異世界なう―No freedom,not a human―
201話 マルチヘッドなう
「うわあぁあああああああああ……と、驚いてはみたものの。概ね想定通りかな。魔昇華は途切れちゃったけど」
身体の中でバフがしっかり効いているのを自覚する。結界の影響を受けていないのは間違いないだろう。
いくら相手が魔族だろうとキアラのバフの方が凄いに決まっているからね。
着地すると同時に辺りを見渡すが……廃車置き場のようなゴテゴテしたスクラップが散乱する場所だ。
足場が悪いし、遮蔽物は多いし……取りあえず飛ぶか。
「ん?」
俺が離陸するやいなや、全方位から風の槍が飛んできた。急いで水の結界を張りそれらを防ぎ、敵の位置を探る。
魔力を『視』る眼に切り替えて辺りを見渡すが――
(位置が不定、っていうか満遍なく敵の魔力が漂っていて『視』辛いね)
ならばとやり方を変更。自分を中心に三百六十度風を放って音響探知機のように周囲を探る。
(……四つ、魔力の煮凝りみたいなのがあるね。三つは囮かそれとも全部か)
俺じゃその違いは分からない。
だけど俺が分からなくても――
(カカカッ! 右後方!)
(了解)
――ヨハネスの目は欺けない。
蠢く魔力の渦……みたいなものに、生み出した火炎を刃のようにしてぶつける。
雨あられと降らされた炎の刃が風でかき消され、魔力が更に濃くなる。
「へぇ……あたしの追手は三叉かぁ。一番解体したいと思ってたからちょうどいいや」
ひゅるるるるる……。
風が集まり、人間の形をとる。ホップリィ、とか呼ばれてたっけ。
さっき見た時と違い髪が薄い緑に光っており、グラデーションで先の方が薄く消えかかっている。まるで風……だね。それ以外は魔族特有の黒いローブで隠れているが。
知的な笑みを讃えた美人……なんだろうけど、目が逝ってる。マッドサイエンティストとかそういう類いじゃないかな。
人族の魔法師でもよくいるけど、こういう連中は決まって話が通じない。
「だから肉体言語で会話するのがベストだね」
さっきも言った通り、今はキアラのおかげで敵のデバフは効いていない。それでいて全くと言っていいほど周囲の被害を気にしなくていい。
全力で戦れそうだ。
「肉体言語……? あたし、苦手なのよね」
ひゅるるる……。
渦を巻いた風が弾丸となって俺の方へと飛んでくる。それを俺も風の渦で相殺しようとした瞬間……あっさりと、掻き消えてしまった。
風と風がぶつかり合ってやられたんじゃない。まさか――
「風のコントロールを奪われた!?」
(カカカッ! キョースケ、珍しイナァ!)
舌打ちを一つ。風のコントロールを奪われれば飛べないし、跳べない。というか俺の戦略の全てが瓦解する。手札の殆どを持っていかれると言ってもいい。
パニックに――なるかと思いきや、俺は殆ど反射的にジェット水流を足から出し空中制御を取り戻し、水壁で全ての風を相殺した。
更に態勢を立て直すためにエクスプロードファイヤをいくつも敵に向かって撃つと同時に地面に着地、周囲の瓦礫を水で巻き上げることで自分の姿を隠す。
「自分でもビックリするくらい冷静だね」
(カカカッ、いい切り替えだ。来るゾ!)
ズドドドドド!
敵の撃ち出した風によって巻き上げた瓦礫が悉く飛ばされるが、その場から離脱して敵の位置を確認。水の刃を敵に撃ち出す。
「あは、は」
「ちょっと気味が悪いね」
それらを防がれはしたが、取りあえずお互い対面の位置に戻ってくる。
相手が一度攻撃の手を緩めたので俺も手を止め魔力を練る作業に戻る。
しかし――
(相手の魔法のコントロールを奪うなんてよくやってたけど)
この世界に来て恐らく一番多く使っている風、それのコントロールを奪われた。いくらこっちが切札を切ってないとはいえ、それは相手も同じこと。
それは即ち――魔法師としての腕で完敗しているということだ。
「ふふ……」
コォォォォン…………。木と木が打ち鳴らされたような音が鳴る。俺のよく知っている音だ。
「……そりゃ、出来るか。人族に入り込んでくるような魔族だもんね」
「三叉もどうぞ」
(カカカッ、舐めラレテンナァ、キョースケ)
「みたいだね」
俺は苦笑いしながら練った魔力を周囲に放出していく。赤紫色に染まる俺の魔力が臨界点に達したとき、ドッ! と物凄い力が俺の中から湧き上がってくる。
「「『魔昇華』」」
グァッ!
衝撃波をまき散らしながら二人の『魔昇華』が完了する。『力』と『力』が二人の間でぶつかり合い、クレーターが出来上がった。
そんな俺の『魔昇華』を見て、ほんの少し、ホップリィが目を見開く。
……同時に、俺も。
「……流石は三属性所持者。緑がかった赤紫なんて初めて見たわ」
「何その色……」
水色と……橙色、そして青。それが混じり合った奇妙な色合いの魔力を身に纏うホップリィ。
……俺以外で何色もの魔力を持ってる魔法師なんて初めて見た。魔族も含めて。
っていうか今、変なことを言われたような。
「ヘッドバッドだかなんだか知らないけど……君も三属性使えるってこと?」
「三属性所持者よ。あたしや貴方のように二属性以上の魔法属性を持つ者のことを多属性所持者って呼ぶの。貴方は三属性だから三属性所持者。そして槍使いだから――三叉」
聞いたことが無い……魔族側の用語だろうか。そして三叉っていうのは『槍』使いで『三属性』の魔法師だからか。分かりにくいな。 
俺は風の刃をいくつか生み出し、ホップリィに向けて撃ち出した。
しかし――
「ん、まあそうなるか」
――俺の風はコントロールを奪われ、逆に跳ね返される。跳ね返された風が近くまで来ると、もう一度俺がコントロールを奪って霧散させることが出来た。
ホップリィはほんの少しだけ驚きに目を見開く。再度コントロールされるとは思わなかったらしい。
そのことが癇に障ったか、がりがりと頭を掻くと……物凄い形相で風の刃を生み出した。一、二……いや数えられるような量じゃないね。
俺は舌打ちを一つ。足に風を纏い全力でその場を離脱する。
轟々と風の刃によって生み出される嵐。一度でも足を踏み入れれば即座にバラバラにされてしまうだろう。
一瞬だけ俺が纏う風に干渉があったが、流石に油断していなければ密着している風までは奪われない。攻撃手段としての風は失ったが、防御や強化、移動手段としてなら大丈夫だね。
(首の皮一枚……ってところかな)
(カカカッ! ソコまで絶望的なコトジャネエダロォ)
ヨハネスの軽口。
俺はそれに苦笑いを返しつつ、風の結界を張る。風は速いが、軽い。弾幕を張るのには向いていない、鋭さで一撃必殺を狙うべきだ。
こんな雑な風、牽制にすらならない。
「……ふぅん、いい風ね」
「そっちの風はちょっとイマイチかな」
声を風に乗せて送ってきたので、俺も同じ魔法で返す。ミラーマッチなんて滅多にやらないけど……戦闘中に声を張り上げなくていいのは楽でいい。
風の弾幕が止んだ向こうにはホップリィがムスッとした表情で腕を組んでいた。魔法師らしいね、戦闘中に手を組むなんて。
「魔法師は……結構悠長な戦い方をするね」
二人の距離はおよそ三十メートルといったところ。槍ならまだ遠いが、魔法師同士の闘いなら既に射程範囲内だ。
「じゃあ俺も」
俺も腕を組み、ホップリィの出方を窺う。
ホップリィは舐められたと思ったかピクリと眉を上げると……
「解体すのに手加減はしないわよ」
とぷん……と水がホップリィの周囲に溢れ出した。イソギンチャクのようにうねうねと蠢く水が俺の身体を貫かんとすごい勢いで伸びる。
面白い、俺は水で盾を生み出すとそれらを受け止め……コントロールを奪う。
俺の水を混ぜればホップリィの生み出した水でも操ることが出来るのか。
(ヨハネス、これ完全にコントロール奪うのは難しい?)
(カカカッ、流石に五分ってトコロダナァ。タダ、風の時と違って一方的に奪わレルコトハネェダロウナァ!)
俺の中じゃ一番練度の低い水はほぼ五分、と。魔力の色合いの中に緑系統が無かったことと、肉体が風のようになっているところから……ホップリィが融合している魔物は風系統、おそらく風精霊系だろう。
魔物の力が合わさった風だと分が悪いが、そうでないならとんとんってところだね。
「ふ……ふふふ……!」
ホップリィはいきなり肩を震わせたかと思うと、ガリガリと頭を掻く。魔力を膨れ上がらせ――地面に撃ち込んだ。
大きな音を立てながら地面が隆起し岩のゴーレムが生み出された。その数……約三十。しかもそれらが全て氷の鎧と剣、そして水の鞭で武装している。 
さらに空を覆う程の氷の槍、ゴーレムの生み出されていた足元は湿地……というより完全に沼となっており、どんどん広がっていく。
ゴーレムを出したのに足場を悪くしてどうするんだろう……と思ったらゴーレムは足元を凍らせて歩いていた。
「へぇ……」
風は自分の周囲でないと使えない。迎撃に使えるのは炎と水だけか。
まずは炎の鷹を大量に生み出す。そして沼地を俺の水で侵食していき、敵に有利なだけのフィールドを作らせないようにする。
そして魔法生物には魔法生物をぶつけるために、ゴーレム迎撃用のスライムを大量に生み出して準備完了。 
「ヨハネス、スライムの制御はお願い」
(カカカッ! アイヨォッ!)
バチッ、とホップリィと目が合う。
二人とも目を細め――
「「行け」」
お互いのど真ん中で魔法が激突する。上空の氷槍は俺の炎の鳥が迎撃していくが、予想以上に威力が高い。いくらか撃ち漏らして俺のところに飛んできてしまった。仕方なく風で防御する。
一方ゴーレムにまとわりつき、ミシミシと締め上げて行くスライムたち。氷の剣も水の鞭も役に立たず俺のスライムが蹂躙していく。
空中戦は俺の負け、地上戦は俺の勝ちってところか。
「さて……魔力は十分集まった」
(カカカッ! ぶっ放してヤレ!)
お互いの魔法同士が中心で爆ぜている間に大技を準備する。俺は炎、ホップリィのアレは……土かな?
手に魔力が集中していく。
「喰らえ!」
互いの中心で火球と岩球がぶつかり合い、爆ぜた。その余波で互いの魔法獣や上空の魔法は一時消し飛ぶが、お互い即座に呼び出して再び相手の隙を探る。互いの出力は同じくらいか。
術者はその場から動かず、敵の魔法を打ち消し、破壊し、本体へと自分の攻撃を通す。
魔法師同士の戦い、ってやつだね。 
「……あは、あはは! 流石は三叉! あたしと魔法で撃ち合えるなんてね! 人族のくせに――魔族みたいな魔法を使うのね!」
狂ったように笑うホップリィ。まるで実験に成功しマッドサイエンティストの放つ狂喜のごとく。
魔法戦はほぼ互角。魔力の出力もそんなに変わらないか。
……となると手札の多い方が勝ちに近いわけだけど――
「ふふ……ははははあはは! 互いに多属性所持者、それなら属性が多い方が勝つのは明確よねぇ!」
そう言ったホップリィは上空の嵐に干渉してきた。俺は風の刃を撃ち出して牽制するが――コントロールを奪われる。
「えっと……俺が三属性所持者ってことは、君は四属性所持者ってことになるのかな?」
そう言って苦笑いを向けると、ホップリィは心底嬉しそうに首を振る。
「違うわ……。あたしは三属性所持者でも、四属性所持者でも無い……!」
どこからともなく巨大な――俺の背程はあろうかという杖を取り出すホップリィ。
(――ッ!?)
『視』るまでもない。見るだけで分かる。
圧倒的な『力』。見る者全てがひれ伏すような『圧』。
そこにあるエネルギーはただの魔力ではない。分類不能なパワー。
まさか……神器……!?
「あははははっは! 喰らえ、喰らえ!」
一気にガキくさい口調になったホップリィは……バチバチと雷撃を杖に纏わせた。そして地面からゴーレムを呼び出し、巨大な杖を持たせると……
「『雷鳴の帝』……!」
「がぁぁぁあああああああ!」
バチバチバチバチバチバチバチ!!!
――何も見えなかった。
予備動作が一切なく、俺の肉体を雷が貫いた。
「あたしは自身の持つ三属性に加えて魔王の血で得た風! そしてこの新造神器! 『雷鳴の帝』の雷で――五属性所持者! あたしは歴史上初の五属性所持者よ!」
心臓が跳ねる。恋じゃないのに。
無理矢理肉体が変な方向に動こうとする。手が握りしめられたまま動かない。ジュウジュウと身体から嫌な音が。 
「あ、がっ……じ、神器、かい……ほう……! 喰らいつくせ……『パンドラ・ディヴァー』!」
轟!
俺の手の中で『力』が暴れる。ホップリィの振るうそれと遜色ない『圧』が周囲に波のように広がっていく。
光り輝き、槍が一瞬にして姿を変える。刀身は方天画戟のように二枚の刃が増え、エメラルドグリーンに。七つの帯が石突からあふれ出し揺らめいた。
(って、遜色ないって……)
逆だろう。俺の持つ神器と遜色ない『圧』を纏うあの武器がおかしい。
『カカカッ! キョースケェ、大ピンチじゃネェカァ!』
「うる、さい……!」
俺は『パンドラ・ディヴァー』で全ての雷を封印し、そのまま肉体に三色のエンチャントをかける。
「ヨハネス……純水の結界だ!」
『カカカッ! リョーカイ!』
雷……要するに電気なら、絶縁体で防げる。古典的だが、一切何も含まない『純水』は絶縁体だ。
俺一人の力じゃそんなものを作れないが、ヨハネスの力を借りれば何とかなる。
『ヨッ!』
バチバチバチバチ!
目の前でスパークが迸るが、俺まではたどり着かない。今のうちに回復薬のキャップを開け、口の中に流し込む。
「ぷはぁ」
ツンと肉の灼ける臭いが俺の鼻を襲う。どこから……と思ったら俺の身体だ。よく見ればあちこち焼け焦げている。
『カカカッ! キョースケェ、オレ様をコンナに早い頻度で呼び出すトハナァ』
「……言われてみればソードスコルパイダーとやり合ったの一週間ちょっと前だもんね」
ヨハネスは楽しそうに笑うが、俺はそっちに構っている余裕はない。
肉体に水を纏い、焦げたところを冷やす。どうせ後でキアラに頼めば全部治るが応急処置は大切だ。
回復薬をもう一本。これだけ飲めば十分だろう。 
「ったく、取りあえず結界内でいくつか魔法を生み出して……っと」
さっきの鷹とか虎みたいに精緻なものではなく、もっと単純な造りの魔法獣。それをけしかけて敵のゴーレムからの攻撃を防ぐ。
「ヨハネス! さっきの魔法の解析結果は?」
『カカカッ! お前の見立てとは少し違っテタナァ。アリャ神器で生み出された雷ジャネェ』
ヨハネスの解析結果に俺は少し眉を寄せる。
「どういうこと?」
『詳しいコトはアレソノモノを解析シネェと分かンネェが……アノ武器自体は神器クラスの性能を持ってルダロウ。ダガ生み出されてる魔法自体は神器由来のモンジャネェ。神器ミテェな武器を使って普通の魔術を撃っテルッテ感じダナァ』
「それはつまり……天川の撃つ岩や『パンドラ・ディヴァー』から出ている封印帯みたいなものはそもそも性質が違う魔術だけど、あれから生み出されてる魔術自体は普通の魔術。だけど……『雷鳴の帝』? は神器並みの性能を持ってるってこと?」
『アア。模造神器、疑似神器ってトコロダナァ。ガワだけドレダケ近づけても――』
コゥ、と『パンドラ・ディヴァー』が光る。
『見せつけろ』とでも言うように。
『――真打には敵わネェ』
「なるほどね」
敵が撃ち出してきている魔法を封印し、俺の魔力に変換する。
……ああ、言われてみれば雷をただ撃つってのは強いけど。
それを全部俺の力に出来るって考えれば――こっちの方が強いかな。
俺は活力煙を咥え、火を点けて煙を吸い込む。
「ふぅ~……さてさて、どうするかな」
『カカカッ! イツモのヤッテヤレ。宣戦布告ダ』
「――OK」
俺は炎のブーストで空へ飛びあがり、生み出した炎の雨で絨毯爆撃。しかし当然、ホップリィには届かない。
「やれやれ、五属性か……俺、自分以外の多属性所持者と戦ったこと無いんだよね。しかも魔法師同士一対一でやり合うのも初めてかもね」
いやまあ俺は魔法師じゃないんだけど……でもせっかくだ。相手の出方を見るという意味でも魔法師として向かう方が得策だろう。
通常の戦闘と違い、魔法師はお互いの中間で魔法をぶつけ合う。結界や対抗魔法などで相手の魔法を防ぎつつ、お互いの魔力をすり減らす消耗戦――それが魔法師同士の戦いだ。攻撃をしなければ敵に好き放題されるし、防げねばカウンターを貰う。超高度なじゃんけんみたいなものだ。
俺はアイテムボックスから以前キアラから渡された杖とマントを取り出す。……ホントはシュリーから貰った杖を使いたいところだけどアレは実戦用じゃなくて観賞用だからね。
さて、初めて尽くめの戦いだ――
「――俺の、経験値になってくれよ?」
「胸を貸してあげるわ、三叉」
嵐が、焔が、激流が渦を巻く。
雷が、暴風が、巨岩が乱舞する。
「『紫色の力よ! はぐれの京助が命令する。この世の理に背き、眼前の全てを薙ぎ払う超越の一撃を顕現させよ! バイオレンスタイフーン』!」
炎と水で覆ったエクスプロードファイヤと水の槍を混ぜた嵐――を大量に生み出して一つに固めた魔法。 
それをニヤリと笑いながらホップリィに向けて落とした。
「呪文詠唱なんて、カッコいい」
ホップリィは車程の大きさの石を巻き上げた雷交じりの嵐を俺の魔法にぶつけてくる。
次の瞬間。
爆音、激音と共に互いの生み出した魔法獣が消し飛んだ。
身体の中でバフがしっかり効いているのを自覚する。結界の影響を受けていないのは間違いないだろう。
いくら相手が魔族だろうとキアラのバフの方が凄いに決まっているからね。
着地すると同時に辺りを見渡すが……廃車置き場のようなゴテゴテしたスクラップが散乱する場所だ。
足場が悪いし、遮蔽物は多いし……取りあえず飛ぶか。
「ん?」
俺が離陸するやいなや、全方位から風の槍が飛んできた。急いで水の結界を張りそれらを防ぎ、敵の位置を探る。
魔力を『視』る眼に切り替えて辺りを見渡すが――
(位置が不定、っていうか満遍なく敵の魔力が漂っていて『視』辛いね)
ならばとやり方を変更。自分を中心に三百六十度風を放って音響探知機のように周囲を探る。
(……四つ、魔力の煮凝りみたいなのがあるね。三つは囮かそれとも全部か)
俺じゃその違いは分からない。
だけど俺が分からなくても――
(カカカッ! 右後方!)
(了解)
――ヨハネスの目は欺けない。
蠢く魔力の渦……みたいなものに、生み出した火炎を刃のようにしてぶつける。
雨あられと降らされた炎の刃が風でかき消され、魔力が更に濃くなる。
「へぇ……あたしの追手は三叉かぁ。一番解体したいと思ってたからちょうどいいや」
ひゅるるるるる……。
風が集まり、人間の形をとる。ホップリィ、とか呼ばれてたっけ。
さっき見た時と違い髪が薄い緑に光っており、グラデーションで先の方が薄く消えかかっている。まるで風……だね。それ以外は魔族特有の黒いローブで隠れているが。
知的な笑みを讃えた美人……なんだろうけど、目が逝ってる。マッドサイエンティストとかそういう類いじゃないかな。
人族の魔法師でもよくいるけど、こういう連中は決まって話が通じない。
「だから肉体言語で会話するのがベストだね」
さっきも言った通り、今はキアラのおかげで敵のデバフは効いていない。それでいて全くと言っていいほど周囲の被害を気にしなくていい。
全力で戦れそうだ。
「肉体言語……? あたし、苦手なのよね」
ひゅるるる……。
渦を巻いた風が弾丸となって俺の方へと飛んでくる。それを俺も風の渦で相殺しようとした瞬間……あっさりと、掻き消えてしまった。
風と風がぶつかり合ってやられたんじゃない。まさか――
「風のコントロールを奪われた!?」
(カカカッ! キョースケ、珍しイナァ!)
舌打ちを一つ。風のコントロールを奪われれば飛べないし、跳べない。というか俺の戦略の全てが瓦解する。手札の殆どを持っていかれると言ってもいい。
パニックに――なるかと思いきや、俺は殆ど反射的にジェット水流を足から出し空中制御を取り戻し、水壁で全ての風を相殺した。
更に態勢を立て直すためにエクスプロードファイヤをいくつも敵に向かって撃つと同時に地面に着地、周囲の瓦礫を水で巻き上げることで自分の姿を隠す。
「自分でもビックリするくらい冷静だね」
(カカカッ、いい切り替えだ。来るゾ!)
ズドドドドド!
敵の撃ち出した風によって巻き上げた瓦礫が悉く飛ばされるが、その場から離脱して敵の位置を確認。水の刃を敵に撃ち出す。
「あは、は」
「ちょっと気味が悪いね」
それらを防がれはしたが、取りあえずお互い対面の位置に戻ってくる。
相手が一度攻撃の手を緩めたので俺も手を止め魔力を練る作業に戻る。
しかし――
(相手の魔法のコントロールを奪うなんてよくやってたけど)
この世界に来て恐らく一番多く使っている風、それのコントロールを奪われた。いくらこっちが切札を切ってないとはいえ、それは相手も同じこと。
それは即ち――魔法師としての腕で完敗しているということだ。
「ふふ……」
コォォォォン…………。木と木が打ち鳴らされたような音が鳴る。俺のよく知っている音だ。
「……そりゃ、出来るか。人族に入り込んでくるような魔族だもんね」
「三叉もどうぞ」
(カカカッ、舐めラレテンナァ、キョースケ)
「みたいだね」
俺は苦笑いしながら練った魔力を周囲に放出していく。赤紫色に染まる俺の魔力が臨界点に達したとき、ドッ! と物凄い力が俺の中から湧き上がってくる。
「「『魔昇華』」」
グァッ!
衝撃波をまき散らしながら二人の『魔昇華』が完了する。『力』と『力』が二人の間でぶつかり合い、クレーターが出来上がった。
そんな俺の『魔昇華』を見て、ほんの少し、ホップリィが目を見開く。
……同時に、俺も。
「……流石は三属性所持者。緑がかった赤紫なんて初めて見たわ」
「何その色……」
水色と……橙色、そして青。それが混じり合った奇妙な色合いの魔力を身に纏うホップリィ。
……俺以外で何色もの魔力を持ってる魔法師なんて初めて見た。魔族も含めて。
っていうか今、変なことを言われたような。
「ヘッドバッドだかなんだか知らないけど……君も三属性使えるってこと?」
「三属性所持者よ。あたしや貴方のように二属性以上の魔法属性を持つ者のことを多属性所持者って呼ぶの。貴方は三属性だから三属性所持者。そして槍使いだから――三叉」
聞いたことが無い……魔族側の用語だろうか。そして三叉っていうのは『槍』使いで『三属性』の魔法師だからか。分かりにくいな。 
俺は風の刃をいくつか生み出し、ホップリィに向けて撃ち出した。
しかし――
「ん、まあそうなるか」
――俺の風はコントロールを奪われ、逆に跳ね返される。跳ね返された風が近くまで来ると、もう一度俺がコントロールを奪って霧散させることが出来た。
ホップリィはほんの少しだけ驚きに目を見開く。再度コントロールされるとは思わなかったらしい。
そのことが癇に障ったか、がりがりと頭を掻くと……物凄い形相で風の刃を生み出した。一、二……いや数えられるような量じゃないね。
俺は舌打ちを一つ。足に風を纏い全力でその場を離脱する。
轟々と風の刃によって生み出される嵐。一度でも足を踏み入れれば即座にバラバラにされてしまうだろう。
一瞬だけ俺が纏う風に干渉があったが、流石に油断していなければ密着している風までは奪われない。攻撃手段としての風は失ったが、防御や強化、移動手段としてなら大丈夫だね。
(首の皮一枚……ってところかな)
(カカカッ! ソコまで絶望的なコトジャネエダロォ)
ヨハネスの軽口。
俺はそれに苦笑いを返しつつ、風の結界を張る。風は速いが、軽い。弾幕を張るのには向いていない、鋭さで一撃必殺を狙うべきだ。
こんな雑な風、牽制にすらならない。
「……ふぅん、いい風ね」
「そっちの風はちょっとイマイチかな」
声を風に乗せて送ってきたので、俺も同じ魔法で返す。ミラーマッチなんて滅多にやらないけど……戦闘中に声を張り上げなくていいのは楽でいい。
風の弾幕が止んだ向こうにはホップリィがムスッとした表情で腕を組んでいた。魔法師らしいね、戦闘中に手を組むなんて。
「魔法師は……結構悠長な戦い方をするね」
二人の距離はおよそ三十メートルといったところ。槍ならまだ遠いが、魔法師同士の闘いなら既に射程範囲内だ。
「じゃあ俺も」
俺も腕を組み、ホップリィの出方を窺う。
ホップリィは舐められたと思ったかピクリと眉を上げると……
「解体すのに手加減はしないわよ」
とぷん……と水がホップリィの周囲に溢れ出した。イソギンチャクのようにうねうねと蠢く水が俺の身体を貫かんとすごい勢いで伸びる。
面白い、俺は水で盾を生み出すとそれらを受け止め……コントロールを奪う。
俺の水を混ぜればホップリィの生み出した水でも操ることが出来るのか。
(ヨハネス、これ完全にコントロール奪うのは難しい?)
(カカカッ、流石に五分ってトコロダナァ。タダ、風の時と違って一方的に奪わレルコトハネェダロウナァ!)
俺の中じゃ一番練度の低い水はほぼ五分、と。魔力の色合いの中に緑系統が無かったことと、肉体が風のようになっているところから……ホップリィが融合している魔物は風系統、おそらく風精霊系だろう。
魔物の力が合わさった風だと分が悪いが、そうでないならとんとんってところだね。
「ふ……ふふふ……!」
ホップリィはいきなり肩を震わせたかと思うと、ガリガリと頭を掻く。魔力を膨れ上がらせ――地面に撃ち込んだ。
大きな音を立てながら地面が隆起し岩のゴーレムが生み出された。その数……約三十。しかもそれらが全て氷の鎧と剣、そして水の鞭で武装している。 
さらに空を覆う程の氷の槍、ゴーレムの生み出されていた足元は湿地……というより完全に沼となっており、どんどん広がっていく。
ゴーレムを出したのに足場を悪くしてどうするんだろう……と思ったらゴーレムは足元を凍らせて歩いていた。
「へぇ……」
風は自分の周囲でないと使えない。迎撃に使えるのは炎と水だけか。
まずは炎の鷹を大量に生み出す。そして沼地を俺の水で侵食していき、敵に有利なだけのフィールドを作らせないようにする。
そして魔法生物には魔法生物をぶつけるために、ゴーレム迎撃用のスライムを大量に生み出して準備完了。 
「ヨハネス、スライムの制御はお願い」
(カカカッ! アイヨォッ!)
バチッ、とホップリィと目が合う。
二人とも目を細め――
「「行け」」
お互いのど真ん中で魔法が激突する。上空の氷槍は俺の炎の鳥が迎撃していくが、予想以上に威力が高い。いくらか撃ち漏らして俺のところに飛んできてしまった。仕方なく風で防御する。
一方ゴーレムにまとわりつき、ミシミシと締め上げて行くスライムたち。氷の剣も水の鞭も役に立たず俺のスライムが蹂躙していく。
空中戦は俺の負け、地上戦は俺の勝ちってところか。
「さて……魔力は十分集まった」
(カカカッ! ぶっ放してヤレ!)
お互いの魔法同士が中心で爆ぜている間に大技を準備する。俺は炎、ホップリィのアレは……土かな?
手に魔力が集中していく。
「喰らえ!」
互いの中心で火球と岩球がぶつかり合い、爆ぜた。その余波で互いの魔法獣や上空の魔法は一時消し飛ぶが、お互い即座に呼び出して再び相手の隙を探る。互いの出力は同じくらいか。
術者はその場から動かず、敵の魔法を打ち消し、破壊し、本体へと自分の攻撃を通す。
魔法師同士の戦い、ってやつだね。 
「……あは、あはは! 流石は三叉! あたしと魔法で撃ち合えるなんてね! 人族のくせに――魔族みたいな魔法を使うのね!」
狂ったように笑うホップリィ。まるで実験に成功しマッドサイエンティストの放つ狂喜のごとく。
魔法戦はほぼ互角。魔力の出力もそんなに変わらないか。
……となると手札の多い方が勝ちに近いわけだけど――
「ふふ……ははははあはは! 互いに多属性所持者、それなら属性が多い方が勝つのは明確よねぇ!」
そう言ったホップリィは上空の嵐に干渉してきた。俺は風の刃を撃ち出して牽制するが――コントロールを奪われる。
「えっと……俺が三属性所持者ってことは、君は四属性所持者ってことになるのかな?」
そう言って苦笑いを向けると、ホップリィは心底嬉しそうに首を振る。
「違うわ……。あたしは三属性所持者でも、四属性所持者でも無い……!」
どこからともなく巨大な――俺の背程はあろうかという杖を取り出すホップリィ。
(――ッ!?)
『視』るまでもない。見るだけで分かる。
圧倒的な『力』。見る者全てがひれ伏すような『圧』。
そこにあるエネルギーはただの魔力ではない。分類不能なパワー。
まさか……神器……!?
「あははははっは! 喰らえ、喰らえ!」
一気にガキくさい口調になったホップリィは……バチバチと雷撃を杖に纏わせた。そして地面からゴーレムを呼び出し、巨大な杖を持たせると……
「『雷鳴の帝』……!」
「がぁぁぁあああああああ!」
バチバチバチバチバチバチバチ!!!
――何も見えなかった。
予備動作が一切なく、俺の肉体を雷が貫いた。
「あたしは自身の持つ三属性に加えて魔王の血で得た風! そしてこの新造神器! 『雷鳴の帝』の雷で――五属性所持者! あたしは歴史上初の五属性所持者よ!」
心臓が跳ねる。恋じゃないのに。
無理矢理肉体が変な方向に動こうとする。手が握りしめられたまま動かない。ジュウジュウと身体から嫌な音が。 
「あ、がっ……じ、神器、かい……ほう……! 喰らいつくせ……『パンドラ・ディヴァー』!」
轟!
俺の手の中で『力』が暴れる。ホップリィの振るうそれと遜色ない『圧』が周囲に波のように広がっていく。
光り輝き、槍が一瞬にして姿を変える。刀身は方天画戟のように二枚の刃が増え、エメラルドグリーンに。七つの帯が石突からあふれ出し揺らめいた。
(って、遜色ないって……)
逆だろう。俺の持つ神器と遜色ない『圧』を纏うあの武器がおかしい。
『カカカッ! キョースケェ、大ピンチじゃネェカァ!』
「うる、さい……!」
俺は『パンドラ・ディヴァー』で全ての雷を封印し、そのまま肉体に三色のエンチャントをかける。
「ヨハネス……純水の結界だ!」
『カカカッ! リョーカイ!』
雷……要するに電気なら、絶縁体で防げる。古典的だが、一切何も含まない『純水』は絶縁体だ。
俺一人の力じゃそんなものを作れないが、ヨハネスの力を借りれば何とかなる。
『ヨッ!』
バチバチバチバチ!
目の前でスパークが迸るが、俺まではたどり着かない。今のうちに回復薬のキャップを開け、口の中に流し込む。
「ぷはぁ」
ツンと肉の灼ける臭いが俺の鼻を襲う。どこから……と思ったら俺の身体だ。よく見ればあちこち焼け焦げている。
『カカカッ! キョースケェ、オレ様をコンナに早い頻度で呼び出すトハナァ』
「……言われてみればソードスコルパイダーとやり合ったの一週間ちょっと前だもんね」
ヨハネスは楽しそうに笑うが、俺はそっちに構っている余裕はない。
肉体に水を纏い、焦げたところを冷やす。どうせ後でキアラに頼めば全部治るが応急処置は大切だ。
回復薬をもう一本。これだけ飲めば十分だろう。 
「ったく、取りあえず結界内でいくつか魔法を生み出して……っと」
さっきの鷹とか虎みたいに精緻なものではなく、もっと単純な造りの魔法獣。それをけしかけて敵のゴーレムからの攻撃を防ぐ。
「ヨハネス! さっきの魔法の解析結果は?」
『カカカッ! お前の見立てとは少し違っテタナァ。アリャ神器で生み出された雷ジャネェ』
ヨハネスの解析結果に俺は少し眉を寄せる。
「どういうこと?」
『詳しいコトはアレソノモノを解析シネェと分かンネェが……アノ武器自体は神器クラスの性能を持ってルダロウ。ダガ生み出されてる魔法自体は神器由来のモンジャネェ。神器ミテェな武器を使って普通の魔術を撃っテルッテ感じダナァ』
「それはつまり……天川の撃つ岩や『パンドラ・ディヴァー』から出ている封印帯みたいなものはそもそも性質が違う魔術だけど、あれから生み出されてる魔術自体は普通の魔術。だけど……『雷鳴の帝』? は神器並みの性能を持ってるってこと?」
『アア。模造神器、疑似神器ってトコロダナァ。ガワだけドレダケ近づけても――』
コゥ、と『パンドラ・ディヴァー』が光る。
『見せつけろ』とでも言うように。
『――真打には敵わネェ』
「なるほどね」
敵が撃ち出してきている魔法を封印し、俺の魔力に変換する。
……ああ、言われてみれば雷をただ撃つってのは強いけど。
それを全部俺の力に出来るって考えれば――こっちの方が強いかな。
俺は活力煙を咥え、火を点けて煙を吸い込む。
「ふぅ~……さてさて、どうするかな」
『カカカッ! イツモのヤッテヤレ。宣戦布告ダ』
「――OK」
俺は炎のブーストで空へ飛びあがり、生み出した炎の雨で絨毯爆撃。しかし当然、ホップリィには届かない。
「やれやれ、五属性か……俺、自分以外の多属性所持者と戦ったこと無いんだよね。しかも魔法師同士一対一でやり合うのも初めてかもね」
いやまあ俺は魔法師じゃないんだけど……でもせっかくだ。相手の出方を見るという意味でも魔法師として向かう方が得策だろう。
通常の戦闘と違い、魔法師はお互いの中間で魔法をぶつけ合う。結界や対抗魔法などで相手の魔法を防ぎつつ、お互いの魔力をすり減らす消耗戦――それが魔法師同士の戦いだ。攻撃をしなければ敵に好き放題されるし、防げねばカウンターを貰う。超高度なじゃんけんみたいなものだ。
俺はアイテムボックスから以前キアラから渡された杖とマントを取り出す。……ホントはシュリーから貰った杖を使いたいところだけどアレは実戦用じゃなくて観賞用だからね。
さて、初めて尽くめの戦いだ――
「――俺の、経験値になってくれよ?」
「胸を貸してあげるわ、三叉」
嵐が、焔が、激流が渦を巻く。
雷が、暴風が、巨岩が乱舞する。
「『紫色の力よ! はぐれの京助が命令する。この世の理に背き、眼前の全てを薙ぎ払う超越の一撃を顕現させよ! バイオレンスタイフーン』!」
炎と水で覆ったエクスプロードファイヤと水の槍を混ぜた嵐――を大量に生み出して一つに固めた魔法。 
それをニヤリと笑いながらホップリィに向けて落とした。
「呪文詠唱なんて、カッコいい」
ホップリィは車程の大きさの石を巻き上げた雷交じりの嵐を俺の魔法にぶつけてくる。
次の瞬間。
爆音、激音と共に互いの生み出した魔法獣が消し飛んだ。
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