異世界なう―No freedom,not a human―
128話 煩悩退散なう
若干気まずい空気になりつつも、何とかお昼ご飯を食べ終えてさて修行とあいなった。
ちなみにお昼ご飯は冬子が作ったサンドイッチを皆で食べたよ。とてもおいしかった。
「さて、じゃあまずは魂の修行からだ」
食後のコーヒーを飲んでいると、マルキムがそう切り出した。
魂――覇王やマルキムが使うエネルギーで、基本的には獣人族が使うものらしい。あの黄色いエネルギーだね。
マルキムは腕に淡い黄色の光を生み出して、俺達に見せつけてくる。
「この魂は何が出来るかというと、まずは身体能力の強化。そして魔法の素養が無くても魔法に物理的な干渉を行うことが出来るようになる」
「どういうこと?」
俺が問うと、マルキムは俺に「なんか魔法を出してみろ」と言ってくる。
なので、俺は小さな風の塊を生み出した。
「いいか? わかってるかもしれないが、魔法を切ったりするのは高等技術だ。魔法は基本的にガードすることは出来ても相殺したりすることは出来ない。要するにノーダメージで防ぐことは出来ないってことだな」
そう言ってマルキムが魂を使っていない方の手で風の塊に触れると、バシンと弾かれる。冬子も似たように触るけど、やっぱり弾かれた。
「……魔法なんて初めて素手で触ったが、手が痺れるな」
「まあ、風を弾丸サイズに圧縮してその場にとどまらせてるわけだからそれなりにエネルギーはあるよ」
俺が冬子にそう言うと、マルキムはコクリと頷いて今度は魂を纏っている方の手で風の塊に触れた。
「だが、魂を使うと」
すると弾かれた先ほどとは違い、ぐしゃり、と握りつぶされてしまった。
俺と冬子は素直に驚き、リャンは感心した表情で見つめている。
「こんな風にな。勿論、魔法の威力が高ければこの限りじゃないが……うまくやればノーダメージで魔法をやり過ごすことも可能だ」
「なるほど……覇王が俺の爆撃を防いだのもこれのせいか」
あの時、どういうわけか覇王に俺の魔法が一切通用しなかったのはこういう理屈か。
「キョースケの魔法の威力は決して低いわけじゃねえ。SランクAGでも防げる奴は少ないし、無傷でいられる奴なんざオレの知る限りいねぇ。だが魂を使えば無傷で迎撃することは一応出来るってわけだ」
「そして付け加えるならばのぅ」
カラン、とアイスコーヒーを置いたキアラがニッと笑う。
「お主の魔法はまだ伸びる余地があるということぢゃ。それも十分すぎるほどのぅ」
「ふぇっふぇっふぇ。伸びしろの塊のような男じゃな、ぬしゃは」
楽しそうなキアラとシュンリンさん。心なしかマルキムも楽しそうだ。
冬子はジッとマルキムの纏っている魂を見つめると、ポツリと呟く。
「これは誰でも使えるものなんでしょうか」
「誰でも、ってわけにはいかねえな。やっぱりある程度以上の身体能力は必要だ。それ以上に必要なのは――意志の強さだ」
意志の強さ。
なるほどたしかに、今まで見た魂を使える人たちは皆意思が強そうだ。
「ワシャは残念じゃが身体能力が足らんでの。魂は使えんのじゃ。しかしぬしゃたちなら問題あるまい」
「ああ。そこの獣人の嬢ちゃんがギリギリってところかな」
獣人族として基礎身体能力が高いリャンでもギリギリか。そうとうハードルが高いみたいだね、魂を会得するのは。
「でも、それならセブンとかアトラとかなら十分会得出来そうだけど、彼らも使えるの?」
「アイツらはそもそも魂がどういうものかすら知らねえはずだよ。オレが教えてねえからな」
「その言い方だと、マルキム以外の人族は魂を知らないの?」
「そうだ。オレは師匠に教えてもらったから知ってるが、そもそも魂は獣人族の技術だ。戦場で獣人族が使うのを見たことがある奴等はいるだろうけどな」
ふむ、そもそも獣人族の技術だったのか。他の人族が使っていないのも納得かな。
「獣人族と人族の溝は深い。魂を使って戦うということは獣人族の仲間と思われかねぇからな。意図的に隠してたってわけだ。このことを知っているのはシュンリン爺さんとアルくらいのモンだ」
なるほど。
「ふぇっふぇっふぇ。マルキムはいつも『職スキル』じゃと言って誤魔化しておったの」
「ということは、広めればSランクAGくらいの人たちは使えるようになるってことかな」
「いやー、どうだろうか」
そう言ってマルキムが首をひねる。正直、あんな化け物と戦うのだからこちらの化け物も可能な限り強化しておきたい。
そう思って尋ねたのだけど、マルキムは渋い顔だ。
「さっきも言ったが、これは獣人族の技術だ。これを伝えることによってオレたちが獣人族の内通者とでも思われたら最悪だ」
「その可能性はあるのか……」
「充分すぎるほどにあり得る。……言っておくが、獣人族に対してそこまで悪感情を抱いていない人族の方が珍しいんだからな?」
「そうですよ~」
お茶のお代わりを持ってきてくれたマリルが、よいしょと俺たちのいるテーブルにつく。
「理由はいろいろありますが、やっぱり一番は『奴隷狩り』でしょうね。言いにくいですが、亜人族……えっと、獣人族でしたね。獣人族の国に拉致されて奴隷とされてしまった方の数は魔族の国に連れ去られた人数よりも一つ桁が違うんですよー」
「獣人族は魔法が使えない奴が多い……というか、基本的に使えん。だから奴隷の数が他の国に比べて圧倒的に多いんだ。オレたちが魔法で代用できることを、あいつらは奴隷でやっている。……い、いい悪いは別として、それが事実だ」
マルキムがチラリと気まずそうにリャンの顔を見る。やはり獣人族を悪く言われた風だからか。
しかしリャンは別に気にしたことも無さそうにお茶を飲んでいる。
「ふぅ……美味しいですね、食後のお茶は」
のんびりとしたことを言ったリャンはお茶を置くと、表情はそのままで口調のみ真剣になって話し出した。
「獣人族そのものに対する悪評が広まること自体は確かにあまり好ましくありませんが、事実ですので気にすることでもありません。そもそも、多かろうが少なかろうが、奴隷を使っている事実に変わりはありませんので、五十歩百歩です」
人族も奴隷を使っているうえに、奴隷狩りもしているから変わりないと。
まあ、俺もそう思うよ。奴隷なんて無くなればいいと思うし。
現在(一応)奴隷という身分にあるマリルは苦笑いして「そうですねー」と同意する。
「……話がそれたな。結局のところ、魂はここだけの秘密ってことだ。バレたら『職スキル』とでも言っておけ。そんじゃ具体的な修行方法について説明していくぞ」
マルキムはそうまとめたけど、どこか悲し気な表情だった。彼も、奴隷狩りに関してはそんなにいい思いを持っていないだろうから――
「というかそもそも、アイツらだとこの最初の段階が出来ないと思うんだよな」
「最初の段階?」
マルキムに問い返すと、彼は苦笑いしながら頷いた。
「その……だな、若干言いづらいんだが……まあ、言おう。魂をお前らに撃ち込み体内の魂を呼び起こすんだ。……その時に、ちょいと触りにくい場所から撃ち込まなきゃならんのだ。ので、まずはキョースケに撃ち込む。そしてキョースケが女子たちに撃ち込んでくれ」
なんか変な感じだね。
「そんなすぐに出来るものなの?」
「ああ、魂の撃ち込みは体内の魂を呼び起こすための呼び水だからな。というか撃ち込むというよりは沁み込ませるって感じだからな。やり方さえ分かれば初心者でも出来る。……ただ、ホント撃ち込む場所が特殊なだけで」
何故か凄く言いよどむマルキム。そんなにマズい場所なんだろうか……? ああ、もしかして首とか頭みたいな一歩間違えたら致命傷になりかねない部分とか。
いや、それにしては初心者でも出来るってのが不思議だね。
「……マルキム、大丈夫。覚悟は出来てるから」
「そ、そうか……。よし、お前が覚悟できているなら、いいだろう」
そう言ってマルキムが耳元に口を寄せてくるので、俺も彼に近づく。
「いいか? 魂を撃ち込む場所は……股間だ」
……………………。
………………。
「ちなみに女性の場合は胸部か股間だ」
「どうなってんだよその継承方法!?」
「いや、仕方が無いだろ! 魂の経絡がその辺に最も集まっていてだな……」
「だとしても限度がある! ……そりゃ確かにセブンとかはやりたがらなそう」
余程の信頼関係が無いと無理だ。そんな男にとって最大の急所を差し出さなきゃいけないなんて。
冬子たちは聞こえていなかったからか頭の上に「?」を浮かべている。
「………………え、それは俺がやるの?」
ひそひそとなるべく彼女らに聞こえないように話す。
「お前はオレが彼女らの胸に触るのを許容できるのか? 少なくとも彼女らは嫌がると思うぞ」
そりゃそうだけど。
「でも俺がやるのも……っ!」
「いや、だが他に誰がやるんだ。オレかお前だぞ」
…………いやそうなんだけどさ。
「そんなに簡単なの、それ」
「ああ。相手の魂が開くまでその部分に魂を当て続けるだけだからな」
え、一瞬とかじゃないの? ……そういや、沁み込ませるとかなんとか。
「つ、つまり俺の魂が開くまでマルキムは俺の股間を触りっぱなし?」
「…………言葉にすると酷いが、まあその通りだ。オレの場合はほら、師匠に寝ている間にされていたらしい」
いや知らんけども。っていうか、それはそれで色々ヤバくない?
「ガチムチのハゲと黒髪の細マッチョの絡みとか誰得だよ……」
マルキムの方は一定の層に需要があるのかもしれないけど、俺はフツメンだ。ぶっちゃけ需要があるとは思えない。
「仕方が無いだろ……お前、覚悟は出来てるって言ってたじゃねえか……」
そりゃそうだけど……!
流石に長い時間股間を触られる覚悟はしてない!
「意思の強さが必要だって言っただろ」
「そういう方向で!?」
予想の斜め上過ぎてなかなか覚悟が決まらない。
額を押さえてため息をつくと、マルキムは先に覚悟を決めたのかクワッと目を見開いた。
「……いいか? よし、いいな?」
「なんで乗り気なんだよ……!」
「この問答の時間が一番無駄だからだ! どうせお前のことだからやるんだろ最終的には!」
ド正論過ぎて反論できない。というか確かにやるし。強さと俺の股間を比べたら(比較対象がおかしい)、当然強さだ。画面の汚さは知ったことじゃない。
「でもせめて別の部屋でやろう……」
「あ、ああ……」
俺とマルキムはそこで話を決着させ、ため息をついて立ち上がる。
「……ちょっと別の部屋でやってくる。それで、そのあと冬子とリャンは呼ぶね……」
「ど、どうしたんだ京助。なんだかやつれているが……」
冬子が本気で心配そうな顔をしているが、俺は苦笑いを返すしかない。
隣でシュンリンさんが「ふぇっふぇっふぇ」と笑っている。あの爺さん絶対に楽しんでやがるね。
…………ホント、誰得な展開だよ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ただいま」
「ああ、ちょっと時間かかってたな……ってどうした京助!?」
「は、はは……」
ああ……汚されちゃったよ……汚されちゃったよ俺……。
「詳細に語るのは地の文でも嫌なので簡潔に言います。取りあえず右手だけ魂を出せるようになりました」
「京助、ちょっとメタネタが出てるぞ」
「そもそもこういうのは女の師匠から主人公が色々されてちょっとエッチな展開とかそういう感じが普通じゃないの!?」
「京助それはどういう意味だ! おま、お前マルキムさんと何をした!?」
「キヨタさんキヨタさん! 私はキヨタさんが、下がいいです!」
「リアル腐女子は黙っててもらえませんかね?!」
「キョースケよ、妾は……そうぢゃな、お主が女体化すればよいと思うぞ? やってやろうか?」
「出来るの!? じゃなくて、しなくていいから! そしてだからなんで俺が受けなんだよ!」
「マスター、その……」
「やめて! なんかこう凄く気を使って笑うだけはやめて!?」
取りあえず女子陣を全員捌き、俺はため息をついて突っ伏す。
右手に力を集めると……ブゥン、と黄色いエネルギーが出てくる。
これが魂。俺の新しい力。
「まだキョースケは右手だけだが、すぐに全身に纏うことが出来るようになる。……さ、キョースケ。彼女らに説明してやれ」
にっこりといい笑顔になるマルキム。うん、この笑顔殴りたい。
自分はもう大役を果たしたとばかりに俺の家のテーブルでくつろぎ出したマルキムを思いっ切り睨みつけてから、俺は冬子とリャンに向き直る。
「…………うん、よし。冬子から行こう」
「どうしたんだ……ト〇がラ〇ウに挑む時みたいな顔になってるぞ」
俺の頭の上に死兆星が輝いているらしい。これはツラい。
ともあれ俺たちの戦力増加のためには彼女らが魂を覚えるのは最優先事項だ。羞恥心なんか考えちゃダメだ。
取りあえず俺は冬子をちょいちょいと手招きして俺の部屋へ連れて行く。
「ど、どうしたんだ……?」
「今から魂を目覚めさせます」
「あ、ああ。マルキムさんが言っていた奴だな。その……魂を撃ち込むって言っていたが、痛いのか?」
少し不安そうに尋ねてくる冬子。
俺はどう説明したもんか……と口ごもるけど、取りあえず首を振る。
「痛くは無いよ」
「痛くはないのか。なら何がダメなんだ?」
なんかこう……ね。
コウノトリとかを信じてる小さい子に現実を突き付けなきゃいけない保健の先生の気持ちが分かる気がする。
だが、ここでもじもじしていても始まらない。俺は意を決して冬子の肩を掴む。
「ど、どどどどど、どうした京助!?」
「落ち着いて聞いてね? 冬子。……魂を当てる場所は胸か股間だ。接触によって、魂を冬子の体内に流し込む」
「ふぇ? ……ふぇぁ?」
冬子が壊れた。
「あふぇ……? その、つまり……京助が私の胸に手を置いて……魂を流し込む、と……?」
「そ、そうなるね……」
お互い、顔を真っ赤にする。
しばしの無言。正直、この空気をどうにかする魔法を覚えたい。
永劫に続くかと思われた無言の後、冬子は顔を真っ赤にしたまま……すっと両手を開いて胸をこちらに突き出してきた。
目を閉じて、プルプルと震えている。
「と、冬子……?」
「その……や、やってくれ……京助……。私は……強く、ならなきゃならない。だから、だから……」
「だ、大丈夫なの……?」
「ああ。一思いにやってくれ」
………………。
今日の冬子は少し薄手の白いシャツにパンツ姿。夏場程ではないが初夏くらいの気温はあるので、基本的に薄着だ。
……そして、薄着で少し汗をかいているとうっすら下着の形が見えて――
(っていかんいかん)
俺は首を振って煩悩を打ち消す。大丈夫、冬子は貧乳、だから触っても何も感じない……ッ!
「た、立ったままだと疲れるから座ろうか」
「そ、そうだな」
俺は冬子と一緒に……椅子は一つしか部屋に無いのでベッドに腰掛ける。
「よし、じゃあいくよ」
そう言って俺は躊躇いなく冬子の胸に手を伸ばし、ふに、と掌を当てる。
「んっ……」
……柔らかい。小さいはずの冬子の胸から確かに弾力を感じる。いやむしろ、小さいからこそ直に彼女の体温が伝わってくる。
――太った男の胸と何が違うんで御座ろうね、女子の胸って。
かつての夏、俺の友人であるナイトメアバレットが言っていた台詞だ。当時の俺も違いがよく分からず「だから俺らに彼女なんていらないよね」なんてわけのわからない結論に達していたけど……。
今、この瞬間。自分から本物に触ってみて初めて分かった。全く別物であると。
柔らかくも儚い感覚、ただの脂肪の塊でしかない男子のそれとは違い、まるでマシュマロ。否、極上のプリンのよう。
いや食べ物で例えられるようなレベルじゃない。天使に囁かれるような――
「ん、あんっ……」
……紅潮した顔で、悶えるように身をよじる冬子。物凄くいけないことをしているような感覚、だね。
さっき俺も初めて流し込まれた時は、身体の熱さを感じた。まるで風邪を引いて熱が出た時のようだった。
「あんっ……んんっ……んっ」
……それのせいなんだろうけど、こんなにも火照った顔で艶っぽい声を出されると、そのなんというか……。
悶々としていると、冬子は薄く目を開けて……唐突に、左手の小指、その第二関節の部分をカプッと口に咥えた。
声を我慢するためだろうか。
「んっ……」
ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!
(これは修業のため、これは修業のため、これは修業のため、これは修業のため、これは修業のため、これは修業のため!!!!!!!)
自分の部屋だったことがマズかった。ベッドに座ってこんなことをしているからこう、もうなんか俺の内なる野獣が――
「んはぁっ!」
――しゅぼん! と。
唐突に冬子から黄色いオーラが噴き出す。
このオーラの色は、魂。彼女の魂が覚醒したということだ。
……俺のように右手だけじゃなく、全身から噴き出ている辺り才能の差を感じる。
彼女はいきなりオーラが噴出してビックリしたのか、後ろのベッドに倒れ込んでいる。
「……お、おめでとう、冬子。成功だよ」
「そ、そうか……はぁ、なんか疲れたな」
「そりゃね」
よく見れば冬子はしっとりと汗をかいている。それによって服が彼女の身体に張り付いていて、なんとも艶めかしい。
俺自身もずっと魂を出していて疲れたから彼女の横に転がると、同じタイミングで俺の方を見ていた彼女と目があった。
にこっと笑う冬子を見て――
(煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散!!)
――ああくそ、心臓の鼓動が止まらない。
ちなみにお昼ご飯は冬子が作ったサンドイッチを皆で食べたよ。とてもおいしかった。
「さて、じゃあまずは魂の修行からだ」
食後のコーヒーを飲んでいると、マルキムがそう切り出した。
魂――覇王やマルキムが使うエネルギーで、基本的には獣人族が使うものらしい。あの黄色いエネルギーだね。
マルキムは腕に淡い黄色の光を生み出して、俺達に見せつけてくる。
「この魂は何が出来るかというと、まずは身体能力の強化。そして魔法の素養が無くても魔法に物理的な干渉を行うことが出来るようになる」
「どういうこと?」
俺が問うと、マルキムは俺に「なんか魔法を出してみろ」と言ってくる。
なので、俺は小さな風の塊を生み出した。
「いいか? わかってるかもしれないが、魔法を切ったりするのは高等技術だ。魔法は基本的にガードすることは出来ても相殺したりすることは出来ない。要するにノーダメージで防ぐことは出来ないってことだな」
そう言ってマルキムが魂を使っていない方の手で風の塊に触れると、バシンと弾かれる。冬子も似たように触るけど、やっぱり弾かれた。
「……魔法なんて初めて素手で触ったが、手が痺れるな」
「まあ、風を弾丸サイズに圧縮してその場にとどまらせてるわけだからそれなりにエネルギーはあるよ」
俺が冬子にそう言うと、マルキムはコクリと頷いて今度は魂を纏っている方の手で風の塊に触れた。
「だが、魂を使うと」
すると弾かれた先ほどとは違い、ぐしゃり、と握りつぶされてしまった。
俺と冬子は素直に驚き、リャンは感心した表情で見つめている。
「こんな風にな。勿論、魔法の威力が高ければこの限りじゃないが……うまくやればノーダメージで魔法をやり過ごすことも可能だ」
「なるほど……覇王が俺の爆撃を防いだのもこれのせいか」
あの時、どういうわけか覇王に俺の魔法が一切通用しなかったのはこういう理屈か。
「キョースケの魔法の威力は決して低いわけじゃねえ。SランクAGでも防げる奴は少ないし、無傷でいられる奴なんざオレの知る限りいねぇ。だが魂を使えば無傷で迎撃することは一応出来るってわけだ」
「そして付け加えるならばのぅ」
カラン、とアイスコーヒーを置いたキアラがニッと笑う。
「お主の魔法はまだ伸びる余地があるということぢゃ。それも十分すぎるほどのぅ」
「ふぇっふぇっふぇ。伸びしろの塊のような男じゃな、ぬしゃは」
楽しそうなキアラとシュンリンさん。心なしかマルキムも楽しそうだ。
冬子はジッとマルキムの纏っている魂を見つめると、ポツリと呟く。
「これは誰でも使えるものなんでしょうか」
「誰でも、ってわけにはいかねえな。やっぱりある程度以上の身体能力は必要だ。それ以上に必要なのは――意志の強さだ」
意志の強さ。
なるほどたしかに、今まで見た魂を使える人たちは皆意思が強そうだ。
「ワシャは残念じゃが身体能力が足らんでの。魂は使えんのじゃ。しかしぬしゃたちなら問題あるまい」
「ああ。そこの獣人の嬢ちゃんがギリギリってところかな」
獣人族として基礎身体能力が高いリャンでもギリギリか。そうとうハードルが高いみたいだね、魂を会得するのは。
「でも、それならセブンとかアトラとかなら十分会得出来そうだけど、彼らも使えるの?」
「アイツらはそもそも魂がどういうものかすら知らねえはずだよ。オレが教えてねえからな」
「その言い方だと、マルキム以外の人族は魂を知らないの?」
「そうだ。オレは師匠に教えてもらったから知ってるが、そもそも魂は獣人族の技術だ。戦場で獣人族が使うのを見たことがある奴等はいるだろうけどな」
ふむ、そもそも獣人族の技術だったのか。他の人族が使っていないのも納得かな。
「獣人族と人族の溝は深い。魂を使って戦うということは獣人族の仲間と思われかねぇからな。意図的に隠してたってわけだ。このことを知っているのはシュンリン爺さんとアルくらいのモンだ」
なるほど。
「ふぇっふぇっふぇ。マルキムはいつも『職スキル』じゃと言って誤魔化しておったの」
「ということは、広めればSランクAGくらいの人たちは使えるようになるってことかな」
「いやー、どうだろうか」
そう言ってマルキムが首をひねる。正直、あんな化け物と戦うのだからこちらの化け物も可能な限り強化しておきたい。
そう思って尋ねたのだけど、マルキムは渋い顔だ。
「さっきも言ったが、これは獣人族の技術だ。これを伝えることによってオレたちが獣人族の内通者とでも思われたら最悪だ」
「その可能性はあるのか……」
「充分すぎるほどにあり得る。……言っておくが、獣人族に対してそこまで悪感情を抱いていない人族の方が珍しいんだからな?」
「そうですよ~」
お茶のお代わりを持ってきてくれたマリルが、よいしょと俺たちのいるテーブルにつく。
「理由はいろいろありますが、やっぱり一番は『奴隷狩り』でしょうね。言いにくいですが、亜人族……えっと、獣人族でしたね。獣人族の国に拉致されて奴隷とされてしまった方の数は魔族の国に連れ去られた人数よりも一つ桁が違うんですよー」
「獣人族は魔法が使えない奴が多い……というか、基本的に使えん。だから奴隷の数が他の国に比べて圧倒的に多いんだ。オレたちが魔法で代用できることを、あいつらは奴隷でやっている。……い、いい悪いは別として、それが事実だ」
マルキムがチラリと気まずそうにリャンの顔を見る。やはり獣人族を悪く言われた風だからか。
しかしリャンは別に気にしたことも無さそうにお茶を飲んでいる。
「ふぅ……美味しいですね、食後のお茶は」
のんびりとしたことを言ったリャンはお茶を置くと、表情はそのままで口調のみ真剣になって話し出した。
「獣人族そのものに対する悪評が広まること自体は確かにあまり好ましくありませんが、事実ですので気にすることでもありません。そもそも、多かろうが少なかろうが、奴隷を使っている事実に変わりはありませんので、五十歩百歩です」
人族も奴隷を使っているうえに、奴隷狩りもしているから変わりないと。
まあ、俺もそう思うよ。奴隷なんて無くなればいいと思うし。
現在(一応)奴隷という身分にあるマリルは苦笑いして「そうですねー」と同意する。
「……話がそれたな。結局のところ、魂はここだけの秘密ってことだ。バレたら『職スキル』とでも言っておけ。そんじゃ具体的な修行方法について説明していくぞ」
マルキムはそうまとめたけど、どこか悲し気な表情だった。彼も、奴隷狩りに関してはそんなにいい思いを持っていないだろうから――
「というかそもそも、アイツらだとこの最初の段階が出来ないと思うんだよな」
「最初の段階?」
マルキムに問い返すと、彼は苦笑いしながら頷いた。
「その……だな、若干言いづらいんだが……まあ、言おう。魂をお前らに撃ち込み体内の魂を呼び起こすんだ。……その時に、ちょいと触りにくい場所から撃ち込まなきゃならんのだ。ので、まずはキョースケに撃ち込む。そしてキョースケが女子たちに撃ち込んでくれ」
なんか変な感じだね。
「そんなすぐに出来るものなの?」
「ああ、魂の撃ち込みは体内の魂を呼び起こすための呼び水だからな。というか撃ち込むというよりは沁み込ませるって感じだからな。やり方さえ分かれば初心者でも出来る。……ただ、ホント撃ち込む場所が特殊なだけで」
何故か凄く言いよどむマルキム。そんなにマズい場所なんだろうか……? ああ、もしかして首とか頭みたいな一歩間違えたら致命傷になりかねない部分とか。
いや、それにしては初心者でも出来るってのが不思議だね。
「……マルキム、大丈夫。覚悟は出来てるから」
「そ、そうか……。よし、お前が覚悟できているなら、いいだろう」
そう言ってマルキムが耳元に口を寄せてくるので、俺も彼に近づく。
「いいか? 魂を撃ち込む場所は……股間だ」
……………………。
………………。
「ちなみに女性の場合は胸部か股間だ」
「どうなってんだよその継承方法!?」
「いや、仕方が無いだろ! 魂の経絡がその辺に最も集まっていてだな……」
「だとしても限度がある! ……そりゃ確かにセブンとかはやりたがらなそう」
余程の信頼関係が無いと無理だ。そんな男にとって最大の急所を差し出さなきゃいけないなんて。
冬子たちは聞こえていなかったからか頭の上に「?」を浮かべている。
「………………え、それは俺がやるの?」
ひそひそとなるべく彼女らに聞こえないように話す。
「お前はオレが彼女らの胸に触るのを許容できるのか? 少なくとも彼女らは嫌がると思うぞ」
そりゃそうだけど。
「でも俺がやるのも……っ!」
「いや、だが他に誰がやるんだ。オレかお前だぞ」
…………いやそうなんだけどさ。
「そんなに簡単なの、それ」
「ああ。相手の魂が開くまでその部分に魂を当て続けるだけだからな」
え、一瞬とかじゃないの? ……そういや、沁み込ませるとかなんとか。
「つ、つまり俺の魂が開くまでマルキムは俺の股間を触りっぱなし?」
「…………言葉にすると酷いが、まあその通りだ。オレの場合はほら、師匠に寝ている間にされていたらしい」
いや知らんけども。っていうか、それはそれで色々ヤバくない?
「ガチムチのハゲと黒髪の細マッチョの絡みとか誰得だよ……」
マルキムの方は一定の層に需要があるのかもしれないけど、俺はフツメンだ。ぶっちゃけ需要があるとは思えない。
「仕方が無いだろ……お前、覚悟は出来てるって言ってたじゃねえか……」
そりゃそうだけど……!
流石に長い時間股間を触られる覚悟はしてない!
「意思の強さが必要だって言っただろ」
「そういう方向で!?」
予想の斜め上過ぎてなかなか覚悟が決まらない。
額を押さえてため息をつくと、マルキムは先に覚悟を決めたのかクワッと目を見開いた。
「……いいか? よし、いいな?」
「なんで乗り気なんだよ……!」
「この問答の時間が一番無駄だからだ! どうせお前のことだからやるんだろ最終的には!」
ド正論過ぎて反論できない。というか確かにやるし。強さと俺の股間を比べたら(比較対象がおかしい)、当然強さだ。画面の汚さは知ったことじゃない。
「でもせめて別の部屋でやろう……」
「あ、ああ……」
俺とマルキムはそこで話を決着させ、ため息をついて立ち上がる。
「……ちょっと別の部屋でやってくる。それで、そのあと冬子とリャンは呼ぶね……」
「ど、どうしたんだ京助。なんだかやつれているが……」
冬子が本気で心配そうな顔をしているが、俺は苦笑いを返すしかない。
隣でシュンリンさんが「ふぇっふぇっふぇ」と笑っている。あの爺さん絶対に楽しんでやがるね。
…………ホント、誰得な展開だよ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ただいま」
「ああ、ちょっと時間かかってたな……ってどうした京助!?」
「は、はは……」
ああ……汚されちゃったよ……汚されちゃったよ俺……。
「詳細に語るのは地の文でも嫌なので簡潔に言います。取りあえず右手だけ魂を出せるようになりました」
「京助、ちょっとメタネタが出てるぞ」
「そもそもこういうのは女の師匠から主人公が色々されてちょっとエッチな展開とかそういう感じが普通じゃないの!?」
「京助それはどういう意味だ! おま、お前マルキムさんと何をした!?」
「キヨタさんキヨタさん! 私はキヨタさんが、下がいいです!」
「リアル腐女子は黙っててもらえませんかね?!」
「キョースケよ、妾は……そうぢゃな、お主が女体化すればよいと思うぞ? やってやろうか?」
「出来るの!? じゃなくて、しなくていいから! そしてだからなんで俺が受けなんだよ!」
「マスター、その……」
「やめて! なんかこう凄く気を使って笑うだけはやめて!?」
取りあえず女子陣を全員捌き、俺はため息をついて突っ伏す。
右手に力を集めると……ブゥン、と黄色いエネルギーが出てくる。
これが魂。俺の新しい力。
「まだキョースケは右手だけだが、すぐに全身に纏うことが出来るようになる。……さ、キョースケ。彼女らに説明してやれ」
にっこりといい笑顔になるマルキム。うん、この笑顔殴りたい。
自分はもう大役を果たしたとばかりに俺の家のテーブルでくつろぎ出したマルキムを思いっ切り睨みつけてから、俺は冬子とリャンに向き直る。
「…………うん、よし。冬子から行こう」
「どうしたんだ……ト〇がラ〇ウに挑む時みたいな顔になってるぞ」
俺の頭の上に死兆星が輝いているらしい。これはツラい。
ともあれ俺たちの戦力増加のためには彼女らが魂を覚えるのは最優先事項だ。羞恥心なんか考えちゃダメだ。
取りあえず俺は冬子をちょいちょいと手招きして俺の部屋へ連れて行く。
「ど、どうしたんだ……?」
「今から魂を目覚めさせます」
「あ、ああ。マルキムさんが言っていた奴だな。その……魂を撃ち込むって言っていたが、痛いのか?」
少し不安そうに尋ねてくる冬子。
俺はどう説明したもんか……と口ごもるけど、取りあえず首を振る。
「痛くは無いよ」
「痛くはないのか。なら何がダメなんだ?」
なんかこう……ね。
コウノトリとかを信じてる小さい子に現実を突き付けなきゃいけない保健の先生の気持ちが分かる気がする。
だが、ここでもじもじしていても始まらない。俺は意を決して冬子の肩を掴む。
「ど、どどどどど、どうした京助!?」
「落ち着いて聞いてね? 冬子。……魂を当てる場所は胸か股間だ。接触によって、魂を冬子の体内に流し込む」
「ふぇ? ……ふぇぁ?」
冬子が壊れた。
「あふぇ……? その、つまり……京助が私の胸に手を置いて……魂を流し込む、と……?」
「そ、そうなるね……」
お互い、顔を真っ赤にする。
しばしの無言。正直、この空気をどうにかする魔法を覚えたい。
永劫に続くかと思われた無言の後、冬子は顔を真っ赤にしたまま……すっと両手を開いて胸をこちらに突き出してきた。
目を閉じて、プルプルと震えている。
「と、冬子……?」
「その……や、やってくれ……京助……。私は……強く、ならなきゃならない。だから、だから……」
「だ、大丈夫なの……?」
「ああ。一思いにやってくれ」
………………。
今日の冬子は少し薄手の白いシャツにパンツ姿。夏場程ではないが初夏くらいの気温はあるので、基本的に薄着だ。
……そして、薄着で少し汗をかいているとうっすら下着の形が見えて――
(っていかんいかん)
俺は首を振って煩悩を打ち消す。大丈夫、冬子は貧乳、だから触っても何も感じない……ッ!
「た、立ったままだと疲れるから座ろうか」
「そ、そうだな」
俺は冬子と一緒に……椅子は一つしか部屋に無いのでベッドに腰掛ける。
「よし、じゃあいくよ」
そう言って俺は躊躇いなく冬子の胸に手を伸ばし、ふに、と掌を当てる。
「んっ……」
……柔らかい。小さいはずの冬子の胸から確かに弾力を感じる。いやむしろ、小さいからこそ直に彼女の体温が伝わってくる。
――太った男の胸と何が違うんで御座ろうね、女子の胸って。
かつての夏、俺の友人であるナイトメアバレットが言っていた台詞だ。当時の俺も違いがよく分からず「だから俺らに彼女なんていらないよね」なんてわけのわからない結論に達していたけど……。
今、この瞬間。自分から本物に触ってみて初めて分かった。全く別物であると。
柔らかくも儚い感覚、ただの脂肪の塊でしかない男子のそれとは違い、まるでマシュマロ。否、極上のプリンのよう。
いや食べ物で例えられるようなレベルじゃない。天使に囁かれるような――
「ん、あんっ……」
……紅潮した顔で、悶えるように身をよじる冬子。物凄くいけないことをしているような感覚、だね。
さっき俺も初めて流し込まれた時は、身体の熱さを感じた。まるで風邪を引いて熱が出た時のようだった。
「あんっ……んんっ……んっ」
……それのせいなんだろうけど、こんなにも火照った顔で艶っぽい声を出されると、そのなんというか……。
悶々としていると、冬子は薄く目を開けて……唐突に、左手の小指、その第二関節の部分をカプッと口に咥えた。
声を我慢するためだろうか。
「んっ……」
ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!
(これは修業のため、これは修業のため、これは修業のため、これは修業のため、これは修業のため、これは修業のため!!!!!!!)
自分の部屋だったことがマズかった。ベッドに座ってこんなことをしているからこう、もうなんか俺の内なる野獣が――
「んはぁっ!」
――しゅぼん! と。
唐突に冬子から黄色いオーラが噴き出す。
このオーラの色は、魂。彼女の魂が覚醒したということだ。
……俺のように右手だけじゃなく、全身から噴き出ている辺り才能の差を感じる。
彼女はいきなりオーラが噴出してビックリしたのか、後ろのベッドに倒れ込んでいる。
「……お、おめでとう、冬子。成功だよ」
「そ、そうか……はぁ、なんか疲れたな」
「そりゃね」
よく見れば冬子はしっとりと汗をかいている。それによって服が彼女の身体に張り付いていて、なんとも艶めかしい。
俺自身もずっと魂を出していて疲れたから彼女の横に転がると、同じタイミングで俺の方を見ていた彼女と目があった。
にこっと笑う冬子を見て――
(煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散!!)
――ああくそ、心臓の鼓動が止まらない。
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