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異世界なう―No freedom,not a human―

逢神天景@小説家になろう

170話 汝は魔物なう

 さて、シリウスの街はグルっと外壁に囲まれている……ということもなく、ちょっとしたバリケードがあるくらいで検問所も普通だ。
 ビル群には驚いたが……そういう場所なんだろうと割り切れば、そこまで気にすることでも無いか。
 取り合えず検問所のところまでたどり着いたので馬車から降りて待つことにする。


「ヨホホ……初めて見たデスね」


「獣人の国は大きな建築物という概念があまりなかったので……」


「キョウ君あれ……凄く、おっきいです」


「ふむ……なるほど、主神様が驚くわけぢゃ」


 女性陣も驚いている。キアラもちょっとビックリした顔になってるのは珍しいね。
 俺もビルを見上げると……一つ、窓がキラリと光った気がした。そして次の瞬間こちらに向かって放たれる矢。ご丁寧に俺の心臓を綺麗に貫く位置に飛んでくる。


「ん」


 風の結界で勢いを殺し、矢掴みを成功させる。よく見ると手紙がついていた。


「って、京助大丈夫か!?」


「うん、平気だけど……あ、これタローからだ」


 中に入っている手紙はタローから。要約すると「用事があるからお前だけ先に来い」とのことだった。
 なんの用事か知らないけど、ちょっと会いに行くか。


「なんかタローが呼んでるから行ってくるね」


「いや……それは構わないが、中に入ってから合流出来るか?」


「大丈夫でしょ」


 俺はふわりと風を纏い、空を蹴る。天駆を発動させて矢が飛んできたビルに向かって行く。
 結構な速度でビルと同じ高さまで上がると――


「あれ?」


 ――地面から四つほど魔法が飛んできた。街の中からだ。
 嫌な予感を覚えながら舌打ちを一つ、下手に反撃せず魔法を槍で撃ち落とすだけにする。


「よく分からないけど……どうせタローの策略かなぁ」


 活力煙を咥えて火をつける。煙を吸い込むと同時に活力煙の先が紅く光り、口内に甘い香りが広がる。
 ふぅ~……と長く息を吐き、周囲を確認すると魔法師が地面に数人集まってきていた。


「タローに話を聞くのが早いかな……っと、マジで?」


 よく見ると魔法師に魔法をかけられ、数人の人間がこちらの方へ飛んできていた。わお、俺以外で空を飛んでる人間と出会うのって志村とタロー以来だ。
 かなりの速度(俺や志村ほどではないけど)で飛んできた剣士と弓兵、そしてロッドを持った人間がこちらを睨みつける。ロッドは魔法師だろうけど、結構動けそうだね。


「ハロー、熱烈な歓迎ありがとう。俺のファンって感じでもないし……何の用?」


 俺が問いかけると、剣士が一歩こちらへ近づき武器を構えた。


「このシリウスの街に襲い掛かるとは……迷惑な魔物だ」


「魔物って……どう見たって俺は人間だと思うんだけど?」


 やれやれ、とでもいう風に首を振ると剣士はニヤリと笑ってさらに距離を詰めてきた。


「魔物だろう? ……まず、空を飛んでいる」


「それはキミもだよね」


 さらに一歩。


「武器を持っている」


「……それも、キミもだ」


 さらに一歩。


「そして何より……今日来る予定のAランクAG、明日の認定式でSランクに認められる『魔石狩り』キョースケ・キヨタに擬態している」


 そこまで言った後、我慢できないとでも言いたげな獰猛な表情を浮かべると一気に距離を詰めてきた。
 ああ、なるほど。


「マジで……俺のファンだったとは」


 ため息をついて叶えると同時に、剣士が闘気を隠そうともせずに襲い掛かってきた。


「我らはBランクAGチーム『空烈騎隊』! そのリーダー、『高空』のゲイルード!」


「同じく、ゼピナーカ!」


「同じく、シロッコ!」


 剣士、弓兵、ロッドの順番で名乗ると同時に攻撃を仕掛けてくた。俺は剣を受け止め、風の結界で矢を打ち払い数歩さらに高空へ駆けあがる。


「ははは! 覚悟しろキョースケ! これがシリウスの洗礼だ!」


 俺は懐からケータイを取り出し、苦笑いしながら冬子にダイヤルする。
 やれやれ……下はどうなってることやら。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「ではお通りください」


「うむ」


 まずオルランドたちが通され、次いでティアールたちが中へ入れられる。


「私たちは先に行く。後で連絡をくれ」


「え? あ、はい」


 冬子はティアールにそう声をかけられ、はてと思う。彼らもすぐ入れたのだから少しくらい待ってくれてもいいのに、と。


(それとも、先に京助と合流すると思われたんだろうか)


 まあだとしても、そう時間はかかるまいが。
 次は自分たちの番だろうと身分証を持って待っていると……何やら、門番がヒソヒソと話し出した。


「えっと、そこの彼女は……ああ、マリルさんと言うんですね。AGでは無い?」


「あ、はいー。『頂点超克のリベレイターズ』の人と懇意にさせていただいてますがAGではありませんー」


「では先にこちらからどうぞ」


「あ、えと……先にティアールさんと一緒にいますね」


「え、あ、ああ」


 マリルもそう言ってさっさと先に入ってしまった。
 残されたのは冬子、リュー、ピア、キアラの四人だけ。AG……というか『頂点超克のリベレイターズ』として活動しているメンツだけ残されたことになる。


「リューさん、AGだけ何か特別な手続きでも必要なんでしょうか」


 何やら嫌な予感を覚えつつ彼女に問うと、リューも「ヨホホ……」と少し困惑した様子で首をひねった。


「特に街に入る時にそういうことは聞かないデスが……」


「マスターがいないから、とかでしょうか」


「ほっほっほ。……そうぢゃの、お主らは武器でも用意しておけ」


 キアラがそう言って愉快そうに笑う。さらにいつもは面倒そうに煙管を吹かしているのにそれを仕舞い、手首をクルリと回したのだ。


「お主らに何かあってはキョースケに面目がたたぬからのぅ」


「えっと……それはどういう」


 キアラに問い返そうとした瞬間、門番の一人が「そうか!」とわざとらしく大きな声を出した。


「なるほど、つまり彼女らは……『頂点超克のリベレイターズ』のメンバーに擬態した魔物である可能性があると」


「え?」


 何をバカな――そう言おうとした瞬間、もう一人の門番も大袈裟に頷く。


「そうだな、武器も持っている、戦闘力もある……なるほど! これは魔物だろう!」


 ギラ! と鋭い目を向けてくる門番。しかしその目に「色欲」は感じられない。純粋な闘気、殺気……そういった類だ。
 全く状況についていけず目を白黒させていると、何故かキアラ以下三名はやれやれとでも言う風に首を振った。


「ああ、なるほど。トーコさん、マスターがいないので指示を!」


「ヨホホ……な、なるほどデス……」


「え……わ、私だけか!? ついていけてないのは!」


 何が何だか、と思っているといきなりケータイが鳴りだす。京助からだろう。
 そう思ってケータイを取ろうとした瞬間、何と門番の一人が切りかかってきた。


「なっ……くっ!」


 ギン! と剣で受け、ピアと入れ替わる形で後ろに下がる。そしてその隙に京助からの電話に出る。


「きょ、京助! いきなり襲い掛かられたんだが――」


『たぶんこの街の流儀なんじゃないかな。こうして襲い掛かってくるのは!』


「は? それってどういう――って物凄い人数がこちらに向かって来ている!」


『俺もだ。これは――』


 京助はそこで言葉を切り、やれやれ半分、ワクワク半分という声で断言した。


『弱いAGは街に入れない、ってことでしょ』


「――なるほど、理解した」


 そこまで言ったところで更に三人がこちらへ襲い掛かってくる。冬子はケータイを耳に保持したまま屈み、足を払って距離をとり片手で剣を振るう。


『冬子、そこに皆はいるよね』


「ああ、いるぞ」


『じゃあ俺の代わりに命令を伝えて』


「――了解」


 冬子は命令を受け取り、ケータイを切って周囲にいた人間を魂を纏わせた蹴りで薙ぎ払った。


「ピア! リューさん、キアラさん! 京助からの命令です!」


 ピアはナイフで既に数人串刺しに(急所は避けている)、リューもキアラも魔法で応戦していた。
 そんな乱戦状態の中皆に聞こえるように腹から声を出して、告げる。


「『俺達を試そうとしたことを後悔させてやってね。手段は問わない』!」


「了解」


「ヨホホ、了解デス!」


「了解ぢゃ。やれやれ、人遣い……否、神遣いが荒いのぅ」


「行くぞ!」


 そう言って振り下ろされた剣の衝撃はで五人は吹っ飛ぶ。
 無双ゲーのようだ、そう思いながら冬子は叫ぶ。


「さあ、かかってこい!」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「だぁっ!」


「シッ!」


 ギィン! と空中でつばぜり合いをする。剣士――ゲイルードは立ち回りが上手い。流石はBランクチームのリーダーといったところか。
 どうもロッドの魔法使い――シロッコの魔法でこいつらは飛んでいるようだけど原理が分からない。『職魔法』だろう。
 俺がシロッコを狙おうとするとゲイルードが阻み、そこにかなりの威力の矢がゼピナーカから飛んでくる。
 中々いい連携だ、厄介極まりない。


「はっ! 迂闊に飛ぶからこんなことになるんだ! 俺達が航空戦で敗けるわけがないからな!」


 自信満々のゲイルード。俺は上体を逸らして彼の剣を躱し、一回転して更に矢も避ける。
 しかしそのタイミングで俺の体がズシリと重くなる。それは動けないほどではないが、空中戦をするには支障が出るレベルだ。


(チッ……ヨハネス)


(カカカッ! 重力……イヤ、ソコマデジャネエナ。下方への力、質量を少し操る感じカァ?)


(面倒極まりないでしょ、それ)


 なるほど、これで軽くして連中を飛ばしてるわけか。俺が動きづらくなったタイミングでゲイルードが『職スキル』を発動させる。飛斬撃に似た系統の技だ。
 俺はそれを槍で弾き、さらに雨のように何本も飛んでくる矢を全て風ではじき返した。


「この魔法厄介だからね、解除させてもらおう……かな!」


「は……なっ、私の魔法が!?」


 俺を重くする結界を俺だけにかける、って感じの魔法だったので以前習った結界破りがそのまま使えた。
 そして数歩距離をとったところで……ふむと顎に手を当てる。


「なるほど、いい連携だね。個々の力が何倍にもなる……各個撃破って言う考えも正解だと思う。複数人相手ならこうはいかない」


「今から敗けた時の言い訳か?」


「違うよ」


 俺がそう言うと同時に指を曲げる。その瞬間ゼピナーカの周りに――上下前後左右、360度水の矢が現れる。


「!?」


「空中はいいね……」


 この状況で敵の要はシロッコ。彼を落とせばすぐさま瓦解する。しかしそれを餌にするようなフォーメーション……一番面倒なのは嫌がらせの弓兵、ゼピナーカだ。


「こうして絶対に躱せない攻撃が出来る」


「ッ! 迎撃しろゼピナーカ!」


「おおおお! 『ヘッジホッグアロー』!」


 淡く青く光り、『職スキル』を発動させるゼピナーカ。名前の通り彼から360度全方向に矢が放たれる。
 そして俺の撃ち出した水矢の殆どを相殺してのけた。流石はBランクチーム、なかなかやるね。
 しかし――


「はぁっ……どうだ……っ!」


「うん、凄いと思う」


「なっ!?」


 ――ぜぇぜぇと肩で息をするゼピナーカの後ろに回り込み、俺は槍を振り上げる。


「いつの間に――」


「ちょっとだけ速く動いたんだ」


 そして槍を振り下ろすことでゼピナーカの延髄部分を殴りつけ、そのまま空中で気絶させる。


「なっ……ぜ、ゼピナーカ!」


「人のことを心配してる場合?」


「ッ、は、はや……がはっ!」


 一瞬でゲイルードの横に移動した俺は、その勢いのまま彼に体当たり気味に槍をぶち当てる。
 ゴッ……と人体が出してはいけない音を出しながら吹っ飛ぶゲイルード。力なく腕が垂れ下がっているので、気絶しただろう。


「ぜ、ゼピナーカ……ゲイルード……!」


「じゃあ、キミも行く?」


「ッ! ……い、いつの間に移動した……! 貴様は肉眼で捉えられない速度で動けるというのか!?」


「イエス」


 嘘だ。いや出来なくもないけど、今回は風魔法で姿を消しただけだ。
 ガクッと肩を落としたシロッコ。まあ戦意喪失だろう。


(さて……)


 どうせ下ではてんてこ舞いになっているだろう。助太刀に行かないと。
 そう思った瞬間――ガクッ、と俺は足場を失う。俺の天駆が解除されたのだ。


(いや違う――天駆のコントロールを奪われた!?)


 さらにとあるビルの上まで風によって引き寄せられる。バカな、俺以上の風魔法師がいるなんて。
 俺は舌打ちを一つ、ヨハネスに手伝ってもらいながら風のコントロールを奪い返す。気が抜けた瞬間に奪うとは、向こうも中々策士だ。
 どうせ行かなくてもこっちに来るだろうけど……呼び寄せようとしたんだ、せっかくだから向かうか。
 俺は天駆で空を走り、引き寄せられたビルの上へ。
 そこでは……


「おいおい、マジかー……。オレから風魔法のコントロール奪い返すとかアイツ何者だよ。槍使いランサーじゃねえの?」


「ちゃんと報告書読んだ? リーダー。今AGの中では唯一の魔法槍使いマギランサー……並の魔法師よりも強力な魔法を使うんだから」


「あー……そうだったそうだった。しかも赤青緑とか、魔法師でも中々いねえっつの」


「だから、食い甲斐があるっちゅうもんじゃ!」


「ねぇねぇ、あいつボクがやっつけるよ。いいよね? いいの? やったね!」


 三人の男と一人の女を先頭に……何十人ものAGがそこには立っていた。ボスラッシュ……いや、まだ中ボスラッシュかな。


「ねぇ、キミらも俺のファン?」


「うんうん、大ファン大ファン! だからキミ、ボクにやっつけさせてよ。いいよね? いいの? やったね!」


「何も言ってないんだけどなぁ」


 苦笑しながら……その子供っぽい口調の男に目をやる。また弓兵……いや、ボウガンか。どちらかというとボウガンに魔法を付与して戦う系らしい。
 俺から風魔法を一度奪った奴がリーダーらしく、他の三人は彼の様子を伺っている。


「……オレはAランクチーム『トレイキング』のリーダー、トレイだ。テメェがキョースケ・キヨタで間違いないな?」


「NOって言ったら見逃してくれる?」


「いや? ハチの巣にする」


「だよねぇ」


 俺は活力煙を握りつぶし、新しいそれを咥える。


「後ろの人たちはチームメンバー?」


「この三人以外は傘下の別チームだ」


 なるほど。
 俺は煙を空に溶かしながら……ビルの上に降り立つ。なるほど、こんな高空で足をつけて戦うなんて初めてだね。


「――OK、それじゃあやろっか。じゃあ代表して……トレイ?」


「あん?」


 俺は槍を構え、腰を落とす。向こうの連中も餌を目の前にした野獣のような眼光でこちらを睨みつけてくる。
 そんな連中の闘気を軽く流し、ニヤリと笑った。


「俺の経験値になってくれよ?」


「テメェら! やっちまえ!」


「「「「おう!!!!」」」」


 俺の発動した風とトレイの風が拮抗する。
 さぁ、第二ラウンド開始かな。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「うおおお!」


「な、なんだこいつら!」


「お、女四人なのに……」


「っていうかリーダーいねぇのに……」


「「「無茶苦茶つええ!」」」


 ドッ!
 冬子の剣が目の前の斧使いを薙ぎ払う。
 背中にピアとリューを背負い、冬子はその場に踏ん張り続けていた。ピアと冬子はお互いの背をカバーしながらリューが魔法で援護する――そういった陣形で戦っていた。


「トーコさん、右デス!」


「ああ! ピア、ナイフは大丈夫か!」


「ストックはありますが、少々心許ないです。補充をお願いできますか?」


 目の前の敵を打ち払い、流し、蹴飛ばして一瞬のスキをついてナイフを十本ほどアイテムボックスから取り出す。
 それを目の前に放り、空中に浮いている瞬間にクルリと……ダンスのようにお互いの位置を入れ替わってリャンにナイフが渡る。


「な、さっきの胸ペタはどこに――げふぅ!」


「ピア! 今の不届き物をもっとしっかり殺せ!」


「事実を言われてキレるのは大人げないですよトーコさん」


「何が事実だ! 五年後には私もキアラさんくらいにはなる!」


「はっ(笑)」


「先にお前を切る!」


 冬子がピアの方を、ピアが冬子の方を向いて全力で武器を振るう。


「お二人とも喧嘩しないで欲しいデス!」


 リューがそう叫びながら屈み、詠唱待機していた呪文を左右にぶっ放す。それと同時にピアと冬子はお互いの背にいた敵をぶっ飛ばし、再び元の位置まで戻る。


「危なっかしいデス……」


「もう少しで突破出来そうなんですがね……」


「後ろは任せろ、もっと突っ込め!」


 ギギギン! と剣を弾き、矢も弾き、加減無く剣で吹っ飛ばす。
 ……そんな戦い方をしている三人を、少し遠くからキアラは見守っていた。


「やれやれ……あ奴らの連携は見ていてハラハラするのぅ」


「こ、こっちの女からやれ!」


「一人……しかも魔法師だ! やれやれ!」


 二人の剣士が切りかかってくる。タイミングも息もあっていない、てんでバラバラの斬撃など結界を張るまでも無い。
 体を傾けて躱し、指を鳴らす。その途端、二人の剣士はまるで見えない手に弾き飛ばされたかのように吹っ飛んでいった。
 魔力で斥力を発生させて吹き飛ばしただけだが、かなりの距離を飛んだ。


(死んではおらんぢゃろ)


 仮に死んでいても気にしないが。
 さらにどうもリューの魔力が減っているようだったので、魔力弾を投げて彼女の魔力を回復させる。


「ヨホホ……ありがとうございますデス!」


「こ、この女……魔力を投げ渡した?」


「な、何者なんだこの女!?」


 周囲がとうとう顔を恐怖に引き攣らせてザっと一歩後ろへ下がる。そんな情けない奴らに向かって指を鳴らす。
 途端、生成された剣や槍が魔法陣から射出されて周囲のAGどもを死にかねない勢いで吹き飛ばす。


「ば、化け物……」


 その光景を見ていたAGの一人が呟く。そのAGに向かってフッと笑みを浮かべると、キアラはぐっと胸を張った。


「妾は化け物ではない。神ぢゃ」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 冬子はそんな決め台詞を言っているキアラを見て……少しだけ頬を緩ませる。


「ピア。リューさん。私はこんな乱戦初めて……いや、未経験なんです」


 そう声をかけると、ピアもリューもすぐさまニヤリと笑って頷いた。


「なるほど。私は初めてではありませんが……でもこうしてしっかりと陣形を組むのは未経験でしたね」


「ヨホホ! ワタシは普通に未経験デス!」


「――そうですか。では!」


 ドン、と地面を踏みしめ、冬子はぐっと胸を張る。
 そして冬子もピアもリューも武器を構えた後……ニヤリと笑った。


「「「だから……お前らをワタシの経験値にする!」」」


 まだまだAGの波は減りそうにない。
 しかし……敗ける気は微塵もしなかった。



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