俺の能力は日常モノ向きじゃないのに!
俺の能力は日常モノ向きじゃないのに!
ドンっ、と誰かと肩がぶつかった。
ここは校内だ。人がたくさん歩いているのは当然で、一切誰ともぶつからないというのも中々難しいだろう。
「痛っ」
しかし相手はそうは思わなかったようで、少し、苛立たしげな声を上げた。
「…………」
俺は恨みがましい目を向けてくるそいつを一瞥するが、すぐに目を逸らして、人がほとんどいない廊下を歩き出す。
「おい、待てよてめぇ!」
後ろから肩を掴まれた。思いのほか強い力だったので、立ち止まり、そいつの顔を見る。
「ああ? 俺が誰か分かってそんな態度とってんのかテメェは」
俺の胸倉を掴み、175センチはある俺を、上から顔を近づけて睨んできた。
「……2年の後藤権助だったか?」
「ああ? 知ってんのかよ。なら話は早い。おい、今ので俺肩がいっちまったかもしんねえからよ、治療費5万払え。今すぐだ」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら、顔を俺に近づけてくる後藤。
「離れろ。俺に関わらないでくれ」
「んだとぉ?」
この後藤、いわゆる『ワル(笑)』というやつで、この学校では逆らってはいけない人物となっているらしい。まだ入学して少ししか経ってない上、人との繋がりを絶っている俺にすら情報が入ってくるほどだ。相当頭がイカレている(笑)んだろう。
「黙ってねえで何とか言えよ。おぉ!?」
うわ、唾も飛んできた。汚い奴だな。
とはいえ、黙っているなと言われたので、少し言い返すことにする。
「……口が臭い上に、唾も飛んでくるからもう喋らないでくれないか? ああ、体臭も酷いな。臭いが服に移りそうで不快だから5万キロくらい離れてくれないか?」
「ん、だ、と、テメエ……!」
「なんだ? 額に青筋を浮かべて。もしかして怒ったのか? ハッ、単細胞な奴だな。まだオランウータンの方が堪え性があるんじゃないか?」
「ざっけんな!」
叫ぶと同時に、後藤は俺を壁に叩きつけてきた。
「テメェ……俺をよほど怒らせたいみたいだな……」
「顔面が真っ赤になってるぞ。なんだ? 隠しておいたエロ本でも親にみつかったのか?」
「ぶっ殺す!」
突如、真っ赤になった後藤の拳が、俺の顔面にめり込んだ。
「はっ、これにこりたら――え?」
――が、俺は表情一つ変わっていない。
それもそのはず、痛くないからだ。
正確に言うと――今の後藤の攻撃を無効にしたからだ。
「な、なんなななん……う、うおお!?」
二度、三度後藤が殴りつけてくる。が、結果は変わらない。俺は身動き一つせずそれを受けきる。
「もう終わりか? なら、今度はこちらから行くぞ」
「なん……うおっ!」
俺は優しく、かつソフトに後藤を対面の壁に投げつける。
「がっ!」
そんな後藤を俺はゴミ以下のものを見る目で見つめるが、後藤は何が起きたかを正確には理解できていないような顔をしていた。
しょうがないので、俺が今理解すべきことを教えてやることにする。
「命が惜しくば、もう二度と関わるな」
「ひっ」
そう、この俺に関わっていいことなんてないさ。
俺は――超能力者だからな。
* * *
支配者――それが、この俺、真田魁斗に宿る忌まわしく恐ろしい力の名だ。
能力は、まあ簡単に言ってしまうと「力を操作する力」だ。俺の認識した『力』を、増幅したり零にしたりなど、さまざまなことが出来る。
例えばパンチの威力を増加させたり、敵の攻撃を弱めたり、というか無効にしたり、重力を減らして物を軽くしたり、やろうと思えば壁に張り付いたりも出来る。まさに、最強の能力の一つと言っても過言ではないだろう。……まあ、超能力者に出会ったこと無いんだけどね。
こんな『力』、誰にも教えられるようなものでもないし、また教えようとも思わない。
必然的に、俺は常に隠し事をしつつ人と付き合わなくてはならないので――結果、俺は今まで誰にも心を開かず付き合ってきた。平たく言えば、俺には友だちと呼べるもの、安息の地と呼べるものが無い。
だが、それはしょうがないと思う。もちろん、俺が新人類だとか、新世界の神になるだとか思っちゃいない。だが、特別な存在ではあると思う。
この世で唯一、自然現象ではあり得ない能力を持っている男。
それがこの俺――真田魁斗だ。
そう、俺は特別なんだ。だが、それを見せびらかしたりしない。無用な敵は増やしたくないからな。
だから、俺は高校生になっても、そのスタンスは崩さない。
正直な話、俺は異物だろう。
異物はおとなしく弾かれていた方がいい。
* * *
5月――
部活動の勧誘も大体終わり、1年生もそろそろ学校に慣れてくる時だ。
それは俺の通う有明学園も変わらない。
自由な校風を謳っているからか、アホみたいに部活動の数が多い。
メジャーどころの「野球部」、「バスケットボール部」。若干マイナー感の否めない「ハンドボール部」、「スカッシュ部」など。
珍しいもので言うと、「リリアン部」とか「アルティメット部(フリスビーを使った競技らしい)」あたりなんかはいい方で、「仮面ライダー研究会」や「戦隊ヒーロー同好会」、果ては「オウム研究会(鳥の方であってほしい。切実に)」や「共産主義研究会(何故わざわざ日本でそれを研究するんだ)」、「実はヒトラーは神だった説信奉会(変な宗教勧誘になっていないことを祈る。つーかそんな説生まれて初めて聞いたぞ)」、「異常現象及び超常能力研究部(どんだけ不思議なモン大好きなんだよ)」とかいう、公にしたら真っ先に潰されそうな、アホみたいで危険そうな部まであるらしい。本当に大丈夫かこの学校。
もっとも、ほとんどの部、及び同好会は名前だけで、部室を貰えず、放課後の空いてるクラスや学外のカラオケの個室なんかで部会を開いたりしているらしい。まあ、そんなアホらしい(つーか危険)なところに、部費や部室なんて与えられないよね。
で、そんなに馬鹿みたいに部活動があると新入生勧誘はどうなるか?
そりゃあ凄いモンだった。この学校の名物は文化祭と新入生歓迎会、なんて言われているらしいが、まさしくそんな感じだった。見世物がたくさん出たり、コンサートなんてしょっちゅうだし、ビラが校内に散乱していて片づけをするのが大変そうだった。
で、そんなお祭り騒ぎがつい最近までやっていた分けだが、そろそろ落ち着いてきたみたいで、今日は誰にも声をかけられることは無かった。
……もっとも、部勧誘の途中から俺は「話しかけるな」オーラをバリバリにしていたから、うっかり声をかけてきた奴も目を逸らしてそそくさとどっかへ行ってしまうことが多かったんだが。
「ふう、さて……とりあえず、帰るか」
俺は鞄を持って立ち上がる。
誰にも声をかけられることも無い。なに、こんな生活をずっと続けていれば慣れる。今さら寂しいと思うことも無い。
そうしてクラスを出て、駐輪場へ歩いていくと……1人の、女子生徒が立っていた。
(珍しいな)
この時間帯はほとんどの部が活動をしているから、帰宅部の奴か(本当に帰宅部という部があるらしい)部に入ってない奴しかいないはずなのに。
まあ、俺には関係ない。そう思ってその横を通り過ぎようとしたところで――
「ねえ、あんた真田魁斗で合ってるわよね?」
――その女が話しかけてきた。
「……ああ、そうだが。なんの用だ?」
その時その女が、クラスメイトの誰かだったことに気づいた。
名前は確か――阿沙といったか? 珍しい苗字だったので覚えている。
「あんた、あたし達の部に入りなさいよ」
「は?」
突然何を言い出すんだこいつは。
俺が訝しんだ目を向けると、阿沙はもう一度同じ台詞を繰り返してきた。
「あんた、あたし達の部に入りなさい」
今度は命令口調だった。なんだこの有無を言わせぬ迫力は。
DQNか? いや、だとしても金を寄越せ、ではなく部活に入れと言われるのも変だ。
だがまあ、この手の話が通じない系の扱いは心得ている。
「お前は何を言っているんだ。部活の勧誘だったら他を当たれ」
そう言ってその横を通り過ぎようとする。
が、しかし。阿沙が前に立ちふさがった。
「どけ」
女子相手にしたくはなかったが、軽く凄む。これでも修羅場はそれなりに潜り抜けてきた方だ。能力抜きでも、それなりに強い自負がある。
そんな俺に睨まれても、阿沙は一歩も退かないどころか逆に言い返してきた。
「嫌よ。とにかく、あんたちょっと来なさいよ」
怖いもの知らずなのか、俺の腕を握って何処かへ連れて行こうとする阿沙。おい、こいつ何しやがる。
思わず俺はそれを振り払い、さらに声を低くして言う。
「……どけ、って言ったのが聞こえなかったのか?」
「そうしたいところなんだけど、あたし達の部活に入った方があんたも得すると思うわよ?」
「……何部なんだ?」
俺が得する、という単語に少し反応してしまい、つい聞き返してしまった。
それで俺が交渉のテーブルに乗ったと思ったのか、阿沙はドヤ顔をして言い放った。
「あたし達の部――異常現象及び超常能力研究部よ!」
ドン! と背後に効果音が出そうなくらい大声で宣言されたが……俺の感想は一つだった。
「よりによって、そこか……」
もう話をする価値はない。俺は踵を返し、別ルートで自転車を取りに行こうとする。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! どこに行くつもり!?」
「帰る」
「な、いいから! 話だけでも――」
「放っておいてくれないか? 俺はお前らとは違うんだよ。根本的に。だから、お前ら普通の奴とは関わりたくないんだ」
とうとう、言いたくはない台詞を言ってしまった。
これを言ってしまうと――絶対に言われるのだ。
厨二乙、と。
そして優しい言葉をかけようとしていた奴らは全員、俺の元から去っていく。
厨二病――そんな奴らがいるせいで、俺がどんな目にあってきたことか。
もちろん、能力のことを言ったりはしない。だが、独りでいようとすると、必ず俺は厨二病として認定されてしまう。
事実だから、そして誰も巻き込みたくないから遠ざけているのに、病人扱いだ。笑えてくる。かわいそうな人、としてイジメにあったのもしょっちゅうだ。まあ、全部返り討ちにしたが。
とにもかくにも、高校でこそは「痛々しい厨二野郎」ではなく「ただの空気」として過ごそうと思ったのに……ことここに至っては仕方が無い。諦めて3年間「厨二病患者」として過ごそう。
と覚悟を決めていると、案の定阿沙は笑い出した。
「あはははははは!」
「……何が可笑しい?」
「あんた、自分が特別だと思ってんの?」
「…………」
俺は何も答えない。事実だが、証明する気は無い。
だが、次の瞬間阿沙が紡いだ言葉は、俺の脳を揺さぶった。
「超能力、あたし達も持ってるわよ」
――は?
「好、やっちゃって」
「は~い」
後ろから、どこかで聞いたことあるような、緩い女の声が聞こえてきた。俺が背後をとられるだと!?
慌ててそちらを振り返ろうとしたところで――視界が、変わった。
「なん、だと……!?」
これは、超能力!? それも空間転移系――テレポーターかっ!
即座に周囲を分析――どうやらここは校内、それも教室内のようだ。長机が二つあり、棚にはたくさんの新聞と本が。文芸部か新聞部の部室かもしれない。
今の転移は後から出てきた女の能力だろう。となると、さっきまで話していた阿沙には別の能力があるはずだ。長々と話していて俺になんの影響も無いところから考えて、間接攻撃系ではないと推定。だとしたら、次の攻撃は阿沙から来る可能性があるが、直接攻撃系異能ならば俺の能力の敵じゃない。万が一間接攻撃系だったときのために最低限の警戒だけでいいだろう。
さらに、さっき阿沙は「あたし達の部活」と言っていた。あたし達、と言うからには他にも超能力者はいるんだろう。それに囲まれたら、いくら俺でもすぐさま殺られる可能性がある。
となれば、とるべき手段は一つ。
「――床を打ち抜き、その隙に逃げ出す、か。よくそんなこと思いつくな」
(読まれた――!?)
目の前にいた女が、俺が考えていたことを見抜いた。心を読んだのか? だとしたら、サイコメトリーか、テレパスか。どちらにせよ厄介だ。
サッと視線を巡らせる。室内には俺以外に4人。
――これならやっぱ床をぶち抜ける!
「ちょっ、それはさすがにさせられないな!」
そう叫ぶや否や、急に俺の視界がグニャリと歪む。なんだっ、急に眠気が……
俺の視線の先には、さっき俺の心を読んだ長い髪を一つにくくった背の高い女。
あの女、テレパス系だけじゃなくて催眠系も使えるのか!? なんて多芸なんだ!
俺は舌を噛んでその眠気を振り払い、扉に向かってバックステップする。
そして着地した瞬間――何故か、足が滑った。何か雑誌みたいなものを踏んづけたようだ。しかし、さっきまで雑誌なんて無かったはずなのに、何故?
「しまっ!」
どたっ、と尻餅をついた瞬間、フッと意識が途切れる。
ちくしょう、油断した……っ!
* * *
「で? 美紀さん、貴女はどんな誘い方をしたんですか?」
「え? そりゃあ普通に……」
「普通に誘った結果がアレですか?」
「うっ……」
「ま、まあまあ~、しずかさん、みきちゃんも一生懸命だったんですから~」
「そもそも、好さんは最後の手段のはずでしたよね? なんで問答無用でつれてきたんですか?」
「いや……華美さんから聞いてた真田の能力が、正直そんな強そうじゃなかったんで、例え暴れても簡単に取り押さえられるかと思って……」
「で、ほぼ全員がかりで逃げられそうになった、と。しかもアレ、能力使ってなかったんでしょう? 華美」
「ん? ああ、そうだな。あいつ、最初からあたし達を攻撃する意思は無かったっぽいし。つーか、あいつの頭の片隅にあった行動――あたし達を確実に殺す行動――それを使われてたら、たぶんあたし達今こうして話せてないよ?」
「終始彼が逃げることに重きを置いていたからなんとかなったものを……下手をうっていたら、全滅もありえましたね。彼の戦闘経験は私たちとは段違いのようです。能力の扱いもまた然りかもしれませんね」
「うう……」
「まあ、そりゃあな」
「「「!?」」」
俺が体を起こして全員に声をかける。
「い、いつから目覚めてたの……」
「割合最初から。眠らせられるときに抵抗してみたら案外あっさり目覚められたからな」
「かかりが甘かったかな」
俺を眠らせた催眠系の超能力者――はなびとか言われてたか――が首をかしげる。
それを無視して、俺は立ち上がる。
「で? なんでいっきなり俺を拉致したんだ?」
とりあえずこいつらが俺に危害を加えるつもりが無いことは分かったので、普通に話しかける。
「最初から言ってるでしょ。あたし達の部に勧誘するためよ」
阿沙がなんか胸を張っている。チビのくせに。
「ずいぶん強引だな……つーかおい、好。お前なんで超能力者なんだよ」
と、俺は部屋の隅っこにいる、、三つ編みでメガネをかけた女に声をかける。
こいつは加沢好。近所に住んでる……いわゆる幼馴染だ。幼稚園、小学校と一緒だったんだが、こいつは近所の付属中学校に行ってしまったので、しばらく会っていなかった。最後に会ったのは……そうそう、こいつが深刻な顔で俺に相談してきた中二の頃だったな。
「えっと~」
苦笑いを浮かべる好。まあ、言いたくないなら仕方ない。
……っつーか、テレポートって。何気に俺の能力より使い勝手がよくないか?
「まあ、とにかく……真田君、でいいんですよね?」
「はい」
綺麗な長い髪をした、なんとはなしに凛とした女性が話しかけてきた。
「改めて、私たちの異常現象及び超常能力研究部、通称異能部に入りませんか?」
「俺にメリットが無い」
「まあ、そう言うなって」
ガシッと肩を組まれる。む、はなびさん俺と背が変わらんだと……うわ、地味に凹む。
俺は若干凹んだことを悟らせないように、クールに返す。
「そう言われても……とにかく、俺に関わらないでくれ」
「……君は、特別な人間じゃないんだ。それはもう分かっただろう? だって、超能力を持ってる人間は君以外にもいるんだから」
「む……」
「だから、もう独りに、ならなくていいじゃないか。あたし達と一緒に遊ぼうぜ」
遊ぼうぜ――何気ない一言だったが、俺の心にはなんとなく響いた。
もう、独りにならなくていい。
スッと、何か胸のつかえがとれた気がした。
「ふふっ」
はなびさんはそんな俺の心を読んだのか、少しだけ微笑んだ。
くっ……なんか恥ずかしいぞ……
「さて、じゃあ、自己紹介といこうか。あたしは超能研の部長、二年の足立華美! 能力は、相手の思考を呼んだり、眠らせたり幻覚を見せたりできる!」
チートじゃねえか!
「私は二年の来栖静香。副部長です。確率を変動させたり、望む結果に現実を書き換える能力です」
チート!
「私は~、知ってると思うけど加沢好だよ~。なんか一回行ったところにしゅんっ、て飛べるんだ~。触って無くても出来るし、イメージさえできれば行ったことなくても行けるけどね~」
チートだよなあ!
「あたしは阿沙美紀。能力はいわゆるサイコキネシスかな。結構重いものも持ち上げられるし、同時に百個くらいなら動かせるかな」
シンプルに強え! チートだし、っつーかなにそれ、若干俺の――
「で? 君は?」
「ん? ああ、俺は真田魁斗。能力は……まあ、簡単に言うと怪力かな。力を増幅させたり逆に零にしたりできる」
「へぇ~……って、ん?」
なぜか阿沙が少し考えるような仕草をしたかと思ったら、しきりに頷き出して、にやりと嗤った。
「つまりそれってさぁ……戦闘じゃ無いんなら、あたしの下位互換ってことよね」
「は、はぁ!? い、いや、戦闘になったら全然俺の方が強力だし!」
「いや、でもあたし達別に戦ったりしないから……ぶっちゃけ、普段別にその力いらなくない?」
「ぐっ……」
「むしろ、あたし達の能力のどれよりもしょぼいわよね……」
「うう……」
「あんた、よくそれで『世間と違う俺かっけー』できたわね!」
「言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
他の全員は苦笑いだ。なんだよこれ、なんだこれ!
「じゃ、よろしくね、しょぼい超能力者さん」
「うるせぇぇぇぇぇぇぇ!! 戦闘じゃ凄ぇんだよ! 俺の力は!」
おい、どういうことだ。
俺、特別じゃなかったのか?
「じゃあまあ、新入部員も増えたことだし、お祝いしようか」
はなびさんがそう締めると、みんなでお菓子とか出し始めた。
おい、どういうことだ? 今まで――世間とは違う俺、いつか超能力バトルストーリーが始まる――と思ってたのに、こっから、日常系の物語に巻き込まれんのか?
冗談じゃねえぞ。
「お、俺の能力は……日常モノ向きじゃないのに……」
がっくりとうな垂れた俺の独り言は、その場にいた誰にも聞き取ってもらえなかったようだった。
ここは校内だ。人がたくさん歩いているのは当然で、一切誰ともぶつからないというのも中々難しいだろう。
「痛っ」
しかし相手はそうは思わなかったようで、少し、苛立たしげな声を上げた。
「…………」
俺は恨みがましい目を向けてくるそいつを一瞥するが、すぐに目を逸らして、人がほとんどいない廊下を歩き出す。
「おい、待てよてめぇ!」
後ろから肩を掴まれた。思いのほか強い力だったので、立ち止まり、そいつの顔を見る。
「ああ? 俺が誰か分かってそんな態度とってんのかテメェは」
俺の胸倉を掴み、175センチはある俺を、上から顔を近づけて睨んできた。
「……2年の後藤権助だったか?」
「ああ? 知ってんのかよ。なら話は早い。おい、今ので俺肩がいっちまったかもしんねえからよ、治療費5万払え。今すぐだ」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら、顔を俺に近づけてくる後藤。
「離れろ。俺に関わらないでくれ」
「んだとぉ?」
この後藤、いわゆる『ワル(笑)』というやつで、この学校では逆らってはいけない人物となっているらしい。まだ入学して少ししか経ってない上、人との繋がりを絶っている俺にすら情報が入ってくるほどだ。相当頭がイカレている(笑)んだろう。
「黙ってねえで何とか言えよ。おぉ!?」
うわ、唾も飛んできた。汚い奴だな。
とはいえ、黙っているなと言われたので、少し言い返すことにする。
「……口が臭い上に、唾も飛んでくるからもう喋らないでくれないか? ああ、体臭も酷いな。臭いが服に移りそうで不快だから5万キロくらい離れてくれないか?」
「ん、だ、と、テメエ……!」
「なんだ? 額に青筋を浮かべて。もしかして怒ったのか? ハッ、単細胞な奴だな。まだオランウータンの方が堪え性があるんじゃないか?」
「ざっけんな!」
叫ぶと同時に、後藤は俺を壁に叩きつけてきた。
「テメェ……俺をよほど怒らせたいみたいだな……」
「顔面が真っ赤になってるぞ。なんだ? 隠しておいたエロ本でも親にみつかったのか?」
「ぶっ殺す!」
突如、真っ赤になった後藤の拳が、俺の顔面にめり込んだ。
「はっ、これにこりたら――え?」
――が、俺は表情一つ変わっていない。
それもそのはず、痛くないからだ。
正確に言うと――今の後藤の攻撃を無効にしたからだ。
「な、なんなななん……う、うおお!?」
二度、三度後藤が殴りつけてくる。が、結果は変わらない。俺は身動き一つせずそれを受けきる。
「もう終わりか? なら、今度はこちらから行くぞ」
「なん……うおっ!」
俺は優しく、かつソフトに後藤を対面の壁に投げつける。
「がっ!」
そんな後藤を俺はゴミ以下のものを見る目で見つめるが、後藤は何が起きたかを正確には理解できていないような顔をしていた。
しょうがないので、俺が今理解すべきことを教えてやることにする。
「命が惜しくば、もう二度と関わるな」
「ひっ」
そう、この俺に関わっていいことなんてないさ。
俺は――超能力者だからな。
* * *
支配者――それが、この俺、真田魁斗に宿る忌まわしく恐ろしい力の名だ。
能力は、まあ簡単に言ってしまうと「力を操作する力」だ。俺の認識した『力』を、増幅したり零にしたりなど、さまざまなことが出来る。
例えばパンチの威力を増加させたり、敵の攻撃を弱めたり、というか無効にしたり、重力を減らして物を軽くしたり、やろうと思えば壁に張り付いたりも出来る。まさに、最強の能力の一つと言っても過言ではないだろう。……まあ、超能力者に出会ったこと無いんだけどね。
こんな『力』、誰にも教えられるようなものでもないし、また教えようとも思わない。
必然的に、俺は常に隠し事をしつつ人と付き合わなくてはならないので――結果、俺は今まで誰にも心を開かず付き合ってきた。平たく言えば、俺には友だちと呼べるもの、安息の地と呼べるものが無い。
だが、それはしょうがないと思う。もちろん、俺が新人類だとか、新世界の神になるだとか思っちゃいない。だが、特別な存在ではあると思う。
この世で唯一、自然現象ではあり得ない能力を持っている男。
それがこの俺――真田魁斗だ。
そう、俺は特別なんだ。だが、それを見せびらかしたりしない。無用な敵は増やしたくないからな。
だから、俺は高校生になっても、そのスタンスは崩さない。
正直な話、俺は異物だろう。
異物はおとなしく弾かれていた方がいい。
* * *
5月――
部活動の勧誘も大体終わり、1年生もそろそろ学校に慣れてくる時だ。
それは俺の通う有明学園も変わらない。
自由な校風を謳っているからか、アホみたいに部活動の数が多い。
メジャーどころの「野球部」、「バスケットボール部」。若干マイナー感の否めない「ハンドボール部」、「スカッシュ部」など。
珍しいもので言うと、「リリアン部」とか「アルティメット部(フリスビーを使った競技らしい)」あたりなんかはいい方で、「仮面ライダー研究会」や「戦隊ヒーロー同好会」、果ては「オウム研究会(鳥の方であってほしい。切実に)」や「共産主義研究会(何故わざわざ日本でそれを研究するんだ)」、「実はヒトラーは神だった説信奉会(変な宗教勧誘になっていないことを祈る。つーかそんな説生まれて初めて聞いたぞ)」、「異常現象及び超常能力研究部(どんだけ不思議なモン大好きなんだよ)」とかいう、公にしたら真っ先に潰されそうな、アホみたいで危険そうな部まであるらしい。本当に大丈夫かこの学校。
もっとも、ほとんどの部、及び同好会は名前だけで、部室を貰えず、放課後の空いてるクラスや学外のカラオケの個室なんかで部会を開いたりしているらしい。まあ、そんなアホらしい(つーか危険)なところに、部費や部室なんて与えられないよね。
で、そんなに馬鹿みたいに部活動があると新入生勧誘はどうなるか?
そりゃあ凄いモンだった。この学校の名物は文化祭と新入生歓迎会、なんて言われているらしいが、まさしくそんな感じだった。見世物がたくさん出たり、コンサートなんてしょっちゅうだし、ビラが校内に散乱していて片づけをするのが大変そうだった。
で、そんなお祭り騒ぎがつい最近までやっていた分けだが、そろそろ落ち着いてきたみたいで、今日は誰にも声をかけられることは無かった。
……もっとも、部勧誘の途中から俺は「話しかけるな」オーラをバリバリにしていたから、うっかり声をかけてきた奴も目を逸らしてそそくさとどっかへ行ってしまうことが多かったんだが。
「ふう、さて……とりあえず、帰るか」
俺は鞄を持って立ち上がる。
誰にも声をかけられることも無い。なに、こんな生活をずっと続けていれば慣れる。今さら寂しいと思うことも無い。
そうしてクラスを出て、駐輪場へ歩いていくと……1人の、女子生徒が立っていた。
(珍しいな)
この時間帯はほとんどの部が活動をしているから、帰宅部の奴か(本当に帰宅部という部があるらしい)部に入ってない奴しかいないはずなのに。
まあ、俺には関係ない。そう思ってその横を通り過ぎようとしたところで――
「ねえ、あんた真田魁斗で合ってるわよね?」
――その女が話しかけてきた。
「……ああ、そうだが。なんの用だ?」
その時その女が、クラスメイトの誰かだったことに気づいた。
名前は確か――阿沙といったか? 珍しい苗字だったので覚えている。
「あんた、あたし達の部に入りなさいよ」
「は?」
突然何を言い出すんだこいつは。
俺が訝しんだ目を向けると、阿沙はもう一度同じ台詞を繰り返してきた。
「あんた、あたし達の部に入りなさい」
今度は命令口調だった。なんだこの有無を言わせぬ迫力は。
DQNか? いや、だとしても金を寄越せ、ではなく部活に入れと言われるのも変だ。
だがまあ、この手の話が通じない系の扱いは心得ている。
「お前は何を言っているんだ。部活の勧誘だったら他を当たれ」
そう言ってその横を通り過ぎようとする。
が、しかし。阿沙が前に立ちふさがった。
「どけ」
女子相手にしたくはなかったが、軽く凄む。これでも修羅場はそれなりに潜り抜けてきた方だ。能力抜きでも、それなりに強い自負がある。
そんな俺に睨まれても、阿沙は一歩も退かないどころか逆に言い返してきた。
「嫌よ。とにかく、あんたちょっと来なさいよ」
怖いもの知らずなのか、俺の腕を握って何処かへ連れて行こうとする阿沙。おい、こいつ何しやがる。
思わず俺はそれを振り払い、さらに声を低くして言う。
「……どけ、って言ったのが聞こえなかったのか?」
「そうしたいところなんだけど、あたし達の部活に入った方があんたも得すると思うわよ?」
「……何部なんだ?」
俺が得する、という単語に少し反応してしまい、つい聞き返してしまった。
それで俺が交渉のテーブルに乗ったと思ったのか、阿沙はドヤ顔をして言い放った。
「あたし達の部――異常現象及び超常能力研究部よ!」
ドン! と背後に効果音が出そうなくらい大声で宣言されたが……俺の感想は一つだった。
「よりによって、そこか……」
もう話をする価値はない。俺は踵を返し、別ルートで自転車を取りに行こうとする。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! どこに行くつもり!?」
「帰る」
「な、いいから! 話だけでも――」
「放っておいてくれないか? 俺はお前らとは違うんだよ。根本的に。だから、お前ら普通の奴とは関わりたくないんだ」
とうとう、言いたくはない台詞を言ってしまった。
これを言ってしまうと――絶対に言われるのだ。
厨二乙、と。
そして優しい言葉をかけようとしていた奴らは全員、俺の元から去っていく。
厨二病――そんな奴らがいるせいで、俺がどんな目にあってきたことか。
もちろん、能力のことを言ったりはしない。だが、独りでいようとすると、必ず俺は厨二病として認定されてしまう。
事実だから、そして誰も巻き込みたくないから遠ざけているのに、病人扱いだ。笑えてくる。かわいそうな人、としてイジメにあったのもしょっちゅうだ。まあ、全部返り討ちにしたが。
とにもかくにも、高校でこそは「痛々しい厨二野郎」ではなく「ただの空気」として過ごそうと思ったのに……ことここに至っては仕方が無い。諦めて3年間「厨二病患者」として過ごそう。
と覚悟を決めていると、案の定阿沙は笑い出した。
「あはははははは!」
「……何が可笑しい?」
「あんた、自分が特別だと思ってんの?」
「…………」
俺は何も答えない。事実だが、証明する気は無い。
だが、次の瞬間阿沙が紡いだ言葉は、俺の脳を揺さぶった。
「超能力、あたし達も持ってるわよ」
――は?
「好、やっちゃって」
「は~い」
後ろから、どこかで聞いたことあるような、緩い女の声が聞こえてきた。俺が背後をとられるだと!?
慌ててそちらを振り返ろうとしたところで――視界が、変わった。
「なん、だと……!?」
これは、超能力!? それも空間転移系――テレポーターかっ!
即座に周囲を分析――どうやらここは校内、それも教室内のようだ。長机が二つあり、棚にはたくさんの新聞と本が。文芸部か新聞部の部室かもしれない。
今の転移は後から出てきた女の能力だろう。となると、さっきまで話していた阿沙には別の能力があるはずだ。長々と話していて俺になんの影響も無いところから考えて、間接攻撃系ではないと推定。だとしたら、次の攻撃は阿沙から来る可能性があるが、直接攻撃系異能ならば俺の能力の敵じゃない。万が一間接攻撃系だったときのために最低限の警戒だけでいいだろう。
さらに、さっき阿沙は「あたし達の部活」と言っていた。あたし達、と言うからには他にも超能力者はいるんだろう。それに囲まれたら、いくら俺でもすぐさま殺られる可能性がある。
となれば、とるべき手段は一つ。
「――床を打ち抜き、その隙に逃げ出す、か。よくそんなこと思いつくな」
(読まれた――!?)
目の前にいた女が、俺が考えていたことを見抜いた。心を読んだのか? だとしたら、サイコメトリーか、テレパスか。どちらにせよ厄介だ。
サッと視線を巡らせる。室内には俺以外に4人。
――これならやっぱ床をぶち抜ける!
「ちょっ、それはさすがにさせられないな!」
そう叫ぶや否や、急に俺の視界がグニャリと歪む。なんだっ、急に眠気が……
俺の視線の先には、さっき俺の心を読んだ長い髪を一つにくくった背の高い女。
あの女、テレパス系だけじゃなくて催眠系も使えるのか!? なんて多芸なんだ!
俺は舌を噛んでその眠気を振り払い、扉に向かってバックステップする。
そして着地した瞬間――何故か、足が滑った。何か雑誌みたいなものを踏んづけたようだ。しかし、さっきまで雑誌なんて無かったはずなのに、何故?
「しまっ!」
どたっ、と尻餅をついた瞬間、フッと意識が途切れる。
ちくしょう、油断した……っ!
* * *
「で? 美紀さん、貴女はどんな誘い方をしたんですか?」
「え? そりゃあ普通に……」
「普通に誘った結果がアレですか?」
「うっ……」
「ま、まあまあ~、しずかさん、みきちゃんも一生懸命だったんですから~」
「そもそも、好さんは最後の手段のはずでしたよね? なんで問答無用でつれてきたんですか?」
「いや……華美さんから聞いてた真田の能力が、正直そんな強そうじゃなかったんで、例え暴れても簡単に取り押さえられるかと思って……」
「で、ほぼ全員がかりで逃げられそうになった、と。しかもアレ、能力使ってなかったんでしょう? 華美」
「ん? ああ、そうだな。あいつ、最初からあたし達を攻撃する意思は無かったっぽいし。つーか、あいつの頭の片隅にあった行動――あたし達を確実に殺す行動――それを使われてたら、たぶんあたし達今こうして話せてないよ?」
「終始彼が逃げることに重きを置いていたからなんとかなったものを……下手をうっていたら、全滅もありえましたね。彼の戦闘経験は私たちとは段違いのようです。能力の扱いもまた然りかもしれませんね」
「うう……」
「まあ、そりゃあな」
「「「!?」」」
俺が体を起こして全員に声をかける。
「い、いつから目覚めてたの……」
「割合最初から。眠らせられるときに抵抗してみたら案外あっさり目覚められたからな」
「かかりが甘かったかな」
俺を眠らせた催眠系の超能力者――はなびとか言われてたか――が首をかしげる。
それを無視して、俺は立ち上がる。
「で? なんでいっきなり俺を拉致したんだ?」
とりあえずこいつらが俺に危害を加えるつもりが無いことは分かったので、普通に話しかける。
「最初から言ってるでしょ。あたし達の部に勧誘するためよ」
阿沙がなんか胸を張っている。チビのくせに。
「ずいぶん強引だな……つーかおい、好。お前なんで超能力者なんだよ」
と、俺は部屋の隅っこにいる、、三つ編みでメガネをかけた女に声をかける。
こいつは加沢好。近所に住んでる……いわゆる幼馴染だ。幼稚園、小学校と一緒だったんだが、こいつは近所の付属中学校に行ってしまったので、しばらく会っていなかった。最後に会ったのは……そうそう、こいつが深刻な顔で俺に相談してきた中二の頃だったな。
「えっと~」
苦笑いを浮かべる好。まあ、言いたくないなら仕方ない。
……っつーか、テレポートって。何気に俺の能力より使い勝手がよくないか?
「まあ、とにかく……真田君、でいいんですよね?」
「はい」
綺麗な長い髪をした、なんとはなしに凛とした女性が話しかけてきた。
「改めて、私たちの異常現象及び超常能力研究部、通称異能部に入りませんか?」
「俺にメリットが無い」
「まあ、そう言うなって」
ガシッと肩を組まれる。む、はなびさん俺と背が変わらんだと……うわ、地味に凹む。
俺は若干凹んだことを悟らせないように、クールに返す。
「そう言われても……とにかく、俺に関わらないでくれ」
「……君は、特別な人間じゃないんだ。それはもう分かっただろう? だって、超能力を持ってる人間は君以外にもいるんだから」
「む……」
「だから、もう独りに、ならなくていいじゃないか。あたし達と一緒に遊ぼうぜ」
遊ぼうぜ――何気ない一言だったが、俺の心にはなんとなく響いた。
もう、独りにならなくていい。
スッと、何か胸のつかえがとれた気がした。
「ふふっ」
はなびさんはそんな俺の心を読んだのか、少しだけ微笑んだ。
くっ……なんか恥ずかしいぞ……
「さて、じゃあ、自己紹介といこうか。あたしは超能研の部長、二年の足立華美! 能力は、相手の思考を呼んだり、眠らせたり幻覚を見せたりできる!」
チートじゃねえか!
「私は二年の来栖静香。副部長です。確率を変動させたり、望む結果に現実を書き換える能力です」
チート!
「私は~、知ってると思うけど加沢好だよ~。なんか一回行ったところにしゅんっ、て飛べるんだ~。触って無くても出来るし、イメージさえできれば行ったことなくても行けるけどね~」
チートだよなあ!
「あたしは阿沙美紀。能力はいわゆるサイコキネシスかな。結構重いものも持ち上げられるし、同時に百個くらいなら動かせるかな」
シンプルに強え! チートだし、っつーかなにそれ、若干俺の――
「で? 君は?」
「ん? ああ、俺は真田魁斗。能力は……まあ、簡単に言うと怪力かな。力を増幅させたり逆に零にしたりできる」
「へぇ~……って、ん?」
なぜか阿沙が少し考えるような仕草をしたかと思ったら、しきりに頷き出して、にやりと嗤った。
「つまりそれってさぁ……戦闘じゃ無いんなら、あたしの下位互換ってことよね」
「は、はぁ!? い、いや、戦闘になったら全然俺の方が強力だし!」
「いや、でもあたし達別に戦ったりしないから……ぶっちゃけ、普段別にその力いらなくない?」
「ぐっ……」
「むしろ、あたし達の能力のどれよりもしょぼいわよね……」
「うう……」
「あんた、よくそれで『世間と違う俺かっけー』できたわね!」
「言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
他の全員は苦笑いだ。なんだよこれ、なんだこれ!
「じゃ、よろしくね、しょぼい超能力者さん」
「うるせぇぇぇぇぇぇぇ!! 戦闘じゃ凄ぇんだよ! 俺の力は!」
おい、どういうことだ。
俺、特別じゃなかったのか?
「じゃあまあ、新入部員も増えたことだし、お祝いしようか」
はなびさんがそう締めると、みんなでお菓子とか出し始めた。
おい、どういうことだ? 今まで――世間とは違う俺、いつか超能力バトルストーリーが始まる――と思ってたのに、こっから、日常系の物語に巻き込まれんのか?
冗談じゃねえぞ。
「お、俺の能力は……日常モノ向きじゃないのに……」
がっくりとうな垂れた俺の独り言は、その場にいた誰にも聞き取ってもらえなかったようだった。
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コメント
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コメントを書くノベルバユーザー603848
生活能力が万能すぎて それだけ見ても楽しい。
主人公が巻き込まれた事件を解決してしまうのが余計におかしい!