暗殺者の欲望

カキ

依頼

 私達は賭博場から数十メートル離れた場所で会話していた。
 赤い髪の青年が私のポケットに入っていた宝石をみて豹変してからまでまぁまぁの時間があった。
 あの宝石がなんだったのか解らないし、今まで顔立ちのいい青年がここまで顔が変わるは人生で初めて見た。
 彼は神妙な面持ちで私を縛っていたロープをほどき自由になった私だが、口が動かせなかった。
 彼の周りからは禍々しい雰囲気が漂っていた。


 それで今に至るわけだ。
「もう一度聞こう。 なんでお前がこれを持っているんだ?」
 青年はさっきとは別の真面目の声で私の目の前に宝石を差し出し、私を疑う口調で同じ質問を繰り返した。
 私はいつもなら「知らないわよ!」と強めの口調で返す所なのだが、しかし彼の神妙な表情に圧倒され抑えつけられたような口調になってしまった。
「それはギルドで会ったアナトって言う男の子から渡された宝石なの。一つはルビーで、もう一つはロード軍から逃げる時に渡された。」
 私がそう答えると青年の顔は困惑した表情に移り代わった。
 そして青年は立ち上がり歩き初めてもう一つだけ私に質問した。
「アナトの居場所は?」
「多分ロード軍の支部だと思う。」
 あそこはここからでも見えるとても高い建物だった。
 ロード軍は自国に情報を流しているのだろう。
「ありがとう。お前はもう自由だ。今度からちゃんした場所で寝るように気を付けてくれ。」
 彼はそのまま走り初めてこの場を後にしようとした。


 私はその腕を掴んでしまった。
「なんだ? お前はもう自由なんだ、僕の勝負の邪魔をしないでくれ。」
 彼は若干焦っているように見えた。
 しかし私はその言葉で確信した。
 「もういいか? 何がいるんだ? ルビーなら返そう。」
 青年がルビーを投げたが私は見向きもしなかった。
「あなた、ダイシよね?」
 私の口調は元にもどり、青年の顔が驚きをみせた。
「なんで知ってる?」
「【勝負欲】ダイシ! あなたに暗殺を依頼するわ!」







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