異世界なう―No freedom,not a human―
209話 戦禍なう
意識を失った天川に取りあえず魔力回復薬を飲ませ、俺は通常形態に戻る。
「何がすごいってさ。……天川のあの魔法、標的以外は一つも傷つけないことだよね」
「そうで御座るなぁ」
天川の魔法、『終焉』。捨て身の魔力を使って行うそれは、圧倒的な力で全てを薙ぎ払うだけのものかと思いきや……何ともまあ世界に優しい魔法だった。
木々は一本も折れておらず、それどころか余波で花が散る事すらなかった。まさに、文字通り「魔法」。それ以上に「奇跡」と呼べるかもしれない。
俺はため息をついてから天川をラノールに預ける。
「じゃ、俺はチームのところに戻るから。それはお願い」
「ああ。……それにしてもキョースケ殿、そしてミリオ殿」
「ん?」
「なんで御座る?」
二人で振り返ると、ラノールが天川に魔力回復薬を口移しで飲ませているところだった。……何故このタイミングで呼び止めたし。
たっぷり数秒、ラノールは天川の唇を貪ってから彼を肩に担ぐ。
「えっと?」
「ああ、いや別に私とアキラのキスシーンを見せたかったわけじゃない。これだ」
いやマジでそのために呼び止めてたんだったら志村と連携して確実に仕留めるけどさ。
俺たちのそんな気持ちを知ってか知らずか彼女が取り出したのは、一本の短剣。
ユラリと立ち上るような熱気が見えたのはきっと気のせいじゃないのだろう。『視』る必要もなく圧倒的な『力』を持っているのが分かる。
ホップリィが持っていた杖と同じ――神器に準ずる武器だ。
「モルガフィーネが使っていた。無限に炎が出てくるという厄介極まりない代物でな、貴方がたもこれと似たものを持っていたら見せて欲しいのだが……」
俺はそんな彼女から目を逸らし、辺りを『視』回す。すると一本、それらしい物が落ちていた。
「ちょっと待ってて」
俺は落ちていた……棒? に駆け寄りそれを持つと、ゾッとする『圧』が発せられた。取り落としそうになり、慌ててもう一度掴む。
(ホップリィのアレはすぐにアイテムボックスに入れたから気づかなかったけど……)
これはどうも神器と違って、人が持っていないと『圧』を発さないらしい。特に理由はないけど、何となく呪いのアイテムが連想させられる。
俺はふうと一息ついてから再び彼女らの元に戻る。
「あー、ラノール。これでしょ?」
「ああ」
彼女は俺から受け取ると、しげしげと眺め……あさっての方向にそれを振るった。びゅるん! と水が飛び出て木が一本へし折られる。
「なるほど、これは水か。……すまないが、私が持ち帰ってもいいだろうか? 出来れば国の研究機関に回したい」
チラリと志村を見ると、彼も特に異論はないようなので頷く。まあ俺は一本持ってるしね。
「二人が戦った相手は持っていなかったのか?」
「さぁ、強力な魔法は使ってたけど武器みたいなものはどうだったかな。割と必死だったから」
「拙者も特に。ああでも、神器を越える武器がどうのとは言っていたで御座るが……それ以上は無いで御座るな」
志村が言い終えた後、妙な沈黙が辺りを支配する。殺気が出ているわけでも、闘気が出ているわけでもないのに妙な『圧』。これが騎士団長の持つプレッシャーというやつだろうか。
とはいえ俺もキアラに見せたいし、志村は志村で解析したいだろう。そのために二本目を渡したのだから納得して欲しいところだけど……。
俺のそんな心情を知ってか知らずか、志村が両手を上げた。
「拙者と京助殿が戦った相手は持っていなかった。一方でラノール殿と天川殿が戦った相手は持っていた……というだけのことで御座ろう?」
もうこの話は終わりにしよう、そんな雰囲気でラノールを見る志村。睨むでもなんでもなく、見る。
ラノールはその視線に居心地の悪さを感じたか、少しだけ視線を逸らしてからため息をついた。
「……そう、だな。時間をとらせてすまなかった」
「別にいいよ。じゃ、行くね」
「拙者も姫が心配で御座るからな」
そう言って今度こそ離陸する。ラノールは天川が起きてから移動するつもりなのか、さっきみたいに飛竜は召喚していない。
俺は背後を少し警戒しつつ……志村に話しかける。
「俺の相手は雷だった」
「拙者は土……なんで御座るけど、なんか妙な使い方してくる奴だったで御座るよ」
「まー……脳筋そうな見た目だったしね」
「はっはっは。京助殿は人のことは言えないで御座ろげはぁっ!?」
どこからともなく飛来した風の礫が志村の額を撃ち抜いた。いやぁ、不思議だね。
空中で蹲って悶えるという妙なことをやってる志村を放って、俺は一つ伸びをする。
「……魔物、か」
ズバン! と空気弾で数体の魔物の額を撃ち抜きつつ、俺は頭をシリアスなそれに切り替える。
「当たり前だけど、まだ大量にいるんだよね」
それはつまり、人が死ぬということ。
死ぬ、自由を奪われる。
グルリと上空で街を見渡す。戦う覚悟がある者だけが住んでいるわけじゃない、街に住む人間の殆どは今日と同じ明日が来ると信じていたはずだ。
その未来が奪われた。仮に生きていたとしても、明日を選ぶ自由を奪われた人はたくさんいるはずだ。
それは全て、魔族のせいで。
魔物を解き放った魔族のせいで。
「志村、俺別に王都の人に思い入れがあるわけじゃないし、知り合いも殆どいないんだ」
「そうで御座るな」
「……でも、この惨劇を見て……冷静になれるほど俺も人が出来てない」
この惨劇はもはや『災害』だ。
今までの戦いとは違う、救出のための戦い。それでもまだ、明確に悪い奴を殺ればいいだけ普通の災害救助よりはやりやすいのかもしれない。
現実はゲームのように、敵のボスを倒せばはいお仕舞いとはならない。魔王を殺しても竜王を殺してもマフィアのボスを倒しても、現実はその後も続いていく。残党はいる、そいつらは思慮なく暴れまくる。むしろ統率する個体が消えればその無秩序さは類を見ないだろう。
「なんて『楽な戦い』をしてきたんだろうね。俺は」
そう呟いた時、何故か志村の顔が驚きに染まった。その理由が分からず俺は首を傾げるが――一つ首を振ってから思考を戻す。
「殲滅だ。まとめて地獄に叩きこんでやる」
「……頼むぞ、京助。オレの方はそろそろエネルギーが尽きそうだ」
志村の表情も険しい。俺は咥えた活力煙を燃やし尽くし、身体に炎を纏う。
「それじゃ、行ってくる。依頼料忘れないでよ?」
「無論だ」
志村の声を背に、俺は地面に高速で落下していく。狙いは、子どもたちを襲っている魔物集団。
轟! とその魔物集団の先頭にいた奴を炎で消し飛ばし、着地と同時に吹き上がる爆炎で周囲の魔物も一緒に消し飛ばした。
「に、逃げ――へ?」
「ふぁ?」
「はえ?」
子どもたちは全員『何が起きたの?』みたいな顔で俺の方を見てくるが、のんびりしている暇は無い。すぐに避難所がある――さっき空中で確認しておいた結界の張ってある建物――方向を指さす。
「取りあえず君らを襲ってた魔物は死んだ。あっちに避難所があるから逃げるなら向こうだ」
「あ……ありがとう、ございます」
俺が言うと、先頭の子が代表するように俺にお辞儀した。それに倣うように、後ろの子たちもバラバラと頭を下げる。
俺は新しい活力煙を咥えると、彼らを守るために炎の鷹を生み出す。ヨハネスが作り方を教えてくれた、魔物に反応して火球を生み出す魔法だ。
「じゃあ、気をつけてね」
それだけ言ってこの場を離れようとすると――
「あ、あの! ……お兄さん、何者ですか?」
――なんて、呼び止められた。
俺は彼らに振り返り、煙を輪っかにしながら空を見上げる。
「俺は『魔石狩り』のキョースケ。SランクAGにして――はぐれの救世主さ」
煙が空に溶けたのを見てから、夜空を駆け上がる。
街も救えない救世主、なんて笑い話にもならない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「トーコさん! 右です!」
「ああ! ――せいっ!」
爪を振り上げた狐のような魔物、その首を切り落とすと同時に跳躍。椿のように落ちたその頭を蹴飛ばして別の魔物にぶつけた。
仰け反ったオーガの脳天をピアのナイフが貫く。爆散するオーガの後ろから大量のゴブリンが武器を構えて飛び掛かってきていた。
「――任せてください、デス!」
連鎖爆撃ではなく、単純な炎のレーザーで焼き払うリューさん。綺麗に爆散して消えたゴブリンたちの上を遥かに飛び越え、建物の前にたどり着く。まだ無事な建物――恐らく、元は教会か何か――の中は妙に静かだ、もしかすると生存者がいるかもしれない。
「誰かいるか!?」
乱暴に扉を蹴破ると、中は真っ暗だが何者かの気配が。背後のステンドグラスの前に何かが積みあがっていてかなり暗いが、四つの人影がぼんやりと確認できる。
生存者か――そう思って足を踏み入れると、ぴちゃりと妙な水音が足元から聞こえた。視線を足元に落すと、石の床に真っ赤な水たまりが出来ていた。
そのまま視線を前に戻す。人影があったのに、何故。
「あ、う、あ……」
くぐもった人の声。人影の方から聞こえてくるが明らかに正常なそれじゃない。冬子は咄嗟にアイテムボックスから灯り玉を取り出す。地面など硬いところに投げつけると数分発光し続ける魔道具だ。
地面に投げつけると視界が確保される。そこで見えたのは――
「――ッ!」
――四体の人狼が、見上げるほど積み上げた死体の前で人間をいたぶっている姿だった。
「貴様らぁっ!」
冬子は即座に体勢を低くすると足に力を籠める。『職スキル』、『激健脚』を発動し、同時に足の裏から魂を放出。そのブーストでもって超加速すると、まず一体を頭から両断した。
「シッ!」
唐突に仲間が真っ二つになったからか硬直する人狼たち。その隙を逃さず、鋭い踏み込みと共に振り上げた剣で逆袈裟斬り。手首を返して膝から腰を回転させて三体目の首を刎ね飛ばした。
最後に残った人狼が逃げようと教会の扉の方へ全力で走りだしたが――慌てて入ってきたピアのナイフで爆散してしまった。
「おい、しっかりしろ!」
いたぶられていた人間――服装からして神父だろうか――を抱き起こすが、既に息をしていなかった。それどころかよく見ると足はもがれ、目は潰され惨憺たる状態だった。
「……なんて、惨い」
ギリッ、と奥歯を噛みしめる。
しかし同時にふらりと――平衡感覚を失ったようになり、その場に倒れこんでしまった。貧血のように、足から力が抜ける。
「トーコさん、大丈夫ですか」
思わず座り込んでいると、ピアとリューさんが駆け寄ってきた。二人は冬子と、この惨状を見て……黙り込み、目を逸らした。
「酷い、デス」
「ええ。……本当に魔物がこんなことをしたんでしょうか。魔物が人を襲う理由は未だに解明されていないと聞きましたが、甚振って殺すというのは――」
そこまで言って、ピアは黙って周囲に転がる魔魂石を見た。どれも大きさはCランク程度、そこまで大きくはない。
「考えすぎ、ですね。流石にこれをこのままにしておくべきではありませんが――」
チラリとピアが冬子に目線をやる。リューが首を振ってから呪文を唱え出した。
「運び出して、一人一人……というのは時間が無いデス。せめて結界を張っておくので……この戦いが終わってまだここが現存していたら後でまた、というところデスね」
「それが無難でしょうね。というかリューさん、貴方は結界なんて器用なこと出来たんですか?」
「ひ、酷いデスね。これでもBランク魔法師……いえAランク魔法師。初歩であれば非属性魔法もある程度は使えるデスよ」
苦笑いするリューさんが呪文を唱え終わると、やや頼りない膜のようなもので死体が覆われた。初歩の結界というやつか。
「うっ……ぐっ……」
足に力が入らない。竦んでしまった……のでは、無い。それはよく分かる。
戦意が折られたわけじゃない。
「…………っ」
魔物を殺すのは、簡単だ。そんなことを言うと怒られそうだが。
目前で襲われそうになっている人がいれば、冬子の速度であれば瞬時に助けることが出来る。
どんな強大な魔物だろうと、チーム一丸となれば倒せない気はしない。冬子たちは世間の常識からは多少外れた力を持っているのだから。
しかし――
「トーコさん、落ち込んでいる暇はありません」
「……分かって、いる」
「その、いくら何でも前衛がピアさんだけでは事故率が上がってしまうデス」
「ああ。……大丈夫だ、もう、大丈夫だ」
――どれだけ強くても、視界外の人は助けられない。
散乱し、踏み荒らされた死体を見てぐわんと視界が歪む。怒り、悲しみ、焦り、様々な感情がごちゃ混ぜになり冬子の脳を締め付ける。
「う……」
戦場の『リアル』を突き付けられ、唇を噛む。間に合わない、というのはこれほど心を抉ると言うのか。
支柱となる『ナニカ』にヒビが入るような感覚。自分の感情が分からなくなる。
冬子は深呼吸して――酸っぱい、肉の焼ける臭いを肺の中に取り込んでしまう。思わず込みあがってくる吐き気を堪え、口を押さえて地面に手をつく。
血だまりに、手をつく。
「だ、だいじょう……」
冷たい。まるで氷に手を突っ込んだように体が冷える。ぽたぽたと地面に落ちる水滴は果たして汗か、それとも。
「ぶ、には見えないです。悔しいですがマスターが来るまでは休憩した方が良いでしょう。キアラさんと合流して、一度戦線を離脱――」
「で、出来るわけがないだろう!」
ピアに食って掛かる。
生存者がいない、それだけならまだ心の底に沈められた。しかし一度死体を見てしまえばもう脳内はそのことでいっぱいになる。
「私たちが間に合わなくて、この人達は……ッ!」
自分が弱いのは分かっている、そのせいで今自分が精神的に削られているのも理解している。
しかしそれでも、いや逆にだからこそ――止まっては、いられないのだ。
「私たちがもっと早く来ていれば! あそこで魔物を全滅させた後、即座にここに来ていれば! そうすれば、この人たちは、これだけの血は……!」
「落ち着いてください、トーコさん」
ピアに手を握られ、ハッとなる。思わず瞳に溜まっていた温かい水を拭い、息を長く吐く。
「すまない、取り乱した。……でも、今ここで止まったら――」
「トーコさん」
ぎゅっ、とリューさんに抱きしめられる。ピアはナイフを取り出して周囲を窺いつつ……冬子の手を離さない。
「……トーコさん、ワタシたちの実力が異様だという話はしましたが」
「精神力までついてきてはいません。特に貴方は、私たちの中で一番若いのですから」
妙に、しっくりくる。京助に抱きしめられた時とは少し違う安心感。
まるで母の愛……いや、少し違う。親愛であることは間違いないのだが、それとは別の愛の形……。
「……もっと、お姉さんに頼ってくれていいのですよ?」
そういえば、この二人は『姉』だった。
冬子は上に兄が一人いる『妹』だ。
だからか、妙にしっくり来たのは。
「すみ、ません」
「姉ちゃんに甘えるデスよー。よそよそしい言葉遣いもしなくてよいデスよー。今は休憩デスよー」
わざとおどけるリューさん。それが逆に――気遣われてる、と心に刺さる。そのせいか、ぽろぽろと言葉が漏れる。
「ちょっと、キツい。その、大量の死体を見たこと、も、だが……自分の無力さ、が、やっぱり、キツい」
「でしょうね」
「ヨホホ。ワタシたちも同感デス。ただ、少し慣れているだけデス」
二人とも穏やかな笑顔――しかし、その瞳の奥に陰りを感じる。強がってくれているのだ、冬子のために。それが分かり、余計申しわけない気分になる。
ピアは冬子の手を離すと、灯り玉に目をやる。
「そろそろコレの効果も切れる頃です。トーコさん、落ち着いたなら一旦ここを出ましょう。仮に休憩するにしてもここでは気が休まらないでしょう?」
「……そう、だな。ああ。行こうか」
剣を握りしめる。異世界に来てからずっと手入れを繰り返して使っている愛剣だが、これほど頼りないと思ったのは初めてだ。
情けない――と自嘲気味の笑みを浮かべたところで――ズンッ! と地面が揺れた。
その揺れを起こした犯人は、開きっぱなしの扉から転がり込むように入ってくる。
「三人とも無事――じゃ、無さそうだ、ね」
冬子と目が遭った瞬間唇を噛んだ京助は、よく見ると大分ボロボロな格好になっていた。鎧のあちこちは焦げ、切り裂かれ、顔も泥だらけだ。傷は治っているようだが、激戦だったであろうことは想像に難くない。
「それの……せい、か」
女性関係は朴念仁なくせして妙に鋭い京助は冬子たちの背後を見て、怒りに満ちた表情になる。
京助は冬子たちに駆け寄ると、風をリューさんの結界に纏わせた。
「ん、これでOK。……でも、ちょっと俺もキツイね」
京助はそう呟くと無言で手を合わせる。五秒ほど黙祷を捧げた京助は冬子の方を見て飲み物を差し出した。
「シュリーもリャンもいるでしょ。……って言ってもここじゃ飲みづらいか。一旦外に出よう? 大丈夫、半径二百メートルくらいは何もいない」
何も、という言葉を強調する京助。そこに籠められた意味が察せない程冬子も愚かではない。
教会から外に出ると、確かに静かなものだった。よく目を凝らすと風の結界が張ってある。取りあえず安全地帯を作ったということだろうか。
京助から貰ったお茶を一口。口内に鉄の味が――いつの間にか切っていたらしい。
「ねぇ、冬子、リャン、シュリー」
京助はこちらを見ないで活力煙を咥え、火を点けた。
「ついて来れる?」 
振り向いた京助の瞳は――折れかけだった冬子の心に。
何故か、もう一度芯を通した。
「何がすごいってさ。……天川のあの魔法、標的以外は一つも傷つけないことだよね」
「そうで御座るなぁ」
天川の魔法、『終焉』。捨て身の魔力を使って行うそれは、圧倒的な力で全てを薙ぎ払うだけのものかと思いきや……何ともまあ世界に優しい魔法だった。
木々は一本も折れておらず、それどころか余波で花が散る事すらなかった。まさに、文字通り「魔法」。それ以上に「奇跡」と呼べるかもしれない。
俺はため息をついてから天川をラノールに預ける。
「じゃ、俺はチームのところに戻るから。それはお願い」
「ああ。……それにしてもキョースケ殿、そしてミリオ殿」
「ん?」
「なんで御座る?」
二人で振り返ると、ラノールが天川に魔力回復薬を口移しで飲ませているところだった。……何故このタイミングで呼び止めたし。
たっぷり数秒、ラノールは天川の唇を貪ってから彼を肩に担ぐ。
「えっと?」
「ああ、いや別に私とアキラのキスシーンを見せたかったわけじゃない。これだ」
いやマジでそのために呼び止めてたんだったら志村と連携して確実に仕留めるけどさ。
俺たちのそんな気持ちを知ってか知らずか彼女が取り出したのは、一本の短剣。
ユラリと立ち上るような熱気が見えたのはきっと気のせいじゃないのだろう。『視』る必要もなく圧倒的な『力』を持っているのが分かる。
ホップリィが持っていた杖と同じ――神器に準ずる武器だ。
「モルガフィーネが使っていた。無限に炎が出てくるという厄介極まりない代物でな、貴方がたもこれと似たものを持っていたら見せて欲しいのだが……」
俺はそんな彼女から目を逸らし、辺りを『視』回す。すると一本、それらしい物が落ちていた。
「ちょっと待ってて」
俺は落ちていた……棒? に駆け寄りそれを持つと、ゾッとする『圧』が発せられた。取り落としそうになり、慌ててもう一度掴む。
(ホップリィのアレはすぐにアイテムボックスに入れたから気づかなかったけど……)
これはどうも神器と違って、人が持っていないと『圧』を発さないらしい。特に理由はないけど、何となく呪いのアイテムが連想させられる。
俺はふうと一息ついてから再び彼女らの元に戻る。
「あー、ラノール。これでしょ?」
「ああ」
彼女は俺から受け取ると、しげしげと眺め……あさっての方向にそれを振るった。びゅるん! と水が飛び出て木が一本へし折られる。
「なるほど、これは水か。……すまないが、私が持ち帰ってもいいだろうか? 出来れば国の研究機関に回したい」
チラリと志村を見ると、彼も特に異論はないようなので頷く。まあ俺は一本持ってるしね。
「二人が戦った相手は持っていなかったのか?」
「さぁ、強力な魔法は使ってたけど武器みたいなものはどうだったかな。割と必死だったから」
「拙者も特に。ああでも、神器を越える武器がどうのとは言っていたで御座るが……それ以上は無いで御座るな」
志村が言い終えた後、妙な沈黙が辺りを支配する。殺気が出ているわけでも、闘気が出ているわけでもないのに妙な『圧』。これが騎士団長の持つプレッシャーというやつだろうか。
とはいえ俺もキアラに見せたいし、志村は志村で解析したいだろう。そのために二本目を渡したのだから納得して欲しいところだけど……。
俺のそんな心情を知ってか知らずか、志村が両手を上げた。
「拙者と京助殿が戦った相手は持っていなかった。一方でラノール殿と天川殿が戦った相手は持っていた……というだけのことで御座ろう?」
もうこの話は終わりにしよう、そんな雰囲気でラノールを見る志村。睨むでもなんでもなく、見る。
ラノールはその視線に居心地の悪さを感じたか、少しだけ視線を逸らしてからため息をついた。
「……そう、だな。時間をとらせてすまなかった」
「別にいいよ。じゃ、行くね」
「拙者も姫が心配で御座るからな」
そう言って今度こそ離陸する。ラノールは天川が起きてから移動するつもりなのか、さっきみたいに飛竜は召喚していない。
俺は背後を少し警戒しつつ……志村に話しかける。
「俺の相手は雷だった」
「拙者は土……なんで御座るけど、なんか妙な使い方してくる奴だったで御座るよ」
「まー……脳筋そうな見た目だったしね」
「はっはっは。京助殿は人のことは言えないで御座ろげはぁっ!?」
どこからともなく飛来した風の礫が志村の額を撃ち抜いた。いやぁ、不思議だね。
空中で蹲って悶えるという妙なことをやってる志村を放って、俺は一つ伸びをする。
「……魔物、か」
ズバン! と空気弾で数体の魔物の額を撃ち抜きつつ、俺は頭をシリアスなそれに切り替える。
「当たり前だけど、まだ大量にいるんだよね」
それはつまり、人が死ぬということ。
死ぬ、自由を奪われる。
グルリと上空で街を見渡す。戦う覚悟がある者だけが住んでいるわけじゃない、街に住む人間の殆どは今日と同じ明日が来ると信じていたはずだ。
その未来が奪われた。仮に生きていたとしても、明日を選ぶ自由を奪われた人はたくさんいるはずだ。
それは全て、魔族のせいで。
魔物を解き放った魔族のせいで。
「志村、俺別に王都の人に思い入れがあるわけじゃないし、知り合いも殆どいないんだ」
「そうで御座るな」
「……でも、この惨劇を見て……冷静になれるほど俺も人が出来てない」
この惨劇はもはや『災害』だ。
今までの戦いとは違う、救出のための戦い。それでもまだ、明確に悪い奴を殺ればいいだけ普通の災害救助よりはやりやすいのかもしれない。
現実はゲームのように、敵のボスを倒せばはいお仕舞いとはならない。魔王を殺しても竜王を殺してもマフィアのボスを倒しても、現実はその後も続いていく。残党はいる、そいつらは思慮なく暴れまくる。むしろ統率する個体が消えればその無秩序さは類を見ないだろう。
「なんて『楽な戦い』をしてきたんだろうね。俺は」
そう呟いた時、何故か志村の顔が驚きに染まった。その理由が分からず俺は首を傾げるが――一つ首を振ってから思考を戻す。
「殲滅だ。まとめて地獄に叩きこんでやる」
「……頼むぞ、京助。オレの方はそろそろエネルギーが尽きそうだ」
志村の表情も険しい。俺は咥えた活力煙を燃やし尽くし、身体に炎を纏う。
「それじゃ、行ってくる。依頼料忘れないでよ?」
「無論だ」
志村の声を背に、俺は地面に高速で落下していく。狙いは、子どもたちを襲っている魔物集団。
轟! とその魔物集団の先頭にいた奴を炎で消し飛ばし、着地と同時に吹き上がる爆炎で周囲の魔物も一緒に消し飛ばした。
「に、逃げ――へ?」
「ふぁ?」
「はえ?」
子どもたちは全員『何が起きたの?』みたいな顔で俺の方を見てくるが、のんびりしている暇は無い。すぐに避難所がある――さっき空中で確認しておいた結界の張ってある建物――方向を指さす。
「取りあえず君らを襲ってた魔物は死んだ。あっちに避難所があるから逃げるなら向こうだ」
「あ……ありがとう、ございます」
俺が言うと、先頭の子が代表するように俺にお辞儀した。それに倣うように、後ろの子たちもバラバラと頭を下げる。
俺は新しい活力煙を咥えると、彼らを守るために炎の鷹を生み出す。ヨハネスが作り方を教えてくれた、魔物に反応して火球を生み出す魔法だ。
「じゃあ、気をつけてね」
それだけ言ってこの場を離れようとすると――
「あ、あの! ……お兄さん、何者ですか?」
――なんて、呼び止められた。
俺は彼らに振り返り、煙を輪っかにしながら空を見上げる。
「俺は『魔石狩り』のキョースケ。SランクAGにして――はぐれの救世主さ」
煙が空に溶けたのを見てから、夜空を駆け上がる。
街も救えない救世主、なんて笑い話にもならない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「トーコさん! 右です!」
「ああ! ――せいっ!」
爪を振り上げた狐のような魔物、その首を切り落とすと同時に跳躍。椿のように落ちたその頭を蹴飛ばして別の魔物にぶつけた。
仰け反ったオーガの脳天をピアのナイフが貫く。爆散するオーガの後ろから大量のゴブリンが武器を構えて飛び掛かってきていた。
「――任せてください、デス!」
連鎖爆撃ではなく、単純な炎のレーザーで焼き払うリューさん。綺麗に爆散して消えたゴブリンたちの上を遥かに飛び越え、建物の前にたどり着く。まだ無事な建物――恐らく、元は教会か何か――の中は妙に静かだ、もしかすると生存者がいるかもしれない。
「誰かいるか!?」
乱暴に扉を蹴破ると、中は真っ暗だが何者かの気配が。背後のステンドグラスの前に何かが積みあがっていてかなり暗いが、四つの人影がぼんやりと確認できる。
生存者か――そう思って足を踏み入れると、ぴちゃりと妙な水音が足元から聞こえた。視線を足元に落すと、石の床に真っ赤な水たまりが出来ていた。
そのまま視線を前に戻す。人影があったのに、何故。
「あ、う、あ……」
くぐもった人の声。人影の方から聞こえてくるが明らかに正常なそれじゃない。冬子は咄嗟にアイテムボックスから灯り玉を取り出す。地面など硬いところに投げつけると数分発光し続ける魔道具だ。
地面に投げつけると視界が確保される。そこで見えたのは――
「――ッ!」
――四体の人狼が、見上げるほど積み上げた死体の前で人間をいたぶっている姿だった。
「貴様らぁっ!」
冬子は即座に体勢を低くすると足に力を籠める。『職スキル』、『激健脚』を発動し、同時に足の裏から魂を放出。そのブーストでもって超加速すると、まず一体を頭から両断した。
「シッ!」
唐突に仲間が真っ二つになったからか硬直する人狼たち。その隙を逃さず、鋭い踏み込みと共に振り上げた剣で逆袈裟斬り。手首を返して膝から腰を回転させて三体目の首を刎ね飛ばした。
最後に残った人狼が逃げようと教会の扉の方へ全力で走りだしたが――慌てて入ってきたピアのナイフで爆散してしまった。
「おい、しっかりしろ!」
いたぶられていた人間――服装からして神父だろうか――を抱き起こすが、既に息をしていなかった。それどころかよく見ると足はもがれ、目は潰され惨憺たる状態だった。
「……なんて、惨い」
ギリッ、と奥歯を噛みしめる。
しかし同時にふらりと――平衡感覚を失ったようになり、その場に倒れこんでしまった。貧血のように、足から力が抜ける。
「トーコさん、大丈夫ですか」
思わず座り込んでいると、ピアとリューさんが駆け寄ってきた。二人は冬子と、この惨状を見て……黙り込み、目を逸らした。
「酷い、デス」
「ええ。……本当に魔物がこんなことをしたんでしょうか。魔物が人を襲う理由は未だに解明されていないと聞きましたが、甚振って殺すというのは――」
そこまで言って、ピアは黙って周囲に転がる魔魂石を見た。どれも大きさはCランク程度、そこまで大きくはない。
「考えすぎ、ですね。流石にこれをこのままにしておくべきではありませんが――」
チラリとピアが冬子に目線をやる。リューが首を振ってから呪文を唱え出した。
「運び出して、一人一人……というのは時間が無いデス。せめて結界を張っておくので……この戦いが終わってまだここが現存していたら後でまた、というところデスね」
「それが無難でしょうね。というかリューさん、貴方は結界なんて器用なこと出来たんですか?」
「ひ、酷いデスね。これでもBランク魔法師……いえAランク魔法師。初歩であれば非属性魔法もある程度は使えるデスよ」
苦笑いするリューさんが呪文を唱え終わると、やや頼りない膜のようなもので死体が覆われた。初歩の結界というやつか。
「うっ……ぐっ……」
足に力が入らない。竦んでしまった……のでは、無い。それはよく分かる。
戦意が折られたわけじゃない。
「…………っ」
魔物を殺すのは、簡単だ。そんなことを言うと怒られそうだが。
目前で襲われそうになっている人がいれば、冬子の速度であれば瞬時に助けることが出来る。
どんな強大な魔物だろうと、チーム一丸となれば倒せない気はしない。冬子たちは世間の常識からは多少外れた力を持っているのだから。
しかし――
「トーコさん、落ち込んでいる暇はありません」
「……分かって、いる」
「その、いくら何でも前衛がピアさんだけでは事故率が上がってしまうデス」
「ああ。……大丈夫だ、もう、大丈夫だ」
――どれだけ強くても、視界外の人は助けられない。
散乱し、踏み荒らされた死体を見てぐわんと視界が歪む。怒り、悲しみ、焦り、様々な感情がごちゃ混ぜになり冬子の脳を締め付ける。
「う……」
戦場の『リアル』を突き付けられ、唇を噛む。間に合わない、というのはこれほど心を抉ると言うのか。
支柱となる『ナニカ』にヒビが入るような感覚。自分の感情が分からなくなる。
冬子は深呼吸して――酸っぱい、肉の焼ける臭いを肺の中に取り込んでしまう。思わず込みあがってくる吐き気を堪え、口を押さえて地面に手をつく。
血だまりに、手をつく。
「だ、だいじょう……」
冷たい。まるで氷に手を突っ込んだように体が冷える。ぽたぽたと地面に落ちる水滴は果たして汗か、それとも。
「ぶ、には見えないです。悔しいですがマスターが来るまでは休憩した方が良いでしょう。キアラさんと合流して、一度戦線を離脱――」
「で、出来るわけがないだろう!」
ピアに食って掛かる。
生存者がいない、それだけならまだ心の底に沈められた。しかし一度死体を見てしまえばもう脳内はそのことでいっぱいになる。
「私たちが間に合わなくて、この人達は……ッ!」
自分が弱いのは分かっている、そのせいで今自分が精神的に削られているのも理解している。
しかしそれでも、いや逆にだからこそ――止まっては、いられないのだ。
「私たちがもっと早く来ていれば! あそこで魔物を全滅させた後、即座にここに来ていれば! そうすれば、この人たちは、これだけの血は……!」
「落ち着いてください、トーコさん」
ピアに手を握られ、ハッとなる。思わず瞳に溜まっていた温かい水を拭い、息を長く吐く。
「すまない、取り乱した。……でも、今ここで止まったら――」
「トーコさん」
ぎゅっ、とリューさんに抱きしめられる。ピアはナイフを取り出して周囲を窺いつつ……冬子の手を離さない。
「……トーコさん、ワタシたちの実力が異様だという話はしましたが」
「精神力までついてきてはいません。特に貴方は、私たちの中で一番若いのですから」
妙に、しっくりくる。京助に抱きしめられた時とは少し違う安心感。
まるで母の愛……いや、少し違う。親愛であることは間違いないのだが、それとは別の愛の形……。
「……もっと、お姉さんに頼ってくれていいのですよ?」
そういえば、この二人は『姉』だった。
冬子は上に兄が一人いる『妹』だ。
だからか、妙にしっくり来たのは。
「すみ、ません」
「姉ちゃんに甘えるデスよー。よそよそしい言葉遣いもしなくてよいデスよー。今は休憩デスよー」
わざとおどけるリューさん。それが逆に――気遣われてる、と心に刺さる。そのせいか、ぽろぽろと言葉が漏れる。
「ちょっと、キツい。その、大量の死体を見たこと、も、だが……自分の無力さ、が、やっぱり、キツい」
「でしょうね」
「ヨホホ。ワタシたちも同感デス。ただ、少し慣れているだけデス」
二人とも穏やかな笑顔――しかし、その瞳の奥に陰りを感じる。強がってくれているのだ、冬子のために。それが分かり、余計申しわけない気分になる。
ピアは冬子の手を離すと、灯り玉に目をやる。
「そろそろコレの効果も切れる頃です。トーコさん、落ち着いたなら一旦ここを出ましょう。仮に休憩するにしてもここでは気が休まらないでしょう?」
「……そう、だな。ああ。行こうか」
剣を握りしめる。異世界に来てからずっと手入れを繰り返して使っている愛剣だが、これほど頼りないと思ったのは初めてだ。
情けない――と自嘲気味の笑みを浮かべたところで――ズンッ! と地面が揺れた。
その揺れを起こした犯人は、開きっぱなしの扉から転がり込むように入ってくる。
「三人とも無事――じゃ、無さそうだ、ね」
冬子と目が遭った瞬間唇を噛んだ京助は、よく見ると大分ボロボロな格好になっていた。鎧のあちこちは焦げ、切り裂かれ、顔も泥だらけだ。傷は治っているようだが、激戦だったであろうことは想像に難くない。
「それの……せい、か」
女性関係は朴念仁なくせして妙に鋭い京助は冬子たちの背後を見て、怒りに満ちた表情になる。
京助は冬子たちに駆け寄ると、風をリューさんの結界に纏わせた。
「ん、これでOK。……でも、ちょっと俺もキツイね」
京助はそう呟くと無言で手を合わせる。五秒ほど黙祷を捧げた京助は冬子の方を見て飲み物を差し出した。
「シュリーもリャンもいるでしょ。……って言ってもここじゃ飲みづらいか。一旦外に出よう? 大丈夫、半径二百メートルくらいは何もいない」
何も、という言葉を強調する京助。そこに籠められた意味が察せない程冬子も愚かではない。
教会から外に出ると、確かに静かなものだった。よく目を凝らすと風の結界が張ってある。取りあえず安全地帯を作ったということだろうか。
京助から貰ったお茶を一口。口内に鉄の味が――いつの間にか切っていたらしい。
「ねぇ、冬子、リャン、シュリー」
京助はこちらを見ないで活力煙を咥え、火を点けた。
「ついて来れる?」 
振り向いた京助の瞳は――折れかけだった冬子の心に。
何故か、もう一度芯を通した。
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