異世界なう―No freedom,not a human―

逢神天景@小説家になろう

140話 大バカ野郎の拳

「しかし全身に纏えるのかい……ハッ、相当な才能だね、ツネキ」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 ガッ! とゴリガルの拳を受け止め、そのまま左右の連打を叩きこむ。
 さらに加藤の攻撃魔法によってゴリガルの視界を一瞬塞ぎ、『職スキル』である『スクリューガゼルパンチ』を叩きこむ。
 砲弾を喰らったようにぶっ飛ぶゴリガル。しかし空中で一回転した彼女は、天井を蹴って落下してきてパンチを繰り出してきた。
 その場から飛びずさり、拳を回避し加藤が光の矢を放つ。


「邪魔だよ!」


「……!? 魔法を気合いだけでかき消した!?」


「ッラァ!」


 加藤へ対処しているゴリガルの正面に移動してから、ソーラープレキサスブローを叩き込む。
 しかしそれは読まれ、エルボーブロックで防がれる。


「つっ……」


「こんの、バカ! 背後をとれよ!」


「るせぇ! ボクサーが後ろから殴れるか!」


「喧嘩している暇はないよ!」


「「っ!」」


 空間が歪む――亜音速の突きが白鷺と加藤を吹き飛ばす。衝撃波だけで数メートルは飛ばされた。
 でたらめな力だが、これが枝神の力というものなのだろう。
 白鷺は体勢を立て直し、再び突進する。


「バカの一つ覚えかい! まっすぐ突っ込んでくるだけじゃどうしようもないよ!」


「ご忠告どーも……ッ!」


 そして拳が当たるギリギリの位置でサイドステップ。ジャブでちくちくと相手の出足を封じて距離を測る。
 ステップを踏み、相手の蹴り、拳を躱し、逆にこちらは軽く鋭い一撃を、右目を中心に狙う。これで相手の遠近感が狂ってくれたら御の字だ。
 二発、三発と打ち――カウンター気味に白鷺の右ストレートが刺さる。


「ッラァ!」


 さらにラッシュ。相手の肘を躱し、伸びあがり気味でアッパーを叩きつける。ゴリガルはそれを、にぃぃっ……と笑みを浮かべてまるで流水のような動作で受け流した。


「ッ!」


「ふっ……やるじゃない、かっ!」


 ズンッッッッッッッ!!


「ごふっ……」


 綺麗に膝が入り、白鷺の身体が「く」の字――否、「ク」の字に折れ曲がる。ミシリミシミシィッ! と尋常じゃなく嫌な音を鳴らしながら中の物を全てぶちまけてしまう。


「『トリニティ・アロー』!」


 その隙をついて後ろから加藤の魔法。三属性の矢を撃ちだす魔法だがゴリガルは避けようともせず気合いだけでかき消した。
 しかしその間に白鷺の回復が間に合う。立ち上がると全身に激痛が走るが、失神するほどじゃない。明らかにボキボキに折れていたアバラはしっかり治っている。
 右フックを叩き込み、さらにボディに連打。
 それら全てクリーンヒットしているにも関わらず――大木を殴っているかのような感覚に襲われる。
 そう、大木。まったく掠る気すらしなかったヘリアラスの時とはまた違う威圧感。
 いくら当てても倒せる気がしない――この感覚。
 頭を軽く振り、その考えを追い出す。


(こんなこと思ってるのは俺の気合いが足りねえからだ!)


「うおおおおおおおおおお!!!! ッラァァァァっ!!」


 ずおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! と更に周囲の黄色いエネルギーが増加する。それに合わせて白鷺の髪が逆立つ。


「ッラァ!」


 二人の間で拳がぶつかり合い、尋常じゃない衝撃波が広がる。白鷺が拳を戻した瞬間に、ゴリガルはさらに二発白鷺に叩き込んできた。
 それをガードし、ギラリと牙をむいて睨みつけてから頭を振って反動をつけて拳を繰り出す。


「はっ、来な!」


 ガガガガガガガ! と両者のラッシュがお互いの中間で火花を出す。白鷺は両拳を死ぬ気で回転させているのに対し、ゴリガルは少しだけ気を抜いた印象だ。


「気に食わないね……!」


 加藤はそんなゴリガルにいくつかの魔法を撃つが、ゴリガルはそちらを見ないまま肘、脚で迎撃する。


「アンタの魔法があるからね。こいつにばっか構っていられないのさ」


 加藤の方を向いてニヤリと笑うゴリガル。その顔には余裕が浮かんでおり――さらに苛立たせられる。


「じゃあ、俺のパンチを喰らいやがれ!!!」


 前に回り込み、低空から顎を狙って拳を振るう。
 上体を反ってそれを躱したゴリガルはその態勢のまま前蹴りで白鷺の顎を蹴り飛ばした。


「ぐぁっ……!」


「いいよ……いいよ! ツネキ! 天才かもしれない!」


「俺が天才? 当り前ッスよ!!」


「それに、ぼくを忘れないで欲しいかな……」


 前衛で白鷺が殴り、後ろからそれをサポートする加藤。
 徹底して白鷺がゴリガルに張り付くことによって、彼女の動きを制限しようとしているにも関わらず全く効いている様子がない。
 だったらもっと、もっと速く!
 もっともっと、力強く!!


「ッラァ!」


 一撃でも掠ればAランク魔物すら消し飛びそうな拳の応酬。ゴリガルを殴ると、それが数倍の威力となって返ってくる。
 頭と頭がくっつきそうになるような距離での打ち合い。まるで台風に一人で突っ込んでいっているようだ。
 白鷺の拳はゴリガルの肘、手のひら、腕で弾かれるが、白鷺は相手の拳を手の甲、腕で逸らし、稀に攻撃の出鼻で手をかぶせて動きを封じ、後はガードしている。
 相手の攻撃を受け流しているゴリガルに対し、どうしてもガードしてしまう白鷺とでは徐々にダメージに差が開いてくる。
 それが分かってはいるが――ボクサーである白鷺はこの距離で戦うのが一番いい。クロスレンジこそ何でもありバーリトゥードの中で、ボクサーが生きる道だ。


「ふ――ッ!」


 獣のような形相をしたゴリガル――否、もはや獣そものと言っても過言ではないだろう。それも食事を目の前にした猛獣。それほどの『圧』がビリビリと肌をいていた。


(――ッ、やっぱ)


 楽しい。
 だがそれ以上に、悔しい。
 相手が全力を出してくれないことが。
 いや、確かに先ほど手を抜いていた時と比べれば圧倒的な力だ。攻撃だ、技だ。白鷺がクリーンヒットさせた数など片手で数えられるほどなのに対し、彼女の攻撃で既に何度体が砕けていることか。加藤が随所で回復させてくれているから何とか打ち合えているだけで、加藤の魔力が切れた瞬間、この均衡は崩れるだろう。
 そして――それが、あとわずかであることも予感している。


(相棒だからな)


 加藤は、大きな魔法を出す暇を与えてもらっていない。それほどにゴリガルは手ごわい。しかし――だからこそ、残りの魔力量が少なくなっている今勝負をかけなくてはならない。


「加藤――! 十五秒……いや、二十秒もたせる! グッ!」


 グボォッ……とボディにあまりにも綺麗に――完全に胃がやられた――パンチが入るが、ゴリガルに抱き着くことで何とか倒れるのを回避する。


「そんな体で無茶を――」


「無茶でもなんでも!!!」


 ゴリガルに振り払われそうになるが――ボクサーのクリンチが、その程度ではがれるとでも? まして、今の白鷺はバフで最大限強化されている。そう簡単にほどけるわけがない。


「やるんだよ! じゃなきゃ勝てねえ!」


 蹴りで、一瞬だけクリンチが緩む。
 ゴリガルが距離を取ろうとバックステップした瞬間、白鷺も間合いを詰め彼女が跳ぼうとした方向に拳を叩きこむ。
 手のひらで防がれたが、それでもいい。
 今はとにかく、時間を稼ぐ。


「自信は!」


「ある!!!!」


「あっそ。……白鷺、ぼくのこと舐めすぎでしょ」


 加藤の方から魔力が膨れ上がり、白鷺の回復が途切れる。
 しかし、何も心配していない。


「二十秒もいらない。十秒で充分さ!」


 ゴリガルの尋常じゃない速度の手刀を、ギリギリのところで躱す。加藤からの回復が無くなったために胃が治り切っていないから筆舌に尽くしがたいほどの激痛が走るが、それを意図的に無視する。


(パワーじゃ絶対に勝てねえ、ならせめて速度だけでも――!)


 頭を振る、的を絞らせないようにして懐に突っ込んでいく。顎に両拳を付けてガードを固め、殆ど頭突きするレベルで頭を近づける。
 ゴリガルの膝が顎に飛んでくるが、それをガードし逆に相手の顎に向かって体ごと拳を叩きつけた。
 ゴッ! と派手な音が鳴って捩じ切れんばかりに首が後ろへ跳ねる――拳に手応えが無い。衝撃を殺された。
 ガシッとクリンチをして再び動きを止める。あと0.5秒で加藤が魔法を撃てる!


「それは、さっき見たよッ!」


 頭突きからのボディへの膝蹴りで力任せにクリンチを振りほどかれたが――それで、その零コンマ数秒で充分。
 地面に転がり、立ち上がった瞬間――


「行くよ――『求めるは静止。空虚なる空間が、何物をも包み込む意思となり得る。スロウダウンワールド』!!!!!!」


 グウン……と、自分以外の全ての動きが極限までスローになる。それでもゴリガルは普通の人並みの速度で動いている。どれほどの身体能力があればそうなれるのか。
 しかしその速度なら――十二分に追い越せる!!


「ッラァアアアアアアラララララララララララァァァァァァ!!!」


 スキル発動―――『拳々轟々』。
 必殺スキルにして、最強の攻撃技。全ての拳がまるで分身したような速度で動き、相手を貫く。
 一撃一撃がAランク魔物を消し飛ばすような威力。それをガードの隙間を縫ってひたすら急所に叩き込む。
 ゴリガルの動きは遅い。この程度ならどんだけでも殴り続けることができる!


「行けっ! 白鷺!」


「ッラァ!」


 殴り、殴り、殴り続ける。
 一発ごとに体が軋む。悲鳴を上げる。
 しかし確実にゴリガルの身体が後ろへと下がって行っている。


「お、おおおおおおおおおお!!」


 永遠と化した一瞬の中。ゴリガルのガードを全て躱し、さらに頭を振ってその反動ごと拳を叩きつけて行く。デンプシーロールという技だ。
『拳々轟々』+『デンプシーロール』。この世界で得た最高の技と、前の世界で鷲村に教えてもらった最強の技。
 一方的に打ち付ける。『スローダウンワールド』はあと何秒続くのか、加藤はおそらくありったけの魔力をこの魔法に費やしている。つまり、これがラストチャンスと考える方がいい。
 なればこそ、ありったけの気合いを込めて殴り続ける。


「――――――――ッ!」


 一体何秒経ったんだろうか。十秒? 百秒? それとも一秒しか経っていない?
 時間の感覚も無くなるほどに相手に連打を叩きこむ。
 意識すら朦朧とする中、最後の気合いを込めた渾身の拳を――


「――あんたは、いや、あんたたちは強い」


 ――瞬間、白鷺の視界に入ってきたのはあまりに眩い黄金の光。
 拳を受け止められるが、連打はそう簡単に止めることは出来ない。そのまま左拳を突き出し、カウンター気味に横っ面にもらう。
 まだ『スローダウンワールド』は続いている。なのに、何故――この女は、自分の速度についてくる!?
 意味不明、理解不能――否、理解を拒んだ。
 目の前の女は、自分たちの最強の技すら打ち破る強者なのだと――


「が、ぁ……」


 カウンターを狙った拳にさらにカウンターを決められ、地面に崩れ落ちそうになった瞬間蹴り上げられた。
 天井に激突し肺から全ての息が出て、そのあまりの激痛に再び意識を取り戻す。痛すぎて気絶することすらできない。
 眼下には今自分自身を吹き飛ばしたゴリガルが見える。
 その体から発されているのは黄金のエネルギー。己が纏っている『気合い』と同質のものであると気づけたのは偶然かもしれない。


「やれやれ、あたしにこれを使わせるとはね。あんたたちは強いよ、気に入った」


 地面でアッパーの構えをしながら待っているゴリガル。今から自分はそこに突っ込んでいくのだろう――それが分かっていながらも、体が動かない。


「歯、食い縛りな――」


 迫る地面、迫るゴリガル、そして迫る拳。


(ああ――)


「――これが枝神の、全力だよ!」


 致命的な一撃。
 その瞬間――白鷺の意識は闇に落ちた。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 ずしゃ、と。
 白鷺が加藤の目の前に糸の切れた人形のように倒れた。否――糸の切れた人形というよりは、赤ちゃんに好き放題振り回された人形と言うべきか。それほどまでにボロボロだった。原型は辛うじてとどめているが、それだけだ。


「………………」


 魔力はもう残っていない。最後の魔法で使い切った。
 勝ち目なんかない。目の前にいる金色の女神は、自分たちの全力を受け、そしてそれを全てはじき返した。
 今この瞬間、覚醒でもしなくちゃ勝てやしないだろう。
 でも。


「……あんた、まだやるかい?」


 立ち上がる。


「ぼくは、彼のサポーターだ。あんたみたいなゴリラと殴り合うのは役目じゃない」


 そう言うと、ゴリガルはふんと鼻息を吐き――つまらなそうな顔になり金色のオーラを消した。


「賢明だと思うよ。懸命だ。だと思うが――」


 ゴッ!
 だいぶ、手加減されたのだろう。それは分かるが――それでも、痛いもんは痛い。
 目の前にいつの間にか接近されていたゴリガルに殴られた、それが分かったのは闘技場のギリギリまでフッ飛ばされてからだった。


「――気に入らないねぇ。相棒が前に出て戦ってんのに、役目が違うからって自分は立ち向かわないのかい」


 遠くからゴリガルの声が聞こえる。
 随分勘違いしているようだ。
 加藤はよろよろと立ち上がり――ゴリガルを睨む。


「……ぼくの役目は、白鷺をサポートすること。あんたみたいなゴリラと戦うことじゃない。そして、ぼくの相棒の役目は――あんたを倒すこと。役割分担だ、ぼくらはそうやって戦ってきた。今までも、そしてこれからも」


 杖を文字通り杖として使い、精一杯の眼光を籠めてゴリガルを睨みつける。
 彼女は何を言っているのか計りかねたのか、先ほどのようにいきなり殴ってくることは無い。
 ならば最後まで話させてもらうとしよう。


「三つ、言いたいことがある。一つ、ぼくの役目はサポート。白鷺の役目は敵を倒すこと。役割分担、適材適所。……だからと言って、相棒が好き放題殴られて、悔しくないわけがない。今すぐ、アンタを、ぶん殴りたい!」


「…………」


「二つ。そもそも……こういう時、覚醒するのはぼくじゃない。主人公だ。ぼくはサポーター、だったら誰が主人公か? そんなの考えたら猿でもわかる」


 もっとも、目の前の女はゴリラだが。
 そんな加藤の想いを知ってか知らずか、ゴリガルは黙って聞いている。


「ぼくはもともとバカが嫌いでね。出来ないことをほざき、常識を知らない。夢想ばかりで現実が伴わない。それでいて人の足を引っ張る。度し難い連中さ」


 首を振って、やれやれといったポーズを取る。
 筋肉バカ、努力バカ、根性バカ。気合いでどうにかなるなんて思っている白鷺は――真正のバカだ。
 けれど。


「だけどね……突き抜けた大バカは。出来ないことをほざき、常識を知らず……そして、それら全てを出来ると信じ抜き、ついには常識を打ち破る!! ……今ここで、体力の全てを失った白鷺が立ち上がるなんて――常識的に不可能でしょ? 絶対にありえないでしょ? だから、だからこそ! ぼくは彼を信じている。ぼくの知りうる限り世界一の大バカ野郎を!」


 そして最後に指を一本立てる。


「三つ。ぼくはよく知らないんだけど……ボクサーって、必ずテンカウント以内に立ち上がらなきゃいけないんだってさ。というわけで、わーん」


 加藤は二本目の指を立てる。


「つー」


 ピクリとも動かない白鷺。
 でも、


「すりー」


 三本目の指を立てた瞬間、白鷺が動いたような気がした。


「ふぉー」


 そこにきて、初めてゴリガルの表情に変化が生まれる。
 今まで余裕綽々といった表情だった彼女の顔に――本当の、驚愕が。


「ふぁーいぶ」


 五本目の指を立てる。
 これで右手は終了だ。杖に縋って立っていたが、カウントするためには自立するしかない。やむなく、二本の足に渾身の力を籠めて立ち、六本目の指を立てる。


「しっくす」


「バカな……」


「せぶーん」


 まだ動かない。
 だけど、分かる。


(白鷺曰く――カウントエイトまでは休むのが賢いボクサー、らしいからね)


 となれば――


「えいと」


 ――ガバッ、と。
 もはや半死人といった状態だった白鷺が立ち上がった。
 ゴリガルの両目が驚愕に見開かれる。
 誰だって驚くだろう――加藤以外は。
 白鷺のことを心から信じていた、加藤以外は。


「白鷺、ファイティングポーズは?」


 スッと、両拳を上げて加藤にアピールする白鷺。意識が戻っているようには思えない、しかし確実に立ち上がった。
 レフェリーならばここで止めるのかもしれない、しかし加藤はあくまで相棒、パートナー。セコンドだ。
 白鷺によろめきながら近づき、その頬をはたく。


「って……あ、ああ。加藤」


「ギリギリ、エイトカウント。まだやれる?」


「……あたりめえだろ、こっから面白くなるんだぜ」


「そ」


 ぐいっと、口元の血を拭った白鷺は体の防具を全てアイテムボックスにしまいトランクス一丁になった。
 どうせ防具なんて何の役にも立たないと軽量化したのだろう。


「バンテージ、ほどけてるよ」


「……わり」


 呆然と白鷺のことを眺めているゴリガルに向かって、フッと一つ嘲笑をくれてやる。


「ぼくの相棒は、強いよ」


「……どうやら、そうみたいだね。あたしの想定していたよりも――もっともっと強いみたいだ」


 ゴリガルは再び金色のオーラを噴出させる。
 まっすぐ、白鷺たちを見据えて。


「その坊やは殺さなきゃ何度でも立ち上がってくるみたいだ。だからきっちり仕留める。これが枝神としてではなく――武人としての、あんたたちへの敬意だ」


 隣にいる白鷺をちらりと見ると……ああ、やはり。口もとに笑みを浮かべている。
 この戦闘狂達の感覚を一生理解出来る気はしない。気はしないが、付き合ってやろう。


「……最後のバフだよ」


 加藤はそう言って、背中を押す。


「頑張れ」


 激励。
 それが魔力を失った加藤に出来る最後の支援だった。


「任せろ!」

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