異世界なう―No freedom,not a human―
137話 気合の拳
十分な休息を取りいざ、と階段を飛び出した先に待っていたのは……。
「なんだ……こいつ!」
「強い、ね。Sランク……まではいかないのかもしれないけど、頭半分抜けてるよね。もうちょい本気にならないといけないかもよ」
牛の頭、いわゆる牛頭鬼と言う妖怪のような顔と体躯だが、腕から魔力弾のようなものを発射するガトリングがついている。
「ガトリング牛頭鬼……?」
「クッソダサいネーミングセンスだね。それなら清田君の方がなんぼもマシでしょ」
「るせぇ、っとぉ!」
横っ飛びで回避。生半な威力じゃない。当たれば死なないまでも大ダメージは間違いないだろう。
「ゴズリング、ガトリンゴズール、どっちがいい!?」
「どっちもくそダサいけど、強いて言うなら短いゴズリングで!」
「了解! 行くぜー!」
周囲に他の魔物の気配はない。つまり一対二だ。
「一対一でも負ける気はしないけどよ。ちょーっと時間がかかりそうだからな。悪いけど、一対二でやらせてもらうぜ?」
左足を前に出し、右足を引いて両拳を頬につける。そのまま左拳だけ前に出して最後に少しだけ前傾姿勢になった。ボクシングのオーソドックスな構えだ。
(しっかりガード上げとかないとヤバそうだからな)
ニッと笑い、『激剛腕』を発動させる。
さらに脱力。そして今までとは違い気合を入れる。
蒼白く光る腕がさらに少し黄色く光った。
「行くぜ、ゴズリング!」
気合とは裏腹に軽快なステップを踏み、頭を低くして突っ込む。
「ブモォォォォォ!」
腰を落として白鷺へガトリングを発射してくる。左右にステップして躱すが、着弾したところが爆発してバランスを崩される。
舌打ちし、体勢を立て直したところでさらに魔力弾が飛んでくるが――
「加藤!」
「うん。『グレートウォール』」
魔力障壁によって阻まれる。
拳の届く範囲まで接近することに成功した白鷺は、三メートル以上はある巨体に向かって拳を繰り出す。
「ッラァ!」
ゴッ! と周囲の空気が――否、空間が震えるほどの一撃。一拍遅れて音がやってきて、
ここまでずっと出していなかった――白鷺が出す本気の一部。並みの魔物ならば爆発四散してもおかしくない威力。しかしゴズリングは耐えた。
ズザザザザザザザザ! とゴズリングが後ろへ吹き飛ぶが倒れはしない。
それを見てニヤリと笑う。
「はっ、いいぜ。そんくらい張り合いがねえとな」
目を白黒させるゴズリング。
先ほどまでとは一線を画す威力だからだろうか。
「白鷺ー。もうちょい威力出して」
「おう!」
「ブモォォォォォ!!! ブルブモモモオオオオオオオ!!!」
雄叫び、咆哮。そしてゴリラがドラミングをするように胸を一度叩く。
ビリビリと周囲を震わせる音に、一瞬だけ怯むが――さらにワクワクの気持ちが膨れ上がってきて、ゴズリングに突進していく。
「ッラァ、行くぜぇぇぇぇぇええ! 前言撤回!! 加藤! 手ぇ出すなよ。こいつは俺が一対一でぶっ飛ばす!!!!」
「あー……悪い癖出てきたな。バフだけはかけとくよ」
さらに体が軽くなる。
「ブモォォォォォ!!!!」
ガガガガガガ! と連射される魔力弾を紙一重で躱し、躱し、躱し――さらに一歩踏み込む。
前に進みながら躱すのは難しいが、その場にとどまりステップとスウェーで躱すのはそこまできつくはない。
そして今ので分かったが、六発撃つと数瞬のインターバルを必要とするらしい。
分かりやすいのはありがたい。
「ブモゥ!」
六発の魔力弾、それらを躱し相手の腕が届く範囲まで入ると、その剛腕を横薙ぎに払ってくる。
躱せない、否、ジャンプすれば躱せるが――そんなのボクサーがすることじゃない。
だから白鷺はその場で踏ん張り、腕を十字に交差させてガードする。クロスアームブロックだ。
ズンッ!! と衝撃が走るが、地面をしっかりと踏みしめ受け止めてニヤリと笑う。
「今度はこっちの番だぜ」
ダッキングして腕の下から潜り抜けるように懐に入り、ボディアッパーを食らわせる。
衝撃が腹を貫通し背中を抜けていく感覚。
ゴズリングの身体が少しだけ浮く。拳一つで三メートルの巨体が浮く様はもとの世界では拝めない光景だ。
たたらを踏んで後退するゴズリングを追い、さらに数歩踏み込む。
そしてズドン! と左ボディーアッパーをぶち込みさらにぶっ飛ばす。
「クソッ、顎が遠い!」
「白鷺、熱くなりすぎない! 敵の頭を下げるための方法、君なら五通りはあるでしょ!」
「わぁーってら!」
振り下ろされる右をバックステップで躱し、懐に入るために右側からダッシュで回り込む。ゴズリングが振り下ろした右で薙ぎ払おうとしてきた瞬間、アッパーでそれをかちあげた。
「がら空きだぜ――」
もう一度気合を入れてぶん殴る。
ゴォッッッッッ!!!!
尋常じゃない威力の一撃。ゴズリングの身体が横にずれ、たまらずぐらりと体が傾いた。
その瞬間、ゴズリングの膝に乗り跳躍する。
「歯ぁ、食い縛れよ」
「ブモォォォォォ!!!!!」
繰り出された左拳を空中で避け、落下の勢いと気合を入れた一撃をゴズリングの顎に叩き込む。
膝から崩れ落ち、うつぶせに倒れるゴズリング。着地した白鷺はニッと笑い拳を手のひらに打ち付ける。
「ダウンだな。加藤、10カウント!」
「はいはい。わーん、つー、すりー」
指を一本ずつ立てながらカウントを取る加藤。
それを見ながらゆっくりとロープに体を預けようとして――リングなんて無かったことを思い出しながら尻餅をつく。
「せぶーん、えーいと……流石にそれは笑う。ないーん」
含み笑いをしている加藤を睨みつけながら立ち上がり、それと同時に加藤の指が十ポンとも立った。
「てん! ってことで、気は済んだ? 済んだならさっさととどめを刺すよ」
「へいへい」
倒れ伏したまま動かないゴズリングに向かって加藤が杖を突き付ける。
「……『始原の力よ。大賢者の聡が命令する。この世の理に背き、敵の命を刈り取る死神の鎌を。デスサイズ』」
そして不可視の一撃でその命を刈り取った。
命の灯――仮にそんなものがあるとしたら、それが静かに吹き消されたようだった。
「やれやれ、気絶している相手にしか効かないのが難点だな、『死神の鎌』は」
「知らねぇけど、やっぱ魔法って便利なもんだなぁ」
「……いや、ただ気合入れるだけで身体能力を何倍にも出来る君の方が頭おかしいと思うけど」
「しゃあねえだろ、出来るモンは出来るんだから」
さっき、ゴズリングを吹き飛ばしたパンチはどれも気合を入れたパンチだった。気合は入れれば入れるほど威力が上がる。
「根性の問題だろ、きっと」
「ふわっとしてるなぁ」
特別な『職スキル』を使っていない以上、説明なんてできやしない。
しかし気合と根性で身体能力が上がるなら好都合だ。
(気合と根性だけは誰にも負けないからな)
「まあ、なんにせよだ。体力の回復に努めて」
そう言って加藤は杖を構える。
「何言ってんだ、俺もまだ戦えるぞ」
「……あのクラスのが次にまた来たらキツイでしょ。キミは体力温存。雑魚の露払いはぼくがやる」
そう言っている二人の周囲には、わらわらとBランクくらいの魔物が集まってきていた。加藤はすぐさま呪文を唱え、数体の召喚獣を召喚する。
「じゃあちゃっちゃと片付けておくよ」
「へいへい」
そう言って加藤は魔物の群れに突っ込んでいく。自身に身体強化バフをかけ、魔物の攻撃をいなしながら確実に魔法を決めていく。
加藤は器用貧乏と言うほかないキャラクターだが、だからこそ手数が多い。状況を冷静に判断して適切な札を切る。
白鷺には絶対に出来ない戦い方であり、だからこそ憧れる部分は多い。
「さて……」
獅子奮迅の戦いをしている加藤を見ながら『職スキル』を発動させる。
「よく分かんねぇけどよ」
拳に蒼白いオーラが纏いそれを発射することで、ふよふよと浮いていた小さい魔物を打ち落とす。
「こそこそ見られるのは不愉快だぜ。男ならもっと堂々俺らの前に顔だしな」
それでも視線はなくならないから、きっと今の魔物は端末の一つでしかないのだろうと推測する。
恐らく加藤の言っていた予感というのはこの監視のことだろう。日に日に『目』が増えている。その数が増えれば増えるほど、試練の間の扉が近づいてきていると思って間違いないだろう。
「……デネブの塔の時はそんなことなかったんだけどな」
頭が悪いからこれ以上考えるつもりはないが、やはり塔によって違いというのはあるのだろう。
デネブの塔とは違い、二足歩行の魔物しか出てきていない。それだけじゃなく塔の内部にも違いがある。
広いのだ。洞窟のようになっており魔物が奇襲してきたデネブの塔とはえらく違う。
最初に天川が神器を手に入れた塔、ベガの塔ではデネブとそう大差無かったが……今思えば、魔物が規則的に襲いかかってきた気がする。
ここの塔は部屋が蟻の巣のようにつながっており次の部屋、次の部屋と進んでいく構造になっている。死角が少ないから奇襲される危険性が少ない代わりに四方向から襲われる危険性もある。
「ふぅっ、あー、しんどい。白鷺、飲み物」
「はいはい」
白鷺はアイテムボックスから水の入った瓶を取り出し加藤に投げつけた。
それをキャッチした加藤は瓶を煽り、地面に投げ捨てる。
「雑魚はやっぱり雑魚だね」
「Bランク魔物を雑魚って言ったらまたギルドのねーちゃんに怒られるんじゃねえか」
「ああ、そういえば最初に言われたっけね。……結局信じてもらえなくてぼくらDランクのままだけど」
魔魂石だけじゃなくて討伐部位を持って行かないとダメだなんて知らなかったから、白鷺たちはBランク以上の魔物を倒しているが未だにDランクのままである。
「……やっぱ見られてるな」
「へ?」
「気づいてなかったのか? 加藤」
そこまで言うと、加藤は少し虚空を見上げ小声で何か呪文を唱えた。
「……ホントだ、十五個。ぼくらを見ている目がある」
「そ、そんなにあるのか。俺が気づいてたのはせいぜい五個だぜ」
「そういう感覚は君の方が強いね。けど精度はぼくの方が上だよ。全部潰す?」
加藤が問うてくるが、白鷺は首を振って否を伝える。
「こそこそ見られるのは不愉快っちゃ不愉快だけど、別に全部潰す必要もねえだろ。……見てるのが誰かってのは分かるしな」
「……枝神、か。気に食わないね、ぼくらを一方的に観察して点数をつけるってのはさ」
「しょうがねえだろ。……天川の神器しか見たことねえけど、あれほどの力だ。精神的にも肉体的にも並みの人間に渡すわけにはいかないだろうさ」
白鷺はそう言いながら、周囲に魔物がいないことを確認してアイテムボックスから食料を取り出す。干し肉だ。
齧り、もう一つも加藤に投げ渡す。
「不味いけど、腹は膨らむな」
「そう? ぼくは好きだけど」
「相変わらず味音痴だなぁ」
「む、全ての感覚が狂ってるキミに言われたくないな」
「どういうことだよそれ!?」
軽口をたたきながら、干し肉を食べ終わりさてと前を向く。
「じゃあ先に進むか。次の部屋はどんな魔物が出てくるか」
「また一対一とか言いださないでよ。テンション上がるとすぐにタイマンだのなんだの言いだすんだから」
「へーへー、悪いって思ってるってば」
拳を手のひらに打ち付けながら謝ると、加藤はため息をついて首を横に振る。
「悪いと思ってるならそれなりの態度を示せってば」
悪いと思って無いから仕方ないな。
心の中でそう思って首を回す。
次の部屋に行こうとチラリと通路を見ると、何やら魔物の口のようで……通路の上の部分に模様が浮き出ている。
加藤もチラリと上を見てその異変に気付いたようだが、特に何のアクションも無く通路の中へ入っていく。
「さて次の部屋は……っと、魔物いないな」
「いないね」
しかし魔物の気配はする。
地面の中、天井、横の壁――至る所から気配が。
「加藤。これ、マズった?」
「……ダンジョンでもないのに、モンスターハウスか。やだねー」
ダンジョンには二度ほど潜った。修行にはもってこいだった。もちろんモンスターハウスもあった。モンスターがワラワラと出てくるのだ。
しかし塔では魔物が強化される。そんな中でモンスターハウスなんかされてはたまったものではない。
……たまったものではないというのに。
「これ……もう既に入ってるってことなのかな」
「っぽいな、そんな予感がしてたぜ」
加藤と白鷺は背中合わせになり、周囲を警戒する。
そう、唐突にこんなギミックが出てきたということは――
「ッ!」
「周囲の道が閉ざされたね……白鷺、バフを盛るよ。来るね、間違いなく!」
「おうよ!」
拳を構え、気合を入れる。この数は気合抜きじゃちょっと無理そうだ。
目の前の道が閉じ、そして現れるのは大きな門。
……試練の間、だ――ッ!
「チッ……荘厳な扉も何もなく、いきなり試練の間にぶち込んでくるとはなぁ! どういうつもりか知らねーけど、だいぶ陰険な美女って思っていいのかな? 神様!」
「枝神、じゃなかったっけ? それと、美女って限定するのもどうかと思うけど」
「いーや、美女だね! 古来よりこんな陰湿ないじめをするのは女子って相場が決まってるんだ!」
「はいはい、偏見乙。さ、来たよ」
わっ! と一斉に襲いかかってくる魔物たち。
「気合い……充填!!」
バチッ、と電流が走るような音がして白鷺の両手に気合いが籠る。そして天井から落ちてきた魔物を――全く見ずにアッパー一撃で爆散させる。
さらに地面から現れた三匹も、ほぼ同時に繰り出されるジャブでまとめて吹き飛ばした。
「はぁ……数が多い」
「チッ、取りあえず数を減らすぞ。五秒稼ぐから加藤、アレを!」
そう言って、白鷺はステップを踏み軽い攻撃で周囲の敵を加藤に近づかせないように散らす。全方位から襲いかかってくる魔物を捌くのは骨だが、五秒程度なら大したことは無い。
そして五秒も稼げば、加藤ならば都合三つは魔法を用意することができる。
「――『求めるは静止。空虚なる空間が、何物をも包み込む意思となり得る。スロウダウンワールド』!」
加藤の必殺『職魔法』。オリジナルの呪文から紡がれるその魔法は結界となりその中にいる敵の速度を極限まで低下させる。
以前ヒルディに撃った時とは比べ物にならない遅さ。相手が彼女より弱いのもあるが、それ以上に加藤が成長している。
「まあそれ以上に俺も成長してるんだけどさ……『瞬即』!」
さらにスピードにバフがかかる『職スキル』を発動させる。それに加藤が加速系のバフもかけてくれた。
「いくぜ……取りあえずテメーら全滅させてやるよ。ッラァ!」
加速する。両拳を頬に付け、前傾姿勢になりながら。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
極限まで減速した世界で、極限まで加速した白鷺が駆ける。敵を屠りながら笑うその姿はまるで鬼神の如し。否、鬼そのもの。
加藤はその姿を見てフッと頬を緩ませる。
(やれやれ……ぼくがお膳立てしてあげないと相変わらずダメなんだから)
この魔法の効果期間、そして白鷺にかけたバフからしてこの空間に出てきている魔物の半分は吹き飛ばすだろう。半分残った時に白鷺にそいつらの攻撃が集中して落ちられては困るので、防御系の魔法を用意しておく。
――加藤は単体でも戦えなくはないが、白鷺は純粋な前衛。スピードと破壊力はあるがやはり加藤がフォローしてこそ輝く。
自分はサポーター、そして白鷺がアタッカーであることは重々理解している。だからこそ彼のスペックはしっかりと把握し、その次の手を考えながらバフをしなくちゃいけない。
しかし、白鷺は大バカだ。それも類を見ないタイプの。
出来ないことを出来ると言い、気合いだ根性だと非科学的なことばかり連呼する。
だが、否、だからこそ――
「ははっ、嘘でしょ。……白鷺、あと二秒で魔法の効果が切れる!」
――常識ではありえない事象を平然とやってのける。
「りょーかいっ! ……ッラァ! こいつでラストだ!」
ズドンッ! ……とAランクくらいあるだろう魔物を吹き飛ばし、加藤の傍に戻ってくる白鷺。既に結界の効果は切れているが、最初に出てきた魔物は全て爆散していた。
「っしゃあ! どうだ、加藤!」
「はいはい。……第二陣、来るよ」
「分かってる! ……今の、もう一回やるか?」
白鷺がこちらを見ないで聞いてくるが、こちらも背中を合わせた状態で首を振る。
「いや、魔力量的に連発はキツイ。第三陣が来た時に対応できないと怖い。今のうちに魔力薬を飲みながら援護する。ガンガン動いて」
「おっけー。じゃあ、行くか!」
アイテムボックスから魔力薬を取り出し煽る。
そして第二陣が出てきたところで――白鷺は何も考えずに突貫していく。射線すら開けずに突っ込むのでフォローが大変だ。
(……でも、ぼくは器用だからね)
縦横無尽に動き回る白鷺の先程度、読めずして何が大賢者か。
「ふぅ、『始原の力よ。大賢者の聡が命令する。この世の理に背き、追尾し敵を破滅させる炎の弾を! トラッキングフレア』!」
ズドドドド! と白鷺を後ろから襲おうとしてきた魔物を焼き払い、さらに周囲の魔物にもけん制する。
すると白鷺がこちらを見ずに親指を立ててきた。
「……そんなことしてる暇があったら敵をぶっ飛ばしてよね」
もう一度魔力薬を煽り、杖を構え直す。
――気が済むまで付き合ってあげるよ。白鷺。
自分でも知らぬうちに口の端を吊り上げながら、加藤は呪文の詠唱を始めた。
「なんだ……こいつ!」
「強い、ね。Sランク……まではいかないのかもしれないけど、頭半分抜けてるよね。もうちょい本気にならないといけないかもよ」
牛の頭、いわゆる牛頭鬼と言う妖怪のような顔と体躯だが、腕から魔力弾のようなものを発射するガトリングがついている。
「ガトリング牛頭鬼……?」
「クッソダサいネーミングセンスだね。それなら清田君の方がなんぼもマシでしょ」
「るせぇ、っとぉ!」
横っ飛びで回避。生半な威力じゃない。当たれば死なないまでも大ダメージは間違いないだろう。
「ゴズリング、ガトリンゴズール、どっちがいい!?」
「どっちもくそダサいけど、強いて言うなら短いゴズリングで!」
「了解! 行くぜー!」
周囲に他の魔物の気配はない。つまり一対二だ。
「一対一でも負ける気はしないけどよ。ちょーっと時間がかかりそうだからな。悪いけど、一対二でやらせてもらうぜ?」
左足を前に出し、右足を引いて両拳を頬につける。そのまま左拳だけ前に出して最後に少しだけ前傾姿勢になった。ボクシングのオーソドックスな構えだ。
(しっかりガード上げとかないとヤバそうだからな)
ニッと笑い、『激剛腕』を発動させる。
さらに脱力。そして今までとは違い気合を入れる。
蒼白く光る腕がさらに少し黄色く光った。
「行くぜ、ゴズリング!」
気合とは裏腹に軽快なステップを踏み、頭を低くして突っ込む。
「ブモォォォォォ!」
腰を落として白鷺へガトリングを発射してくる。左右にステップして躱すが、着弾したところが爆発してバランスを崩される。
舌打ちし、体勢を立て直したところでさらに魔力弾が飛んでくるが――
「加藤!」
「うん。『グレートウォール』」
魔力障壁によって阻まれる。
拳の届く範囲まで接近することに成功した白鷺は、三メートル以上はある巨体に向かって拳を繰り出す。
「ッラァ!」
ゴッ! と周囲の空気が――否、空間が震えるほどの一撃。一拍遅れて音がやってきて、
ここまでずっと出していなかった――白鷺が出す本気の一部。並みの魔物ならば爆発四散してもおかしくない威力。しかしゴズリングは耐えた。
ズザザザザザザザザ! とゴズリングが後ろへ吹き飛ぶが倒れはしない。
それを見てニヤリと笑う。
「はっ、いいぜ。そんくらい張り合いがねえとな」
目を白黒させるゴズリング。
先ほどまでとは一線を画す威力だからだろうか。
「白鷺ー。もうちょい威力出して」
「おう!」
「ブモォォォォォ!!! ブルブモモモオオオオオオオ!!!」
雄叫び、咆哮。そしてゴリラがドラミングをするように胸を一度叩く。
ビリビリと周囲を震わせる音に、一瞬だけ怯むが――さらにワクワクの気持ちが膨れ上がってきて、ゴズリングに突進していく。
「ッラァ、行くぜぇぇぇぇぇええ! 前言撤回!! 加藤! 手ぇ出すなよ。こいつは俺が一対一でぶっ飛ばす!!!!」
「あー……悪い癖出てきたな。バフだけはかけとくよ」
さらに体が軽くなる。
「ブモォォォォォ!!!!」
ガガガガガガ! と連射される魔力弾を紙一重で躱し、躱し、躱し――さらに一歩踏み込む。
前に進みながら躱すのは難しいが、その場にとどまりステップとスウェーで躱すのはそこまできつくはない。
そして今ので分かったが、六発撃つと数瞬のインターバルを必要とするらしい。
分かりやすいのはありがたい。
「ブモゥ!」
六発の魔力弾、それらを躱し相手の腕が届く範囲まで入ると、その剛腕を横薙ぎに払ってくる。
躱せない、否、ジャンプすれば躱せるが――そんなのボクサーがすることじゃない。
だから白鷺はその場で踏ん張り、腕を十字に交差させてガードする。クロスアームブロックだ。
ズンッ!! と衝撃が走るが、地面をしっかりと踏みしめ受け止めてニヤリと笑う。
「今度はこっちの番だぜ」
ダッキングして腕の下から潜り抜けるように懐に入り、ボディアッパーを食らわせる。
衝撃が腹を貫通し背中を抜けていく感覚。
ゴズリングの身体が少しだけ浮く。拳一つで三メートルの巨体が浮く様はもとの世界では拝めない光景だ。
たたらを踏んで後退するゴズリングを追い、さらに数歩踏み込む。
そしてズドン! と左ボディーアッパーをぶち込みさらにぶっ飛ばす。
「クソッ、顎が遠い!」
「白鷺、熱くなりすぎない! 敵の頭を下げるための方法、君なら五通りはあるでしょ!」
「わぁーってら!」
振り下ろされる右をバックステップで躱し、懐に入るために右側からダッシュで回り込む。ゴズリングが振り下ろした右で薙ぎ払おうとしてきた瞬間、アッパーでそれをかちあげた。
「がら空きだぜ――」
もう一度気合を入れてぶん殴る。
ゴォッッッッッ!!!!
尋常じゃない威力の一撃。ゴズリングの身体が横にずれ、たまらずぐらりと体が傾いた。
その瞬間、ゴズリングの膝に乗り跳躍する。
「歯ぁ、食い縛れよ」
「ブモォォォォォ!!!!!」
繰り出された左拳を空中で避け、落下の勢いと気合を入れた一撃をゴズリングの顎に叩き込む。
膝から崩れ落ち、うつぶせに倒れるゴズリング。着地した白鷺はニッと笑い拳を手のひらに打ち付ける。
「ダウンだな。加藤、10カウント!」
「はいはい。わーん、つー、すりー」
指を一本ずつ立てながらカウントを取る加藤。
それを見ながらゆっくりとロープに体を預けようとして――リングなんて無かったことを思い出しながら尻餅をつく。
「せぶーん、えーいと……流石にそれは笑う。ないーん」
含み笑いをしている加藤を睨みつけながら立ち上がり、それと同時に加藤の指が十ポンとも立った。
「てん! ってことで、気は済んだ? 済んだならさっさととどめを刺すよ」
「へいへい」
倒れ伏したまま動かないゴズリングに向かって加藤が杖を突き付ける。
「……『始原の力よ。大賢者の聡が命令する。この世の理に背き、敵の命を刈り取る死神の鎌を。デスサイズ』」
そして不可視の一撃でその命を刈り取った。
命の灯――仮にそんなものがあるとしたら、それが静かに吹き消されたようだった。
「やれやれ、気絶している相手にしか効かないのが難点だな、『死神の鎌』は」
「知らねぇけど、やっぱ魔法って便利なもんだなぁ」
「……いや、ただ気合入れるだけで身体能力を何倍にも出来る君の方が頭おかしいと思うけど」
「しゃあねえだろ、出来るモンは出来るんだから」
さっき、ゴズリングを吹き飛ばしたパンチはどれも気合を入れたパンチだった。気合は入れれば入れるほど威力が上がる。
「根性の問題だろ、きっと」
「ふわっとしてるなぁ」
特別な『職スキル』を使っていない以上、説明なんてできやしない。
しかし気合と根性で身体能力が上がるなら好都合だ。
(気合と根性だけは誰にも負けないからな)
「まあ、なんにせよだ。体力の回復に努めて」
そう言って加藤は杖を構える。
「何言ってんだ、俺もまだ戦えるぞ」
「……あのクラスのが次にまた来たらキツイでしょ。キミは体力温存。雑魚の露払いはぼくがやる」
そう言っている二人の周囲には、わらわらとBランクくらいの魔物が集まってきていた。加藤はすぐさま呪文を唱え、数体の召喚獣を召喚する。
「じゃあちゃっちゃと片付けておくよ」
「へいへい」
そう言って加藤は魔物の群れに突っ込んでいく。自身に身体強化バフをかけ、魔物の攻撃をいなしながら確実に魔法を決めていく。
加藤は器用貧乏と言うほかないキャラクターだが、だからこそ手数が多い。状況を冷静に判断して適切な札を切る。
白鷺には絶対に出来ない戦い方であり、だからこそ憧れる部分は多い。
「さて……」
獅子奮迅の戦いをしている加藤を見ながら『職スキル』を発動させる。
「よく分かんねぇけどよ」
拳に蒼白いオーラが纏いそれを発射することで、ふよふよと浮いていた小さい魔物を打ち落とす。
「こそこそ見られるのは不愉快だぜ。男ならもっと堂々俺らの前に顔だしな」
それでも視線はなくならないから、きっと今の魔物は端末の一つでしかないのだろうと推測する。
恐らく加藤の言っていた予感というのはこの監視のことだろう。日に日に『目』が増えている。その数が増えれば増えるほど、試練の間の扉が近づいてきていると思って間違いないだろう。
「……デネブの塔の時はそんなことなかったんだけどな」
頭が悪いからこれ以上考えるつもりはないが、やはり塔によって違いというのはあるのだろう。
デネブの塔とは違い、二足歩行の魔物しか出てきていない。それだけじゃなく塔の内部にも違いがある。
広いのだ。洞窟のようになっており魔物が奇襲してきたデネブの塔とはえらく違う。
最初に天川が神器を手に入れた塔、ベガの塔ではデネブとそう大差無かったが……今思えば、魔物が規則的に襲いかかってきた気がする。
ここの塔は部屋が蟻の巣のようにつながっており次の部屋、次の部屋と進んでいく構造になっている。死角が少ないから奇襲される危険性が少ない代わりに四方向から襲われる危険性もある。
「ふぅっ、あー、しんどい。白鷺、飲み物」
「はいはい」
白鷺はアイテムボックスから水の入った瓶を取り出し加藤に投げつけた。
それをキャッチした加藤は瓶を煽り、地面に投げ捨てる。
「雑魚はやっぱり雑魚だね」
「Bランク魔物を雑魚って言ったらまたギルドのねーちゃんに怒られるんじゃねえか」
「ああ、そういえば最初に言われたっけね。……結局信じてもらえなくてぼくらDランクのままだけど」
魔魂石だけじゃなくて討伐部位を持って行かないとダメだなんて知らなかったから、白鷺たちはBランク以上の魔物を倒しているが未だにDランクのままである。
「……やっぱ見られてるな」
「へ?」
「気づいてなかったのか? 加藤」
そこまで言うと、加藤は少し虚空を見上げ小声で何か呪文を唱えた。
「……ホントだ、十五個。ぼくらを見ている目がある」
「そ、そんなにあるのか。俺が気づいてたのはせいぜい五個だぜ」
「そういう感覚は君の方が強いね。けど精度はぼくの方が上だよ。全部潰す?」
加藤が問うてくるが、白鷺は首を振って否を伝える。
「こそこそ見られるのは不愉快っちゃ不愉快だけど、別に全部潰す必要もねえだろ。……見てるのが誰かってのは分かるしな」
「……枝神、か。気に食わないね、ぼくらを一方的に観察して点数をつけるってのはさ」
「しょうがねえだろ。……天川の神器しか見たことねえけど、あれほどの力だ。精神的にも肉体的にも並みの人間に渡すわけにはいかないだろうさ」
白鷺はそう言いながら、周囲に魔物がいないことを確認してアイテムボックスから食料を取り出す。干し肉だ。
齧り、もう一つも加藤に投げ渡す。
「不味いけど、腹は膨らむな」
「そう? ぼくは好きだけど」
「相変わらず味音痴だなぁ」
「む、全ての感覚が狂ってるキミに言われたくないな」
「どういうことだよそれ!?」
軽口をたたきながら、干し肉を食べ終わりさてと前を向く。
「じゃあ先に進むか。次の部屋はどんな魔物が出てくるか」
「また一対一とか言いださないでよ。テンション上がるとすぐにタイマンだのなんだの言いだすんだから」
「へーへー、悪いって思ってるってば」
拳を手のひらに打ち付けながら謝ると、加藤はため息をついて首を横に振る。
「悪いと思ってるならそれなりの態度を示せってば」
悪いと思って無いから仕方ないな。
心の中でそう思って首を回す。
次の部屋に行こうとチラリと通路を見ると、何やら魔物の口のようで……通路の上の部分に模様が浮き出ている。
加藤もチラリと上を見てその異変に気付いたようだが、特に何のアクションも無く通路の中へ入っていく。
「さて次の部屋は……っと、魔物いないな」
「いないね」
しかし魔物の気配はする。
地面の中、天井、横の壁――至る所から気配が。
「加藤。これ、マズった?」
「……ダンジョンでもないのに、モンスターハウスか。やだねー」
ダンジョンには二度ほど潜った。修行にはもってこいだった。もちろんモンスターハウスもあった。モンスターがワラワラと出てくるのだ。
しかし塔では魔物が強化される。そんな中でモンスターハウスなんかされてはたまったものではない。
……たまったものではないというのに。
「これ……もう既に入ってるってことなのかな」
「っぽいな、そんな予感がしてたぜ」
加藤と白鷺は背中合わせになり、周囲を警戒する。
そう、唐突にこんなギミックが出てきたということは――
「ッ!」
「周囲の道が閉ざされたね……白鷺、バフを盛るよ。来るね、間違いなく!」
「おうよ!」
拳を構え、気合を入れる。この数は気合抜きじゃちょっと無理そうだ。
目の前の道が閉じ、そして現れるのは大きな門。
……試練の間、だ――ッ!
「チッ……荘厳な扉も何もなく、いきなり試練の間にぶち込んでくるとはなぁ! どういうつもりか知らねーけど、だいぶ陰険な美女って思っていいのかな? 神様!」
「枝神、じゃなかったっけ? それと、美女って限定するのもどうかと思うけど」
「いーや、美女だね! 古来よりこんな陰湿ないじめをするのは女子って相場が決まってるんだ!」
「はいはい、偏見乙。さ、来たよ」
わっ! と一斉に襲いかかってくる魔物たち。
「気合い……充填!!」
バチッ、と電流が走るような音がして白鷺の両手に気合いが籠る。そして天井から落ちてきた魔物を――全く見ずにアッパー一撃で爆散させる。
さらに地面から現れた三匹も、ほぼ同時に繰り出されるジャブでまとめて吹き飛ばした。
「はぁ……数が多い」
「チッ、取りあえず数を減らすぞ。五秒稼ぐから加藤、アレを!」
そう言って、白鷺はステップを踏み軽い攻撃で周囲の敵を加藤に近づかせないように散らす。全方位から襲いかかってくる魔物を捌くのは骨だが、五秒程度なら大したことは無い。
そして五秒も稼げば、加藤ならば都合三つは魔法を用意することができる。
「――『求めるは静止。空虚なる空間が、何物をも包み込む意思となり得る。スロウダウンワールド』!」
加藤の必殺『職魔法』。オリジナルの呪文から紡がれるその魔法は結界となりその中にいる敵の速度を極限まで低下させる。
以前ヒルディに撃った時とは比べ物にならない遅さ。相手が彼女より弱いのもあるが、それ以上に加藤が成長している。
「まあそれ以上に俺も成長してるんだけどさ……『瞬即』!」
さらにスピードにバフがかかる『職スキル』を発動させる。それに加藤が加速系のバフもかけてくれた。
「いくぜ……取りあえずテメーら全滅させてやるよ。ッラァ!」
加速する。両拳を頬に付け、前傾姿勢になりながら。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
極限まで減速した世界で、極限まで加速した白鷺が駆ける。敵を屠りながら笑うその姿はまるで鬼神の如し。否、鬼そのもの。
加藤はその姿を見てフッと頬を緩ませる。
(やれやれ……ぼくがお膳立てしてあげないと相変わらずダメなんだから)
この魔法の効果期間、そして白鷺にかけたバフからしてこの空間に出てきている魔物の半分は吹き飛ばすだろう。半分残った時に白鷺にそいつらの攻撃が集中して落ちられては困るので、防御系の魔法を用意しておく。
――加藤は単体でも戦えなくはないが、白鷺は純粋な前衛。スピードと破壊力はあるがやはり加藤がフォローしてこそ輝く。
自分はサポーター、そして白鷺がアタッカーであることは重々理解している。だからこそ彼のスペックはしっかりと把握し、その次の手を考えながらバフをしなくちゃいけない。
しかし、白鷺は大バカだ。それも類を見ないタイプの。
出来ないことを出来ると言い、気合いだ根性だと非科学的なことばかり連呼する。
だが、否、だからこそ――
「ははっ、嘘でしょ。……白鷺、あと二秒で魔法の効果が切れる!」
――常識ではありえない事象を平然とやってのける。
「りょーかいっ! ……ッラァ! こいつでラストだ!」
ズドンッ! ……とAランクくらいあるだろう魔物を吹き飛ばし、加藤の傍に戻ってくる白鷺。既に結界の効果は切れているが、最初に出てきた魔物は全て爆散していた。
「っしゃあ! どうだ、加藤!」
「はいはい。……第二陣、来るよ」
「分かってる! ……今の、もう一回やるか?」
白鷺がこちらを見ないで聞いてくるが、こちらも背中を合わせた状態で首を振る。
「いや、魔力量的に連発はキツイ。第三陣が来た時に対応できないと怖い。今のうちに魔力薬を飲みながら援護する。ガンガン動いて」
「おっけー。じゃあ、行くか!」
アイテムボックスから魔力薬を取り出し煽る。
そして第二陣が出てきたところで――白鷺は何も考えずに突貫していく。射線すら開けずに突っ込むのでフォローが大変だ。
(……でも、ぼくは器用だからね)
縦横無尽に動き回る白鷺の先程度、読めずして何が大賢者か。
「ふぅ、『始原の力よ。大賢者の聡が命令する。この世の理に背き、追尾し敵を破滅させる炎の弾を! トラッキングフレア』!」
ズドドドド! と白鷺を後ろから襲おうとしてきた魔物を焼き払い、さらに周囲の魔物にもけん制する。
すると白鷺がこちらを見ずに親指を立ててきた。
「……そんなことしてる暇があったら敵をぶっ飛ばしてよね」
もう一度魔力薬を煽り、杖を構え直す。
――気が済むまで付き合ってあげるよ。白鷺。
自分でも知らぬうちに口の端を吊り上げながら、加藤は呪文の詠唱を始めた。
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