異世界なう―No freedom,not a human―
214話 AmDmなう
214話
「魔物で王都を満たすって……どうやって、いやその前にどういうことだ?」
冬子の質問はもっとも。俺は適当に鷹を炎で生み出す。今までの活力煙をその鷹で燃やし尽くし、新しいそれを取り出して咥えた。
「これは魔物じゃない。魔法だ。俺が操らないと、こいつは動かない」
俺の活力煙に火をつけさせてから、クルクルと回転させて炎の鷹を消す。そしてその説明で何がしたいのか悟ったのか……新井がポンと手を打った。
「わ、私も……氷の蛇を生み出して、魔物を自動追尾させたりは出来るんですが……」
「それもまあ、魔法だよね。でも新井、君は……あの塔で氷の虎を出す魔法を使ってたでしょ?」
彼女が捨て身の魔力で生み出した氷の虎。ゴーレムドラゴンをあと一歩のところまで追いつめた異様な威力の魔法。
「あの虎の凄いところは、勝手にゴーレムドラゴンの迎撃を躱した上で食らいついたこと。意思はなくとも、新井の指示以上のことをしていた」
なんせ撃った瞬間、新井は気絶してたからね。
「要するに俺がやりたいのは、魔物を生み出す……というよりは意思を持った魔法を作るってところかな。意思までいかなくとも、ある程度複雑な命令をこなす魔法というか」
分かりやすく説明しようとすると却って分かりにくくなる、その典型みたいな説明になってしまったので咳払いしてから言い直す。
「つまり、召喚魔法で使い魔を大量に呼び出して王都を埋め尽くしたい」
「最初からそう言え。……でもなるほどな、それで新井や加藤と言っていたのか」
冬子が納得したように頷く。
ホップリィとの戦い、そしてチラリと見えたラノールの戦い方、更に塔で新井がやってみせた魔法。
これらを組み合わせてふと思ったのが、魔法生物的なモノを作れるのではないかということ。AIを組み込んだロボットみたいな扱いというか。
俺は確かにホップリィ戦でやったようなスライムを作ったり、魔物を感知したら炎を飛ばすだけの鷹を生み出したりは出来るが――あくまで俺が探知できる範囲でしか動かせない。しかもヨハネスの補助が無ければ同時にたくさんの魔法を操ることは出来ない。
でも、自立行動する魔法なら別だ。いわゆる召喚魔法みたいな感じで敵を抹殺できるならこれ以上に今の状況にマッチするものもないだろう。
「しかし京助、それで王都中を覆うのは難しくないか? いくらお前の魔力量が豊富だからといって、魔物を倒せるともなると一体一体の魔力も多くなるだろうし……」
「うん、俺もそう思う。でも今はね――」
そう言って魔法師二人、シュリーと新井の方を見る。
「――二人も気づいてるでしょ? この魔力の濃さ」
「ヨホホ……確かにデス。異様な量の魔物が産まれ、死にを繰り返しているからかとんでもないことになっているデスね」
「言われてみれば。……どうりで魔力の回復が早いと思いました」
そう、今の王都は魔力に満ちている。過去に塔の中で魔力が濃く、外よりも強い魔物が出てきたことがあったけど――あの時に似ている。これを活用しない手は無い。
「つまりマスターはリューさんとキアラさん、そして……ミサさんと一緒にその魔法生物を生み出してこの王都を取り戻すと?」
「そういうことだね」
まあ、やろうとしていること的にシュリーの属性は微妙だけど……それならそれでやってもらうことはある。
俺は再びキアラに向き直り、再度問う。
「というわけで、出来るかどうか……っていうか、そういう魔法を教えて欲しいんだけど」
活力煙を吸い込み、吐き出す。皆が煙いといけないから真上に。
「ふむ、まあそうぢゃのぅ……お主なら妾に教わらずとも出来るような気もするが」
「それがダメなんだよね」
シュリーからかつて魔法はイマジネーションが大切だという話をされたから、半魔族と化してからは遮音結界から気配を探る魔法など様々な魔法を使ってきた。それも習わずに。
でもこれはどうにも……。
「どうしてそうなるか、が想像できないんだよね」
「取りあえず周囲の魔力を吸収してみよ。この魔力は……出自、というか先ほどまで張られていた結界のせいか魔物を生み出すことに長けた魔力ぢゃ」
そんな魔力の種類があるのか、ということは後で訊くとして……俺は『パンドラ・ディヴァー』で周囲の魔力を取り入れ、それを体内で活性化させて右手に集める。
「それで?」
「うむ。それならば……そうぢゃな、まずは水で結界を作れ。小さく、お主の両手で抱えられるくらいの結界ぢゃ」
「なんで水?」
どちらかというと風の方が得意なんだけど……と思いつつ、水で結界を作る。バスケットボールくらいの球形の結界だ。
「後で分かる。お主は雨を降らせることも出来るぢゃろう?」
「そりゃ出来るけど……。まあいいか、それでどうすればいいの?」
釈然としないままではあるが、彼女に説明を促す。
「うむ。では続けるぞ? 結界にも様々な種類があるわけぢゃが……内向きに効果を発揮する結界と外向きに効果を発揮する結界がある。遮音結界などがいい例で、外からの音をシャットアウトする場合と内からの音の場合があるわけぢゃ」
戦場には不釣り合いな魔法の講義。本来ならばこの時間を利用して彼女らを戦わせた方がいいのかもしれないが――ここで焦って魔族の生き残りとかがいたら厄介だ。確実にミッションを遂行するためには皆が固まって動く必要がある。
「今回の場合は外向きの結界をイメージせよ。そうぢゃな、周囲に魔物がいれば反応する結界ぢゃ。作れよう?」
それくらいなら何とか。イメージも出来る。俺は手元の結界にその魔法を付与し……た、ところで彼女が言いたいことに気づいた。
俺は逆に人だと判断したら避ける結界、攻撃されたら反撃する結界、攻撃を受けたら更に防御結界が発動する結界……とにかく思いつくまま、『魔物と戦う魔物』に必要な結界を付与していく。ヨハネスの助けも借りながら、何重もの結界だ。
キアラはその様子を見て「三十分もいらなかったのぅ」と満足げな様子。そんな彼女を見て間違っていないのだと自分の気づきを確信に変えていく。
「……こんなもんかな」
数分後、自分でも盛り過ぎたと思うくらいの結界が完成する。この大きさだからこの程度の魔力量で済んでいるけど、俺たち全員を覆おうと思ったらかなり魔力を使いそうだ。
「後は命令を遂行できる手足をつけるだけぢゃ。……どうぢゃ、出来そうか?」
「うん。要するに結界で脳を作るイメージなんだね。……時間はかかるけどどうにかなった」
というわけで俺は水でボディをつけて完成。ボディというか……蛇、みたいになったけど。三メートルくらいの体長で、尻尾は針になっており顔はただ口があるだけ。噛みつき攻撃をする時だけキバが出る方式だ。蛇というか蛭かな、これは。
夜闇で戦うことを考えて身体は発光しており、空をふよふよと飛んでいる。
この魔法に精緻なデザインは必要無いから、全体的に丸っこいから怖さは無いかな。魔物っぽさはあるけど。
「なんか可愛いな」
冬子が呟く。作った俺からすると「そうかなぁ」ってところだが彼女の美的センスにケチはつけない。
「名前は?」
「んー……冬子が決めて」
冬子に無茶ぶりしてみると、冬子は少し考えてから案を出した。
「対魔物殲滅用魔物――AmDm。エイムダムというのはどうだ」
「OK、じゃあそれで」
俺はエイムダムを街に放ち、さてとキアラに向き直る。
「これを大量に生み出す、と。それで? さっき雨がどうこうって言ってたのは何?」
「うむ。お主が雨を生み出せばこの地に水が満ちる。雲を……さっきの魔法生物の核を生み出す結界にしてしまえば、自動魔物生成雲の出来上がりぢゃ」
いよいよ結界万能説が浮上してきたけど、確かに結界って「作ったものに効果を付与する」っていう意味では非常に使いやすいし、イメージしやすいんだよね。
俺は肉体にストームエンチャントを施し、そういえばと新井の方を見る。
「似たようなこと出来る?」
「え、えっと……氷の魔法生物を作ることはできますけど、それを結界に付与とかそういうのは……」
「じゃあテキトーにそういうのを出しまくるだけでOKだよ。それでも十分手助けになる。シュリーは……」
「ヨホホ、水でという話でしたらワタシは協力できそうに無いデスね」
苦笑いするシュリー。仕方がないので、とりあえず俺は雲を作ろう。『ストームエンチャント』をしている俺はまさに風神……とまではいかないかもしれないけど、上昇気流を起こして雲を作るくらい朝飯前だ。
俺は『筋斗雲』の高度を下げ、その辺に降り立つ。周囲に人の気配は無し、建物も壊れているものばかり。最高のロケーションだ。
「さて……『紫色の力よ。はぐれの京助が命令する。この世の理に背き、この地を水で満たす狂乱の嵐を呼び出せ! ギガ・アップドラフト』!」
ありとあらゆるものを吹き飛ばす上昇気流を起こす魔法。これを使って雨雲を作る。
キアラがそっと背に手を置く。彼女がサポートしてくれるなら問題ない、王都全土を覆う雲くらい作ってみせるさ。
俺は『パンドラ・ディヴァー』で周囲の魔力をこれでもかという程吸う。そしてその取り入れた魔力を端から風に変えていく。
「……あの、何か……ヤバくない、ですか?」
「大丈夫だ、新井。……京助と一緒にいるとこのくらい見慣れてくる」
新井と冬子が何やら話しているが無視。空間がうねる、ゴロゴロと稲妻の音が聞こえてくる。周囲の建物……が巻き上げられ、天に吸い込まれていく。
それでもなお俺は風を止めない。ピシっ、と頭に痛みが走る。自分の魔力じゃないものを吸い込み過ぎた、吐き気が込み上げてくる。
吐き気と頭痛……風邪の時のそれとはまた違う奇妙な気持ち悪さに膝をつきそうになるが、冬子が支えてくれる。安心して彼女に体重を預けながら――腕を振り上げた。
「……本当に、台風を作ることになるとはね」
ぽつ、ぽつ。
「あ……火、消えるなぁ……」
灰色の雲から一滴、二滴。それが一気に滝のような雨に変わる。雨が地面を打ち、叩き、あのツンとした澄んだ匂いが鼻を通る。
活力煙の炎が消え、咥えているものがただの葉の塊になってしまったので……取りあえずアイテムボックスに仕舞う。
キアラが雨よけの結界を張ったのを見て、俺は完全に冬子に体重を預けきる。疲れたが、まだこれは下準備だ。
「マスター、シャキッとしてください。飲み物です」
「きょ、京助……全体重かけてないか、これ。その、重いんだが……」
「ありがとうリャン。……失礼な、俺はまだまだ軽いよ」
リャンから受け取った飲み物を口に含み、ふらりと立ち上がる。
「キョースケよ、お主が風呂場の鑑の前で『……やっぱ筋肉ついてきたなー』なんて言いながら妙なポーズをしていることをバラされたくなかったらほれ、立たぬか」
「なんで知っ……いや、そんなことしてるわけないけど取りあえずさぁ次だ! 雲の上に転移、キアラ!」
ひゅん、と雲の上に転移すると同時に再び『筋斗雲』を作りその上に着地する。後ろで新井と冬子が「やっぱり男の子ってそういうことするんですね」とか「ああ。もう素手でプロレスラーも捻りつぶせるくらい強くなったのにな」とか言ってるけど気にしない。ああそうですよ、この前よろけて家の壁に手を着いたら力加減をミスって穴開けるくらいにはバカ力になってますよこっちは!
そうして出来上がった雲は……予想外に大きく、というか王都の半分は覆っていた。これなら王都全域を水浸しにするのもすぐだろう。
「取りあえず全域にこの魔法のことを伝えて……それで、たぶんさっきの魔法で殺せるのはCランクくらいまでだ。数が集まればBランクもいけるかもしれないけど」
「つまり?」
「強力な魔物は俺たちが各個撃破する必要がある。ただこの雲から降らせた雨があればその下は強力な魔物がいるかどうかくらいは分かるようになる。そこにキアラの魔法で転移してぶっ殺そう」
そうすればだいぶ時間の短縮にもなるはずだ。
「一時間くらいで全部ぶっ殺す。いいね?」
全員が頷く。新井もワンテンポ遅れて頷く。
「妾がお主にこの魔法を生み出す魔法の編み方を伝授してやろう。お主なら感覚で理解出来るぢゃろ」
そう言って背中に手を当てるキアラ。その温かい手から流れ込んでくるのは……まるで数式のような魔法を編む『感覚』。例えようにもいい例えが思いつかない、フィーリングをそのまま脳に流し込まれているようだ。
経験や知識からなる答えを、思考を経ずに取り出せる直感とはまた違う。答えを導く方法だけをただ教えられるような。
公式の証明は出来ないけどそれに当てはめれば答えだけは出せる時のような、そんな気持ち悪い感覚。ぐにゃぐにゃとした思考が流れ込み、理解出来ないのにやり方だけはインストールされる。
「き、気持ち悪い……」
さっきの吐き気や頭痛も抜けきっていないというのに、更に混乱まで加わる。
「マスター、大丈夫ですか? おっぱい揉みますか?」
「ピア! そういう破廉恥なのはマリルさん担当だろう!」
「トーコさん、それはまた違うような……とはいえ、言わんとしていることは分かるデス。ヨホホ!」
マリルの扱いが不憫。ただでさえ出番が少ないのに。
とはいえただでさえ倒れそうなくらいの体調だったところにコレだ。遠慮なくキアラの方へと寄りかかる。
「お主、妾を背もたれにするとは……不敬ぢゃが許そう」
「あ、ズルいデスよキアラさん。ここは間をとってワタシがキョースケさんを支えるデス」
何故かシュリーが割って入って俺を支える。俺としては誰が支えてくれても問題なかったので、キアラからのインストールが終わるまではおとなしく脱力しておく。
「あー……情報の洪水で脳が死ぬ。ただまぁ、OK、やっとわかってきた」
グチャグチャの脳内を整理し、コキッと首を鳴らす。ずきずき痛む頭をぶるぶる振ってから一発殴る。これで取りあえず頭がクリアになった。
活力煙を咥え、火を点ける。思いっきり煙を吸い込んで、心を落ち着ける。大丈夫、もう数秒もすれば吐き気も収まる。
「……よし、じゃあ行くか」
俺は再び『パンドラ・ディヴァー』で魔力を集める。この雲を維持し、更に広げながら王都に降り立って強力な魔物を殺しに行くのだ。
この程度じゃ足りない。一時間というタイムリミットを自分で儲けたのだ、やらねば。
「『紫色の力よ。はぐれの京助が命令する。この世の理に背き、悪しき存在を全て駆逐するための命無き兵をこの世に顕現させよ! アンリミテッド・アンチハザード・ライオット』!」
雲に『パンドラ・ディヴァー』を突き入れ魔法が発動する。俺の魔力が根こそぎもっていかれるが……ぼぅ……と雲が怪しく光り、魔法が成功したことが分かる。
後はこれを維持しつつ……王都全土を覆うだけだ。今でも王都の半分は覆われているが。
「キアラ、拡声魔法を」
「うむ」
知らなければ一緒に俺の魔法も討伐されかねないからね。俺は彼女に拡声魔法を頼み、ニヤリと笑う。
「それじゃあ皆、準備はいいね? 『頂点超克のリベレイターズ』、出動だ」
「「「「了解(デス)!」」」」
さぁ――最後の戦いだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
無様だ。
上半身――否、胸から上のみになった状態で、ブリーダは全身に闇魔術を纏い人のいない方へと這いずっていた。
暴走チェーンウンディーネに吹き飛ばされた際に『水霊の兵』で身代わりを作り、何とか片手で着地して『魔王の血』を飲むことで魔物と合一出来た。Dランク程度の魔物ではあるが、命を繋ぐことは何とか出来た。
それでも動くことが出来るようになるまで体感で三十分以上の時間を必要としたし……命を『繋ぐ』ことは出来たが、それもいつまで保てるか分からない。意識を失い、そのまま戻ってこれなくなるのは時間の問題だろう。
「ぐ、が……」
生きたい。
半身を吹き飛ばされて尚、その想いは消えない。どれだけ苦しくても、その気持ちは消えない。
何故こんなにも生きたいのか。
それは――殺したい奴がいるからだ。
「ある、しふぁ……な、様」
無論、自分をこんな目に遭わせたキョースケや勇者――アキラもぶち殺してやりたいがそれ以上に殺したい奴がいる。
魔王、だ。
(何が、魔王様だ……情けねぇ)
確かに先王陛下と理想は変わっていないかもしれない。世界を手中に収めるという理想は。
しかし、ブリーダにも気に入るやり方とそうでないやり方がある。魔族である以上、カリスマのある者を王と仰ぐことに異論は無いが……今のあいつはダメだ。
魔族を魔王から解放するためには死ねない。
「ぎ、ギッギッギ……死にかけ、ねェと洗脳が解けないなんざ……忠臣? 失格、だぜ」
だが、だからこそ死ねない。
「あ、ああ……」
目がかすむ、意識が遠のく。
繋いだはずの命の灯が失われていくのが分かる。
「もうし、わけ……」
「危ないわねぇ、ブリーダ」
ガリガリと。
頭を掻く音と共に女の声が降ってきた。
「あたしはバックアップを作ってたからいいけど、貴方のそれは何よ」
ため息をつく女。もう目はかすんで見えないが――魔力で分かる。ホップリィだ。あいつらと戦って生きていたのか。
「ぎ、ギッギッギ……とり、あえず……助けて、くれ。ホップリィ」
情けなくそう乞うと、回復魔法がかけられる。
「今のあたしはホップリィの作ったゴーレム、ホップリィⅡよ。間違えないで」
「おう、そうか……」
何にせよ助かった。
ポツリ、何故か顔に水滴が落ちてきた。何だろうか。
(まあ……いい、か)
安堵の気持ちを胸に抱きながら……ブリーダは意識を失った。
「魔物で王都を満たすって……どうやって、いやその前にどういうことだ?」
冬子の質問はもっとも。俺は適当に鷹を炎で生み出す。今までの活力煙をその鷹で燃やし尽くし、新しいそれを取り出して咥えた。
「これは魔物じゃない。魔法だ。俺が操らないと、こいつは動かない」
俺の活力煙に火をつけさせてから、クルクルと回転させて炎の鷹を消す。そしてその説明で何がしたいのか悟ったのか……新井がポンと手を打った。
「わ、私も……氷の蛇を生み出して、魔物を自動追尾させたりは出来るんですが……」
「それもまあ、魔法だよね。でも新井、君は……あの塔で氷の虎を出す魔法を使ってたでしょ?」
彼女が捨て身の魔力で生み出した氷の虎。ゴーレムドラゴンをあと一歩のところまで追いつめた異様な威力の魔法。
「あの虎の凄いところは、勝手にゴーレムドラゴンの迎撃を躱した上で食らいついたこと。意思はなくとも、新井の指示以上のことをしていた」
なんせ撃った瞬間、新井は気絶してたからね。
「要するに俺がやりたいのは、魔物を生み出す……というよりは意思を持った魔法を作るってところかな。意思までいかなくとも、ある程度複雑な命令をこなす魔法というか」
分かりやすく説明しようとすると却って分かりにくくなる、その典型みたいな説明になってしまったので咳払いしてから言い直す。
「つまり、召喚魔法で使い魔を大量に呼び出して王都を埋め尽くしたい」
「最初からそう言え。……でもなるほどな、それで新井や加藤と言っていたのか」
冬子が納得したように頷く。
ホップリィとの戦い、そしてチラリと見えたラノールの戦い方、更に塔で新井がやってみせた魔法。
これらを組み合わせてふと思ったのが、魔法生物的なモノを作れるのではないかということ。AIを組み込んだロボットみたいな扱いというか。
俺は確かにホップリィ戦でやったようなスライムを作ったり、魔物を感知したら炎を飛ばすだけの鷹を生み出したりは出来るが――あくまで俺が探知できる範囲でしか動かせない。しかもヨハネスの補助が無ければ同時にたくさんの魔法を操ることは出来ない。
でも、自立行動する魔法なら別だ。いわゆる召喚魔法みたいな感じで敵を抹殺できるならこれ以上に今の状況にマッチするものもないだろう。
「しかし京助、それで王都中を覆うのは難しくないか? いくらお前の魔力量が豊富だからといって、魔物を倒せるともなると一体一体の魔力も多くなるだろうし……」
「うん、俺もそう思う。でも今はね――」
そう言って魔法師二人、シュリーと新井の方を見る。
「――二人も気づいてるでしょ? この魔力の濃さ」
「ヨホホ……確かにデス。異様な量の魔物が産まれ、死にを繰り返しているからかとんでもないことになっているデスね」
「言われてみれば。……どうりで魔力の回復が早いと思いました」
そう、今の王都は魔力に満ちている。過去に塔の中で魔力が濃く、外よりも強い魔物が出てきたことがあったけど――あの時に似ている。これを活用しない手は無い。
「つまりマスターはリューさんとキアラさん、そして……ミサさんと一緒にその魔法生物を生み出してこの王都を取り戻すと?」
「そういうことだね」
まあ、やろうとしていること的にシュリーの属性は微妙だけど……それならそれでやってもらうことはある。
俺は再びキアラに向き直り、再度問う。
「というわけで、出来るかどうか……っていうか、そういう魔法を教えて欲しいんだけど」
活力煙を吸い込み、吐き出す。皆が煙いといけないから真上に。
「ふむ、まあそうぢゃのぅ……お主なら妾に教わらずとも出来るような気もするが」
「それがダメなんだよね」
シュリーからかつて魔法はイマジネーションが大切だという話をされたから、半魔族と化してからは遮音結界から気配を探る魔法など様々な魔法を使ってきた。それも習わずに。
でもこれはどうにも……。
「どうしてそうなるか、が想像できないんだよね」
「取りあえず周囲の魔力を吸収してみよ。この魔力は……出自、というか先ほどまで張られていた結界のせいか魔物を生み出すことに長けた魔力ぢゃ」
そんな魔力の種類があるのか、ということは後で訊くとして……俺は『パンドラ・ディヴァー』で周囲の魔力を取り入れ、それを体内で活性化させて右手に集める。
「それで?」
「うむ。それならば……そうぢゃな、まずは水で結界を作れ。小さく、お主の両手で抱えられるくらいの結界ぢゃ」
「なんで水?」
どちらかというと風の方が得意なんだけど……と思いつつ、水で結界を作る。バスケットボールくらいの球形の結界だ。
「後で分かる。お主は雨を降らせることも出来るぢゃろう?」
「そりゃ出来るけど……。まあいいか、それでどうすればいいの?」
釈然としないままではあるが、彼女に説明を促す。
「うむ。では続けるぞ? 結界にも様々な種類があるわけぢゃが……内向きに効果を発揮する結界と外向きに効果を発揮する結界がある。遮音結界などがいい例で、外からの音をシャットアウトする場合と内からの音の場合があるわけぢゃ」
戦場には不釣り合いな魔法の講義。本来ならばこの時間を利用して彼女らを戦わせた方がいいのかもしれないが――ここで焦って魔族の生き残りとかがいたら厄介だ。確実にミッションを遂行するためには皆が固まって動く必要がある。
「今回の場合は外向きの結界をイメージせよ。そうぢゃな、周囲に魔物がいれば反応する結界ぢゃ。作れよう?」
それくらいなら何とか。イメージも出来る。俺は手元の結界にその魔法を付与し……た、ところで彼女が言いたいことに気づいた。
俺は逆に人だと判断したら避ける結界、攻撃されたら反撃する結界、攻撃を受けたら更に防御結界が発動する結界……とにかく思いつくまま、『魔物と戦う魔物』に必要な結界を付与していく。ヨハネスの助けも借りながら、何重もの結界だ。
キアラはその様子を見て「三十分もいらなかったのぅ」と満足げな様子。そんな彼女を見て間違っていないのだと自分の気づきを確信に変えていく。
「……こんなもんかな」
数分後、自分でも盛り過ぎたと思うくらいの結界が完成する。この大きさだからこの程度の魔力量で済んでいるけど、俺たち全員を覆おうと思ったらかなり魔力を使いそうだ。
「後は命令を遂行できる手足をつけるだけぢゃ。……どうぢゃ、出来そうか?」
「うん。要するに結界で脳を作るイメージなんだね。……時間はかかるけどどうにかなった」
というわけで俺は水でボディをつけて完成。ボディというか……蛇、みたいになったけど。三メートルくらいの体長で、尻尾は針になっており顔はただ口があるだけ。噛みつき攻撃をする時だけキバが出る方式だ。蛇というか蛭かな、これは。
夜闇で戦うことを考えて身体は発光しており、空をふよふよと飛んでいる。
この魔法に精緻なデザインは必要無いから、全体的に丸っこいから怖さは無いかな。魔物っぽさはあるけど。
「なんか可愛いな」
冬子が呟く。作った俺からすると「そうかなぁ」ってところだが彼女の美的センスにケチはつけない。
「名前は?」
「んー……冬子が決めて」
冬子に無茶ぶりしてみると、冬子は少し考えてから案を出した。
「対魔物殲滅用魔物――AmDm。エイムダムというのはどうだ」
「OK、じゃあそれで」
俺はエイムダムを街に放ち、さてとキアラに向き直る。
「これを大量に生み出す、と。それで? さっき雨がどうこうって言ってたのは何?」
「うむ。お主が雨を生み出せばこの地に水が満ちる。雲を……さっきの魔法生物の核を生み出す結界にしてしまえば、自動魔物生成雲の出来上がりぢゃ」
いよいよ結界万能説が浮上してきたけど、確かに結界って「作ったものに効果を付与する」っていう意味では非常に使いやすいし、イメージしやすいんだよね。
俺は肉体にストームエンチャントを施し、そういえばと新井の方を見る。
「似たようなこと出来る?」
「え、えっと……氷の魔法生物を作ることはできますけど、それを結界に付与とかそういうのは……」
「じゃあテキトーにそういうのを出しまくるだけでOKだよ。それでも十分手助けになる。シュリーは……」
「ヨホホ、水でという話でしたらワタシは協力できそうに無いデスね」
苦笑いするシュリー。仕方がないので、とりあえず俺は雲を作ろう。『ストームエンチャント』をしている俺はまさに風神……とまではいかないかもしれないけど、上昇気流を起こして雲を作るくらい朝飯前だ。
俺は『筋斗雲』の高度を下げ、その辺に降り立つ。周囲に人の気配は無し、建物も壊れているものばかり。最高のロケーションだ。
「さて……『紫色の力よ。はぐれの京助が命令する。この世の理に背き、この地を水で満たす狂乱の嵐を呼び出せ! ギガ・アップドラフト』!」
ありとあらゆるものを吹き飛ばす上昇気流を起こす魔法。これを使って雨雲を作る。
キアラがそっと背に手を置く。彼女がサポートしてくれるなら問題ない、王都全土を覆う雲くらい作ってみせるさ。
俺は『パンドラ・ディヴァー』で周囲の魔力をこれでもかという程吸う。そしてその取り入れた魔力を端から風に変えていく。
「……あの、何か……ヤバくない、ですか?」
「大丈夫だ、新井。……京助と一緒にいるとこのくらい見慣れてくる」
新井と冬子が何やら話しているが無視。空間がうねる、ゴロゴロと稲妻の音が聞こえてくる。周囲の建物……が巻き上げられ、天に吸い込まれていく。
それでもなお俺は風を止めない。ピシっ、と頭に痛みが走る。自分の魔力じゃないものを吸い込み過ぎた、吐き気が込み上げてくる。
吐き気と頭痛……風邪の時のそれとはまた違う奇妙な気持ち悪さに膝をつきそうになるが、冬子が支えてくれる。安心して彼女に体重を預けながら――腕を振り上げた。
「……本当に、台風を作ることになるとはね」
ぽつ、ぽつ。
「あ……火、消えるなぁ……」
灰色の雲から一滴、二滴。それが一気に滝のような雨に変わる。雨が地面を打ち、叩き、あのツンとした澄んだ匂いが鼻を通る。
活力煙の炎が消え、咥えているものがただの葉の塊になってしまったので……取りあえずアイテムボックスに仕舞う。
キアラが雨よけの結界を張ったのを見て、俺は完全に冬子に体重を預けきる。疲れたが、まだこれは下準備だ。
「マスター、シャキッとしてください。飲み物です」
「きょ、京助……全体重かけてないか、これ。その、重いんだが……」
「ありがとうリャン。……失礼な、俺はまだまだ軽いよ」
リャンから受け取った飲み物を口に含み、ふらりと立ち上がる。
「キョースケよ、お主が風呂場の鑑の前で『……やっぱ筋肉ついてきたなー』なんて言いながら妙なポーズをしていることをバラされたくなかったらほれ、立たぬか」
「なんで知っ……いや、そんなことしてるわけないけど取りあえずさぁ次だ! 雲の上に転移、キアラ!」
ひゅん、と雲の上に転移すると同時に再び『筋斗雲』を作りその上に着地する。後ろで新井と冬子が「やっぱり男の子ってそういうことするんですね」とか「ああ。もう素手でプロレスラーも捻りつぶせるくらい強くなったのにな」とか言ってるけど気にしない。ああそうですよ、この前よろけて家の壁に手を着いたら力加減をミスって穴開けるくらいにはバカ力になってますよこっちは!
そうして出来上がった雲は……予想外に大きく、というか王都の半分は覆っていた。これなら王都全域を水浸しにするのもすぐだろう。
「取りあえず全域にこの魔法のことを伝えて……それで、たぶんさっきの魔法で殺せるのはCランクくらいまでだ。数が集まればBランクもいけるかもしれないけど」
「つまり?」
「強力な魔物は俺たちが各個撃破する必要がある。ただこの雲から降らせた雨があればその下は強力な魔物がいるかどうかくらいは分かるようになる。そこにキアラの魔法で転移してぶっ殺そう」
そうすればだいぶ時間の短縮にもなるはずだ。
「一時間くらいで全部ぶっ殺す。いいね?」
全員が頷く。新井もワンテンポ遅れて頷く。
「妾がお主にこの魔法を生み出す魔法の編み方を伝授してやろう。お主なら感覚で理解出来るぢゃろ」
そう言って背中に手を当てるキアラ。その温かい手から流れ込んでくるのは……まるで数式のような魔法を編む『感覚』。例えようにもいい例えが思いつかない、フィーリングをそのまま脳に流し込まれているようだ。
経験や知識からなる答えを、思考を経ずに取り出せる直感とはまた違う。答えを導く方法だけをただ教えられるような。
公式の証明は出来ないけどそれに当てはめれば答えだけは出せる時のような、そんな気持ち悪い感覚。ぐにゃぐにゃとした思考が流れ込み、理解出来ないのにやり方だけはインストールされる。
「き、気持ち悪い……」
さっきの吐き気や頭痛も抜けきっていないというのに、更に混乱まで加わる。
「マスター、大丈夫ですか? おっぱい揉みますか?」
「ピア! そういう破廉恥なのはマリルさん担当だろう!」
「トーコさん、それはまた違うような……とはいえ、言わんとしていることは分かるデス。ヨホホ!」
マリルの扱いが不憫。ただでさえ出番が少ないのに。
とはいえただでさえ倒れそうなくらいの体調だったところにコレだ。遠慮なくキアラの方へと寄りかかる。
「お主、妾を背もたれにするとは……不敬ぢゃが許そう」
「あ、ズルいデスよキアラさん。ここは間をとってワタシがキョースケさんを支えるデス」
何故かシュリーが割って入って俺を支える。俺としては誰が支えてくれても問題なかったので、キアラからのインストールが終わるまではおとなしく脱力しておく。
「あー……情報の洪水で脳が死ぬ。ただまぁ、OK、やっとわかってきた」
グチャグチャの脳内を整理し、コキッと首を鳴らす。ずきずき痛む頭をぶるぶる振ってから一発殴る。これで取りあえず頭がクリアになった。
活力煙を咥え、火を点ける。思いっきり煙を吸い込んで、心を落ち着ける。大丈夫、もう数秒もすれば吐き気も収まる。
「……よし、じゃあ行くか」
俺は再び『パンドラ・ディヴァー』で魔力を集める。この雲を維持し、更に広げながら王都に降り立って強力な魔物を殺しに行くのだ。
この程度じゃ足りない。一時間というタイムリミットを自分で儲けたのだ、やらねば。
「『紫色の力よ。はぐれの京助が命令する。この世の理に背き、悪しき存在を全て駆逐するための命無き兵をこの世に顕現させよ! アンリミテッド・アンチハザード・ライオット』!」
雲に『パンドラ・ディヴァー』を突き入れ魔法が発動する。俺の魔力が根こそぎもっていかれるが……ぼぅ……と雲が怪しく光り、魔法が成功したことが分かる。
後はこれを維持しつつ……王都全土を覆うだけだ。今でも王都の半分は覆われているが。
「キアラ、拡声魔法を」
「うむ」
知らなければ一緒に俺の魔法も討伐されかねないからね。俺は彼女に拡声魔法を頼み、ニヤリと笑う。
「それじゃあ皆、準備はいいね? 『頂点超克のリベレイターズ』、出動だ」
「「「「了解(デス)!」」」」
さぁ――最後の戦いだ。
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無様だ。
上半身――否、胸から上のみになった状態で、ブリーダは全身に闇魔術を纏い人のいない方へと這いずっていた。
暴走チェーンウンディーネに吹き飛ばされた際に『水霊の兵』で身代わりを作り、何とか片手で着地して『魔王の血』を飲むことで魔物と合一出来た。Dランク程度の魔物ではあるが、命を繋ぐことは何とか出来た。
それでも動くことが出来るようになるまで体感で三十分以上の時間を必要としたし……命を『繋ぐ』ことは出来たが、それもいつまで保てるか分からない。意識を失い、そのまま戻ってこれなくなるのは時間の問題だろう。
「ぐ、が……」
生きたい。
半身を吹き飛ばされて尚、その想いは消えない。どれだけ苦しくても、その気持ちは消えない。
何故こんなにも生きたいのか。
それは――殺したい奴がいるからだ。
「ある、しふぁ……な、様」
無論、自分をこんな目に遭わせたキョースケや勇者――アキラもぶち殺してやりたいがそれ以上に殺したい奴がいる。
魔王、だ。
(何が、魔王様だ……情けねぇ)
確かに先王陛下と理想は変わっていないかもしれない。世界を手中に収めるという理想は。
しかし、ブリーダにも気に入るやり方とそうでないやり方がある。魔族である以上、カリスマのある者を王と仰ぐことに異論は無いが……今のあいつはダメだ。
魔族を魔王から解放するためには死ねない。
「ぎ、ギッギッギ……死にかけ、ねェと洗脳が解けないなんざ……忠臣? 失格、だぜ」
だが、だからこそ死ねない。
「あ、ああ……」
目がかすむ、意識が遠のく。
繋いだはずの命の灯が失われていくのが分かる。
「もうし、わけ……」
「危ないわねぇ、ブリーダ」
ガリガリと。
頭を掻く音と共に女の声が降ってきた。
「あたしはバックアップを作ってたからいいけど、貴方のそれは何よ」
ため息をつく女。もう目はかすんで見えないが――魔力で分かる。ホップリィだ。あいつらと戦って生きていたのか。
「ぎ、ギッギッギ……とり、あえず……助けて、くれ。ホップリィ」
情けなくそう乞うと、回復魔法がかけられる。
「今のあたしはホップリィの作ったゴーレム、ホップリィⅡよ。間違えないで」
「おう、そうか……」
何にせよ助かった。
ポツリ、何故か顔に水滴が落ちてきた。何だろうか。
(まあ……いい、か)
安堵の気持ちを胸に抱きながら……ブリーダは意識を失った。
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