異世界なう―No freedom,not a human―
139話 試練の拳
休憩して体力を十全に回復させてから扉の前に立つ。
――ベガの塔では、天川達皆が『職の第二段階』に覚醒した。その時は最後まで戦うことが出来た。
――デネブの塔では、入った瞬間やられてしまった。何があったのかは今でも思い出せない。
そして三度目。これが三度目の最後の扉。
さっき戦った魔物は、ゴーレムドラゴンとどちらの方が強かったのかは分からないが、少なくともゴズリングよりは強かった。
(アレより強い奴か……っ!)
ドキドキが止まらない。
ワクワクが止まらない。
疼いて疼いて仕方が無い。
昂る、昂る、昂る!
どれだけ強いのだろう。
この向こうにいる敵は。
どんな戦い方をしてくるのだろう。
この向こうにいる敵は。
どうやって倒せばいいのだろう。
この向こうにいる敵は。
ありったけをぶつけたい。
今すぐ。
「うしっ」
パァン! と拳を手のひらに打ち付ける。
――鷲村さんにやめろって言われたっけ。
昔からの癖だ。
相手が強ければ強いほど、ついやってしまう。
「白鷺」
「……どうした?」
「楽しみにしすぎ。まったく、これだから戦闘狂は」
そういう加藤の頬も緩んでいる。
「誰だって試合が一番好きだろ? 野球やってる奴も、サッカーやってる奴も、テニスやってる奴も。試合が嫌いでそのスポーツやってるんなら、何が楽しくて練習してんだ? ってなるだろ?」
疼きを抑えられない。
口元がニヤける。
血が、滾る。
「……人によると思うけどね。言っておくけど、ぼくは君みたいに戦うのは好きじゃないし」
「じゃあ何が好きで戦ってんだよ」
肩をすくめてそう問うと、加藤は心底バカにしたような顔になる。
「勝つのが楽しいんだよ」
「………………っ、ははっ! いいじゃんかよ。お前も立派な戦闘狂……いや、違うか。お前は負けず嫌いを極めたってことか」
「さぁね」
いつも通り、涼やかな――それでいて厭味ったらしい顔になる加藤。しかし『圧』が高まっているのは感じる。
どれほど強い相手がいるのだろう。
自分より絶対に強いんだろう。
そんな相手と戦うことの――なんと楽しいことか。
「俺より強い奴に会いに行く!!!」
「オーケー、まったく。きみに付き合わされる身にもなってよね。命がいくつあっても足りやしない」
「ははっ、大丈夫だろ。俺とお前がいて勝てねえ奴なんかいねえ!」
「はいはい。バカは出来もしないことを言うから困るよ。……じゃ、行こうか」
二人して扉の中へ進む。
ずんずんと歩き、そして広いところに出た。
そこは――
「ようこそ! あたしの道場へ!」
――たくさんのスポットライトが普通の十倍はありそうなほどの広さのリングを照らし出していた。
その周囲にはロープはなく、イメージとしては闘技場とでも言った風だろうか。
その真ん中に立つのは、当然白鷺たちが挑むべき相手。
しかし何十メートルも離れた場所からでも分かるほどの『圧』を出してきているその存在が、どういうモノなのかは嫌というほど伝わってくる。
「……はっ、は、はははははははは!! こいつはいい、こいつはいいぜ! なぁ、加藤!!」
「キアラさんよりも、ヘリアラスさんよりも雰囲気があるね……ああ、間違いない。間違いないよ白鷺。試練の間の最後の相手は――」
ダッシュでリングに上がり、その人――否、神の前に立つ。
黒髪を無造作に肩口で切りそろえており、身長は二メートル近いだろうか。何より目立つのは……その、筋肉。
圧倒的なエネルギーを放つそれは、魔物の肉体よりも頑健そうだ。というか、腕なんか女性のウエストほどあるんじゃないだろうか、あの太さは。
その肉体をぴっちりとした白い服に収めている。黄色いラインが入っており、腰の部分は腰布のようなものが巻かれている。
胸の部分は別の意味ではちきれそうで、肉体美がこれでもかというほど強調されており目のやり場にこまるというかもうむしろ怖い。
顔立ちはまるで劇画に出て来そうなほど堀の深い顔で、歴戦の強者といった雰囲気がこれでもかと出ている。
そう――端的に言うなら。
ベリベリゴリマッチョ武道家ウーマンである。
「あたしの名前はゴリガル。枝神、ゴリガルだ! あんたらは!」
ドン! と背景から効果音が聞こえてきそうなほど威風堂々とした自己紹介をするゴリガル。腕を組んで立つ姿は、それだけで様になっている。
しかし……
(な、なんかちげぇぇぇぇぇぇ!!! 美女じゃねえのかよ!? 枝神って全員が美女じゃねえのかよ!?!?!)
心の中で叫ぶ。
期待していた美しい武道家……というイメージがガラガラと崩れ去り、現実を突き付けられた瞬間だった。
しかしすぐに切り替える。だってそんなのどうでもいい。
ただ、目の前にいる強者と戦えるのならば――!
「俺は白鷺常気……ツネキ・シラサギっす」
「ぼくはサトシ・カトウといいます」
「はっ、敬語なんていいよ。さて、じゃあ……早速やり合おうか」
ゴキリ、と首を鳴らしたゴリガルに対し、白鷺はファイティングポーズをとり、加藤は杖を構える。
「ルールは単純。この闘技場から一歩でもあたしを外に出したらあんたらの勝ち。逆にあんたらが戦闘不能になったらあんたらの負けだ。いいかい?」
ビリビリと、体が震える。
全身に鳥肌が立つ。
「そんなルールで……いいんすか? 厳しくないッスか?」
「ん? ああ、一発でもあたしに当てられたら、に変更するかい? 今なら変えてあげるよ?」
そう、ニヤリと笑ってゴリガルが言った瞬間――白鷺は、とんっ、とゴリガルの肩に触れていた。
ボクシングで言うところの、ジャブ。最速にして絶対に避けられない拳。それを本当に軽く、速度のみを重視して打った。
「へぇ……」
楽しそうな――嬉しそうな顔になるゴリガル。
白鷺は笑みを堪えず、彼女の顔を睨み返す。
「ゴリガルさん。ハンディくれるのはありがてぇっすけど……長く続けるの、厳しくないッスか? そんなルールじゃあすぐに終わっちまいますよ」
獰猛な笑みを浮かべるゴリガルを見てすぐに分かった。
ゴリガルは白鷺と同類だ。
即ち――強い奴を見ると、笑ってしまう。
「あっはっはっは! いいねぇ、いいねぇあんたは! よし来た、それならもっとハンディをつけてやる。あたしに腕を使わせてみろ。それができたら本気でやってやるよ!!!」
「上等ッスよ、吠え面かいても知らねえッスからね。加藤!」
「あー……バカが二人に増えた。『オーガ・マッスル』、『ゼアル・ブースト』、『ブレイブ・アタック』。……もっと増やすよ。速攻でやりなね」
パチンとウインクをする加藤。これをしたってことは――最初っから最後までマジでやれという意味だ。
つまり、全力を出し切っても勝てるか分からない相手ということである。
冷静で彼我の戦力分析にかけては右に出るものがいない加藤がそう言うということは、絶望的な戦力差であることを示す。
そんな相手なんて――
「ああ!」
――燃えないわけがない!
「ッラァ!!」
ゴッ、風を切る音だけでガラスが割れそうな程の威力でジャブを放つが、なんなく躱される。
そのジャブを囮にして距離を測り、ワンツー。しかしそれも涼しい顔をして躱されてしまった。
(まだまだァッ!)
「白鷺、焦るな!」
「分かってる!」
加藤が絶妙なタイミングで魔法を放ち、ゴリガルの逃げる場所をある程度限定させる。そこに向かってジャブから変則的な左フックを放つがこれまた体捌きで避けられる。
ヘリアラスと戦った時と同じく、自分が踏み込んだ分だけしっかりと後ろに下がられている。
(なんて――あの時の俺とは違うだろうがよ!)
今は成長した。
ウィービングで頭を振りながら、目線や肩でフェイントを入れつつ足を強く踏み込み一瞬そちらへ意識を向かせてから上体を狙ってジャブ。
やはりそれは躱されるが、今のは躱されることが目的。
真の目的は――
「むっ」
ガッ、と肩からぶつかるようにして相手の腕の中に入る。拳を振るう距離が無い鍔迫り合いのような距離。
しかし、ボクシングにはしっかりこのくらいの位置からでも相手を吹っ飛ばす技がある!
「ッラァ!」
「ッ、ぐっ?」
ズンッッッッ……と、背中まで衝撃が抜けて行く感覚。腰の回転と膝のバネだけで放つボディブローだ。全身の力がしっかりと拳に伝わらないと相手にダメージなんて入らない技だが、しっかりと入ったらしい。
さらに追撃。頭を振って戻る勢いで右フックを放ち、ゴリガルの横っ面に叩きつける。
「ぬぅっ」
「まだまだっ!」
さらに連撃――。
この距離なら蹴りは使えない。組み技や肘などが怖いが、腕を使わせて初めて本気の殴り合いが出来るのだ。むしろ積極的に使わせたい。
頭を低く、低くしてボディブロー。体を回転させることでそれを躱したゴリガルだが、それは無理の出る避け方。そう何度も出来るわけじゃない。
さらにボディに何発か集め、堪らずゴリガルさんがバックステップで距離を置こうとしたところで――
「甘い!」
――加藤の置いておいた魔法でこけさせるはずだったが、流石は枝神。その程度はお見通しだったようだ。
足首だけでジャンプし、草結びのような魔法を躱すゴリガル。さらにその距離から――
「攻撃しないとは言ってないねぇ?」
――ゴッ! と空間が歪むような威力の蹴りを繰り出してきた。思わず下に屈んで躱すが、その衝撃波で後ろへ後退させられてしまった。
(…………い、今の蹴りは亜音速だったぞ)
戦慄する。体も震える。
しかしこの震えは明らかに武者震い。
ああ、ああ――
「その程度かい?」
「まだまだ!!」
――楽しい!!
「白鷺!」
「任せろ!」
加藤がいくつも魔法を放ち敵の攻撃範囲を絞ったり、逆にデバフをかけたりしているようだがなかなかうまく決まらない。
だったらとばかりにバフがさらにのっかる。今まで以上に加速してゴリガルに真正面から突っ込んでいく。
ウィービングで的を絞らせないようにしながら懐へ入るが、尋常じゃない速度の蹴りで邪魔される。
ローキックをなんとか空かし、懐へ入ったところでサッと目の前に手のひらを出された。視界が塞がれたその刹那、
「んぶっ!?」
ドムッ! ……と、強烈な前蹴りが白鷺の鳩尾に刺さった。
「白鷺! ……『グレートヒール!』」
すぐさま加藤の回復が飛んでくるが、入ったのは鳩尾。普通に殴られるだけでも息が止まり、吐きそうになるほどの急所なのに枝神の前蹴りだ。すぐに回復されたところで痛みが完全に消えるわけではない。
思わず足を止めてしまったところで、ゴリガルの蹴りが飛んでくる!
「ガッ!」
二度、三度とバウンドして止まる。
(なんて威力だ。魔物の攻撃より威力があるぞ……!)
完全に力を抜いている白鷺に悠々とゴリガルが近づいてきて白鷺を踏もうと――
「フン、忌々しいガキだよ。咄嗟に拳を挟んであたしの蹴りをガードしやがった。しかも自分から飛んでダメージを殺して……死んだふりかい?」
――足を上げかけたところで止まる。
「へっ、バレました?」
完全に片足になったところで立ち上がり、右フックを入れる気だったから当てがはずれた。
白鷺はにへっ、と笑いすぐに立ちあがる。
「加藤、テンカウント経ってないよな?」
「うん、四秒くらいじゃない?」
「オーライ」
再びファイティングポーズ。
戦う意志を見せるだけではなく――敵への威嚇も含まれる。
「それよりも腕、使っちまってますけどいいんすか?」
「ん?」
白鷺の視界を塞いだ手、アレを使っていないと言い張るのはダメだろう。
ゴリガルは少し驚いた顔になり……手を握ったり開いたりする。
「なるほど。あんた、もう一回名前を聞かせてくれるかい?」
「ツネキ・シラサギっス」
名乗った瞬間、ゾンッッッッ!!!! と、空間を殺意が包み込んだ。
しかしそれが間違いだと気づく。何故ならその雰囲気には『喜色』が含まれていたから。ならばこれは『殺気』などではない。純粋な『闘気』。
あまりの強力さ故に勘違いしてしまったが、濃密すぎるそれはどんな刃物よりも鋭く、それでいてまるで深海にいるような息苦しさを感じる。
これが枝神、その本気の一端。
「いいね、いいねツネキ! いいよあんたは! 舐めていて悪かった! ここから先はしっかりと力を見せよう! あたしを闘技場の外まで出してみな!」
そう言ってズン! と地面が割れそうな程の強さで踏み込んだゴリガルは右手を緩く握り顔の前に、そして左手を半開きで右手と鼻が直線を結ぶような位置に持ってくる。
脇を絞り、豪快な見た目と反した窮屈そうな構えは一見まったく合っていないように見えて恐ろしいほどしっくりくる。
(これが……ゴリガルさんの本気の構えってわけか)
頬がにやける。
喜びが全身を駆け巡る。
「行くぜーっ!!」
懐に入り、ジャブを繰り出すが緩く開いた左手で軌道を逸らされ、逆にカウンターの右が飛んでくる。
首を傾けて躱し、同時に前蹴りを避けるためにバックステップで距離を取る。
頭を振って的を絞らせないようにして近づき、踏み込みと同時に右フックを繰り出す。
ゴリガルも右拳を突き出し、カウンターのように交差した瞬間――
「ッ!?」
――轟! と、訳も分からないまま顔を通り全身に痛みが走った。
「白鷺!」
闘技場のギリギリまで吹き飛ばされて、やっと今自分に何が起こったのか知覚することが出来た。
カウンターを合わせられて顔面に拳が突き刺さったからか足にきている。体中に痛みが走ったのは水切りの石のように跳ねてここまでフッ飛ばされたからか。
「ぐっ……あぐ」
なんとか膝をついて立ち上がった瞬間、跳躍してきたゴリガルの踵落としが降ってくる。
「ほら、まだまだだよ!」
喰らうとまずいので転がって回避すると、尋常じゃない轟音とともに闘技場が砕け散り地面が露出する。
「『グレートヒーリン……』」
「させると思うかい?」
「ぐはっ!」
回復魔法をかけようとしてくれた加藤が一瞬で吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。まったく移動する姿が見えなかった。
「バフはいいけどね、野暮なことするんじゃないよ。あたしはコイツとの殴り合いを楽しんでるんだからさ……っ!」
「加藤! くそっ……!」
頭はガンガンするが急いで立ち上がり、ゴリガルへ向かってダッシュする。
「おおおおおお! ッラァ!」
ボディブロー。
単純なそれは難なく防がれるが、しかしボディに目を行かせてからの顎へのパンチが本命だ。
ゴッ! と死角からのパンチが当たり、ゴリガルが一瞬ふらつく。
すぐさま連打。左ボディ、右フックと重ねてぶち当て、さらにアッパーで顎を吹き飛ばす!
「ッラァ!」
さらに拳に気合を籠め――全霊の右ストレートをかます。
ゴッ!! と激しい音が鳴り、たたらを踏んでゴリガルが後ろへ下がった。追撃のために前傾姿勢でダッシュすると――
「ッ!」
――ズドン! とローキックで足を払われる。いや払われるなんてものではない、まるで津波に足をさらわれるかのようだ。
その場で回転し、前後がさかさまになった世界でゴリガルの拳が飛んでくる。
それを腕を十字に――クロスアームブロックで止めるが、完全にガードしたと思った瞬間さらに上から足が降ってきて地面にたたきつけられた。
「ガッ……」
「まだまだ」
さらに足を振り上げぼごぉっ! とサッカーボールを蹴るように鳩尾につま先が入る。たまらず吐きそうになるが、高速で吹き飛ばされたせいで吐くことすらできなかった。
ズズン! と壁に埋まる。隣には加藤も埋まっていた。
「……か、とう」
呼びかけるが返事がない、気絶しているようだ。
何とか壁の中から抜け、加藤を揺り動かす。
「ん、……あ、ああ。ごめん、若干気絶してた」
呼びかけると加藤が目を覚まし、お互いにヒールをかけてくれる。
「……神様は、リング上でお待ちだよ」
「だな……くそっ、体中がいてぇ」
二人で肩を貸しあいながら、リング上のゴリガルを睨みつける。
(勝てるのか……?)
そんな考えが一瞬、頭をよぎる。
しかし横にいる加藤がゴン、と頭を殴ってきた。
「いてぇな」
「……白鷺、気合いが足りてないんじゃない?」
ニヤリと笑う加藤。
少しだけ呆けて……彼の言いたいことを察し、白鷺も殴り返す。
「おめーだって……もっと上手く立ち回りやがれ」
「きみに言われるとは、ぼくもヤキが回ったね」
「ほっとけ」
なんとか二人で自立し、白鷺は拳を手のひらに打ち付け加藤は杖を構えた。
「もっと気合いだ」
「きみらの動きについていくために、ぼく自身にもバフかけるしかないね……」
白鷺は全身に気合を込めて……とうとう、びかっ! と全身から黄色いエネルギーが噴出し、体中が強化される。
「気合い! 根性! 強靭! 無敵!!」
「全バフかけた。それと……『アビス・ドローン』」
ぶん、と召喚獣を加藤が召喚し、それに乗る。
「もっと前に出て魔法から何から撃ちまくる。きみは考えずもっと突っ込め、後ろに退がるな、死んでも前に出ろ。まだ楽しもうって気持ちが優先してるよ。悪い癖だ。きみがもっと考えるべきことは――相手を倒すことだ」
「……悪いな、加藤。あんま意識してなかった」
二人で強大な敵の方を向く。
相手は神、もちろん自分たちよりも圧倒的な力を持っている。それによって今、一瞬捻じ伏せられた。
「昨日の俺より今日の俺の方が強い。三分前の俺より今の俺の方が強い!!」
一人じゃ勝てない。
「舐められたまま終われるか……! ぼくも、白鷺も! こんな簡単に負けるわけない!!」
だけど二人なら。
「行くよ、白鷺!」
「おう!!」
負ける気なんてしない!!
「……目に力が入ったね。来な!!」
――ベガの塔では、天川達皆が『職の第二段階』に覚醒した。その時は最後まで戦うことが出来た。
――デネブの塔では、入った瞬間やられてしまった。何があったのかは今でも思い出せない。
そして三度目。これが三度目の最後の扉。
さっき戦った魔物は、ゴーレムドラゴンとどちらの方が強かったのかは分からないが、少なくともゴズリングよりは強かった。
(アレより強い奴か……っ!)
ドキドキが止まらない。
ワクワクが止まらない。
疼いて疼いて仕方が無い。
昂る、昂る、昂る!
どれだけ強いのだろう。
この向こうにいる敵は。
どんな戦い方をしてくるのだろう。
この向こうにいる敵は。
どうやって倒せばいいのだろう。
この向こうにいる敵は。
ありったけをぶつけたい。
今すぐ。
「うしっ」
パァン! と拳を手のひらに打ち付ける。
――鷲村さんにやめろって言われたっけ。
昔からの癖だ。
相手が強ければ強いほど、ついやってしまう。
「白鷺」
「……どうした?」
「楽しみにしすぎ。まったく、これだから戦闘狂は」
そういう加藤の頬も緩んでいる。
「誰だって試合が一番好きだろ? 野球やってる奴も、サッカーやってる奴も、テニスやってる奴も。試合が嫌いでそのスポーツやってるんなら、何が楽しくて練習してんだ? ってなるだろ?」
疼きを抑えられない。
口元がニヤける。
血が、滾る。
「……人によると思うけどね。言っておくけど、ぼくは君みたいに戦うのは好きじゃないし」
「じゃあ何が好きで戦ってんだよ」
肩をすくめてそう問うと、加藤は心底バカにしたような顔になる。
「勝つのが楽しいんだよ」
「………………っ、ははっ! いいじゃんかよ。お前も立派な戦闘狂……いや、違うか。お前は負けず嫌いを極めたってことか」
「さぁね」
いつも通り、涼やかな――それでいて厭味ったらしい顔になる加藤。しかし『圧』が高まっているのは感じる。
どれほど強い相手がいるのだろう。
自分より絶対に強いんだろう。
そんな相手と戦うことの――なんと楽しいことか。
「俺より強い奴に会いに行く!!!」
「オーケー、まったく。きみに付き合わされる身にもなってよね。命がいくつあっても足りやしない」
「ははっ、大丈夫だろ。俺とお前がいて勝てねえ奴なんかいねえ!」
「はいはい。バカは出来もしないことを言うから困るよ。……じゃ、行こうか」
二人して扉の中へ進む。
ずんずんと歩き、そして広いところに出た。
そこは――
「ようこそ! あたしの道場へ!」
――たくさんのスポットライトが普通の十倍はありそうなほどの広さのリングを照らし出していた。
その周囲にはロープはなく、イメージとしては闘技場とでも言った風だろうか。
その真ん中に立つのは、当然白鷺たちが挑むべき相手。
しかし何十メートルも離れた場所からでも分かるほどの『圧』を出してきているその存在が、どういうモノなのかは嫌というほど伝わってくる。
「……はっ、は、はははははははは!! こいつはいい、こいつはいいぜ! なぁ、加藤!!」
「キアラさんよりも、ヘリアラスさんよりも雰囲気があるね……ああ、間違いない。間違いないよ白鷺。試練の間の最後の相手は――」
ダッシュでリングに上がり、その人――否、神の前に立つ。
黒髪を無造作に肩口で切りそろえており、身長は二メートル近いだろうか。何より目立つのは……その、筋肉。
圧倒的なエネルギーを放つそれは、魔物の肉体よりも頑健そうだ。というか、腕なんか女性のウエストほどあるんじゃないだろうか、あの太さは。
その肉体をぴっちりとした白い服に収めている。黄色いラインが入っており、腰の部分は腰布のようなものが巻かれている。
胸の部分は別の意味ではちきれそうで、肉体美がこれでもかというほど強調されており目のやり場にこまるというかもうむしろ怖い。
顔立ちはまるで劇画に出て来そうなほど堀の深い顔で、歴戦の強者といった雰囲気がこれでもかと出ている。
そう――端的に言うなら。
ベリベリゴリマッチョ武道家ウーマンである。
「あたしの名前はゴリガル。枝神、ゴリガルだ! あんたらは!」
ドン! と背景から効果音が聞こえてきそうなほど威風堂々とした自己紹介をするゴリガル。腕を組んで立つ姿は、それだけで様になっている。
しかし……
(な、なんかちげぇぇぇぇぇぇ!!! 美女じゃねえのかよ!? 枝神って全員が美女じゃねえのかよ!?!?!)
心の中で叫ぶ。
期待していた美しい武道家……というイメージがガラガラと崩れ去り、現実を突き付けられた瞬間だった。
しかしすぐに切り替える。だってそんなのどうでもいい。
ただ、目の前にいる強者と戦えるのならば――!
「俺は白鷺常気……ツネキ・シラサギっす」
「ぼくはサトシ・カトウといいます」
「はっ、敬語なんていいよ。さて、じゃあ……早速やり合おうか」
ゴキリ、と首を鳴らしたゴリガルに対し、白鷺はファイティングポーズをとり、加藤は杖を構える。
「ルールは単純。この闘技場から一歩でもあたしを外に出したらあんたらの勝ち。逆にあんたらが戦闘不能になったらあんたらの負けだ。いいかい?」
ビリビリと、体が震える。
全身に鳥肌が立つ。
「そんなルールで……いいんすか? 厳しくないッスか?」
「ん? ああ、一発でもあたしに当てられたら、に変更するかい? 今なら変えてあげるよ?」
そう、ニヤリと笑ってゴリガルが言った瞬間――白鷺は、とんっ、とゴリガルの肩に触れていた。
ボクシングで言うところの、ジャブ。最速にして絶対に避けられない拳。それを本当に軽く、速度のみを重視して打った。
「へぇ……」
楽しそうな――嬉しそうな顔になるゴリガル。
白鷺は笑みを堪えず、彼女の顔を睨み返す。
「ゴリガルさん。ハンディくれるのはありがてぇっすけど……長く続けるの、厳しくないッスか? そんなルールじゃあすぐに終わっちまいますよ」
獰猛な笑みを浮かべるゴリガルを見てすぐに分かった。
ゴリガルは白鷺と同類だ。
即ち――強い奴を見ると、笑ってしまう。
「あっはっはっは! いいねぇ、いいねぇあんたは! よし来た、それならもっとハンディをつけてやる。あたしに腕を使わせてみろ。それができたら本気でやってやるよ!!!」
「上等ッスよ、吠え面かいても知らねえッスからね。加藤!」
「あー……バカが二人に増えた。『オーガ・マッスル』、『ゼアル・ブースト』、『ブレイブ・アタック』。……もっと増やすよ。速攻でやりなね」
パチンとウインクをする加藤。これをしたってことは――最初っから最後までマジでやれという意味だ。
つまり、全力を出し切っても勝てるか分からない相手ということである。
冷静で彼我の戦力分析にかけては右に出るものがいない加藤がそう言うということは、絶望的な戦力差であることを示す。
そんな相手なんて――
「ああ!」
――燃えないわけがない!
「ッラァ!!」
ゴッ、風を切る音だけでガラスが割れそうな程の威力でジャブを放つが、なんなく躱される。
そのジャブを囮にして距離を測り、ワンツー。しかしそれも涼しい顔をして躱されてしまった。
(まだまだァッ!)
「白鷺、焦るな!」
「分かってる!」
加藤が絶妙なタイミングで魔法を放ち、ゴリガルの逃げる場所をある程度限定させる。そこに向かってジャブから変則的な左フックを放つがこれまた体捌きで避けられる。
ヘリアラスと戦った時と同じく、自分が踏み込んだ分だけしっかりと後ろに下がられている。
(なんて――あの時の俺とは違うだろうがよ!)
今は成長した。
ウィービングで頭を振りながら、目線や肩でフェイントを入れつつ足を強く踏み込み一瞬そちらへ意識を向かせてから上体を狙ってジャブ。
やはりそれは躱されるが、今のは躱されることが目的。
真の目的は――
「むっ」
ガッ、と肩からぶつかるようにして相手の腕の中に入る。拳を振るう距離が無い鍔迫り合いのような距離。
しかし、ボクシングにはしっかりこのくらいの位置からでも相手を吹っ飛ばす技がある!
「ッラァ!」
「ッ、ぐっ?」
ズンッッッッ……と、背中まで衝撃が抜けて行く感覚。腰の回転と膝のバネだけで放つボディブローだ。全身の力がしっかりと拳に伝わらないと相手にダメージなんて入らない技だが、しっかりと入ったらしい。
さらに追撃。頭を振って戻る勢いで右フックを放ち、ゴリガルの横っ面に叩きつける。
「ぬぅっ」
「まだまだっ!」
さらに連撃――。
この距離なら蹴りは使えない。組み技や肘などが怖いが、腕を使わせて初めて本気の殴り合いが出来るのだ。むしろ積極的に使わせたい。
頭を低く、低くしてボディブロー。体を回転させることでそれを躱したゴリガルだが、それは無理の出る避け方。そう何度も出来るわけじゃない。
さらにボディに何発か集め、堪らずゴリガルさんがバックステップで距離を置こうとしたところで――
「甘い!」
――加藤の置いておいた魔法でこけさせるはずだったが、流石は枝神。その程度はお見通しだったようだ。
足首だけでジャンプし、草結びのような魔法を躱すゴリガル。さらにその距離から――
「攻撃しないとは言ってないねぇ?」
――ゴッ! と空間が歪むような威力の蹴りを繰り出してきた。思わず下に屈んで躱すが、その衝撃波で後ろへ後退させられてしまった。
(…………い、今の蹴りは亜音速だったぞ)
戦慄する。体も震える。
しかしこの震えは明らかに武者震い。
ああ、ああ――
「その程度かい?」
「まだまだ!!」
――楽しい!!
「白鷺!」
「任せろ!」
加藤がいくつも魔法を放ち敵の攻撃範囲を絞ったり、逆にデバフをかけたりしているようだがなかなかうまく決まらない。
だったらとばかりにバフがさらにのっかる。今まで以上に加速してゴリガルに真正面から突っ込んでいく。
ウィービングで的を絞らせないようにしながら懐へ入るが、尋常じゃない速度の蹴りで邪魔される。
ローキックをなんとか空かし、懐へ入ったところでサッと目の前に手のひらを出された。視界が塞がれたその刹那、
「んぶっ!?」
ドムッ! ……と、強烈な前蹴りが白鷺の鳩尾に刺さった。
「白鷺! ……『グレートヒール!』」
すぐさま加藤の回復が飛んでくるが、入ったのは鳩尾。普通に殴られるだけでも息が止まり、吐きそうになるほどの急所なのに枝神の前蹴りだ。すぐに回復されたところで痛みが完全に消えるわけではない。
思わず足を止めてしまったところで、ゴリガルの蹴りが飛んでくる!
「ガッ!」
二度、三度とバウンドして止まる。
(なんて威力だ。魔物の攻撃より威力があるぞ……!)
完全に力を抜いている白鷺に悠々とゴリガルが近づいてきて白鷺を踏もうと――
「フン、忌々しいガキだよ。咄嗟に拳を挟んであたしの蹴りをガードしやがった。しかも自分から飛んでダメージを殺して……死んだふりかい?」
――足を上げかけたところで止まる。
「へっ、バレました?」
完全に片足になったところで立ち上がり、右フックを入れる気だったから当てがはずれた。
白鷺はにへっ、と笑いすぐに立ちあがる。
「加藤、テンカウント経ってないよな?」
「うん、四秒くらいじゃない?」
「オーライ」
再びファイティングポーズ。
戦う意志を見せるだけではなく――敵への威嚇も含まれる。
「それよりも腕、使っちまってますけどいいんすか?」
「ん?」
白鷺の視界を塞いだ手、アレを使っていないと言い張るのはダメだろう。
ゴリガルは少し驚いた顔になり……手を握ったり開いたりする。
「なるほど。あんた、もう一回名前を聞かせてくれるかい?」
「ツネキ・シラサギっス」
名乗った瞬間、ゾンッッッッ!!!! と、空間を殺意が包み込んだ。
しかしそれが間違いだと気づく。何故ならその雰囲気には『喜色』が含まれていたから。ならばこれは『殺気』などではない。純粋な『闘気』。
あまりの強力さ故に勘違いしてしまったが、濃密すぎるそれはどんな刃物よりも鋭く、それでいてまるで深海にいるような息苦しさを感じる。
これが枝神、その本気の一端。
「いいね、いいねツネキ! いいよあんたは! 舐めていて悪かった! ここから先はしっかりと力を見せよう! あたしを闘技場の外まで出してみな!」
そう言ってズン! と地面が割れそうな程の強さで踏み込んだゴリガルは右手を緩く握り顔の前に、そして左手を半開きで右手と鼻が直線を結ぶような位置に持ってくる。
脇を絞り、豪快な見た目と反した窮屈そうな構えは一見まったく合っていないように見えて恐ろしいほどしっくりくる。
(これが……ゴリガルさんの本気の構えってわけか)
頬がにやける。
喜びが全身を駆け巡る。
「行くぜーっ!!」
懐に入り、ジャブを繰り出すが緩く開いた左手で軌道を逸らされ、逆にカウンターの右が飛んでくる。
首を傾けて躱し、同時に前蹴りを避けるためにバックステップで距離を取る。
頭を振って的を絞らせないようにして近づき、踏み込みと同時に右フックを繰り出す。
ゴリガルも右拳を突き出し、カウンターのように交差した瞬間――
「ッ!?」
――轟! と、訳も分からないまま顔を通り全身に痛みが走った。
「白鷺!」
闘技場のギリギリまで吹き飛ばされて、やっと今自分に何が起こったのか知覚することが出来た。
カウンターを合わせられて顔面に拳が突き刺さったからか足にきている。体中に痛みが走ったのは水切りの石のように跳ねてここまでフッ飛ばされたからか。
「ぐっ……あぐ」
なんとか膝をついて立ち上がった瞬間、跳躍してきたゴリガルの踵落としが降ってくる。
「ほら、まだまだだよ!」
喰らうとまずいので転がって回避すると、尋常じゃない轟音とともに闘技場が砕け散り地面が露出する。
「『グレートヒーリン……』」
「させると思うかい?」
「ぐはっ!」
回復魔法をかけようとしてくれた加藤が一瞬で吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。まったく移動する姿が見えなかった。
「バフはいいけどね、野暮なことするんじゃないよ。あたしはコイツとの殴り合いを楽しんでるんだからさ……っ!」
「加藤! くそっ……!」
頭はガンガンするが急いで立ち上がり、ゴリガルへ向かってダッシュする。
「おおおおおお! ッラァ!」
ボディブロー。
単純なそれは難なく防がれるが、しかしボディに目を行かせてからの顎へのパンチが本命だ。
ゴッ! と死角からのパンチが当たり、ゴリガルが一瞬ふらつく。
すぐさま連打。左ボディ、右フックと重ねてぶち当て、さらにアッパーで顎を吹き飛ばす!
「ッラァ!」
さらに拳に気合を籠め――全霊の右ストレートをかます。
ゴッ!! と激しい音が鳴り、たたらを踏んでゴリガルが後ろへ下がった。追撃のために前傾姿勢でダッシュすると――
「ッ!」
――ズドン! とローキックで足を払われる。いや払われるなんてものではない、まるで津波に足をさらわれるかのようだ。
その場で回転し、前後がさかさまになった世界でゴリガルの拳が飛んでくる。
それを腕を十字に――クロスアームブロックで止めるが、完全にガードしたと思った瞬間さらに上から足が降ってきて地面にたたきつけられた。
「ガッ……」
「まだまだ」
さらに足を振り上げぼごぉっ! とサッカーボールを蹴るように鳩尾につま先が入る。たまらず吐きそうになるが、高速で吹き飛ばされたせいで吐くことすらできなかった。
ズズン! と壁に埋まる。隣には加藤も埋まっていた。
「……か、とう」
呼びかけるが返事がない、気絶しているようだ。
何とか壁の中から抜け、加藤を揺り動かす。
「ん、……あ、ああ。ごめん、若干気絶してた」
呼びかけると加藤が目を覚まし、お互いにヒールをかけてくれる。
「……神様は、リング上でお待ちだよ」
「だな……くそっ、体中がいてぇ」
二人で肩を貸しあいながら、リング上のゴリガルを睨みつける。
(勝てるのか……?)
そんな考えが一瞬、頭をよぎる。
しかし横にいる加藤がゴン、と頭を殴ってきた。
「いてぇな」
「……白鷺、気合いが足りてないんじゃない?」
ニヤリと笑う加藤。
少しだけ呆けて……彼の言いたいことを察し、白鷺も殴り返す。
「おめーだって……もっと上手く立ち回りやがれ」
「きみに言われるとは、ぼくもヤキが回ったね」
「ほっとけ」
なんとか二人で自立し、白鷺は拳を手のひらに打ち付け加藤は杖を構えた。
「もっと気合いだ」
「きみらの動きについていくために、ぼく自身にもバフかけるしかないね……」
白鷺は全身に気合を込めて……とうとう、びかっ! と全身から黄色いエネルギーが噴出し、体中が強化される。
「気合い! 根性! 強靭! 無敵!!」
「全バフかけた。それと……『アビス・ドローン』」
ぶん、と召喚獣を加藤が召喚し、それに乗る。
「もっと前に出て魔法から何から撃ちまくる。きみは考えずもっと突っ込め、後ろに退がるな、死んでも前に出ろ。まだ楽しもうって気持ちが優先してるよ。悪い癖だ。きみがもっと考えるべきことは――相手を倒すことだ」
「……悪いな、加藤。あんま意識してなかった」
二人で強大な敵の方を向く。
相手は神、もちろん自分たちよりも圧倒的な力を持っている。それによって今、一瞬捻じ伏せられた。
「昨日の俺より今日の俺の方が強い。三分前の俺より今の俺の方が強い!!」
一人じゃ勝てない。
「舐められたまま終われるか……! ぼくも、白鷺も! こんな簡単に負けるわけない!!」
だけど二人なら。
「行くよ、白鷺!」
「おう!!」
負ける気なんてしない!!
「……目に力が入ったね。来な!!」
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