転生までが長すぎる!
訓練生 In ダンジョン 2
訓練が始まり、二か月が経過した。
天使様の叱咤激励もあり、俺は何とか生き延びていた。
まあ、死んでも死なないのだが。
体を鍛え、剣技を磨き、サバイバル演習で学んだ技術を身に着ける。
軍隊としか思えない訓練ばかりが続く毎日だったが、その日は違った。
「今日、貴様らにはダンジョンに潜ってもらう!」
ダンジョン。
ファンタジー世界ではお馴染みのワードだ。
古代の遺跡であったり、魔法の迷宮であったり、形式は様々だが、大抵はモンスターがいて、何故か宝箱が存在する冒険スポットである。
「教官! 質問よろしいでしょうか!」
「許す!」
「ありがとうございます! ダンジョンとは何でしょうか!」
「なんかモンスターがいて、ジメジメした謎空間だ! 徳川の埋蔵金やアトランティスが眠るとも噂されている!」
どんな世界観だ。
-------------------------------------------------------------------------------------
というわけで、ダンジョンである。
謎の魔法陣で転送された先は、遺跡のような場所だった。
「地下迷宮って話だけど」
当然、窓はないし日も差さない。
ただ、真っ暗ではあるが、周囲に生える苔が光を放っている為、視界は問題なかった。
「とりあえず教官から出た指示は、三時間生き延びること。モンスターとは戦ってもいいし逃げてもいい。で、途中で手に入れたアイテムは貰ってオーケー、だっけ?」
「ええ。合ってます」
イガグリ頭の眼鏡が答える。
最近、一緒にいることが多い、同室の青年だ。
唯一渡された武器、中古っぽい剣を確認しつつ、俺は呟いた。
「ここ、モンスターがいるんだよな」
「教官の話だと、そうですね」
「何系かねぇ」
「この手の迷宮だと、アンデット系のイメージが強いですが」
「骨ならいいけど、腐ってるのとか幽霊とかは勘弁して欲しいな」
「同感です。死んでからも居座るなんて、絶対に根暗ですしね」
「お前いま味方全員ぶっ刺したぞ」
この場の訓練生は十数人。
スタート地点は同じだし、チーム分けされているわけでもないから、どう動くかが鍵だ。
「まあ、無理に分かれる必要もないか。全員不死身だし、こんだけ数がいりゃ大抵何とかなるだろ」
「そうですね。食われでもしない限り、放っておけば傷も治りますし」
他の者たちもその結論に至ったらしく、全員で動くことになった。
ダンジョン探索。
長い廊下と、所々にある部屋を歩き回る。
「宝箱発見。……空だ」
「こちらもです」
探索結果は虚しいものだ。
地下だから風景に代わり映えがないし、特に宝物も見つからない。
まあ、探索なんてこんなものだろう。
「おーい、なんか見つかったか?」
「ダメだ。何もねぇや。トラップはあったけど」
「あ、メカクレが落とし穴に落ちたぞ。ちょっと誰か手伝ってくれ」
「!? やべぇ、モンスターがいるぞ!」
「安心しろ。ただのネズミだ」
「ばっか、ネズミの危険性知らねぇな!? 毒属性で増殖スキルまで持つ凶悪なKEMONOだぞ!」
「ゲーム脳乙」
周囲からもそんな声が聞こえてきた。
どうやら成果は芳しくなさそうだ。
「収穫なしか」
「ネズミ……」
「ん? どうした?」
「いえ、別に。メタ的に考えると、そろそろモンスターでも出てくる頃合いでしょうか?」
「あ、そんなことを言うと」
イガグリの言葉がフラグだったのだろう。
「うわああああああああ!」
少し離れた場所で、悲鳴が上がった。
全員の意識がそちらに向く。
必死の形相で、訓練生の一人が逃げて来る。
その背後には、不定形のぶよぶよとした塊。
透明ではなく、どこか濁った、泥のような色合いだ。
「スライムだ! スライムが出たぞぉ!」
モンスター登場。
――スライム。
RPGでお馴染みのモンスターだ。
しかも直径三メートル以上もある、特大サイズ。
人間を丸呑み出来そうだ。
「おい、ヤバいぞ。典型的な捕食系のモンスターだ。食われて消化されるタイプ」
「嫌な死に方ランキングがあれば、間違いなく上位ですね」
だよなー、と返事をしつつ、俺は剣に触れる。
どうするべきか。
考えてみれば初めての実戦、初めてのモンスターだ。
戦うか逃げるか、誰もが決断しかねている。
そんな訓練生たちの迷いを吹っ切るように、一人の男が前に出た。
「やれやれ。臆病者どもめ。スライム如きに何をビビっている?」
筋骨隆々とした、大柄な男だ。
巨漢は剣を抜き放ち、堂々とした足取りでスライムに近付いていく。
「下がっていろ。こんな雑魚、我の手にかかれば――」
ぱくん、と。
スライムの体が伸び、男を呑み込んだ。
はい、犠牲者一名。
「ゴリラさんがやられた!?」
「そんな! 頭はアレだけど、身体能力だけは凄いゴリラさんが!」
騒ぐ訓練生たち。
口ほどにもなさすぎる。
まあ、死にはしないだろうが……。
「スライムって近頃は逆に強キャラ扱いだよな」
「考えてみれば物理攻撃無効の時点でアレですしね」
「助けられるか、アレ?」
「無理かと。我々まで呑み込まれるのがオチです」
「だよね」
俺たちの武器は剣のみ。
となれば、取れる選択肢は一つしかない。
「逃げるぞ!」
「はい!」
一目散に逃げ出した。
天使様の叱咤激励もあり、俺は何とか生き延びていた。
まあ、死んでも死なないのだが。
体を鍛え、剣技を磨き、サバイバル演習で学んだ技術を身に着ける。
軍隊としか思えない訓練ばかりが続く毎日だったが、その日は違った。
「今日、貴様らにはダンジョンに潜ってもらう!」
ダンジョン。
ファンタジー世界ではお馴染みのワードだ。
古代の遺跡であったり、魔法の迷宮であったり、形式は様々だが、大抵はモンスターがいて、何故か宝箱が存在する冒険スポットである。
「教官! 質問よろしいでしょうか!」
「許す!」
「ありがとうございます! ダンジョンとは何でしょうか!」
「なんかモンスターがいて、ジメジメした謎空間だ! 徳川の埋蔵金やアトランティスが眠るとも噂されている!」
どんな世界観だ。
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というわけで、ダンジョンである。
謎の魔法陣で転送された先は、遺跡のような場所だった。
「地下迷宮って話だけど」
当然、窓はないし日も差さない。
ただ、真っ暗ではあるが、周囲に生える苔が光を放っている為、視界は問題なかった。
「とりあえず教官から出た指示は、三時間生き延びること。モンスターとは戦ってもいいし逃げてもいい。で、途中で手に入れたアイテムは貰ってオーケー、だっけ?」
「ええ。合ってます」
イガグリ頭の眼鏡が答える。
最近、一緒にいることが多い、同室の青年だ。
唯一渡された武器、中古っぽい剣を確認しつつ、俺は呟いた。
「ここ、モンスターがいるんだよな」
「教官の話だと、そうですね」
「何系かねぇ」
「この手の迷宮だと、アンデット系のイメージが強いですが」
「骨ならいいけど、腐ってるのとか幽霊とかは勘弁して欲しいな」
「同感です。死んでからも居座るなんて、絶対に根暗ですしね」
「お前いま味方全員ぶっ刺したぞ」
この場の訓練生は十数人。
スタート地点は同じだし、チーム分けされているわけでもないから、どう動くかが鍵だ。
「まあ、無理に分かれる必要もないか。全員不死身だし、こんだけ数がいりゃ大抵何とかなるだろ」
「そうですね。食われでもしない限り、放っておけば傷も治りますし」
他の者たちもその結論に至ったらしく、全員で動くことになった。
ダンジョン探索。
長い廊下と、所々にある部屋を歩き回る。
「宝箱発見。……空だ」
「こちらもです」
探索結果は虚しいものだ。
地下だから風景に代わり映えがないし、特に宝物も見つからない。
まあ、探索なんてこんなものだろう。
「おーい、なんか見つかったか?」
「ダメだ。何もねぇや。トラップはあったけど」
「あ、メカクレが落とし穴に落ちたぞ。ちょっと誰か手伝ってくれ」
「!? やべぇ、モンスターがいるぞ!」
「安心しろ。ただのネズミだ」
「ばっか、ネズミの危険性知らねぇな!? 毒属性で増殖スキルまで持つ凶悪なKEMONOだぞ!」
「ゲーム脳乙」
周囲からもそんな声が聞こえてきた。
どうやら成果は芳しくなさそうだ。
「収穫なしか」
「ネズミ……」
「ん? どうした?」
「いえ、別に。メタ的に考えると、そろそろモンスターでも出てくる頃合いでしょうか?」
「あ、そんなことを言うと」
イガグリの言葉がフラグだったのだろう。
「うわああああああああ!」
少し離れた場所で、悲鳴が上がった。
全員の意識がそちらに向く。
必死の形相で、訓練生の一人が逃げて来る。
その背後には、不定形のぶよぶよとした塊。
透明ではなく、どこか濁った、泥のような色合いだ。
「スライムだ! スライムが出たぞぉ!」
モンスター登場。
――スライム。
RPGでお馴染みのモンスターだ。
しかも直径三メートル以上もある、特大サイズ。
人間を丸呑み出来そうだ。
「おい、ヤバいぞ。典型的な捕食系のモンスターだ。食われて消化されるタイプ」
「嫌な死に方ランキングがあれば、間違いなく上位ですね」
だよなー、と返事をしつつ、俺は剣に触れる。
どうするべきか。
考えてみれば初めての実戦、初めてのモンスターだ。
戦うか逃げるか、誰もが決断しかねている。
そんな訓練生たちの迷いを吹っ切るように、一人の男が前に出た。
「やれやれ。臆病者どもめ。スライム如きに何をビビっている?」
筋骨隆々とした、大柄な男だ。
巨漢は剣を抜き放ち、堂々とした足取りでスライムに近付いていく。
「下がっていろ。こんな雑魚、我の手にかかれば――」
ぱくん、と。
スライムの体が伸び、男を呑み込んだ。
はい、犠牲者一名。
「ゴリラさんがやられた!?」
「そんな! 頭はアレだけど、身体能力だけは凄いゴリラさんが!」
騒ぐ訓練生たち。
口ほどにもなさすぎる。
まあ、死にはしないだろうが……。
「スライムって近頃は逆に強キャラ扱いだよな」
「考えてみれば物理攻撃無効の時点でアレですしね」
「助けられるか、アレ?」
「無理かと。我々まで呑み込まれるのがオチです」
「だよね」
俺たちの武器は剣のみ。
となれば、取れる選択肢は一つしかない。
「逃げるぞ!」
「はい!」
一目散に逃げ出した。
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