異世界なう―No freedom,not a human―
231話 深刻なう
「じゃあ木原も呼んだ方がいいんじゃ? っていうか、俺も冬子も完全にこの場にいる必要無い気がするんだけど……」
「いや、真奈美は呼びたくない。そしてそうだな、確かに佐野はいなくてもいいのかもしれないが……いや、うん。二人にいて貰った方がいいな」
井川は何となく要領を得ない話し方をするが……
「まあいろって言うならいるけど、俺たちが手伝えることなんて無いと思うよ」
冬子も頷く。正直、そっちの問題だろとしか思えないというか。
「順を追って話す。……天川、お前たちが助けた人の中に子どもたちがいないか聞いただろ?」
「ああ。とはいえ、さっきも言ったかもしれないが助けた人間の中に子どもたちは多すぎて誰かは分からんぞ」
「ああ。別に特定したいわけじゃないんだ。さっき見つけたしな」
探し人を見つけた割には何も嬉しそうじゃない井川。それどころか、むしろ苛立ちを覚えているような表情だ。
妙に辛そうな表情をするので、俺は何も言わず……逆に天川が身を乗り出す。
「その、だな。それで……何故木原をもう抜けさせるんだ?」
「実はな」
そう言って井川が話し出したのは……ちょっと感想の思いつかないお話だった。怪我をおして戦う木原、そして最後の最後に……木原の命と、子どもたちの命を天秤にかける井川。
「真奈美はあの後、部屋にこもってる。暫くは出てこれないだろうな」
「だからもう勇者パーティーを抜けさせる、と? ……いや、確かにそんな状態になっているのなら俺としても無理に戦わせるのは本意じゃない。だが、木原の意見も聞かずに――」
「黙れ!」
ドン! と机を叩きながら叫ぶ井川。あまりの変わりように正座していた難波も椅子を取り出していそいそと座りだした。いやお前まだ正座してたのかよ。
「真奈美のことはオレが一番よく知っている……ッ! あいつはもう戦えるようなメンタルじゃないし、そんな状態じゃない。……仮に真奈美本人が戦いたいと言ったとしても、絶対に戦わせるものか!」
強い意志を感じる口調。天川はうっと言葉に詰まり、逆に空美が憮然とした顔になる。
「私は気に食わないな。なんで真奈美ちゃんの意思を無視するの」
「オレはあいつを守る義務があるからだ。嫁を守る義務が――」
と、言いかけて口を手でふさぐ井川。そして一呼吸おいて咳払いした。
「……彼女を守る義務がある」
「いつの間に結婚してたんだこいつら」
「……そういえば一回、不自然に休暇とってたよね」
空美が追撃するようにそう言うと、井川はバッと目をそらして……腕を組んだ。
「とにかく! ……もう二度と真奈美に戦わせるわけにはいかない。誰がなんと言おうと」
気持ちは分かる。というか、仮に同じ状況下に陥ったら間違いなく同じ選択をとる。仲間を守ることを優先する。
そのせいで、心の傷を負うことになったとしても。
「お前はその選択、後悔してんのか?」
難波がそんなことを問う。
「……なんでいきなりそんなこと訊くんだ」
「いや、すげぇ辛そうだから」
あんまり何も考えてなさそうな答え。しかし難波はそのまま椅子にもたれかかり、お茶を一口飲んだ。
「俺なら、逃げるじゃなくて……俺が倒すことを選択すると思うわ」
「……それが、出来たら、やってる」
暢気な口調で言う難波に、地獄の底から絞り出したような声を出す井川。ともすれば殺気すら籠められていそうな迫力だが、それをあっさり流して難波はお茶を置いた。
「じゃあやれよ。命かけりゃ何とかなんだろ」
難波がそう言った瞬間、井川が彼の胸倉をつかむ。物凄い形相――肩までかかる長さの茶髪のせいで、DQNが睨みつけているように見える。
「それが出来るなら……! オレだってやってる! オレはお前らと違って……戦闘向けの『職』じゃない! 出来るんなら、命を懸けたくらいで真奈美が救えたんなら! いくらだって懸けた! だが、それは現実的じゃないんだ!」
確かに、井川の『職』でタイマンを張るのは現実的じゃないかもしれない。
しかし――
「俺は命、懸けたぞ。惚れた女を守るために、文字通り死ぬ気で」
――難波は、それこそ何ともないように井川の手首を握る。ギリッ……と布が千切れそうな音が鳴ったかと思うと、井川が手を離した。流石に筋力が違うね。
「死ぬ、って思ったよ。ぜってー死ぬって思った。んで、死んでもいいとも思ってた。でもよ、相手ぶっ殺した後に……生きてえって思った。そしたら、ユラシルさんが頑張ってくれて、俺は今ここにいる。ハッキリ言って、今ここに俺がいるのは運だよ。運」
相変わらずバカ丸出しの喋り方だが……難波の言いたいことは分かる。確かにアレは、運だろう。それも超幸運。
ユラシルさん一人でもダメだった。俺が間に合っただけでも無理だった。どちらも揃ってやっと彼は命を拾った。
それでも実際に死線を潜った男の言葉だ。喋り方以上に重みがあったんだろう、井川はギリっと歯を鳴らし……何も言えず、一歩下がった。
「もう過ぎたことにいろいろ言っても仕方ねえのは分かるよ。でもよ、それでお前が木原の気持ちを無視するってのは……なんか違わねえか? そもそもよ、あー……友達からの受け売りで悪いんだけどさ」
難波は一度二度、口をパクパクと開いてから……手を打つ。
「そうそう。……『弱かったり、運が悪かったり、何も知らないとしてもそれは戦わない言い訳にはならない。人生には必ず戦わなきゃいけない瞬間がある。その瞬間が来たら、必ず覚悟を決めろ』、らしいぜ? だから俺は戦ったよ。この瞬間が、戦わなきゃいけない瞬間だと思ったから」
俺と冬子は顔を見合わせてから……そのセリフを贈ったであろう人間の顔を思い浮かべる。なるほど、あいつが絡んでたのか。
「お前のさっきのセリフ。なんつーか、弱いことを言い訳にしてるみてえでカッコ悪いぜ」
煽るなよ。
と、思うものの……井川は難波を睨みつけ、しかしそれ以上何も出来ない。そのまま椅子に座ると、黙り込んでしまった。
「あー……その、えっと」
難波がなんかオロオロしているけど、取り合えずその場に座らせる。
「……話を戻そう。確かに、俺もそこに木原の意思が入らないのはどうかとは、思う。とはいえ、その……あー、夫? が妻の身を案じる気持ちも分かる。そこに関しては、今は取り合えず井川の意思を尊重する。もしも木原がやはり戦いたい、となればそこは夫婦の問題だからな」
十八歳で夫婦とはいやはや。今子供が生まれたら、四十歳くらいで孫が出来そうだね。
下世話なことを考えたことがバレたのか、冬子から肘打ちをいただく。
「だから明綺羅君は真奈美ちゃんが抜けてもいいってこと?」
「ああ。心が折れた状態で戦うのは難しいからな」
頷き、何故か俺の方を見る天川。何か言えってことだろうか。
数秒、考えてから……ポリポリと頭を掻く。
「俺は勇者パーティーと一切合切、関係無いから言うけど……心が折れた人を戦わせないのは当然だと思う。それも親しい人の目から見てそうだ、っていうならなおのこと」
人間の活動においてメンタルっていうのは非常に大事――っていうのは誰でも分かっていると思う。メンタル、もっと言うならモチベーションか。
尋常じゃない強さを発揮していたチャンピオンが、モチベーションを維持出来ずころっと負けてしまうのはどんな競技でもよくあることだ。
目の前で子どもを守れず、自分だけは助かる――よほどのサイコパスでも無い限り、自責の念に駆られるだろう。後悔するだろう、悲しむだろう、自分の無力を呪うだろう。
それがいい方向に行けばいい。自分の無力を呪い、怒り、自分を許せず……強く、強くなろうとする者もいる。
一方で、そこで折れて、剣を手放す者もいる。
「人間ってのは、自分で思っているほど強くない。他者の目から見て休養が最適だと判断したならそれがベストだよ。本人の意思に関係なくね」
井川の方を向き、活力煙を投げる。井川がそれをキャッチしたのを見て、俺も活力煙を咥えた。
「ただそれは、あくまで当人の身を慮った上の判断に限るけどね。その人の自由意思を無視して束縛し、無力にすることで支配しようとしているっていうんなら……」
「オレはそんなことしない!」
強い口調の井川に、俺は肩をすくめる。そこまで強く否定するのなら、別に大丈夫だろう。俺は井川から視線を外し、難波の方を見る。
「難波の言ったことも間違っちゃない、一つの意見としては正しいよ」
活力煙の煙を吐き出し、彼にも活力煙を投げる。難波が咥えたのを見て、ちょっと強火でつけてあげた。
「熱ぉっ!?」
「ただまあ、終わったことだからね。……お前が命懸けで彼女を守ったのは知ってる。よくやったよ。ただ、誰も彼も出来ることじゃないよ」
難波が「目に炎が!」とか言って転がってる。なかなか愉快な反応を見せる奴だ。
「とはいえこれを受けて井川が変わるかどうかも俺の知ったこっちゃない。だからさっさと立ち直って、俺と冬子を呼んだ理由をそろそろ話してくれない?」
活力煙の煙を吐き出し、井川が咥えたのを見て火をつけてあげる。無言で煙を吸い込み、吐き出したところで……俺の目を見てきた。
「オレは転移魔法があるからどこに住んでもいいんだが……田舎住まいはしたくないし、させたくない。適度に人がいて、治安も悪くなくて、知り合いもいて……何より、どんな魔物が来ても一瞬で消し飛ばす埒外の化け物が住んでいるところがいい」
「へぇ、俺はそんなところに心当たり無いな。特に最後の二つ」
「京助、お前もしかして自分が二つの街を一か月以内に救ったことを忘れてないか?」
Sランク魔物を吹き飛ばしたことはあるけど、どんな魔物が来ても消し飛ばせるかどうかは分からない。
まあ、何が言いたいのかは分かった。
「……アンタレスに住みたいのか」
「ああ。と言っても家を買ってくれとか言いたいわけじゃない。ただ、いいところがあったら紹介してほしいのと……オレが家を空けている時は佐野、新井。お前らに様子を見に行って欲しいだけだ」
まあ、引っ越したいから知り合いにいいところ無いか聞く……というのはよくあることだから断るほどじゃないか。
「様子を見に行くのはさておいても、そうだね……オルランドに、いや家関係ならティアールの方がいいか。金に関しては……まあ、ある程度は口利き出来るよ。合法的にお金を貸してくれる人に心当たりがないわけじゃないし」
「……助かる」
「意外だな、清田がそこまで世話を焼くなんて」
「どっちかというとオルランドとティアールにお客さんを紹介する感じだからね。彼らとはいい関係を築いておきたい」
少額かもしれないけどお客さんはお客さん。紹介して悪いって言うことは無いだろう。
冬子はにやりと笑うと、俺の二の腕をつつく。
「……何さ冬子」
冬子をジロリとにらみつけると、彼女は井川と難波に一度ずつ視線をやり……そしてまた俺の顔を見た。
まるで、面白いものを見たとでも言いたいように。
「いや? 意固地になるのを止めたのかと思っただけだ」
誰が意固地か。
「すぐに答えは出せないと思うから、準備が出来たら志村を通して連絡するよ」
「ああ。その時は時間を合わせよう」
井川がそう頷いたのを見て、天川がふうとため息をついた。
「では、その……俺の方の相談もいいか?」
「ん、どうぞ」
「俺もここから、王都を出て戦うつもりなんだ。そのために協力してほしい」
王都を出て戦う。
この王都がぶっ壊された状態でそれもどうかと思うが……
「逆か。攻め込みたいわけね」
「ああ。……捕らえた魔族から引き出した情報によると、魔族たちは魔物に変身することで国内の情報を集めているらしい」
そういえば、魔族は魔物に変身できる。冷静に考えればとんでもない能力だ。能力が上がるのもさることながら、何より相手が魔族と分からない。
情報アドバンテージは今や凄いことになっているだろう。
「だから王都ではない別の街を拠点にして、旅をしつつ魔物に変身した魔族を狩っていきたいんだ」
「なるほど。でも井川がいるなら王都にいつでも戻ってこれるんだから、別の街を拠点にする必要はないんじゃないの?」
「それがそうでもないの」
そう言ったのは空美。彼女は一枚の資料を俺と冬子に渡した。
ザッと目を通すと……天川たちが置かれている政治的な現状がそこには書かれているね。
「要するに、長期間王都を開けることが許されていないわけか……」
「最初、それこそ塔を巡っていた時と違って今は既に政治的なコマとして私たちは扱われてる。特に厄介なのは騎士団派で、絶対に私たちに武功をあげさせたくないの」
騎士団派ならラノールが黙らせられるんじゃなかろうか、と一瞬思ったけど、そう言っているってことはそんな上手くいかないのだろう。
政治的なことは俺の管轄外だが、彼らが上手いこと王都にいられないというのは分かった。
「それで俺に何をしてほしいのさ。政治は管轄外だし、俺と繋がりのある貴族であるオルランドはたぶんそういうことはやらないよ」
「うん、あと別にアンタレスを拠点にしたいとかそういうわけでもないよ。アンタレス、王都から近いし」
そうだろうね。
「だから頼み事、というよりは相談事だ。相談事は二つ、一つ目は……やはりAGになったほうがいいか?」
「そうだね。AGになると色々なサポートをギルドから受けられる。資金を稼ぐ目的以上に、情報を簡単に手に入れられるし、身分を保証してもらうことも出来る。お忍びで国を回るつもりが無いのなら必要無いだろうけど……」
「いや、勇者が回っているという情報は出すつもりだが、堂々と名乗りながらやるつもりはない」
「それならなおのこと、AGにはなっておくべきだね」
この世界で身分を証明するのに手っ取り早いのはAGになることだ。ギルドのある街に滞在する場合は、簡易的な住民登録みたいなことをするけど……根無し草をするなら、それがとても便利だ。
旅人の身分を保証してくれるのはギルドくらいのものだろう。
「アンタレスのギルドなら、頼めばこっそり登録してくれると思う。出入りが多いとバレやすくなるし、そうでなくとも顔が売れるからね。それこそ難波辺りが主だってAGをやるのがいいんじゃない?」
「やはりそうか」
天川は重くうなずき、空美の方を見る。
「じゃあそういう方向で行くか。……それで、もう一つなんだが……」
天川は少し真剣なまなざしに戻すと、俺の目を真っすぐに見つめてきた。
「清田、俺ともう一度戦ってくれ」
「……なんで?」
俺が問い返すと、天川はグッと拳を握りしめた。
「俺は、もっと強くならなくちゃいけない。絶対に。……何としてでも」
「そう。それならいい師匠を紹介してあげようか。マルキムはBランクAGだけど冬子の剣の師匠でもある。ラノールさんとはまた違った剣技を習えると思うよ」
「いや、違うんだ」
天川は首を振ると、指を組んだ。まるで祈るように、願うように。
「俺は、強くなりたい。そのためにも、俺は……あの時の自分を越えなくちゃならない。だから、清田。お前を俺は倒す」
あの時。
塔から出てすぐの時のことだろうか。
俺と天川が……何を賭けて戦ったんだっけ。だいぶ昔のことで忘れちゃったけど。
「俺は別にお前と戦う理由なんて無いんだけど」
「だからそうだな、これはお願いだ。断るなら……」
吹きあがる闘気。獰猛な笑み。
「今、ここで」
お互いの攻撃が必ず当たる距離、お互い無手だが……そこは異世界人。0.1秒も要らず召喚できる。
ほんと、いい眼をするようになったね。
「……ねぇ、冬子。あと新井」
俺は笑って、彼女らを見る。
「焼肉、食べたい?」
「焼肉が嫌いな女子はいない!」
「いやそれは偏見だと思うけど……京助君と食べれるなら何でも食べたい」
即答する冬子と、苦笑いする新井。
俺はそんな二人を見て頷いてから、足を組んで胸を張る。
「そう。……じゃ、俺が勝ったらうちのチームメイトも焼肉をおごること」
「いいだろう。というか、その焼肉は祝勝会ということで皆を呼ぼう。そして清田、お前が負けたら……その他の参加者の費用はお前が払え」
「OK、交渉成立かな」
俺と天川は立ち上がり、武器をアイテムボックスから取り出し――
「京助! 城を壊す気か!」
「明綺羅君! ラノールさんに怒られるよ!」
――二人とも、動きを止めた。
「お前ら、テンション上がるのは分かるけどさ……」
難波があきれ顔で首を振る。こいつから「やれやれ」みたいな態度をとられると何となく腹が立つけど……。
まあ、いいか。
俺と天川は座り直し、ゆっくりとお茶を飲む。
「いつやる?」
「今夜。王家主催の祝勝会の後だ」
「OK」
そういえばさっきマリルから軽く話されたね。王城関係者の祝勝会、小規模だけど一応やるらしい。
アンタレスでSランク魔物を倒した時はパーティーを街単位でやったものだけど……今回は街が滅ぼされかけてるから、流石にそれは無理か。
「さて、それじゃあ取り合えず――」
「遅くなったで御座る。いやぁ、寝過ごしたで御座るな」
「――志村」
このタイミングでミリオタ眼鏡が部屋の中に入ってくる。すると天川はちょうどいいとばかりに、志村を椅子に座らせた。
「ちょっと呼心と桔梗、あと佐野と新井は席を外してくれないか? 男子だけで話したいことがあるんだ」
「……いいけど、明綺羅君、変なことされたらすぐ呼ぶんだよ?」
「京助、短気を起こすなよ?」
「……お前らは俺のことをなんだと思ってるんだ」
「数秒前に斬りかかろうとしてたじゃん、京助君」
うるさい。
天川の意図は分からないものの、女性陣は退出と相成り……部屋の中は異世界人男子だけになった。
「さて、それじゃあ俺から相談があるんだが……」
天川が改まった声で咳払いするので、さてなんだろうと身構える。
女性陣を外に出した……ということは何か、戦闘的なことで深刻な問題が出たのだろうか。
志村も神妙な面持ちだ。果たしてどんな相談が……
「その、だな」
言いづらそうに俯く天川に、俺たちはゴクリと唾を飲む。
「……桔梗に告白されたんだが……たぶん、呼心もティアー王女もラノールさんもヘリアラスさんも俺のことが好きっぽいんだけどどうすればいい」
「変身!」
「神器解放――」
「えーっと……ば、抜刀!」
「じゃあ……確か、着装」
次の瞬間、室内にあったインテリアが全て吹き飛んだ。
「いや、真奈美は呼びたくない。そしてそうだな、確かに佐野はいなくてもいいのかもしれないが……いや、うん。二人にいて貰った方がいいな」
井川は何となく要領を得ない話し方をするが……
「まあいろって言うならいるけど、俺たちが手伝えることなんて無いと思うよ」
冬子も頷く。正直、そっちの問題だろとしか思えないというか。
「順を追って話す。……天川、お前たちが助けた人の中に子どもたちがいないか聞いただろ?」
「ああ。とはいえ、さっきも言ったかもしれないが助けた人間の中に子どもたちは多すぎて誰かは分からんぞ」
「ああ。別に特定したいわけじゃないんだ。さっき見つけたしな」
探し人を見つけた割には何も嬉しそうじゃない井川。それどころか、むしろ苛立ちを覚えているような表情だ。
妙に辛そうな表情をするので、俺は何も言わず……逆に天川が身を乗り出す。
「その、だな。それで……何故木原をもう抜けさせるんだ?」
「実はな」
そう言って井川が話し出したのは……ちょっと感想の思いつかないお話だった。怪我をおして戦う木原、そして最後の最後に……木原の命と、子どもたちの命を天秤にかける井川。
「真奈美はあの後、部屋にこもってる。暫くは出てこれないだろうな」
「だからもう勇者パーティーを抜けさせる、と? ……いや、確かにそんな状態になっているのなら俺としても無理に戦わせるのは本意じゃない。だが、木原の意見も聞かずに――」
「黙れ!」
ドン! と机を叩きながら叫ぶ井川。あまりの変わりように正座していた難波も椅子を取り出していそいそと座りだした。いやお前まだ正座してたのかよ。
「真奈美のことはオレが一番よく知っている……ッ! あいつはもう戦えるようなメンタルじゃないし、そんな状態じゃない。……仮に真奈美本人が戦いたいと言ったとしても、絶対に戦わせるものか!」
強い意志を感じる口調。天川はうっと言葉に詰まり、逆に空美が憮然とした顔になる。
「私は気に食わないな。なんで真奈美ちゃんの意思を無視するの」
「オレはあいつを守る義務があるからだ。嫁を守る義務が――」
と、言いかけて口を手でふさぐ井川。そして一呼吸おいて咳払いした。
「……彼女を守る義務がある」
「いつの間に結婚してたんだこいつら」
「……そういえば一回、不自然に休暇とってたよね」
空美が追撃するようにそう言うと、井川はバッと目をそらして……腕を組んだ。
「とにかく! ……もう二度と真奈美に戦わせるわけにはいかない。誰がなんと言おうと」
気持ちは分かる。というか、仮に同じ状況下に陥ったら間違いなく同じ選択をとる。仲間を守ることを優先する。
そのせいで、心の傷を負うことになったとしても。
「お前はその選択、後悔してんのか?」
難波がそんなことを問う。
「……なんでいきなりそんなこと訊くんだ」
「いや、すげぇ辛そうだから」
あんまり何も考えてなさそうな答え。しかし難波はそのまま椅子にもたれかかり、お茶を一口飲んだ。
「俺なら、逃げるじゃなくて……俺が倒すことを選択すると思うわ」
「……それが、出来たら、やってる」
暢気な口調で言う難波に、地獄の底から絞り出したような声を出す井川。ともすれば殺気すら籠められていそうな迫力だが、それをあっさり流して難波はお茶を置いた。
「じゃあやれよ。命かけりゃ何とかなんだろ」
難波がそう言った瞬間、井川が彼の胸倉をつかむ。物凄い形相――肩までかかる長さの茶髪のせいで、DQNが睨みつけているように見える。
「それが出来るなら……! オレだってやってる! オレはお前らと違って……戦闘向けの『職』じゃない! 出来るんなら、命を懸けたくらいで真奈美が救えたんなら! いくらだって懸けた! だが、それは現実的じゃないんだ!」
確かに、井川の『職』でタイマンを張るのは現実的じゃないかもしれない。
しかし――
「俺は命、懸けたぞ。惚れた女を守るために、文字通り死ぬ気で」
――難波は、それこそ何ともないように井川の手首を握る。ギリッ……と布が千切れそうな音が鳴ったかと思うと、井川が手を離した。流石に筋力が違うね。
「死ぬ、って思ったよ。ぜってー死ぬって思った。んで、死んでもいいとも思ってた。でもよ、相手ぶっ殺した後に……生きてえって思った。そしたら、ユラシルさんが頑張ってくれて、俺は今ここにいる。ハッキリ言って、今ここに俺がいるのは運だよ。運」
相変わらずバカ丸出しの喋り方だが……難波の言いたいことは分かる。確かにアレは、運だろう。それも超幸運。
ユラシルさん一人でもダメだった。俺が間に合っただけでも無理だった。どちらも揃ってやっと彼は命を拾った。
それでも実際に死線を潜った男の言葉だ。喋り方以上に重みがあったんだろう、井川はギリっと歯を鳴らし……何も言えず、一歩下がった。
「もう過ぎたことにいろいろ言っても仕方ねえのは分かるよ。でもよ、それでお前が木原の気持ちを無視するってのは……なんか違わねえか? そもそもよ、あー……友達からの受け売りで悪いんだけどさ」
難波は一度二度、口をパクパクと開いてから……手を打つ。
「そうそう。……『弱かったり、運が悪かったり、何も知らないとしてもそれは戦わない言い訳にはならない。人生には必ず戦わなきゃいけない瞬間がある。その瞬間が来たら、必ず覚悟を決めろ』、らしいぜ? だから俺は戦ったよ。この瞬間が、戦わなきゃいけない瞬間だと思ったから」
俺と冬子は顔を見合わせてから……そのセリフを贈ったであろう人間の顔を思い浮かべる。なるほど、あいつが絡んでたのか。
「お前のさっきのセリフ。なんつーか、弱いことを言い訳にしてるみてえでカッコ悪いぜ」
煽るなよ。
と、思うものの……井川は難波を睨みつけ、しかしそれ以上何も出来ない。そのまま椅子に座ると、黙り込んでしまった。
「あー……その、えっと」
難波がなんかオロオロしているけど、取り合えずその場に座らせる。
「……話を戻そう。確かに、俺もそこに木原の意思が入らないのはどうかとは、思う。とはいえ、その……あー、夫? が妻の身を案じる気持ちも分かる。そこに関しては、今は取り合えず井川の意思を尊重する。もしも木原がやはり戦いたい、となればそこは夫婦の問題だからな」
十八歳で夫婦とはいやはや。今子供が生まれたら、四十歳くらいで孫が出来そうだね。
下世話なことを考えたことがバレたのか、冬子から肘打ちをいただく。
「だから明綺羅君は真奈美ちゃんが抜けてもいいってこと?」
「ああ。心が折れた状態で戦うのは難しいからな」
頷き、何故か俺の方を見る天川。何か言えってことだろうか。
数秒、考えてから……ポリポリと頭を掻く。
「俺は勇者パーティーと一切合切、関係無いから言うけど……心が折れた人を戦わせないのは当然だと思う。それも親しい人の目から見てそうだ、っていうならなおのこと」
人間の活動においてメンタルっていうのは非常に大事――っていうのは誰でも分かっていると思う。メンタル、もっと言うならモチベーションか。
尋常じゃない強さを発揮していたチャンピオンが、モチベーションを維持出来ずころっと負けてしまうのはどんな競技でもよくあることだ。
目の前で子どもを守れず、自分だけは助かる――よほどのサイコパスでも無い限り、自責の念に駆られるだろう。後悔するだろう、悲しむだろう、自分の無力を呪うだろう。
それがいい方向に行けばいい。自分の無力を呪い、怒り、自分を許せず……強く、強くなろうとする者もいる。
一方で、そこで折れて、剣を手放す者もいる。
「人間ってのは、自分で思っているほど強くない。他者の目から見て休養が最適だと判断したならそれがベストだよ。本人の意思に関係なくね」
井川の方を向き、活力煙を投げる。井川がそれをキャッチしたのを見て、俺も活力煙を咥えた。
「ただそれは、あくまで当人の身を慮った上の判断に限るけどね。その人の自由意思を無視して束縛し、無力にすることで支配しようとしているっていうんなら……」
「オレはそんなことしない!」
強い口調の井川に、俺は肩をすくめる。そこまで強く否定するのなら、別に大丈夫だろう。俺は井川から視線を外し、難波の方を見る。
「難波の言ったことも間違っちゃない、一つの意見としては正しいよ」
活力煙の煙を吐き出し、彼にも活力煙を投げる。難波が咥えたのを見て、ちょっと強火でつけてあげた。
「熱ぉっ!?」
「ただまあ、終わったことだからね。……お前が命懸けで彼女を守ったのは知ってる。よくやったよ。ただ、誰も彼も出来ることじゃないよ」
難波が「目に炎が!」とか言って転がってる。なかなか愉快な反応を見せる奴だ。
「とはいえこれを受けて井川が変わるかどうかも俺の知ったこっちゃない。だからさっさと立ち直って、俺と冬子を呼んだ理由をそろそろ話してくれない?」
活力煙の煙を吐き出し、井川が咥えたのを見て火をつけてあげる。無言で煙を吸い込み、吐き出したところで……俺の目を見てきた。
「オレは転移魔法があるからどこに住んでもいいんだが……田舎住まいはしたくないし、させたくない。適度に人がいて、治安も悪くなくて、知り合いもいて……何より、どんな魔物が来ても一瞬で消し飛ばす埒外の化け物が住んでいるところがいい」
「へぇ、俺はそんなところに心当たり無いな。特に最後の二つ」
「京助、お前もしかして自分が二つの街を一か月以内に救ったことを忘れてないか?」
Sランク魔物を吹き飛ばしたことはあるけど、どんな魔物が来ても消し飛ばせるかどうかは分からない。
まあ、何が言いたいのかは分かった。
「……アンタレスに住みたいのか」
「ああ。と言っても家を買ってくれとか言いたいわけじゃない。ただ、いいところがあったら紹介してほしいのと……オレが家を空けている時は佐野、新井。お前らに様子を見に行って欲しいだけだ」
まあ、引っ越したいから知り合いにいいところ無いか聞く……というのはよくあることだから断るほどじゃないか。
「様子を見に行くのはさておいても、そうだね……オルランドに、いや家関係ならティアールの方がいいか。金に関しては……まあ、ある程度は口利き出来るよ。合法的にお金を貸してくれる人に心当たりがないわけじゃないし」
「……助かる」
「意外だな、清田がそこまで世話を焼くなんて」
「どっちかというとオルランドとティアールにお客さんを紹介する感じだからね。彼らとはいい関係を築いておきたい」
少額かもしれないけどお客さんはお客さん。紹介して悪いって言うことは無いだろう。
冬子はにやりと笑うと、俺の二の腕をつつく。
「……何さ冬子」
冬子をジロリとにらみつけると、彼女は井川と難波に一度ずつ視線をやり……そしてまた俺の顔を見た。
まるで、面白いものを見たとでも言いたいように。
「いや? 意固地になるのを止めたのかと思っただけだ」
誰が意固地か。
「すぐに答えは出せないと思うから、準備が出来たら志村を通して連絡するよ」
「ああ。その時は時間を合わせよう」
井川がそう頷いたのを見て、天川がふうとため息をついた。
「では、その……俺の方の相談もいいか?」
「ん、どうぞ」
「俺もここから、王都を出て戦うつもりなんだ。そのために協力してほしい」
王都を出て戦う。
この王都がぶっ壊された状態でそれもどうかと思うが……
「逆か。攻め込みたいわけね」
「ああ。……捕らえた魔族から引き出した情報によると、魔族たちは魔物に変身することで国内の情報を集めているらしい」
そういえば、魔族は魔物に変身できる。冷静に考えればとんでもない能力だ。能力が上がるのもさることながら、何より相手が魔族と分からない。
情報アドバンテージは今や凄いことになっているだろう。
「だから王都ではない別の街を拠点にして、旅をしつつ魔物に変身した魔族を狩っていきたいんだ」
「なるほど。でも井川がいるなら王都にいつでも戻ってこれるんだから、別の街を拠点にする必要はないんじゃないの?」
「それがそうでもないの」
そう言ったのは空美。彼女は一枚の資料を俺と冬子に渡した。
ザッと目を通すと……天川たちが置かれている政治的な現状がそこには書かれているね。
「要するに、長期間王都を開けることが許されていないわけか……」
「最初、それこそ塔を巡っていた時と違って今は既に政治的なコマとして私たちは扱われてる。特に厄介なのは騎士団派で、絶対に私たちに武功をあげさせたくないの」
騎士団派ならラノールが黙らせられるんじゃなかろうか、と一瞬思ったけど、そう言っているってことはそんな上手くいかないのだろう。
政治的なことは俺の管轄外だが、彼らが上手いこと王都にいられないというのは分かった。
「それで俺に何をしてほしいのさ。政治は管轄外だし、俺と繋がりのある貴族であるオルランドはたぶんそういうことはやらないよ」
「うん、あと別にアンタレスを拠点にしたいとかそういうわけでもないよ。アンタレス、王都から近いし」
そうだろうね。
「だから頼み事、というよりは相談事だ。相談事は二つ、一つ目は……やはりAGになったほうがいいか?」
「そうだね。AGになると色々なサポートをギルドから受けられる。資金を稼ぐ目的以上に、情報を簡単に手に入れられるし、身分を保証してもらうことも出来る。お忍びで国を回るつもりが無いのなら必要無いだろうけど……」
「いや、勇者が回っているという情報は出すつもりだが、堂々と名乗りながらやるつもりはない」
「それならなおのこと、AGにはなっておくべきだね」
この世界で身分を証明するのに手っ取り早いのはAGになることだ。ギルドのある街に滞在する場合は、簡易的な住民登録みたいなことをするけど……根無し草をするなら、それがとても便利だ。
旅人の身分を保証してくれるのはギルドくらいのものだろう。
「アンタレスのギルドなら、頼めばこっそり登録してくれると思う。出入りが多いとバレやすくなるし、そうでなくとも顔が売れるからね。それこそ難波辺りが主だってAGをやるのがいいんじゃない?」
「やはりそうか」
天川は重くうなずき、空美の方を見る。
「じゃあそういう方向で行くか。……それで、もう一つなんだが……」
天川は少し真剣なまなざしに戻すと、俺の目を真っすぐに見つめてきた。
「清田、俺ともう一度戦ってくれ」
「……なんで?」
俺が問い返すと、天川はグッと拳を握りしめた。
「俺は、もっと強くならなくちゃいけない。絶対に。……何としてでも」
「そう。それならいい師匠を紹介してあげようか。マルキムはBランクAGだけど冬子の剣の師匠でもある。ラノールさんとはまた違った剣技を習えると思うよ」
「いや、違うんだ」
天川は首を振ると、指を組んだ。まるで祈るように、願うように。
「俺は、強くなりたい。そのためにも、俺は……あの時の自分を越えなくちゃならない。だから、清田。お前を俺は倒す」
あの時。
塔から出てすぐの時のことだろうか。
俺と天川が……何を賭けて戦ったんだっけ。だいぶ昔のことで忘れちゃったけど。
「俺は別にお前と戦う理由なんて無いんだけど」
「だからそうだな、これはお願いだ。断るなら……」
吹きあがる闘気。獰猛な笑み。
「今、ここで」
お互いの攻撃が必ず当たる距離、お互い無手だが……そこは異世界人。0.1秒も要らず召喚できる。
ほんと、いい眼をするようになったね。
「……ねぇ、冬子。あと新井」
俺は笑って、彼女らを見る。
「焼肉、食べたい?」
「焼肉が嫌いな女子はいない!」
「いやそれは偏見だと思うけど……京助君と食べれるなら何でも食べたい」
即答する冬子と、苦笑いする新井。
俺はそんな二人を見て頷いてから、足を組んで胸を張る。
「そう。……じゃ、俺が勝ったらうちのチームメイトも焼肉をおごること」
「いいだろう。というか、その焼肉は祝勝会ということで皆を呼ぼう。そして清田、お前が負けたら……その他の参加者の費用はお前が払え」
「OK、交渉成立かな」
俺と天川は立ち上がり、武器をアイテムボックスから取り出し――
「京助! 城を壊す気か!」
「明綺羅君! ラノールさんに怒られるよ!」
――二人とも、動きを止めた。
「お前ら、テンション上がるのは分かるけどさ……」
難波があきれ顔で首を振る。こいつから「やれやれ」みたいな態度をとられると何となく腹が立つけど……。
まあ、いいか。
俺と天川は座り直し、ゆっくりとお茶を飲む。
「いつやる?」
「今夜。王家主催の祝勝会の後だ」
「OK」
そういえばさっきマリルから軽く話されたね。王城関係者の祝勝会、小規模だけど一応やるらしい。
アンタレスでSランク魔物を倒した時はパーティーを街単位でやったものだけど……今回は街が滅ぼされかけてるから、流石にそれは無理か。
「さて、それじゃあ取り合えず――」
「遅くなったで御座る。いやぁ、寝過ごしたで御座るな」
「――志村」
このタイミングでミリオタ眼鏡が部屋の中に入ってくる。すると天川はちょうどいいとばかりに、志村を椅子に座らせた。
「ちょっと呼心と桔梗、あと佐野と新井は席を外してくれないか? 男子だけで話したいことがあるんだ」
「……いいけど、明綺羅君、変なことされたらすぐ呼ぶんだよ?」
「京助、短気を起こすなよ?」
「……お前らは俺のことをなんだと思ってるんだ」
「数秒前に斬りかかろうとしてたじゃん、京助君」
うるさい。
天川の意図は分からないものの、女性陣は退出と相成り……部屋の中は異世界人男子だけになった。
「さて、それじゃあ俺から相談があるんだが……」
天川が改まった声で咳払いするので、さてなんだろうと身構える。
女性陣を外に出した……ということは何か、戦闘的なことで深刻な問題が出たのだろうか。
志村も神妙な面持ちだ。果たしてどんな相談が……
「その、だな」
言いづらそうに俯く天川に、俺たちはゴクリと唾を飲む。
「……桔梗に告白されたんだが……たぶん、呼心もティアー王女もラノールさんもヘリアラスさんも俺のことが好きっぽいんだけどどうすればいい」
「変身!」
「神器解放――」
「えーっと……ば、抜刀!」
「じゃあ……確か、着装」
次の瞬間、室内にあったインテリアが全て吹き飛んだ。
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