に秘めとくもんだぞ」
ちょっと共感は無理そうだ。
俺、獣フェチじゃないし。
何より、スカートにダイブするような、刹那的な生き方はしていない。
「毛の広がり方。感触。乳首の数。地肌の色。匂い。あの時から、私のケモノ愛は膨れ上がるばかりですよ」
「お前……」
思ったよりもハードな変態だった。
これがガチ勢か。
海に行く。
ヤツはそう言った。
面談の翌日、俺たちは改めて食堂でそのことについて話し合っていた。
「以前にもお伝えした通り、ここからそう遠くない場所に海岸があります」
お手製のマップを指でなぞりながら、イガグリが説明する。
「教官との鬼ごっこで鍛えられた今の我々なら、二十分もかからないでしょう。そこまでの経路も調査済みです」
「手際の良さが逆に怖い」
「ケモナーの嗜みと言っておきましょう」
「関係ないよね。一応聞くけど、やばいことはしないよな?」
「大丈夫です。何も更衣室を覗こうというわけではありません。ただ、普通に海に行き、水着の女性を拝もうというだけです。血の涙を飲んで、歯を食い縛り、犯罪行為は我慢しましょう。それが人の生きる道」
「ギリギリじゃねぇか。……けど、それも難しくないか?」
「ええ。涅槃は遠く、倫理の内側に身を置くのは、とてもとても難しい」
「お前もう爪先少しはみ出てるぞ。そっちじゃなくて海に行く方だ。俺たち、訓練期間中は外出禁止だろ」
少なくとも、「海に行きたいです!」という理由で外出許可が下りるはずもない。
動機が「水着の女の子が見たいから」では尚更だ。
「外出の許可が下りないなら、手段は一つでしょう。どんな夢にも、必ず障害はある。しかし、立ち塞がる壁に立ち止まっていても、夢は叶いません。――進むのです。壁を、乗り越えて」
「それっぽく言ってるけど要するに脱走だよな」
訓練所の周囲は脱走防止の為の壁に囲まれている。
無許可で外に出ようと思えば、それを越えるしかない。
「しかし他に方法がありません。この地獄の訓練場に、水着の女性が現れることなどまずありませんし」
「そりゃそうだろうけど。目的はゴリラさんの性欲解消だろ。なんでそこまで水着に拘るかな」
「私が見たいからです」
「……」
そっか。
ゴリラさん云々は、ついでだったか。
道理で準備が良いはずだ。
……コイツらってホント、自分に素直だな。
「あなたはご存知ないようですが、ここには獣人の女性もいるんですよ。以前、たまたま見かけたことがあります」
「ふうん。まあ、自称天使もいるしな」
「素晴らしい猫耳と尻尾でした。突然の衝動に駆られ、その方のスカートに頭からダイブした結果、罰として私の髪型がこうなったわけですが……まあ、その話はいいでしょう」
「さらりと変態度を上げないでくれる?」
「彼女のもっさりした腕に殴られながら、私は思いました。――あの服の下は、どうなっているのだろうかと」
「思い出と性癖は胸に秘めとくもんだぞ」
ちょっと共感は無理そうだ。
俺、獣フェチじゃないし。
何より、スカートにダイブするような、刹那的な生き方はしていない。
「毛の広がり方。感触。乳首の数。地肌の色。匂い。あの時から、私のケモノ愛は膨れ上がるばかりですよ」
「お前……」
思ったよりもハードな変態だった。
これがガチ勢か。
「転生までが長すぎる!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
半熟2丁ココハミュ探索記
-
3
-
-
フィロソフィア
-
2
-
-
阿頼耶識エクスチェンジ
-
7
-
-
この異世界は小説でできています
-
3
-
-
愛山雄町の酔いどれ酒エッセイ
-
6
-
-
爆ぜろ!魔法少女いちごちゃん
-
2
-
-
週末自炊酒
-
2
-
-
小説 中年おっさんの俺の下に、魔法少女達がやって来て、同棲して色々騒動があったりしつつ、世界を救う話
-
2
-
-
敗北魔王のFランク冒険者育成計画 ~幼女(ロリ)な魔王がギルド最低ランクの少女を最強に育て上げます! ~
-
3
-
-
異世界転生だけでお腹いっぱいなのにTSの上悪役令嬢ってなんなんですか!?
-
3
-
-
海賊に殺された現代船乗りだけど、異世界転生のしたので、色々あって海軍に入隊します! 〜知恵と経験を武器に、海賊だらけの海を生き抜いていく~
-
7
-
-
このゲームのススメ方
-
8
-
-
生まれながらにして凶運の持ち主の俺はファンタジー異世界への転生ボーナスがガチャだった時の絶望感を忘れない。
-
9
-
-
異世界と銃とそれから君と
-
6
-
-
冒険者が女主人公でも良いじゃない。
-
9
-
-
幼馴染み百合カップルの異世界転生〜異世界転生で百合カップルから男女カップルへ〜
-
6
-
-
ロリドワーフ・ハイドワーク〜TS転生して地世界生活〜
-
6
-
-
転生したら妖狐な幼女神になりました~前世の記憶と時空創造者~
-
21
-
-
短編集〜徒然なるままに~
-
5
-
-
エルフ始めました。
-
9
-
コメント