異世界なう―No freedom,not a human―
164話 聞いてないぞなう
俺は運ばれてきた灰皿に活力煙を押し付けてから、二本目を取り出す。
「じゃあ悪い報せからお願い」
タローはフッと片頬を上げる。彼には珍しく、あまり嫌みの無い笑みだ。
「そうか。では簡潔に言おう。昨日キミが取り逃した魔族だが、まだ国内にいる」
悪い報せ……というよりも、共有しておいた方がいい情報って感じだね。
「なんでわかるの?」
「そこはトップシークレットだ。しかし間違いないと思ってくれ」
唇に人差し指を当てて薄く微笑むタロー。野暮なことを聞いちゃったね。
「ギギギ……いや、ブリーダが、か」
アイツの正式名称を思い出しながら舌打ちする。面倒なことになったね。
煙を吐き出し、天井を仰ぐ。
「仕留めきれなかったのは悪いと思ってるよ」
「そのことは構わんし、奴が潜伏していることに気づけなかったことも気にすることでは無い。しかし、警戒はしておけということだ。それと、敵の情報の共有を私にも頼んでいいか?」
「OK、というかどうせ、マルキムとタロー、あとギルマスには話すつもりだったからね。マリルにまとめてもらって、書類って形でいいかな?」
チーム皆で話して、彼女に纏めてもらう形が一番綺麗な報告書になる。こういった業務は、本来シェヘラにお願いするんだけど……ぶっちゃけマリルの方が早い。
「助かる。では次に嬉しい報せだ。私に出されていた監視任務が解かれることになった」
いきなりそんなことを言われて、キョトンと目を見開いてしまう。
「へぇ、いいの?」
「やりましたね、マスター」
少し弾んだ声を出すリャンにタローが苦笑する。この二人は師弟関係のはずなのに、なんで微妙に仲が良くないんだろう。それとも逆に、それくらい気の置けない仲になっているのか。
なんにせよタローは指を三本立て、一本ずつ折って説明する。
「キミが人族の国を裏切ることはないだろうという上の判断が一つ、キミがSランクAGになったことで私の目ではなく市井の目で監視出来るようになったということが一つ、何よりアンタレスの街というアキレス腱があることが一つ。計三つの理由からキミの監視を外していいことになった」
アンタレスの街がアキレス腱、という言い方に少し含みを感じる。
だがそこに突っ込むのはそれこそ野暮だ。なるほど、俺は守る物を抱え過ぎたらしい。
「世界で生きて、共同体の中で生きて……何も大切なものが無い人間の方が少ないさ。というか何も大切なものが無い人間は、共同体の中で自然に生きてはいけまい」
「かもしれないね。……でもそれと不快感の話は別だ」
グリグリと灰皿に活力煙を押し付け、三本目を咥える。
……と、咥えたところでリャンが火をつけてくれた。
「マスター、落ち着いてください。……街を一つ人質にするリスクを考えれば向こうもそう強硬手段には出られません」
「ミスピアの言う通りだ。ミスター京助、考えてみたまえ。キミが逆の立場だったとして……街一つを人質にしたい状況など歓迎したいかね? 私なら御免被る。つまりそれは最終手段だが、取らなくていいなら取りたくない手段だ。要するにキミは『最終手段をとるような状況にはならないAGだ』という信用を得たということにもなる」
二人に説明され……多少冷えた頭で考える。
言われてみれば確かに、「最終手段が一応あるから、問題無い」と判断されたのであればそれは嫌がるべきことでは無いのかもしれない。
俺は活力煙の煙を吸い込み、吐き出す。
「ん……まあ、分かった。俺はアンタレスに今後も住み続けるつもりだからね。……せめて寝床が確保出来るくらいには守れるようにしよう」
「そうしろ。……そうでなくても私がこの街に常駐することが無くなるんだ。キミらで守っていってもらわねば困る」
ああ、タローは俺の監視任務を解かれたらいなくなるのか。
当たり前とはいえ、いなくなると思うと寂しく……ならないな、うん。凄い、まったく寂しくない。
「……ミスター京助、キミが何を考えているか手に取るようにわかるんだが……もう少し表情を隠せるようにしたまえ」
おっと、どうやらニヤけていたようだ。俺は口元を引き締め、背筋を伸ばす。
「ん、ご忠告痛み入るよ。とはいえ、連絡が取れなくなるのは困るかな」
「ギルドを通してくれたら数日以内には連絡が取れると思うが?」
そういえば、Sランカーになったことの特典の一つに『ギルド転送システムの使用許可』というものがあったね。
まあ、こっちの世界は人間のテレポートすら可能にする魔法師がいるわけで……紙くらいなら余裕であちこち飛ばせるわけだ。
とはいえ、魔力も食うし無制限に使えるわけじゃない。普段はギルドの仕事にしか使われないらしいけど……Sランカーは頼めば手紙を好きな街に送ってもらえるんだそうだ。
「まあ、それがあるからいいか……」
「それに、今後も活動拠点にする予定だからな。何となく気に入った」
ああ、常駐しなくなるだけでいなくなるわけじゃないのか。チェッ。
「なーんだ」
「……だからもう少し感情を隠すべきだと……」
なんて話をしていたところで三人の料理が運ばれてきた。
堅い話は打ち切りにして、俺たちは食事することにする。
「そういえば、リャンの修行はどうするの?」
パスタを食べながらそう尋ねると、タローはニヒルに微笑んだ。
「ミスピアはキミやミス冬子と違って基本は出来ていた。私はその応用技を伝えたに過ぎんからな。もう後は彼女が自分のものにするだけだ」
「最近は彼に習いに行くことも減っていましたしね」
そうだったのか。それなら心配はいらないね。
タローは優雅な動作でピザのようなものを食べ、口元についたソースを拭う。いやなんでソースついたし。
「相談ならいつでも受け付ける。ミスター京助だって、模擬戦の相手ならいつでもするぞ」
「それは嬉しい」
俺がそう答えると、タローはふと何かを考えるような仕草をする。たっぷり三秒ほど黙ってから……一つ提案してきた。
「そういえばミスターマルキムを待つんだったな。せっかくだ、早速一戦どうだ?」
「今から?」
首肯したタローは、背もたれに背を預けながら紅茶を飲む。
「たまには私も実力者と戦わねば体が鈍る」
「いや俺は昨日Sランク魔物とやりあったばかりなんだけど……」
「その夜に酒場で暴れたんだ、元気なら有り余っているだろう」
うるさい。
まあ体調が悪いわけじゃない。二日酔いだって(いつの間にか)治ってる。たぶんキアラに後ろからハグされた時に魔法をかけられたのだろう。
気怠さが無いわけではないが、構わないか。
「ただし一戦だけね。武器無しの」
「良かろう。たまには二人きりでやりあおうじゃないか」
チラリとリャンを見ながら、強調するように言うタロー。
それに少しだけ違和感をおぼえ、俺は片頬だけに笑みを浮かべる。
「ラブコールは嬉しいけど、彼女がいちゃダメなの?」
「ミステリアスさが魅力を生むのは男も女も共通だ。それを伝授してやろうというのに女性がいては台無しだろう?」
はぐらかすタロー。一つため息をついてリャンを見ると……彼女は少し複雑そうな顔になりながらも別に反対したいわけではないようだ。
「リャンは知ってるの?」
「……ここで言っても良いので?」
「彼の命令であればキミは従うだろうな。だから私がミスター京助にお願いしよう。二人きりで、模擬戦といこう」
尋ねれば答えてくれそうな雰囲気があるリャン。
しかしここで聞いてはいけないのだろうことは俺にも察せられた。
「――OK。取り合えずご飯食べちゃおうか」
「そうだな」
「マスター、あーんです」
「あーん……いや、なんで?」
「見せつけたくて」
「……ミスター京助、そういうのはTPOを弁えたまえ」
「俺が悪いみたいに言うのやめて!?」
このために俺とは違うパスタにしたのか。
確かに美味しいが、あーんなんてされるとこっぱずかしい。
「ではマスター、私にも……」
「いいけどさ……なんであーん前提なのさ」
「だってそっちの方がマスターも嬉しいかな、と……。あと見せつけたくて」
「あー、ミスター京助?」
「だからなんで俺が悪いみたいになってるのさ!」
俺は文句を言いつつ、パスタを食べる。
やれやれ……一体、何の話なんだろうか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「それで?」
ギルドの地下の練習場に着き、俺とタローは素手で向かい合う。
お昼時を過ぎたこの時間だと、練習場もまばらだ。これがもう一時間か二時間もすればクエスト帰りのAGなんかがストレッチに使ったりもするけど。
「取り合えず遮音の結界を頼んでもいいかね?」
「ん」
俺は風で結界を張り、ついでに周囲から中を見づらくもする。あんまり派手に魔法を使っているとギルドマスターから怒られるけど、これくらいなら許容範囲内だろう。
「ルールはどうする?」
「首から上無し、寝技無し、武器、魔法、スキル無し、それ以外に何かいる?」
「そんなものだろう。では始めようか」
トッ、と軽やかにタローがこちらへ踏み出してくる。俺は右足を引き、半身に構えてから顔の横で右手首を一つスナップさせる。
そして姿勢を低くして左下から肝臓を狙って一撃、タローはそれを肘で弾きバックステップで距離をとる。
それを追って一歩踏み出した途端、俺の前からタローが消える。おや、と思う間もなく俺が踏み出した足を刈られる。
「っと」
バランスを崩すが、何とか踏みとどまりタローに掴みかかる。今度は俺が体勢を崩してやろうと思ったが、そこは流石にSランカー。体捌きで返された。
手首を掴み、睨みつける。
「組み合いじゃちょっとキツイか」
「と、言いながら関節を極めるんじゃない」
パァン、と弾かれる。やむなくタローの肩辺りに掌底を当ててその反動で距離をとった。
「で? なんの話」
「単純な話だ。キミはこれからどうするのかね?」
タローの拳を弾き、ローキックを繰り出す。
「どうって……SランクAGになってってこと? 今までと変わる事は無いけど」
ガッ、ガッ、二人の間で拳をやり取りする。お互いクリーンヒットは無いけど、やりたい動きを制限されているような気分で気持ちが悪い。タローはやっぱり巧いね。
タローの出してきた裏拳にカウンターを合わせようと手刀を繰り出し――
「そうではない。……彼女たちの話だ。誰を正妻にするのかくらいは考えておいた方がいいだろう」
「はっ? って、げふっ!」
――カウンター失敗。綺麗にもらったが、すぐに立て直して構える。
「せ、正妻って……」
「当然だろう。それとも何か? キミに彼女らを娶る以外の選択肢があるとでも?」
「いや、えー……その、冬子たちの気持ちだってあるわけだし……」
「では、彼女らがキミ以外と結婚するのを許容できるか?」
「うぐっ」
言葉に詰まり、取り合えずタローに蹴りを繰り出す。ボディを狙ったキックはあっさりと躱され、やれやれという表情をされる。
「……でも、その……あの……」
「結婚に必要な資金に困ってるわけがあるまい? Bランク以上のクエストを受けて解決すれば結婚資金くらいすぐに貯まるだろう。家もあるし、何を困ることがある」
「えっと、いや……ぐほっ!」
鳩尾に入った。呼吸が出来なくなるが、俺はしゃがみこんだ勢いを利用して地面に両手をつき、足を地面と水平に開いて足払いを食らわせる。
「っと」
「アッパー!」
「顔は禁止だと言っただろう」
バランスを崩したタローの顎にややゆっくり目にアッパーを打つが、難なく防がれる。
「彼女らを娶ることに何の障害がある? ミスピアから聞いたがキミの性愛対象も恋愛対象も女性なのだろう?」
「そりゃそうだけど……でも、結婚はまだ早いっていうか、その……」
「そうだな、男側がこうウジウジしていては時期尚早か」
俺はフェイントをかけ、タローの腹を殴りつける。
「……俺が彼女らを嫌って無かったとしても……彼女らが俺のことを好いてくれてるとは限らないし。嫌われてるとは思わないけど……」
「……そんなガキじゃあるまいし、ミスター京助」
「まだ俺は十八だ」
「世間的に見れば十分大人だ」
そういえばそうだった。
タローと殴り合いながら話を続ける。
「アンタレスは一夫一妻の人間が多いが、別に一夫多妻でも問題ない」
「ってか、結婚ってどうやるの?」
手首を捻るが、俺が捻った方向にタローが回転していなす。
「貴族であれば色々あるだろうが、平民の結婚など簡単だ。お互いの親族に挨拶して、後は近くの教会で式を挙げればいい。披露宴でお互いの親しい人に報告を済ませ、そうでない人には手紙を送る……くらいのものだ」
「婚姻届けとか出したりしないの?」
今度はタローが腕関節を極めようとしてくるので、バックステップで距離をとる。
「婚姻届け……? そういうのは教会が把握しているからな、必要無いだろう」
「へー。そうなんだー、教えてくれてありがとー」
「それで話が流れると思ったら大間違いだぞ。本当に何が問題なんだ。恥ずかしい、以外の回答を頼むぞ」
心底分からない、という顔になるタロー。俺の心に浮かぶその質問に対する答えが、どうやっても笑われそうな気がして言う気にならない。
しかしタローが「ん?」と促すので、本心以外で誤魔化すのは無理だろうと悟り……少しそっぽを向いて答える。
「……恋とか、愛とか、結婚とか……何か、そういう『好き』が分からないんだよ」
タローは俺の答えにぽかーーーーん、と彼にしては珍しいほど呆けた顔になり、案の定笑いだした。
「ははははは! キミは本当に面白いな。――なるほど、なるほど。いや確かに、それは大事なことだな」
なんなら腹を抱えて笑うタロー。ここまでコケにしてくるか。
流石に恥ずかしくなり、俺は逆ギレ気味にタローを睨みつける。
「……文句があるなら聞くけど?」
「いや、何。ははは! ミスター京助、キミにもなかなか可愛いところがあるんだな」
「よーし、その喧嘩買った」
「――伴侶はいないからな。せめて恋についてだけは教えてやろう」
タローは口元をゆるませたまま、俺の方へ歩いてくる。
そしてジッと俺の眼を見て……ギリギリまで顔を近づけてからパチリとウインクした。
「瞳と瞳が合った時、欲しいと思えばそれが恋だ 」
「……恋愛観もブレないんだね、流石だよ」
ため息をつき、俺は結界を解除して端っこに置いてある棒と弓矢を風で引き寄せる。
「何かもうイライラするから武器アリでやりあおう。魔法とスキルは無し、キアラでも治せなさそうな怪我を負わせる攻撃も無し、致命傷になるやつも無し! オーライ?」
キャッチした棒で地面をカァン! と突き、一方的に叩きつける。
タローはそんな俺が面白いのかクツクツと笑い、弓を構えた。
「いいだろう。しかしなるほど、本当に女を知らないとはな」
「構えないと死ぬよ?」
「青いな、ミスターチェリー」
次の瞬間、練習場に轟音が響き渡った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「あー……京助」
「お疲れ様、マルキム。速かったね。呼んどいて悪いんだけどちょっと待ってて、こっちの書類片付けちゃうから」
「いや……それはいいんだがよ……何したんだお前……」
困惑顔のマルキム。俺とタローの前にある書類の山を見てドン引きしているようにも見える。
「ちょっとね。反省文的なものじゃないから大丈夫だよ。……よーし、終わった」
俺は出来上がった書類をトントンと整理し、机の脇に避ける。
「ふぅ、俺はやっぱり事務は向かないね。こんなことならシェヘラに手伝ってもらえばよかった」
「何を言う。私たちが今日まとめたのは短期プランについてだが、本来は長期的プランなんだ。この程度で音を上げてどうする」
タローからジト目を向けられるが、そっぽを向いて聞こえないフリ。我ながら面倒なことに口出ししたとは思うけど、アンタレスのことを考えるなら少しはこういうことをしてもいいだろう。
「んで……キョースケよ。なんでオレを呼んだんだ?」
「ああ、ごめんね。これだよ」
俺は懐から招待状を取り出し、マルキムに渡す。受け取ったマルキムはやや眉間にしわを寄せて険しい顔をするので、なぜだろうと首をかしげる。
「えーと、明日のパーティーの招待状なんだけど……都合つかない?」
「いや? んなこたぁねーよ。ねーけどよ……気まずい、だろうがよ」
そこまで言われてピンと来る。シュリーのことか。
「ごめん、タロー」
フッとタローに目線をやると、それで何となく察したのか彼は纏めておいた書類を脇に抱えて立ち上がった。
「ではミスフィアのところにこれを持っていこう。また明日だな、ミスター京助」
「ありがとう。じゃあまた明日ね、タロー」
パタン、と扉が閉じたところで俺は活力煙を咥えて火をつける。
ふ~……と煙を吐いてからニッと笑顔を作った。
「別にいいんじゃない? 俺は祝って欲しいし……シュリーだって祝って欲しいよ、きっと」
活力煙をもう一本取り出し、マルキムに薦める。
「ね。お兄さんみたいなものなんでしょ、シュリーの」
マルキムはしばし招待状を眺めたあと……不意に、般若の表情になって俺の胸倉を掴んだ。
「テメェにお義兄さんと呼ばれる筋合いはねぇ!」
「えっ、ちょっ、えっ!?」
「つーかテメェ、リューのことを別の愛称で呼んでんのか!?」
「あっ、えっ……い、言って無かったっけ。大分前から……」
「だ、い、ぶ、ま、え、か、ら~……? キョースケェェェェェ!!! テメェ、そこになおれ!」
あ、こいつヤバい。
「と、取り合えず招待状は渡したから! 明日来てね絶対それじゃまた明日!」
「待っちやがれキョースケ! 詳しく話せ! 友として、AGとしては認めているがリューの旦那になることはまだ認めちゃいねぇぞコラァ!」
一刻の猶予も無いので、俺は窓から脱出して空へと飛びあがる。
背後から聞こえる野太い「待ちやがれ~!」という声をBGMに、俺はやれやれと首を振るのだった。
「じゃあ悪い報せからお願い」
タローはフッと片頬を上げる。彼には珍しく、あまり嫌みの無い笑みだ。
「そうか。では簡潔に言おう。昨日キミが取り逃した魔族だが、まだ国内にいる」
悪い報せ……というよりも、共有しておいた方がいい情報って感じだね。
「なんでわかるの?」
「そこはトップシークレットだ。しかし間違いないと思ってくれ」
唇に人差し指を当てて薄く微笑むタロー。野暮なことを聞いちゃったね。
「ギギギ……いや、ブリーダが、か」
アイツの正式名称を思い出しながら舌打ちする。面倒なことになったね。
煙を吐き出し、天井を仰ぐ。
「仕留めきれなかったのは悪いと思ってるよ」
「そのことは構わんし、奴が潜伏していることに気づけなかったことも気にすることでは無い。しかし、警戒はしておけということだ。それと、敵の情報の共有を私にも頼んでいいか?」
「OK、というかどうせ、マルキムとタロー、あとギルマスには話すつもりだったからね。マリルにまとめてもらって、書類って形でいいかな?」
チーム皆で話して、彼女に纏めてもらう形が一番綺麗な報告書になる。こういった業務は、本来シェヘラにお願いするんだけど……ぶっちゃけマリルの方が早い。
「助かる。では次に嬉しい報せだ。私に出されていた監視任務が解かれることになった」
いきなりそんなことを言われて、キョトンと目を見開いてしまう。
「へぇ、いいの?」
「やりましたね、マスター」
少し弾んだ声を出すリャンにタローが苦笑する。この二人は師弟関係のはずなのに、なんで微妙に仲が良くないんだろう。それとも逆に、それくらい気の置けない仲になっているのか。
なんにせよタローは指を三本立て、一本ずつ折って説明する。
「キミが人族の国を裏切ることはないだろうという上の判断が一つ、キミがSランクAGになったことで私の目ではなく市井の目で監視出来るようになったということが一つ、何よりアンタレスの街というアキレス腱があることが一つ。計三つの理由からキミの監視を外していいことになった」
アンタレスの街がアキレス腱、という言い方に少し含みを感じる。
だがそこに突っ込むのはそれこそ野暮だ。なるほど、俺は守る物を抱え過ぎたらしい。
「世界で生きて、共同体の中で生きて……何も大切なものが無い人間の方が少ないさ。というか何も大切なものが無い人間は、共同体の中で自然に生きてはいけまい」
「かもしれないね。……でもそれと不快感の話は別だ」
グリグリと灰皿に活力煙を押し付け、三本目を咥える。
……と、咥えたところでリャンが火をつけてくれた。
「マスター、落ち着いてください。……街を一つ人質にするリスクを考えれば向こうもそう強硬手段には出られません」
「ミスピアの言う通りだ。ミスター京助、考えてみたまえ。キミが逆の立場だったとして……街一つを人質にしたい状況など歓迎したいかね? 私なら御免被る。つまりそれは最終手段だが、取らなくていいなら取りたくない手段だ。要するにキミは『最終手段をとるような状況にはならないAGだ』という信用を得たということにもなる」
二人に説明され……多少冷えた頭で考える。
言われてみれば確かに、「最終手段が一応あるから、問題無い」と判断されたのであればそれは嫌がるべきことでは無いのかもしれない。
俺は活力煙の煙を吸い込み、吐き出す。
「ん……まあ、分かった。俺はアンタレスに今後も住み続けるつもりだからね。……せめて寝床が確保出来るくらいには守れるようにしよう」
「そうしろ。……そうでなくても私がこの街に常駐することが無くなるんだ。キミらで守っていってもらわねば困る」
ああ、タローは俺の監視任務を解かれたらいなくなるのか。
当たり前とはいえ、いなくなると思うと寂しく……ならないな、うん。凄い、まったく寂しくない。
「……ミスター京助、キミが何を考えているか手に取るようにわかるんだが……もう少し表情を隠せるようにしたまえ」
おっと、どうやらニヤけていたようだ。俺は口元を引き締め、背筋を伸ばす。
「ん、ご忠告痛み入るよ。とはいえ、連絡が取れなくなるのは困るかな」
「ギルドを通してくれたら数日以内には連絡が取れると思うが?」
そういえば、Sランカーになったことの特典の一つに『ギルド転送システムの使用許可』というものがあったね。
まあ、こっちの世界は人間のテレポートすら可能にする魔法師がいるわけで……紙くらいなら余裕であちこち飛ばせるわけだ。
とはいえ、魔力も食うし無制限に使えるわけじゃない。普段はギルドの仕事にしか使われないらしいけど……Sランカーは頼めば手紙を好きな街に送ってもらえるんだそうだ。
「まあ、それがあるからいいか……」
「それに、今後も活動拠点にする予定だからな。何となく気に入った」
ああ、常駐しなくなるだけでいなくなるわけじゃないのか。チェッ。
「なーんだ」
「……だからもう少し感情を隠すべきだと……」
なんて話をしていたところで三人の料理が運ばれてきた。
堅い話は打ち切りにして、俺たちは食事することにする。
「そういえば、リャンの修行はどうするの?」
パスタを食べながらそう尋ねると、タローはニヒルに微笑んだ。
「ミスピアはキミやミス冬子と違って基本は出来ていた。私はその応用技を伝えたに過ぎんからな。もう後は彼女が自分のものにするだけだ」
「最近は彼に習いに行くことも減っていましたしね」
そうだったのか。それなら心配はいらないね。
タローは優雅な動作でピザのようなものを食べ、口元についたソースを拭う。いやなんでソースついたし。
「相談ならいつでも受け付ける。ミスター京助だって、模擬戦の相手ならいつでもするぞ」
「それは嬉しい」
俺がそう答えると、タローはふと何かを考えるような仕草をする。たっぷり三秒ほど黙ってから……一つ提案してきた。
「そういえばミスターマルキムを待つんだったな。せっかくだ、早速一戦どうだ?」
「今から?」
首肯したタローは、背もたれに背を預けながら紅茶を飲む。
「たまには私も実力者と戦わねば体が鈍る」
「いや俺は昨日Sランク魔物とやりあったばかりなんだけど……」
「その夜に酒場で暴れたんだ、元気なら有り余っているだろう」
うるさい。
まあ体調が悪いわけじゃない。二日酔いだって(いつの間にか)治ってる。たぶんキアラに後ろからハグされた時に魔法をかけられたのだろう。
気怠さが無いわけではないが、構わないか。
「ただし一戦だけね。武器無しの」
「良かろう。たまには二人きりでやりあおうじゃないか」
チラリとリャンを見ながら、強調するように言うタロー。
それに少しだけ違和感をおぼえ、俺は片頬だけに笑みを浮かべる。
「ラブコールは嬉しいけど、彼女がいちゃダメなの?」
「ミステリアスさが魅力を生むのは男も女も共通だ。それを伝授してやろうというのに女性がいては台無しだろう?」
はぐらかすタロー。一つため息をついてリャンを見ると……彼女は少し複雑そうな顔になりながらも別に反対したいわけではないようだ。
「リャンは知ってるの?」
「……ここで言っても良いので?」
「彼の命令であればキミは従うだろうな。だから私がミスター京助にお願いしよう。二人きりで、模擬戦といこう」
尋ねれば答えてくれそうな雰囲気があるリャン。
しかしここで聞いてはいけないのだろうことは俺にも察せられた。
「――OK。取り合えずご飯食べちゃおうか」
「そうだな」
「マスター、あーんです」
「あーん……いや、なんで?」
「見せつけたくて」
「……ミスター京助、そういうのはTPOを弁えたまえ」
「俺が悪いみたいに言うのやめて!?」
このために俺とは違うパスタにしたのか。
確かに美味しいが、あーんなんてされるとこっぱずかしい。
「ではマスター、私にも……」
「いいけどさ……なんであーん前提なのさ」
「だってそっちの方がマスターも嬉しいかな、と……。あと見せつけたくて」
「あー、ミスター京助?」
「だからなんで俺が悪いみたいになってるのさ!」
俺は文句を言いつつ、パスタを食べる。
やれやれ……一体、何の話なんだろうか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「それで?」
ギルドの地下の練習場に着き、俺とタローは素手で向かい合う。
お昼時を過ぎたこの時間だと、練習場もまばらだ。これがもう一時間か二時間もすればクエスト帰りのAGなんかがストレッチに使ったりもするけど。
「取り合えず遮音の結界を頼んでもいいかね?」
「ん」
俺は風で結界を張り、ついでに周囲から中を見づらくもする。あんまり派手に魔法を使っているとギルドマスターから怒られるけど、これくらいなら許容範囲内だろう。
「ルールはどうする?」
「首から上無し、寝技無し、武器、魔法、スキル無し、それ以外に何かいる?」
「そんなものだろう。では始めようか」
トッ、と軽やかにタローがこちらへ踏み出してくる。俺は右足を引き、半身に構えてから顔の横で右手首を一つスナップさせる。
そして姿勢を低くして左下から肝臓を狙って一撃、タローはそれを肘で弾きバックステップで距離をとる。
それを追って一歩踏み出した途端、俺の前からタローが消える。おや、と思う間もなく俺が踏み出した足を刈られる。
「っと」
バランスを崩すが、何とか踏みとどまりタローに掴みかかる。今度は俺が体勢を崩してやろうと思ったが、そこは流石にSランカー。体捌きで返された。
手首を掴み、睨みつける。
「組み合いじゃちょっとキツイか」
「と、言いながら関節を極めるんじゃない」
パァン、と弾かれる。やむなくタローの肩辺りに掌底を当ててその反動で距離をとった。
「で? なんの話」
「単純な話だ。キミはこれからどうするのかね?」
タローの拳を弾き、ローキックを繰り出す。
「どうって……SランクAGになってってこと? 今までと変わる事は無いけど」
ガッ、ガッ、二人の間で拳をやり取りする。お互いクリーンヒットは無いけど、やりたい動きを制限されているような気分で気持ちが悪い。タローはやっぱり巧いね。
タローの出してきた裏拳にカウンターを合わせようと手刀を繰り出し――
「そうではない。……彼女たちの話だ。誰を正妻にするのかくらいは考えておいた方がいいだろう」
「はっ? って、げふっ!」
――カウンター失敗。綺麗にもらったが、すぐに立て直して構える。
「せ、正妻って……」
「当然だろう。それとも何か? キミに彼女らを娶る以外の選択肢があるとでも?」
「いや、えー……その、冬子たちの気持ちだってあるわけだし……」
「では、彼女らがキミ以外と結婚するのを許容できるか?」
「うぐっ」
言葉に詰まり、取り合えずタローに蹴りを繰り出す。ボディを狙ったキックはあっさりと躱され、やれやれという表情をされる。
「……でも、その……あの……」
「結婚に必要な資金に困ってるわけがあるまい? Bランク以上のクエストを受けて解決すれば結婚資金くらいすぐに貯まるだろう。家もあるし、何を困ることがある」
「えっと、いや……ぐほっ!」
鳩尾に入った。呼吸が出来なくなるが、俺はしゃがみこんだ勢いを利用して地面に両手をつき、足を地面と水平に開いて足払いを食らわせる。
「っと」
「アッパー!」
「顔は禁止だと言っただろう」
バランスを崩したタローの顎にややゆっくり目にアッパーを打つが、難なく防がれる。
「彼女らを娶ることに何の障害がある? ミスピアから聞いたがキミの性愛対象も恋愛対象も女性なのだろう?」
「そりゃそうだけど……でも、結婚はまだ早いっていうか、その……」
「そうだな、男側がこうウジウジしていては時期尚早か」
俺はフェイントをかけ、タローの腹を殴りつける。
「……俺が彼女らを嫌って無かったとしても……彼女らが俺のことを好いてくれてるとは限らないし。嫌われてるとは思わないけど……」
「……そんなガキじゃあるまいし、ミスター京助」
「まだ俺は十八だ」
「世間的に見れば十分大人だ」
そういえばそうだった。
タローと殴り合いながら話を続ける。
「アンタレスは一夫一妻の人間が多いが、別に一夫多妻でも問題ない」
「ってか、結婚ってどうやるの?」
手首を捻るが、俺が捻った方向にタローが回転していなす。
「貴族であれば色々あるだろうが、平民の結婚など簡単だ。お互いの親族に挨拶して、後は近くの教会で式を挙げればいい。披露宴でお互いの親しい人に報告を済ませ、そうでない人には手紙を送る……くらいのものだ」
「婚姻届けとか出したりしないの?」
今度はタローが腕関節を極めようとしてくるので、バックステップで距離をとる。
「婚姻届け……? そういうのは教会が把握しているからな、必要無いだろう」
「へー。そうなんだー、教えてくれてありがとー」
「それで話が流れると思ったら大間違いだぞ。本当に何が問題なんだ。恥ずかしい、以外の回答を頼むぞ」
心底分からない、という顔になるタロー。俺の心に浮かぶその質問に対する答えが、どうやっても笑われそうな気がして言う気にならない。
しかしタローが「ん?」と促すので、本心以外で誤魔化すのは無理だろうと悟り……少しそっぽを向いて答える。
「……恋とか、愛とか、結婚とか……何か、そういう『好き』が分からないんだよ」
タローは俺の答えにぽかーーーーん、と彼にしては珍しいほど呆けた顔になり、案の定笑いだした。
「ははははは! キミは本当に面白いな。――なるほど、なるほど。いや確かに、それは大事なことだな」
なんなら腹を抱えて笑うタロー。ここまでコケにしてくるか。
流石に恥ずかしくなり、俺は逆ギレ気味にタローを睨みつける。
「……文句があるなら聞くけど?」
「いや、何。ははは! ミスター京助、キミにもなかなか可愛いところがあるんだな」
「よーし、その喧嘩買った」
「――伴侶はいないからな。せめて恋についてだけは教えてやろう」
タローは口元をゆるませたまま、俺の方へ歩いてくる。
そしてジッと俺の眼を見て……ギリギリまで顔を近づけてからパチリとウインクした。
「瞳と瞳が合った時、欲しいと思えばそれが恋だ 」
「……恋愛観もブレないんだね、流石だよ」
ため息をつき、俺は結界を解除して端っこに置いてある棒と弓矢を風で引き寄せる。
「何かもうイライラするから武器アリでやりあおう。魔法とスキルは無し、キアラでも治せなさそうな怪我を負わせる攻撃も無し、致命傷になるやつも無し! オーライ?」
キャッチした棒で地面をカァン! と突き、一方的に叩きつける。
タローはそんな俺が面白いのかクツクツと笑い、弓を構えた。
「いいだろう。しかしなるほど、本当に女を知らないとはな」
「構えないと死ぬよ?」
「青いな、ミスターチェリー」
次の瞬間、練習場に轟音が響き渡った。
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「あー……京助」
「お疲れ様、マルキム。速かったね。呼んどいて悪いんだけどちょっと待ってて、こっちの書類片付けちゃうから」
「いや……それはいいんだがよ……何したんだお前……」
困惑顔のマルキム。俺とタローの前にある書類の山を見てドン引きしているようにも見える。
「ちょっとね。反省文的なものじゃないから大丈夫だよ。……よーし、終わった」
俺は出来上がった書類をトントンと整理し、机の脇に避ける。
「ふぅ、俺はやっぱり事務は向かないね。こんなことならシェヘラに手伝ってもらえばよかった」
「何を言う。私たちが今日まとめたのは短期プランについてだが、本来は長期的プランなんだ。この程度で音を上げてどうする」
タローからジト目を向けられるが、そっぽを向いて聞こえないフリ。我ながら面倒なことに口出ししたとは思うけど、アンタレスのことを考えるなら少しはこういうことをしてもいいだろう。
「んで……キョースケよ。なんでオレを呼んだんだ?」
「ああ、ごめんね。これだよ」
俺は懐から招待状を取り出し、マルキムに渡す。受け取ったマルキムはやや眉間にしわを寄せて険しい顔をするので、なぜだろうと首をかしげる。
「えーと、明日のパーティーの招待状なんだけど……都合つかない?」
「いや? んなこたぁねーよ。ねーけどよ……気まずい、だろうがよ」
そこまで言われてピンと来る。シュリーのことか。
「ごめん、タロー」
フッとタローに目線をやると、それで何となく察したのか彼は纏めておいた書類を脇に抱えて立ち上がった。
「ではミスフィアのところにこれを持っていこう。また明日だな、ミスター京助」
「ありがとう。じゃあまた明日ね、タロー」
パタン、と扉が閉じたところで俺は活力煙を咥えて火をつける。
ふ~……と煙を吐いてからニッと笑顔を作った。
「別にいいんじゃない? 俺は祝って欲しいし……シュリーだって祝って欲しいよ、きっと」
活力煙をもう一本取り出し、マルキムに薦める。
「ね。お兄さんみたいなものなんでしょ、シュリーの」
マルキムはしばし招待状を眺めたあと……不意に、般若の表情になって俺の胸倉を掴んだ。
「テメェにお義兄さんと呼ばれる筋合いはねぇ!」
「えっ、ちょっ、えっ!?」
「つーかテメェ、リューのことを別の愛称で呼んでんのか!?」
「あっ、えっ……い、言って無かったっけ。大分前から……」
「だ、い、ぶ、ま、え、か、ら~……? キョースケェェェェェ!!! テメェ、そこになおれ!」
あ、こいつヤバい。
「と、取り合えず招待状は渡したから! 明日来てね絶対それじゃまた明日!」
「待っちやがれキョースケ! 詳しく話せ! 友として、AGとしては認めているがリューの旦那になることはまだ認めちゃいねぇぞコラァ!」
一刻の猶予も無いので、俺は窓から脱出して空へと飛びあがる。
背後から聞こえる野太い「待ちやがれ~!」という声をBGMに、俺はやれやれと首を振るのだった。
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