異世界なう―No freedom,not a human―
165話 後悔と赦しなう
「やれやれ、昨日は酷い目にあった」
「それは私の台詞ですー。走り込みさせられたんですよー!? トーコさんは酷いですー!」
「酷いことあるものか。あれでも足りないくらいだ」
全身筋肉痛で動きが鈍いマリルがジト目を冬子に向けるけど、彼女はすました顔でふんっと鼻を鳴らした。
昨日、彼女らに何があったんだろうね。
「それで? 俺は今日どんな服を着させられるの?」
かれこれ三十分くらい半裸で放置されている俺が彼女らに文句を言うけど、冬子達は無視して服を物色している。
そう、今日は俺たち「頂点超克のリベレイターズ」の祝賀パーティー。小規模で行われるパーティーだからと思ってただのジャケットを着て行こうとしたらブチ切れられたのだ。
「ただのスーツでいいじゃん……」
確かにパーティーなのだからスーツくらいは着るべきなのは分かるが、三十分以上も俺に着せる服の話で会議されると流石に困る。
まだ昼でパーティーまでそこそこ時間があったのもマズかった。これが夜なら時間が無いからとさっさと切り上げられたのに。
「オルランド伯爵が送ってきたスーツだけでもかなりの数があるんだ」
「マジ?」
「ヨホホ、キョースケさんは一度くらいオルランド伯爵が送ってきている服をチェックしたことがあるデスか?」
チェックはしている。忘れるだけで。
「マスター、一応とはいえこれはスポンサー契約のようなもの、つまり仕事です。なのにそんな態度で手を抜いていいと思ってるんですか?」
「て、手は抜いてないでしょ。ちゃんと皆にコーディネートは任せてビシッと着て行ってるし!」
むしろ俺が選ぶ方がダメだろう。俺のセンスに合わせるとヲタク丸出しの真っ黒ファッションになるから。
「京助が服に頓着しないのは前からだからな……。以前二人で遊びに行ったときは真っ黒なズボンに黒いシャツ、とかジーンズにチェックシャツをインしてるとか凄かったぞ」
ヲタクあるある。チェックのシャツはお洒落。そして黒は無難。流石にインしてた時は冬子に怒られて出したけどさ。そして出したら出したでよれててダサいっていうね。
俺は皆に「……決まったら言って。その間部屋に戻ってるから」と声をかけて立ち上がる。いつまでもウォークインクローゼットに半裸でいたら風邪を引くからね。
「いくら身内で行うパーティーとはいえ、夫が場にそぐわない服を着ていたら妻の器も疑われますからね。マスターにはしっかりした格好をしてもらいます」
「待て、ピア。いつお前が京助の妻になった!」
「ふっ、昨日妻扱いされて散々キレてた人が何を言いますか」
「あ、あれは恥ずかしかっただけで……!」
「ま、まあまあお二人ともー。取りあえずキョウ君の服を決めちゃいましょうよー」
「「愛人扱いされた人は黙っててください!」」
「それを言い出したら戦争じゃろがい!」
なんかウォークインクローゼットが騒がしい。どうでもいいけど早く決めて欲しい。
「部屋が壊れねばいいがのぅ」
「あ、キアラ。コーヒー淹れるけど飲む?」
「妾はよい。それよりも今晩の酒が楽しみぢゃ」
「飲み過ぎないようにね」
「大丈夫ぢゃ。酔い醒ましの魔法ならしっかり用意しておる。潰れても大丈夫ぢゃぞ」
キアラって凄い魔法使いのはずなのに、なんでこう凄くなさそうな魔法の使い方をするんだろう。一時水から酒を造る魔法を延々研究してたし。
「じゃあ勝負ですー! 暴力は無しの方向で!」
「それじゃあ料理対決といきましょうか。マスターが一番美味しいと言ってくれた料理を作った人が勝利です」
「ヨホホ! 負けませんデス!」
「望むところだ! 勝った人が選んだ服を京助が着る、それでいいな!」
そしてドドドド……とウォークインクローゼットから出てきた皆は、そのまま一階の台所の方へ向かっていった。
「あれ? 俺、いつの間にか巻き込まれてない?」
「全員料理はそこそこ出来るから大丈夫ぢゃろう。食い過ぎてパーティーで何も食えんようになるやもしれぬが」
「だよねー。……量は少な目で、って言って来よう」
ため息をついて台所の方へ向かおうとすると、キアラが不思議そうな顔になった。
「それだけか?」
「暴力沙汰じゃないからね。皆の手料理ならもちろん食べたいし」
仲良く喧嘩しな、ってやつでしょ。俺がマルキムやサリルといつもやってるみたいに。
それを止めるほど無粋じゃないつもりだ。
しかしキアラが引っかかっていたのはそこではないらしく、ふむと俺の顎に下から指をあてた。
「昔のお主なら最終的に流されるにしても、『なんで俺を巻き込むんだよ!』と反射的に言ってすぐさま走って止めに行ったぢゃろうに」
そうだろうか。
……確かに、否定の言葉が反射的に出てくることはなくなった気はする。
「……お主も融通が効くようになってきたの」
「そうかな」
あの程度の喧嘩くらい、昔の俺でも否と言わなかったと思うけど。
キアラはフッと意味深な笑みを浮かべてから俺の肩に手を置いた。
「お主、少し背が高くなったんぢゃないかの?」
「そう? 測ってないからなんとも言えないけど、まだ十八だから伸びててもおかしくはないか」
「うむ。……ほれ、早く行ってやらんか」
それもそうだ。
俺は台所に向かって歩き出す。
「妾ですら変わったんぢゃ。お主がいつまでも昔のお主のままなわけなかろう」
後ろで呟いたキアラの言葉は、台所から聞こえてくる喧噪にかき消されて聞こえなかった。
「ぢゃからお主も成長しておると言っておるんぢゃ」
「いやそこは聞こえないフリで良かったよね!?」
この家では照れ隠しすらさせてもらえない!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
厳正な審査の結果、勝者は冬子となった。俺が好きなスイーツは反則だと思う。実際、皆からは文句を言われていた。
ちなみに俺は明るい紺のスーツ上下(形はタキシードだと言われた。違いが分からん)の中に、白のシャツとグレーのベスト。髪もキッチリと固めて、シンプルなブルーのネクタイを締めて胸には花を挿している。
俺の着替えが終わるころには大分時間が経っていたので、皆も急いでおめかしをしているようだ。
家から出て(庭に灰皿と喫煙スペースを作られたので)活力煙を吸っていると、中から楽し気な声が聞こえてくる。
「相変わらずキアラさんはスタイルがいいですね……」
「ほっほっほ。神ぢゃからな」
「そういうトーコさんだって足はお綺麗ですよ」
「……含みがあるな、ピア」
「ま、まあまあお二人ともー。取り合えず着替えましょうよー」
「ヨホホ! ……そりゃ、デス!」
「うひゃぁっ! りゅ、リューさん! 後ろから胸を鷲掴みにしないで……やっ、あんっ! ……へ、変な声でちゃったじゃないですかー!」
「予想以上に大きいデスね……」
「どれどれ? ……た、確かに。お、女は胸じゃない。胸じゃないから……」
「マリルさん……着やせするタイプなんですね。むぅ、マスターはこちらの方が好みでしょうか」
「んうっ! も、もう! 皆さん変なところ触らないでくださいー!」
……なんで灰皿スペースの近くの部屋がウォークインクローゼットなんだ。上空で活力煙吸ってこようかな……。なんか聞いちゃいけないものを聞いてる気がする。
でもこんなことで魔力を無駄遣いしたくないし、活力煙も吸いたいし仕方ないね。
(カカカッ! ……キョースケ、オメェも男ナンダナァ)
(煩いよヨハネス)
活力煙の煙が空に溶ける。別に自室で吸ってもいいんだけど「もうおめかしは終わってるんですから、部屋で吸って煙で変な臭いがついたら嫌じゃないですかー」と言われたから外で吸わざるをえないというか。
(ジャア吸わナキャイインジャネエカァ?)
(五月蠅いよヨハネス)
それに話聞いてるだけなんだから、別にやましいことしてないし。
(ソウダナ)
(う、うるさいよヨハネス)
(イヤ、今のはオレ様は悪くネェダロ)
活力煙を灰皿に押し付け、二本目を取り出す。口に咥え、指を鳴らす。パチンという小気味のいい音と共に活力煙の煙が口の中に入ってくる。
「ふぅ~……ああ、そろそろ皆が終わったみたいだね」
俺は活力煙を咥えたまま、玄関まで迎えに行く。
ガチャリと扉を開けると、中から絶世の美女が五人出てきた。
「なぁ京助。変じゃないか?」
「……着飾るのは慣れませんね」
「ヨホホ! しっかり耳を隠せるとは思いませんでしたデス。流石デスね、マリルさん」
「トーコさんも綺麗ですよー。にしても、五人分のお化粧は疲れました」
「妾が魔法でやると言っておるのに」
「キアラさんの魔法化粧は粗いんですよー」
魔法化粧って凄いワードだね。
女性のAGは着るドレスの形が基本的に決まっている。だから冬子は以前のデートの時と同じように袖が無く、背中と胸元が大きく開いたデザインで物凄く深くスリットが入っているドレスだ。
ただし色はルビーレッドだ。ビシッと背筋を伸ばして歩く姿と相まって、とても大人っぽく見える。
というか化粧が……いつもより大人っぽいのかな。真っ赤な薔薇はあいつの唇って感じ。
「よく似合ってるよ、冬子。だいぶ大人っぽいね」
「そ、そうか?」
ちょっと照れた様子の冬子。大人っぽい見た目とのギャップでクラクラしちゃうね。
そういえばさっきリャンはシリウスでの認定式でパーティーに出ない分今日はお洒落すると言っていたけど……そう思って彼女のドレスを見ると、
「ふふ、マスター。もっと見てもいいんですよ?」
……どういう分類なんだろう、このドレス。足の付け根ギリギリのタイトなスカート、ボディラインがクッキリと出る上半身、そして背中は丸見えでノースリーブ。銀色で白い宝石がちりばめられている。
それでいて胸元がいっさい見えてないのが……その、えっと。
「マスターはこういうのがお好きでしょう?」
「ノーコメントで。綺麗だとはお、思うよ」
「何をドモってるんデスか、キョースケさん」
そういうシュリーはやや子どもっぽい雰囲気のドレスだ。半袖で、ふわっと広がるスカート。ただ彼女自身が小柄なことも相まって非常によく似合っている。とはいえヒラヒラなレースがついているわけではなく、色合いも黒だけどゴスロリって感じは無い。
ただ、俺が驚いたのは……頭、というか耳だ。
「これ、ウィッグ?」
「ええ、マリルさんがやってくださいました。ヨホホ!」
なんと、完全に隠れている。普段はそんなに長くない彼女の髪だが、今日はしっかりと編み込まれ頭部のボリュームが増している。その髪の中に耳が隠されているのだろう。
大きめの花飾りもあり、どこからどうみても獣人の耳があるようには見えない。
「凄いね……」
「褒めてくださいー、キョウ君」
「ああ、偉い……っていうか、凄いよマリル」
そんな彼女は、「今日はどちらかというと主賓じゃないのでー」と少し地味めな格好だ。彼女も含めて「頂点超克のリベレイターズ」だから、主賓だよって言ったんだけどね。
淡い紺で、半袖長スカートのオーソドックスなドレスだ。ただ髪型はいつもより決まっており、普段のボブカットじゃなくてちょっとボリュームのあるハーフアップ(ってマリルが言ってた)になっている。ウィッグってこっちの世界にもあるんだねー。
「ほれ、何をしとるんぢゃ。行くぞ」
そんなキアラはいつものミニスカ改造巫女服ではなく、ちゃんとドレスだ。……ただし、リャンとは別方向で露出が凄いけど。
チューブトップの紫色のドレス、ギリギリミニのスカートで、後ろから透明なスカート? みたいなのが出ている。
彼女の神々しいまでのスタイルが強調されており、胸は上半分がこぼれてきそうだ。
「なんぢゃ、キョースケ。妾の艶姿に見惚れたか?」
俺が彼女のドレス姿を見ていたことに気付いたキアラが、挑発的な笑みをこちらに向ける。
しかし、俺は苦笑いしながら首を振った。
「いや……なんていうか、いっそエロくないよね。一周して」
「そうか? まあ妾に見とれるのは男であらば自然なことぢゃ。存分に視姦するがよい」
「ワード選びって大切だよね。今ので余計見る気失せたよ」
俺がため息をついて、我が家に繋がる道の方を見る。
その遠くから……
「あ、迎えの馬車来たね」
「ほう、オルランドは気が利くのぅ」
「いや俺が手配したんだよ。せっかくだったしね」
というか、ティアールに言われた。せっかくめかし込んだ女性たちを長時間歩かせるつもりか、ってね。
……キアラの転移で行くつもりだったとは言えず、ティアールの運営する馬車業者からレンタルしたわけだ。あいつホント俺から搾り取るの巧いよね。
「じゃあ行こうか」
全員で馬車に乗り込み、オルランド邸へと向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
オルランド邸は以前来た時と同じで、センスのある館だ。
既に俺達以外は会場にいると言われ、メイドさんの案内に従って中を進む。
「にしても、相変わらず広いな」
「お金持ちだし、貴族だしね」
「その辺の壺、持って帰ってもバレないんぢゃないかのぅ」
「……キアラ、それは普通に犯罪だから」
っていうか、お金に困ってないでしょうが。
そんな益体も無いことを話していると、パーティーホールに着いた。
「こちらで皆様がお待ちです」
「ありがとう」
メイドさんが扉を開けると、中からまさかのリルラが冬子に飛びついた。
「おめでとーございまーす!」
「あ、ああ。ありがとう」
そして拍手で迎えられる。なんだか照れくさいけど、パーティーってこういうものなんだろうか。
「簡単なホームパーティーだけど、これくらいはやらないと」
そう言ってオルランドが花束を持ってやってくる。
ちらっと周囲を見ると、滅多に食べられそうにない豪華な料理に煌びやかな飾りつけ。雰囲気以上にお金がかかってるのが分かる……簡単なホームパーティーってのは一体。
「おめでとう、いろいろね」
「ああ、ありがとう」
花束を俺が受け取ると再び拍手が。
ちょっと頬を掻いて照れていると、リルラも花束を持って現れた。
「トーコさーん、おめでとうございます」
「ありがとう、リルラ」
リルラは自分の上半身よりも大きな花束を渡し、冬子が嬉しそうな笑顔で受け取る。
「今回昇格する人にだけしか花束を用意していなくてごめんなさいね」
「ん、でも嬉しいよ。それにキアラもリャンもマリルもお酒の方が嬉しいだろうし」
「ふふっ、そうなの? それなら安心だわ、いいお酒入れてるわよ」
そこでふと、シュリーの花束が無かったことに気づく。
彼女の分が無いわけもないし――そう思っていると、とある男がシャンデリアの光を反射しながら現れた。
本人が大きすぎるため、花束が小さく見えるけど……皆のと同じサイズか。
「……リュー」
「レオ……さん」
暫しの無言。二人の関係を知っているのは俺たちパーティーメンバーくらいのものだけど、神妙な雰囲気を察したのか誰も何も言わず見守っている。
一歩、マルキムが近づく。ただそれだけなのにマルキムの顔は緊張で少し青くなり、逆にシュリーは穏やかな笑みを浮かべる。
二人の間に何があったかを考えれば、マルキムの態度も分からなくはない。
やっとのことで目の前まで来たマルキムは、ガタイに似合わず何を言えばいいのか分からなくなっているようで……モジモジと所在なさげに目を彷徨わせている。
「京助、何も言わないでいいのか?」
「二人とも大人なんだから、野暮なことは無しだよ」
そう言って俺は冬子の顔を見つめる。彼女も何かを察したのか、そっと後ろを向く。
一分ほどそうしていただろうか。意を決したようにマルキムが口を開く。
「……おめでとう」
「ヨホホ、ありがとうございます。レオさん」
「ああ」
マルキムは感極まったように目に涙を溜め……花束を渡すと同時に泣きだした。
「あの時……助けられなくて、本当にすまない……ッ!」
震える声、ガクッと膝をつく音がする。
マルキムは堰を切ったように嗚咽を漏らす。
「オレは……憎かった。おやっさんを、姐さんを殺したアイツらが心底憎くて仕方が無かった……ッ。だから何も考えず、形振り構わず戦った。おやっさんたちに預けられたはずのお前たちを放ったらかしにして」
声を押し殺しているが……心からの叫びなんだろう。
そこに込められた感情は『後悔』の一言では表せないほど、何もかもが入り混じっていて。
きっと彼の人生――その全てがこの悲痛な叫びに詰まっているのだろう。
「だから、絶対にお前だけは守ろうと思った。でもお前は諦めてなかった……ッ。それに気づけなかった、オレはお前にあわせる顔が無くて――」
そっと。
感情が爆発したマルキムに向かって、シュリーが優しい声をかける。
「レオさん。……確かに、あの時はショックで悲しい気持ちでいっぱいだったデス」
でも、とシュリーは一息ついた。
「でも……だから、見えたものがあったデス。繋がった縁もあったデス。最後は取り戻せた、元に戻れはしなかったデスけど……でも、だからこそ今のワタシは幸せになれたって。そう思っているデス」
繋がった縁、という言葉でほんわかとした雰囲気が伝わってくる。
「ああ、そうだろう……それは、見てれば……分かるぜ」
「ヨホホ! だからレオさん、気に病まないで欲しいデス。今のワタシは幸せデス。素晴らしい仲間に囲まれて、こうして出世? ……も出来て。家族で過ごした時と変わらないくらい幸せなんデス」
「ああ、ああ……!」
「レオさん、本当にありがとうございますデス」
――まったく、せっかくのお祝いパーティーなのにいきなり湿っぽくしちゃって。
隣でもらい泣きしてる冬子をよしよしと撫でながら……俺は苦笑を浮かべて肩をすくめた。
「それは私の台詞ですー。走り込みさせられたんですよー!? トーコさんは酷いですー!」
「酷いことあるものか。あれでも足りないくらいだ」
全身筋肉痛で動きが鈍いマリルがジト目を冬子に向けるけど、彼女はすました顔でふんっと鼻を鳴らした。
昨日、彼女らに何があったんだろうね。
「それで? 俺は今日どんな服を着させられるの?」
かれこれ三十分くらい半裸で放置されている俺が彼女らに文句を言うけど、冬子達は無視して服を物色している。
そう、今日は俺たち「頂点超克のリベレイターズ」の祝賀パーティー。小規模で行われるパーティーだからと思ってただのジャケットを着て行こうとしたらブチ切れられたのだ。
「ただのスーツでいいじゃん……」
確かにパーティーなのだからスーツくらいは着るべきなのは分かるが、三十分以上も俺に着せる服の話で会議されると流石に困る。
まだ昼でパーティーまでそこそこ時間があったのもマズかった。これが夜なら時間が無いからとさっさと切り上げられたのに。
「オルランド伯爵が送ってきたスーツだけでもかなりの数があるんだ」
「マジ?」
「ヨホホ、キョースケさんは一度くらいオルランド伯爵が送ってきている服をチェックしたことがあるデスか?」
チェックはしている。忘れるだけで。
「マスター、一応とはいえこれはスポンサー契約のようなもの、つまり仕事です。なのにそんな態度で手を抜いていいと思ってるんですか?」
「て、手は抜いてないでしょ。ちゃんと皆にコーディネートは任せてビシッと着て行ってるし!」
むしろ俺が選ぶ方がダメだろう。俺のセンスに合わせるとヲタク丸出しの真っ黒ファッションになるから。
「京助が服に頓着しないのは前からだからな……。以前二人で遊びに行ったときは真っ黒なズボンに黒いシャツ、とかジーンズにチェックシャツをインしてるとか凄かったぞ」
ヲタクあるある。チェックのシャツはお洒落。そして黒は無難。流石にインしてた時は冬子に怒られて出したけどさ。そして出したら出したでよれててダサいっていうね。
俺は皆に「……決まったら言って。その間部屋に戻ってるから」と声をかけて立ち上がる。いつまでもウォークインクローゼットに半裸でいたら風邪を引くからね。
「いくら身内で行うパーティーとはいえ、夫が場にそぐわない服を着ていたら妻の器も疑われますからね。マスターにはしっかりした格好をしてもらいます」
「待て、ピア。いつお前が京助の妻になった!」
「ふっ、昨日妻扱いされて散々キレてた人が何を言いますか」
「あ、あれは恥ずかしかっただけで……!」
「ま、まあまあお二人ともー。取りあえずキョウ君の服を決めちゃいましょうよー」
「「愛人扱いされた人は黙っててください!」」
「それを言い出したら戦争じゃろがい!」
なんかウォークインクローゼットが騒がしい。どうでもいいけど早く決めて欲しい。
「部屋が壊れねばいいがのぅ」
「あ、キアラ。コーヒー淹れるけど飲む?」
「妾はよい。それよりも今晩の酒が楽しみぢゃ」
「飲み過ぎないようにね」
「大丈夫ぢゃ。酔い醒ましの魔法ならしっかり用意しておる。潰れても大丈夫ぢゃぞ」
キアラって凄い魔法使いのはずなのに、なんでこう凄くなさそうな魔法の使い方をするんだろう。一時水から酒を造る魔法を延々研究してたし。
「じゃあ勝負ですー! 暴力は無しの方向で!」
「それじゃあ料理対決といきましょうか。マスターが一番美味しいと言ってくれた料理を作った人が勝利です」
「ヨホホ! 負けませんデス!」
「望むところだ! 勝った人が選んだ服を京助が着る、それでいいな!」
そしてドドドド……とウォークインクローゼットから出てきた皆は、そのまま一階の台所の方へ向かっていった。
「あれ? 俺、いつの間にか巻き込まれてない?」
「全員料理はそこそこ出来るから大丈夫ぢゃろう。食い過ぎてパーティーで何も食えんようになるやもしれぬが」
「だよねー。……量は少な目で、って言って来よう」
ため息をついて台所の方へ向かおうとすると、キアラが不思議そうな顔になった。
「それだけか?」
「暴力沙汰じゃないからね。皆の手料理ならもちろん食べたいし」
仲良く喧嘩しな、ってやつでしょ。俺がマルキムやサリルといつもやってるみたいに。
それを止めるほど無粋じゃないつもりだ。
しかしキアラが引っかかっていたのはそこではないらしく、ふむと俺の顎に下から指をあてた。
「昔のお主なら最終的に流されるにしても、『なんで俺を巻き込むんだよ!』と反射的に言ってすぐさま走って止めに行ったぢゃろうに」
そうだろうか。
……確かに、否定の言葉が反射的に出てくることはなくなった気はする。
「……お主も融通が効くようになってきたの」
「そうかな」
あの程度の喧嘩くらい、昔の俺でも否と言わなかったと思うけど。
キアラはフッと意味深な笑みを浮かべてから俺の肩に手を置いた。
「お主、少し背が高くなったんぢゃないかの?」
「そう? 測ってないからなんとも言えないけど、まだ十八だから伸びててもおかしくはないか」
「うむ。……ほれ、早く行ってやらんか」
それもそうだ。
俺は台所に向かって歩き出す。
「妾ですら変わったんぢゃ。お主がいつまでも昔のお主のままなわけなかろう」
後ろで呟いたキアラの言葉は、台所から聞こえてくる喧噪にかき消されて聞こえなかった。
「ぢゃからお主も成長しておると言っておるんぢゃ」
「いやそこは聞こえないフリで良かったよね!?」
この家では照れ隠しすらさせてもらえない!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
厳正な審査の結果、勝者は冬子となった。俺が好きなスイーツは反則だと思う。実際、皆からは文句を言われていた。
ちなみに俺は明るい紺のスーツ上下(形はタキシードだと言われた。違いが分からん)の中に、白のシャツとグレーのベスト。髪もキッチリと固めて、シンプルなブルーのネクタイを締めて胸には花を挿している。
俺の着替えが終わるころには大分時間が経っていたので、皆も急いでおめかしをしているようだ。
家から出て(庭に灰皿と喫煙スペースを作られたので)活力煙を吸っていると、中から楽し気な声が聞こえてくる。
「相変わらずキアラさんはスタイルがいいですね……」
「ほっほっほ。神ぢゃからな」
「そういうトーコさんだって足はお綺麗ですよ」
「……含みがあるな、ピア」
「ま、まあまあお二人ともー。取り合えず着替えましょうよー」
「ヨホホ! ……そりゃ、デス!」
「うひゃぁっ! りゅ、リューさん! 後ろから胸を鷲掴みにしないで……やっ、あんっ! ……へ、変な声でちゃったじゃないですかー!」
「予想以上に大きいデスね……」
「どれどれ? ……た、確かに。お、女は胸じゃない。胸じゃないから……」
「マリルさん……着やせするタイプなんですね。むぅ、マスターはこちらの方が好みでしょうか」
「んうっ! も、もう! 皆さん変なところ触らないでくださいー!」
……なんで灰皿スペースの近くの部屋がウォークインクローゼットなんだ。上空で活力煙吸ってこようかな……。なんか聞いちゃいけないものを聞いてる気がする。
でもこんなことで魔力を無駄遣いしたくないし、活力煙も吸いたいし仕方ないね。
(カカカッ! ……キョースケ、オメェも男ナンダナァ)
(煩いよヨハネス)
活力煙の煙が空に溶ける。別に自室で吸ってもいいんだけど「もうおめかしは終わってるんですから、部屋で吸って煙で変な臭いがついたら嫌じゃないですかー」と言われたから外で吸わざるをえないというか。
(ジャア吸わナキャイインジャネエカァ?)
(五月蠅いよヨハネス)
それに話聞いてるだけなんだから、別にやましいことしてないし。
(ソウダナ)
(う、うるさいよヨハネス)
(イヤ、今のはオレ様は悪くネェダロ)
活力煙を灰皿に押し付け、二本目を取り出す。口に咥え、指を鳴らす。パチンという小気味のいい音と共に活力煙の煙が口の中に入ってくる。
「ふぅ~……ああ、そろそろ皆が終わったみたいだね」
俺は活力煙を咥えたまま、玄関まで迎えに行く。
ガチャリと扉を開けると、中から絶世の美女が五人出てきた。
「なぁ京助。変じゃないか?」
「……着飾るのは慣れませんね」
「ヨホホ! しっかり耳を隠せるとは思いませんでしたデス。流石デスね、マリルさん」
「トーコさんも綺麗ですよー。にしても、五人分のお化粧は疲れました」
「妾が魔法でやると言っておるのに」
「キアラさんの魔法化粧は粗いんですよー」
魔法化粧って凄いワードだね。
女性のAGは着るドレスの形が基本的に決まっている。だから冬子は以前のデートの時と同じように袖が無く、背中と胸元が大きく開いたデザインで物凄く深くスリットが入っているドレスだ。
ただし色はルビーレッドだ。ビシッと背筋を伸ばして歩く姿と相まって、とても大人っぽく見える。
というか化粧が……いつもより大人っぽいのかな。真っ赤な薔薇はあいつの唇って感じ。
「よく似合ってるよ、冬子。だいぶ大人っぽいね」
「そ、そうか?」
ちょっと照れた様子の冬子。大人っぽい見た目とのギャップでクラクラしちゃうね。
そういえばさっきリャンはシリウスでの認定式でパーティーに出ない分今日はお洒落すると言っていたけど……そう思って彼女のドレスを見ると、
「ふふ、マスター。もっと見てもいいんですよ?」
……どういう分類なんだろう、このドレス。足の付け根ギリギリのタイトなスカート、ボディラインがクッキリと出る上半身、そして背中は丸見えでノースリーブ。銀色で白い宝石がちりばめられている。
それでいて胸元がいっさい見えてないのが……その、えっと。
「マスターはこういうのがお好きでしょう?」
「ノーコメントで。綺麗だとはお、思うよ」
「何をドモってるんデスか、キョースケさん」
そういうシュリーはやや子どもっぽい雰囲気のドレスだ。半袖で、ふわっと広がるスカート。ただ彼女自身が小柄なことも相まって非常によく似合っている。とはいえヒラヒラなレースがついているわけではなく、色合いも黒だけどゴスロリって感じは無い。
ただ、俺が驚いたのは……頭、というか耳だ。
「これ、ウィッグ?」
「ええ、マリルさんがやってくださいました。ヨホホ!」
なんと、完全に隠れている。普段はそんなに長くない彼女の髪だが、今日はしっかりと編み込まれ頭部のボリュームが増している。その髪の中に耳が隠されているのだろう。
大きめの花飾りもあり、どこからどうみても獣人の耳があるようには見えない。
「凄いね……」
「褒めてくださいー、キョウ君」
「ああ、偉い……っていうか、凄いよマリル」
そんな彼女は、「今日はどちらかというと主賓じゃないのでー」と少し地味めな格好だ。彼女も含めて「頂点超克のリベレイターズ」だから、主賓だよって言ったんだけどね。
淡い紺で、半袖長スカートのオーソドックスなドレスだ。ただ髪型はいつもより決まっており、普段のボブカットじゃなくてちょっとボリュームのあるハーフアップ(ってマリルが言ってた)になっている。ウィッグってこっちの世界にもあるんだねー。
「ほれ、何をしとるんぢゃ。行くぞ」
そんなキアラはいつものミニスカ改造巫女服ではなく、ちゃんとドレスだ。……ただし、リャンとは別方向で露出が凄いけど。
チューブトップの紫色のドレス、ギリギリミニのスカートで、後ろから透明なスカート? みたいなのが出ている。
彼女の神々しいまでのスタイルが強調されており、胸は上半分がこぼれてきそうだ。
「なんぢゃ、キョースケ。妾の艶姿に見惚れたか?」
俺が彼女のドレス姿を見ていたことに気付いたキアラが、挑発的な笑みをこちらに向ける。
しかし、俺は苦笑いしながら首を振った。
「いや……なんていうか、いっそエロくないよね。一周して」
「そうか? まあ妾に見とれるのは男であらば自然なことぢゃ。存分に視姦するがよい」
「ワード選びって大切だよね。今ので余計見る気失せたよ」
俺がため息をついて、我が家に繋がる道の方を見る。
その遠くから……
「あ、迎えの馬車来たね」
「ほう、オルランドは気が利くのぅ」
「いや俺が手配したんだよ。せっかくだったしね」
というか、ティアールに言われた。せっかくめかし込んだ女性たちを長時間歩かせるつもりか、ってね。
……キアラの転移で行くつもりだったとは言えず、ティアールの運営する馬車業者からレンタルしたわけだ。あいつホント俺から搾り取るの巧いよね。
「じゃあ行こうか」
全員で馬車に乗り込み、オルランド邸へと向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
オルランド邸は以前来た時と同じで、センスのある館だ。
既に俺達以外は会場にいると言われ、メイドさんの案内に従って中を進む。
「にしても、相変わらず広いな」
「お金持ちだし、貴族だしね」
「その辺の壺、持って帰ってもバレないんぢゃないかのぅ」
「……キアラ、それは普通に犯罪だから」
っていうか、お金に困ってないでしょうが。
そんな益体も無いことを話していると、パーティーホールに着いた。
「こちらで皆様がお待ちです」
「ありがとう」
メイドさんが扉を開けると、中からまさかのリルラが冬子に飛びついた。
「おめでとーございまーす!」
「あ、ああ。ありがとう」
そして拍手で迎えられる。なんだか照れくさいけど、パーティーってこういうものなんだろうか。
「簡単なホームパーティーだけど、これくらいはやらないと」
そう言ってオルランドが花束を持ってやってくる。
ちらっと周囲を見ると、滅多に食べられそうにない豪華な料理に煌びやかな飾りつけ。雰囲気以上にお金がかかってるのが分かる……簡単なホームパーティーってのは一体。
「おめでとう、いろいろね」
「ああ、ありがとう」
花束を俺が受け取ると再び拍手が。
ちょっと頬を掻いて照れていると、リルラも花束を持って現れた。
「トーコさーん、おめでとうございます」
「ありがとう、リルラ」
リルラは自分の上半身よりも大きな花束を渡し、冬子が嬉しそうな笑顔で受け取る。
「今回昇格する人にだけしか花束を用意していなくてごめんなさいね」
「ん、でも嬉しいよ。それにキアラもリャンもマリルもお酒の方が嬉しいだろうし」
「ふふっ、そうなの? それなら安心だわ、いいお酒入れてるわよ」
そこでふと、シュリーの花束が無かったことに気づく。
彼女の分が無いわけもないし――そう思っていると、とある男がシャンデリアの光を反射しながら現れた。
本人が大きすぎるため、花束が小さく見えるけど……皆のと同じサイズか。
「……リュー」
「レオ……さん」
暫しの無言。二人の関係を知っているのは俺たちパーティーメンバーくらいのものだけど、神妙な雰囲気を察したのか誰も何も言わず見守っている。
一歩、マルキムが近づく。ただそれだけなのにマルキムの顔は緊張で少し青くなり、逆にシュリーは穏やかな笑みを浮かべる。
二人の間に何があったかを考えれば、マルキムの態度も分からなくはない。
やっとのことで目の前まで来たマルキムは、ガタイに似合わず何を言えばいいのか分からなくなっているようで……モジモジと所在なさげに目を彷徨わせている。
「京助、何も言わないでいいのか?」
「二人とも大人なんだから、野暮なことは無しだよ」
そう言って俺は冬子の顔を見つめる。彼女も何かを察したのか、そっと後ろを向く。
一分ほどそうしていただろうか。意を決したようにマルキムが口を開く。
「……おめでとう」
「ヨホホ、ありがとうございます。レオさん」
「ああ」
マルキムは感極まったように目に涙を溜め……花束を渡すと同時に泣きだした。
「あの時……助けられなくて、本当にすまない……ッ!」
震える声、ガクッと膝をつく音がする。
マルキムは堰を切ったように嗚咽を漏らす。
「オレは……憎かった。おやっさんを、姐さんを殺したアイツらが心底憎くて仕方が無かった……ッ。だから何も考えず、形振り構わず戦った。おやっさんたちに預けられたはずのお前たちを放ったらかしにして」
声を押し殺しているが……心からの叫びなんだろう。
そこに込められた感情は『後悔』の一言では表せないほど、何もかもが入り混じっていて。
きっと彼の人生――その全てがこの悲痛な叫びに詰まっているのだろう。
「だから、絶対にお前だけは守ろうと思った。でもお前は諦めてなかった……ッ。それに気づけなかった、オレはお前にあわせる顔が無くて――」
そっと。
感情が爆発したマルキムに向かって、シュリーが優しい声をかける。
「レオさん。……確かに、あの時はショックで悲しい気持ちでいっぱいだったデス」
でも、とシュリーは一息ついた。
「でも……だから、見えたものがあったデス。繋がった縁もあったデス。最後は取り戻せた、元に戻れはしなかったデスけど……でも、だからこそ今のワタシは幸せになれたって。そう思っているデス」
繋がった縁、という言葉でほんわかとした雰囲気が伝わってくる。
「ああ、そうだろう……それは、見てれば……分かるぜ」
「ヨホホ! だからレオさん、気に病まないで欲しいデス。今のワタシは幸せデス。素晴らしい仲間に囲まれて、こうして出世? ……も出来て。家族で過ごした時と変わらないくらい幸せなんデス」
「ああ、ああ……!」
「レオさん、本当にありがとうございますデス」
――まったく、せっかくのお祝いパーティーなのにいきなり湿っぽくしちゃって。
隣でもらい泣きしてる冬子をよしよしと撫でながら……俺は苦笑を浮かべて肩をすくめた。
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