異世界なう―No freedom,not a human―
207話 VSブリーダなう
空中に生み出した足場を蹴り、天川は高速でブリーダに接近する。
「ギッギッギ……勇者サマは動きがいいねェ」
「ぜぁっ!」
ミシリ、骨が鳴る程力強く握りしめた神器を唐竹割に振るうが――ブリーダの身体は水となりすり抜けてしまう。
「ギッギッギ、効かねェなァ」
「ならば!」
周囲に浮かぶ宝石たちを変則的な軌道を持ってブリーダの全身にくまなくぶち当てる。すりつぶしてみれば多少は効くかと思ってやってみたが――
「無傷、か」
舌打ちを一つ。余裕しゃくしゃくな表情がなお苛立ちを加速させる――が、これもあくまでこちらの精神を揺さぶるための攻撃……否、口撃だろう。
「ギッギッギ……生きたまますり潰されてみろ、結構気持ち悪いぜ」
「遠慮する」
極力会話しないようにするのがベストだろう。
天川は剣を構えて息を一つ吐く。薄く、細く……イメージとしては一分間かけて肺の中の空気を空にするように。
ラノールさんから習った呼吸法、打開策が浮かばなければやれと言われたものだ。
『まあ呼吸法というとカッコいいが要するにただの深呼吸だ。だが大切なことだ、息を吐いて吸う……焦るとこれを忘れるんだ、人間は。だから焦らないためにやれ。どんな時も忘れるな、冷静さがカギだ』
ラノールの言葉を反芻しながらブリーダを眺める。
(俺の手の内でアレを突破する方法はないな)
冷静な思考でそう結論付ける。基本的に天川の攻撃は物理一辺倒だ。光魔法は「剣が鈍る。まずは剣からだ」と言われて磨いていない。
光魔法で蒸発させれば何とかなるのかもしれないが、それはつまり『終焉』を使うということに他ならず……あんな溜めの要る魔法を使う猶予を与えてくれるとは思えない。
再び距離を詰めて首を切り落とすが、やはり水を切り裂くことなど出来ないのか手応えが無い。
やむを得ず距離を取り、神器による攻撃に切り替える。
「だァから、それ気持ち悪いんだっつっただろ」
ブリーダは『水霊の兵』から水を出し宝石たちを迎撃しようとするが、逆に水程度で防げる攻撃ではない。押し返し、再び彼の身体を切り刻む。
「いててて!」
ニヤニヤと嗤いながらそんなことを叫ぶブリーダ。まったくもって緊張感を感じられないため……カマをかけてみることにする。
「俺の攻撃はお前に入らない、そしてお前の攻撃も俺には効かない――それが分かっていたから取引を持ち掛けたのか?」
「当たりだぜェ、勇者。オレ様はテメーを殺すのにすこぉーしだけ時間がかかる。すこぉーしだけ、な? ギッギッギ」
指で少しのジェスチャーをしながらそんなことを言うブリーダ。いちいち癇に障るが頭の冷静さは崩さない。
「だがテメーはオレ様を殺す手を持たない。そのまま殺してやってもいいんだが、これ以上王都に留まりたく無いんでな。ギッギッギ、今からでも取引に応じるか?」
つまり、ここで削り合いになるのはお互い無意味であると。
だから――ここで戦闘せず、離れるのが最良であると。
一見納得しそうになるが、実はこれだけだとブリーダが引く理由にならない。何故ならブリーダは天川を殺せるのだ、無傷で。なのに勇者である自分を殺さない理由がない。
ここで消耗すると、清田たちの追撃を躱せないから? それはあるかもしれないが、だとしてもやはり天川を見逃すメリットは薄い。何せ神器は無限魔力、そして相手は天川の攻撃でダメージを受けないのだ。つまりブリーダの言っていることが本当ならば天川を消耗無しで倒すことが出来ることに他ならない。
それなのに、『見逃せ』とブリーダは要求してきた。
(それはつまり……『水霊の兵』は無限魔力じゃない、もしくはブリーダの身体に致命傷を与える手段が存在するということ!)
であれば、ガムシャラに攻撃して意地でも突破口を切り開くべきだ。ここで天川が諦めなければブリーダを倒せる可能性が残る。
「……つまり俺のやるべきことは、ごちゃごちゃ考えずに――」
腰を落とし、剣を右頬の上――野球のように、構える。
宝石の上で踏ん張り、周囲に展開した宝石の矢を全てブリーダへ向けて。
「さっきも言っただろう、取引に応じるのは無しだ」
「ギッギッギ、それなら苦しんで死ねや勇者」
「ほざいていろ!」
ガギィィィィン……ッ!
天川の『ロック・バスター』を『水霊の兵』で受け止めるブリーダ。鞭に当たる部分を剣のように変化させることでどうにか受けたらしい。
今の攻撃を防ぐ必要は無かったはずなのに防御した、何故――と思う間もなく、『水霊の兵』から無数の水で出来た触手が出てきて天川の『ロック・バスター』をからめとる。武器を奪うつもりか。
「無駄だ!」
「っとォ! ……ギッギッギ、人族ってのはどいつもこいつも力任せだなァ! オレらみたいに知的に出来ないもんか」
筋力で無理矢理引きちぎり、蹴りを『水霊の兵』の柄に叩きこむ。ここは水にすることは出来ないようだ、ならば――壊すことも可能ではなかろうか。
「取りあえず武器破壊からだ、ブリーダ!」
「ギッギッギ、果たしてやれるかなァ?」
やや余裕のない表情でそう叫ぶと、ブリーダは『水霊の兵』の鞭部分を伸ばして足元の海に突き刺した。
その次の瞬間――ブリーダの背後に巨大な津波が。五十メートルはあろうかというサイズのそれは、津波というより滝に近い。ナイアガラの滝が地響きをたてて襲いかかってきているようだ。
「――――ッ!」
全身の肌が泡立つ、背中の汗が全て冷や汗に変わる。思考が冷えて脳が空転する。エンストした車のようにカラカラと意味のない挙動を繰り返す。これ以上無い、明確な『死』のビジョンが天川の脳内を埋め尽くす。
なんの予備動作も無しにこれほどの魔法を使うなんて――
(飄々とした態度で無意識のうちに相手の実力を低く見積もっていたのか!?)
相手の持つ武器は神器に準ずるもの、であればあの程度出来て当然だろう。
パン、と頬を叩いてから全身を金色に輝かせる。神器に対抗するなら神器で、だ。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
天川は剣を握りしめ、全身を金色に輝かせる。向こうの神器にこれだけの規模が出来るのであれば。
オリジナルたるこちらが出来ない道理はない。
「『ロック・バスター』! 隕石を……降らせぇえええええ!」
天川の声に呼応するように『ロック・バスター』の透明な刀身が輝くと、小惑星程の大きさの宝石が天川の上部に出現した。
「いやいや、なんの冗談だよそれ」
「喰らえッッッッ!!!」
これ以上無い『死』の圧力には、こちらも同等の物を持って返す。
ブリーダは躱すこと無くその場に浮いたままだが――目が笑っていない。
「効かねぇけどよォ……こんなに何度もすり潰されるのは気分悪ィなァ……ッ!」
津波と隕石の激突――。圧倒的且つ異様なまでの爆音と共に海にクレーターが出来上がる。この結界はどういう造りになっているのかは知らないが、この隕石を連打すれば海を干上がらせることも出来そうだ。
天川はよしと思いもう一度隕石を生み出そうと――
「ああ、もう。サービスタイムは終わりだ勇者」
――ズガン!
喉を撃ち抜かれ、世界が反転する。間一髪のところで宝石の盾が間に入ったため致命傷は防いだが、その勢いに押されてひっくり返ってしまった。
「ヒュッ」
変な息の吸い込み方をしてしまう、予備動作が見えなかった。真っ直ぐ飛んできた――いや伸びた鞭なのだということは理解出来たが、動きが見えなかったせいで回避の動作に移れなかった。
「チッ……便利だなァ、神器ってのは」
ブリーダは更に二度、三度と『水霊の兵』で天川の急所を狙ってくる。今度は眉間と心臓だ。宝石の盾が殆どオートガードでそれらを防いでくれた。
焦りと変な息の吸い込み方をしたせいで乱れている呼吸を深呼吸で元に戻す。ジッとブリーダから目を逸らさず、警戒を緩めず……脳を再び冷静に。
(落ち着け、見えなかったが防げない攻撃じゃない)
しかし攻撃を当てようにも、アレをかいくぐって近づかなければならないわけか。少々骨が折れそうだ。
背後に宝石の手裏剣を大量に生み出し、ブリーダに向けて一直線に発射する。ブリーダは『水霊の兵』を何重にも分裂させると、先ほどの高速伸縮によって天川の手裏剣を撃ち落としていく。
「オレは魔物を生み出してそいつに戦わせるのが得意だってのによォ……めんどくせェ」
ブツブツと何かを呟きつつも、先ほどまでの飄々とした雰囲気が全て嘘だったかのように冷え切った、氷のような殺気を叩きつけてくる。
「……『光輝の力よ、勇者の明綺羅が命令する、この世の理に背き、我が敵を貫く光の槍を! ライトレーザー』!」
宝石の盾に身を隠しながら詠唱を完了する。天川の持つ光魔法で数少ない実戦でも使ったことがあるものだ。
光速で発射されるそれは本来視認して躱すことなど不可能なのだが――タメが長い、撃つ方向が視線で分かる、などの欠点をラノールさんに指摘されている。
とはいえ、こうして視線を宝石で隠しつつ撃ったのだから当たっても――
「フン」
――しゅるん、と黒い塊に吸い込まれてしまった。闇魔術か。
連打出来る魔法ではないので、もう一度撃つなら再び詠唱からだが……ブリーダは弧を描く軌道で天川を頭上から急襲してきた。
「っと!」
剣で弾き、そのまま宝石の足場を蹴って上へ。いくつも宝石で足場を生み出してブリーダの方へ駆けて行く。
ブリーダは露骨に苛立った顔になりつつ、『水霊の兵』を振りかぶった。
「だからァ……無駄だッ、つってんだろォがァッ!」
「生憎、俺は諦めが悪い気質でな。腕が振るえる限りは貴様を斬り続ける!」
バシュン! ブリーダの身体をやすやすと通り抜ける天川の刃。同時に『水霊の兵』から触手のように伸びる水の腕が天川の身体を再び拘束しようとする。
「ハッ!」
回転して触手を弾き、周囲に浮かばせている盾でブリーダの腕を切り裂く。そのまま『水霊の兵』を奪おうと手を伸ばすが――それよりも速く、地面から水弾が飛んできた。
「ッ!?」
驚き手を引っ込め、そのまま距離を取る。
ブリーダはニヤニヤした笑顔を消し、海に『水霊の兵』から伸ばした鞭を突き刺した。その途端、何体もの魔物が海から飛び出してきた。
「チッ……見せるつもりはなかったんだがなァ……オレのコレは」
苛立った口調……ながら、冷徹な目のまま次々と魔物を生み出すブリーダ。さっきまでとは違いまったく『ふざけ』が感じられない。
清田にデモンアシュラを破壊された時に見せた『キレたフリ』とは違う。偽物の殺意をぶつけてきた時とも違う。
ひたすら殺意を身に纏い、冷徹に魔物を増やすブリーダは……完全に別の人間に見える。もはや、悪意の塊とかそういう類いだ。
「……魔王」
つい、口をついて出た言葉。
ブリーダは魔物を増やしながらくいっ、と眉根を上げる。
「その名を軽々に口にするな。我らの長にして全生物の頂点に達するお方の名だ……せめて様をつけろ」
ギュっ、と殺意が凝縮され天川にぶつけられる。
適当なやつかと思いきや、魔王への忠誠心はあるのか。
天川はほんの少しだけ笑みを浮かべて首を振ってみる。
「なんでだ? カノンウルフに変身していた男は普通に『魔王の血』とかなんとか言っていたぞ」
「チッ、これだから人族は。『魔王の血』と魔王様の名には大きな隔たりがあるんだ……物質の名前と彼のお方の呼称を一緒にするんじゃねェよ」
魔族の感覚はよく分からないが……『魔王の血』はそういう物質の固有名詞だから不敬に当たらないが『魔王』と単に呼んだ場合は『魔族の王』の固有名詞になるから敬称をつけないといけない、ということだろうか。
天川はぐるりと肩を回してから剣を向ける。
「俺はいずれ魔王を倒す身だが……確かに忠誠を誓っている人間を軽んじられるのは気分が悪かろう。それに関してはすまない」
頭は下げず、しかしキッチリと謝意を籠めてそう告げる。ブリーダも何となく感じ取ったのか少しだけ目を細めてから『水霊の兵』を振った。
「変な野郎だ。ここで殺すのが惜しいぜ、ギッギッギ」
特徴的な笑い。しかし一切目が笑っていない。
来る――
「遺言なら伝えてやるぜ?」
「では貴様らの主に。『いつかその首を取りに行く』と頼む」
「そうかい!」
パァァン……ッ!
『水霊の兵』が空中を叩くと同時に、海面から三桁はあろうかという魔物が一斉に襲いかかってくる。
どれもこれも、Bランク以上――否、殆ど全てAランク並み。少しでも気を抜けばミンチにされてしまうだろう。
ぽぅ……と僅かに天川の身体が光る。
『私は折れない。だから、折れないで明綺羅君』
呼心の声が聞こえた気がした。
『死なないで、明綺羅君』
桔梗の声が聞こえた気がした。
『アキラ様、必ずや魔族を撃ち滅ぼしてください』
ティアーの声が聞こえた気がした。
幻聴か、それともこのバフのおかげか。
ありがとう三人とも――
『あ、そうだ明綺羅君。出来ればでいいんだけど相手から何か魔族の情報を奪ってきて! それを交渉カードにするから』
――幻聴にしてはいやに具体的だな。
『アキラ様、文化的なことでも構いませんわ。それと戦闘方法も後々文書に起こしたいので極力観察を……』
『もう! お、お二人とも! まずは生きて帰ることでしょう!? あ、明綺羅君! そ、そのバフ……私のとっておきですから! すっごい強いですから!』
『あ、じゃあ私もリジェネかける!』
『ちょっ……わ、わたくしの魔法はそういう使い方は……出来そうですわね。であればわたくしもほんの少しですが!』
気のせいじゃない! 本当に脳内に三人の声が!
混乱していると、バフが更に二種類。一つは呼心がよくかけてくれていたリジェネ、それの強化版。もう一つは精神力回復の魔法、ティアー王女のそれだ。
一気に天川の肉体が回復していく。喉の痛みも消える、これなら何も気にせず戦える。
「ふっ……ははははは!」
思わず大声で笑う。こらえきれなかった。
「んだァ? 死期を悟って狂ったか?」
怪訝な顔のブリーダ。
「いいや?」
目の前に迫る大量の死。
しかし微塵も怖くない。
一人じゃないのだから――
「行くぞ……ブリーダ!」
「ギッギッギ……死ね、勇者!」
水のオーク、それを『エクスカリバー』を乗せた『ロック・バスター』で切り裂く。更に宝石の弾丸――否、砲弾を四方八方に撃ち出して魔物の軍団を消し飛ばしていく。
左方向から来た斧、それを剣で受け止めて蹴り飛ばす。今度は触手――否、大量の腕が拳の雨を降らせてくるが宝石でガード。
三百六十度から水の弾丸がやってくるが――その全てが攻撃を受けると同時に回復していく。呼心のバフのおかげだ、これで何も気にせず敵陣へ突っ込める。
「うおおおおおおお!」
雄叫び。
金色の全身が更なる輝きを見せる。薄緑と赤いオーラが渦を巻いて天川を取り囲んだ。
支えられて生きている。
支えられて戦っている。
強く、強くそれを実感する。
「おいおい、だがなァ勇者ァ……何でそいつらが一撃で消し飛ばせると思った?」
目の前で大剣を振り下ろす水のオーガ、剣で受けそのまま切り飛ばす。
ズバァン! と水しぶきを上げてオーガは爆散するが、なんとその場で即座に復活してしまった。まるでブリーダのように。
「こいつら全員――」
「その通りィ!」
なるほど、一つ息を吸って全身に力を籠める。
皆のバフのおかげで――ほんの少しだけ無理が出来るようになった。
「どれだけ物理が無効と言っても、所詮は水だろう?」
ならば。
「蒸発すれば消滅するはずだ。はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
ブチブチブチィッ!
全身の筋肉が断裂した気分だが大丈夫、即座に呼心のバフで元通りだ。
さらにその痛みもティアーのバフがあるから我慢できる。意思高揚、重度のランナーズハイと言うやつが感覚としては近いだろうか。
その場でただ振るう、何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
あまりに異様な行為だったからか魔物たちも動きを止めたが――それはほんの少しの間だけ。即座に動き出す。
しかしもう遅い、準備は整った。周囲から襲い来る魔物たちに、桔梗のバフが乗った最大級の一撃――即ち、『超音速』の一撃を叩きこんでいく。
「ぜぁっ!」
しゅぼっ。
消えた、魔物が。
「はぁッ、せやぁッ ずりゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
剣を振るう。魔物が一瞬たりとも肉体を保てず消滅した。
跳躍し敵の攻撃を躱しながら――剣を振るう瞬間のみ全身を連動させて振り抜く。
『職スキル』、『超音速炎熱斬』を獲得しました。
脳内で響くスキル獲得音声。ピンチで新しい技に覚醒するとは、ありがたい話だ。
(ラノールさんが言っていた。自分の手札で打開出来ないピンチに陥った時は無理矢理にでも自分の手札を増やせ、と)
ブリーダの顔が驚きに染まる、それはそうだろう。コイツラが消し飛ぶということは――天川の刃が自身に届くようになったことに他ならないのだから。
「ギッギッギ……オイオイ、勇者……なんだよ、それ」
「これか?」
刀身が透明な『ロック・バスター』が炎熱で真っ赤に染まっている。実は刀身を石で覆い、超音速で剣を振り続けることで超高温まで熱したのだ。
熱した剣を更に超高速で振り抜けば、その肉体は温度に耐え切れず蒸発してしまうという――んじゃないかと思ってやってみた。その結果は御覧の通りだ。
「義務教育も伊達じゃないな。水は百度で沸騰する!」
「いやいやいやいや、おかしいだろおかしいだろおかしいだろ!? 何で剣の一振りでオレの魔物が蒸発するんだよォ!」
「実は俺にもよく分からん!」
だが出来る、それが重要だ。
打開策は手に入れた。
強力な味方がいることも思い出せた。
今の天川明綺羅がブリーダに負ける可能性は――
「無い!」
「チィィィッ!」
次々と魔物を生み出すブリーダ。さて、ブリーダが魔物を生み出す速度と天川が魔物を消し飛ばす速度、どちらが速いのか。
チキンレースだ。
「ギッギッギ……勇者サマは動きがいいねェ」
「ぜぁっ!」
ミシリ、骨が鳴る程力強く握りしめた神器を唐竹割に振るうが――ブリーダの身体は水となりすり抜けてしまう。
「ギッギッギ、効かねェなァ」
「ならば!」
周囲に浮かぶ宝石たちを変則的な軌道を持ってブリーダの全身にくまなくぶち当てる。すりつぶしてみれば多少は効くかと思ってやってみたが――
「無傷、か」
舌打ちを一つ。余裕しゃくしゃくな表情がなお苛立ちを加速させる――が、これもあくまでこちらの精神を揺さぶるための攻撃……否、口撃だろう。
「ギッギッギ……生きたまますり潰されてみろ、結構気持ち悪いぜ」
「遠慮する」
極力会話しないようにするのがベストだろう。
天川は剣を構えて息を一つ吐く。薄く、細く……イメージとしては一分間かけて肺の中の空気を空にするように。
ラノールさんから習った呼吸法、打開策が浮かばなければやれと言われたものだ。
『まあ呼吸法というとカッコいいが要するにただの深呼吸だ。だが大切なことだ、息を吐いて吸う……焦るとこれを忘れるんだ、人間は。だから焦らないためにやれ。どんな時も忘れるな、冷静さがカギだ』
ラノールの言葉を反芻しながらブリーダを眺める。
(俺の手の内でアレを突破する方法はないな)
冷静な思考でそう結論付ける。基本的に天川の攻撃は物理一辺倒だ。光魔法は「剣が鈍る。まずは剣からだ」と言われて磨いていない。
光魔法で蒸発させれば何とかなるのかもしれないが、それはつまり『終焉』を使うということに他ならず……あんな溜めの要る魔法を使う猶予を与えてくれるとは思えない。
再び距離を詰めて首を切り落とすが、やはり水を切り裂くことなど出来ないのか手応えが無い。
やむを得ず距離を取り、神器による攻撃に切り替える。
「だァから、それ気持ち悪いんだっつっただろ」
ブリーダは『水霊の兵』から水を出し宝石たちを迎撃しようとするが、逆に水程度で防げる攻撃ではない。押し返し、再び彼の身体を切り刻む。
「いててて!」
ニヤニヤと嗤いながらそんなことを叫ぶブリーダ。まったくもって緊張感を感じられないため……カマをかけてみることにする。
「俺の攻撃はお前に入らない、そしてお前の攻撃も俺には効かない――それが分かっていたから取引を持ち掛けたのか?」
「当たりだぜェ、勇者。オレ様はテメーを殺すのにすこぉーしだけ時間がかかる。すこぉーしだけ、な? ギッギッギ」
指で少しのジェスチャーをしながらそんなことを言うブリーダ。いちいち癇に障るが頭の冷静さは崩さない。
「だがテメーはオレ様を殺す手を持たない。そのまま殺してやってもいいんだが、これ以上王都に留まりたく無いんでな。ギッギッギ、今からでも取引に応じるか?」
つまり、ここで削り合いになるのはお互い無意味であると。
だから――ここで戦闘せず、離れるのが最良であると。
一見納得しそうになるが、実はこれだけだとブリーダが引く理由にならない。何故ならブリーダは天川を殺せるのだ、無傷で。なのに勇者である自分を殺さない理由がない。
ここで消耗すると、清田たちの追撃を躱せないから? それはあるかもしれないが、だとしてもやはり天川を見逃すメリットは薄い。何せ神器は無限魔力、そして相手は天川の攻撃でダメージを受けないのだ。つまりブリーダの言っていることが本当ならば天川を消耗無しで倒すことが出来ることに他ならない。
それなのに、『見逃せ』とブリーダは要求してきた。
(それはつまり……『水霊の兵』は無限魔力じゃない、もしくはブリーダの身体に致命傷を与える手段が存在するということ!)
であれば、ガムシャラに攻撃して意地でも突破口を切り開くべきだ。ここで天川が諦めなければブリーダを倒せる可能性が残る。
「……つまり俺のやるべきことは、ごちゃごちゃ考えずに――」
腰を落とし、剣を右頬の上――野球のように、構える。
宝石の上で踏ん張り、周囲に展開した宝石の矢を全てブリーダへ向けて。
「さっきも言っただろう、取引に応じるのは無しだ」
「ギッギッギ、それなら苦しんで死ねや勇者」
「ほざいていろ!」
ガギィィィィン……ッ!
天川の『ロック・バスター』を『水霊の兵』で受け止めるブリーダ。鞭に当たる部分を剣のように変化させることでどうにか受けたらしい。
今の攻撃を防ぐ必要は無かったはずなのに防御した、何故――と思う間もなく、『水霊の兵』から無数の水で出来た触手が出てきて天川の『ロック・バスター』をからめとる。武器を奪うつもりか。
「無駄だ!」
「っとォ! ……ギッギッギ、人族ってのはどいつもこいつも力任せだなァ! オレらみたいに知的に出来ないもんか」
筋力で無理矢理引きちぎり、蹴りを『水霊の兵』の柄に叩きこむ。ここは水にすることは出来ないようだ、ならば――壊すことも可能ではなかろうか。
「取りあえず武器破壊からだ、ブリーダ!」
「ギッギッギ、果たしてやれるかなァ?」
やや余裕のない表情でそう叫ぶと、ブリーダは『水霊の兵』の鞭部分を伸ばして足元の海に突き刺した。
その次の瞬間――ブリーダの背後に巨大な津波が。五十メートルはあろうかというサイズのそれは、津波というより滝に近い。ナイアガラの滝が地響きをたてて襲いかかってきているようだ。
「――――ッ!」
全身の肌が泡立つ、背中の汗が全て冷や汗に変わる。思考が冷えて脳が空転する。エンストした車のようにカラカラと意味のない挙動を繰り返す。これ以上無い、明確な『死』のビジョンが天川の脳内を埋め尽くす。
なんの予備動作も無しにこれほどの魔法を使うなんて――
(飄々とした態度で無意識のうちに相手の実力を低く見積もっていたのか!?)
相手の持つ武器は神器に準ずるもの、であればあの程度出来て当然だろう。
パン、と頬を叩いてから全身を金色に輝かせる。神器に対抗するなら神器で、だ。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
天川は剣を握りしめ、全身を金色に輝かせる。向こうの神器にこれだけの規模が出来るのであれば。
オリジナルたるこちらが出来ない道理はない。
「『ロック・バスター』! 隕石を……降らせぇえええええ!」
天川の声に呼応するように『ロック・バスター』の透明な刀身が輝くと、小惑星程の大きさの宝石が天川の上部に出現した。
「いやいや、なんの冗談だよそれ」
「喰らえッッッッ!!!」
これ以上無い『死』の圧力には、こちらも同等の物を持って返す。
ブリーダは躱すこと無くその場に浮いたままだが――目が笑っていない。
「効かねぇけどよォ……こんなに何度もすり潰されるのは気分悪ィなァ……ッ!」
津波と隕石の激突――。圧倒的且つ異様なまでの爆音と共に海にクレーターが出来上がる。この結界はどういう造りになっているのかは知らないが、この隕石を連打すれば海を干上がらせることも出来そうだ。
天川はよしと思いもう一度隕石を生み出そうと――
「ああ、もう。サービスタイムは終わりだ勇者」
――ズガン!
喉を撃ち抜かれ、世界が反転する。間一髪のところで宝石の盾が間に入ったため致命傷は防いだが、その勢いに押されてひっくり返ってしまった。
「ヒュッ」
変な息の吸い込み方をしてしまう、予備動作が見えなかった。真っ直ぐ飛んできた――いや伸びた鞭なのだということは理解出来たが、動きが見えなかったせいで回避の動作に移れなかった。
「チッ……便利だなァ、神器ってのは」
ブリーダは更に二度、三度と『水霊の兵』で天川の急所を狙ってくる。今度は眉間と心臓だ。宝石の盾が殆どオートガードでそれらを防いでくれた。
焦りと変な息の吸い込み方をしたせいで乱れている呼吸を深呼吸で元に戻す。ジッとブリーダから目を逸らさず、警戒を緩めず……脳を再び冷静に。
(落ち着け、見えなかったが防げない攻撃じゃない)
しかし攻撃を当てようにも、アレをかいくぐって近づかなければならないわけか。少々骨が折れそうだ。
背後に宝石の手裏剣を大量に生み出し、ブリーダに向けて一直線に発射する。ブリーダは『水霊の兵』を何重にも分裂させると、先ほどの高速伸縮によって天川の手裏剣を撃ち落としていく。
「オレは魔物を生み出してそいつに戦わせるのが得意だってのによォ……めんどくせェ」
ブツブツと何かを呟きつつも、先ほどまでの飄々とした雰囲気が全て嘘だったかのように冷え切った、氷のような殺気を叩きつけてくる。
「……『光輝の力よ、勇者の明綺羅が命令する、この世の理に背き、我が敵を貫く光の槍を! ライトレーザー』!」
宝石の盾に身を隠しながら詠唱を完了する。天川の持つ光魔法で数少ない実戦でも使ったことがあるものだ。
光速で発射されるそれは本来視認して躱すことなど不可能なのだが――タメが長い、撃つ方向が視線で分かる、などの欠点をラノールさんに指摘されている。
とはいえ、こうして視線を宝石で隠しつつ撃ったのだから当たっても――
「フン」
――しゅるん、と黒い塊に吸い込まれてしまった。闇魔術か。
連打出来る魔法ではないので、もう一度撃つなら再び詠唱からだが……ブリーダは弧を描く軌道で天川を頭上から急襲してきた。
「っと!」
剣で弾き、そのまま宝石の足場を蹴って上へ。いくつも宝石で足場を生み出してブリーダの方へ駆けて行く。
ブリーダは露骨に苛立った顔になりつつ、『水霊の兵』を振りかぶった。
「だからァ……無駄だッ、つってんだろォがァッ!」
「生憎、俺は諦めが悪い気質でな。腕が振るえる限りは貴様を斬り続ける!」
バシュン! ブリーダの身体をやすやすと通り抜ける天川の刃。同時に『水霊の兵』から触手のように伸びる水の腕が天川の身体を再び拘束しようとする。
「ハッ!」
回転して触手を弾き、周囲に浮かばせている盾でブリーダの腕を切り裂く。そのまま『水霊の兵』を奪おうと手を伸ばすが――それよりも速く、地面から水弾が飛んできた。
「ッ!?」
驚き手を引っ込め、そのまま距離を取る。
ブリーダはニヤニヤした笑顔を消し、海に『水霊の兵』から伸ばした鞭を突き刺した。その途端、何体もの魔物が海から飛び出してきた。
「チッ……見せるつもりはなかったんだがなァ……オレのコレは」
苛立った口調……ながら、冷徹な目のまま次々と魔物を生み出すブリーダ。さっきまでとは違いまったく『ふざけ』が感じられない。
清田にデモンアシュラを破壊された時に見せた『キレたフリ』とは違う。偽物の殺意をぶつけてきた時とも違う。
ひたすら殺意を身に纏い、冷徹に魔物を増やすブリーダは……完全に別の人間に見える。もはや、悪意の塊とかそういう類いだ。
「……魔王」
つい、口をついて出た言葉。
ブリーダは魔物を増やしながらくいっ、と眉根を上げる。
「その名を軽々に口にするな。我らの長にして全生物の頂点に達するお方の名だ……せめて様をつけろ」
ギュっ、と殺意が凝縮され天川にぶつけられる。
適当なやつかと思いきや、魔王への忠誠心はあるのか。
天川はほんの少しだけ笑みを浮かべて首を振ってみる。
「なんでだ? カノンウルフに変身していた男は普通に『魔王の血』とかなんとか言っていたぞ」
「チッ、これだから人族は。『魔王の血』と魔王様の名には大きな隔たりがあるんだ……物質の名前と彼のお方の呼称を一緒にするんじゃねェよ」
魔族の感覚はよく分からないが……『魔王の血』はそういう物質の固有名詞だから不敬に当たらないが『魔王』と単に呼んだ場合は『魔族の王』の固有名詞になるから敬称をつけないといけない、ということだろうか。
天川はぐるりと肩を回してから剣を向ける。
「俺はいずれ魔王を倒す身だが……確かに忠誠を誓っている人間を軽んじられるのは気分が悪かろう。それに関してはすまない」
頭は下げず、しかしキッチリと謝意を籠めてそう告げる。ブリーダも何となく感じ取ったのか少しだけ目を細めてから『水霊の兵』を振った。
「変な野郎だ。ここで殺すのが惜しいぜ、ギッギッギ」
特徴的な笑い。しかし一切目が笑っていない。
来る――
「遺言なら伝えてやるぜ?」
「では貴様らの主に。『いつかその首を取りに行く』と頼む」
「そうかい!」
パァァン……ッ!
『水霊の兵』が空中を叩くと同時に、海面から三桁はあろうかという魔物が一斉に襲いかかってくる。
どれもこれも、Bランク以上――否、殆ど全てAランク並み。少しでも気を抜けばミンチにされてしまうだろう。
ぽぅ……と僅かに天川の身体が光る。
『私は折れない。だから、折れないで明綺羅君』
呼心の声が聞こえた気がした。
『死なないで、明綺羅君』
桔梗の声が聞こえた気がした。
『アキラ様、必ずや魔族を撃ち滅ぼしてください』
ティアーの声が聞こえた気がした。
幻聴か、それともこのバフのおかげか。
ありがとう三人とも――
『あ、そうだ明綺羅君。出来ればでいいんだけど相手から何か魔族の情報を奪ってきて! それを交渉カードにするから』
――幻聴にしてはいやに具体的だな。
『アキラ様、文化的なことでも構いませんわ。それと戦闘方法も後々文書に起こしたいので極力観察を……』
『もう! お、お二人とも! まずは生きて帰ることでしょう!? あ、明綺羅君! そ、そのバフ……私のとっておきですから! すっごい強いですから!』
『あ、じゃあ私もリジェネかける!』
『ちょっ……わ、わたくしの魔法はそういう使い方は……出来そうですわね。であればわたくしもほんの少しですが!』
気のせいじゃない! 本当に脳内に三人の声が!
混乱していると、バフが更に二種類。一つは呼心がよくかけてくれていたリジェネ、それの強化版。もう一つは精神力回復の魔法、ティアー王女のそれだ。
一気に天川の肉体が回復していく。喉の痛みも消える、これなら何も気にせず戦える。
「ふっ……ははははは!」
思わず大声で笑う。こらえきれなかった。
「んだァ? 死期を悟って狂ったか?」
怪訝な顔のブリーダ。
「いいや?」
目の前に迫る大量の死。
しかし微塵も怖くない。
一人じゃないのだから――
「行くぞ……ブリーダ!」
「ギッギッギ……死ね、勇者!」
水のオーク、それを『エクスカリバー』を乗せた『ロック・バスター』で切り裂く。更に宝石の弾丸――否、砲弾を四方八方に撃ち出して魔物の軍団を消し飛ばしていく。
左方向から来た斧、それを剣で受け止めて蹴り飛ばす。今度は触手――否、大量の腕が拳の雨を降らせてくるが宝石でガード。
三百六十度から水の弾丸がやってくるが――その全てが攻撃を受けると同時に回復していく。呼心のバフのおかげだ、これで何も気にせず敵陣へ突っ込める。
「うおおおおおおお!」
雄叫び。
金色の全身が更なる輝きを見せる。薄緑と赤いオーラが渦を巻いて天川を取り囲んだ。
支えられて生きている。
支えられて戦っている。
強く、強くそれを実感する。
「おいおい、だがなァ勇者ァ……何でそいつらが一撃で消し飛ばせると思った?」
目の前で大剣を振り下ろす水のオーガ、剣で受けそのまま切り飛ばす。
ズバァン! と水しぶきを上げてオーガは爆散するが、なんとその場で即座に復活してしまった。まるでブリーダのように。
「こいつら全員――」
「その通りィ!」
なるほど、一つ息を吸って全身に力を籠める。
皆のバフのおかげで――ほんの少しだけ無理が出来るようになった。
「どれだけ物理が無効と言っても、所詮は水だろう?」
ならば。
「蒸発すれば消滅するはずだ。はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
ブチブチブチィッ!
全身の筋肉が断裂した気分だが大丈夫、即座に呼心のバフで元通りだ。
さらにその痛みもティアーのバフがあるから我慢できる。意思高揚、重度のランナーズハイと言うやつが感覚としては近いだろうか。
その場でただ振るう、何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
あまりに異様な行為だったからか魔物たちも動きを止めたが――それはほんの少しの間だけ。即座に動き出す。
しかしもう遅い、準備は整った。周囲から襲い来る魔物たちに、桔梗のバフが乗った最大級の一撃――即ち、『超音速』の一撃を叩きこんでいく。
「ぜぁっ!」
しゅぼっ。
消えた、魔物が。
「はぁッ、せやぁッ ずりゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
剣を振るう。魔物が一瞬たりとも肉体を保てず消滅した。
跳躍し敵の攻撃を躱しながら――剣を振るう瞬間のみ全身を連動させて振り抜く。
『職スキル』、『超音速炎熱斬』を獲得しました。
脳内で響くスキル獲得音声。ピンチで新しい技に覚醒するとは、ありがたい話だ。
(ラノールさんが言っていた。自分の手札で打開出来ないピンチに陥った時は無理矢理にでも自分の手札を増やせ、と)
ブリーダの顔が驚きに染まる、それはそうだろう。コイツラが消し飛ぶということは――天川の刃が自身に届くようになったことに他ならないのだから。
「ギッギッギ……オイオイ、勇者……なんだよ、それ」
「これか?」
刀身が透明な『ロック・バスター』が炎熱で真っ赤に染まっている。実は刀身を石で覆い、超音速で剣を振り続けることで超高温まで熱したのだ。
熱した剣を更に超高速で振り抜けば、その肉体は温度に耐え切れず蒸発してしまうという――んじゃないかと思ってやってみた。その結果は御覧の通りだ。
「義務教育も伊達じゃないな。水は百度で沸騰する!」
「いやいやいやいや、おかしいだろおかしいだろおかしいだろ!? 何で剣の一振りでオレの魔物が蒸発するんだよォ!」
「実は俺にもよく分からん!」
だが出来る、それが重要だ。
打開策は手に入れた。
強力な味方がいることも思い出せた。
今の天川明綺羅がブリーダに負ける可能性は――
「無い!」
「チィィィッ!」
次々と魔物を生み出すブリーダ。さて、ブリーダが魔物を生み出す速度と天川が魔物を消し飛ばす速度、どちらが速いのか。
チキンレースだ。
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