異世界なう―No freedom,not a human―
114話 たっぷりと、なう
「そういえば気になったんですが」
三人でアンタレスへと戻りながら冬子が呟いた。
「京助は大丈夫でしょうか」
「別にAランク魔物くらいにやられるたまではあるまい」
「私もそう思っていますが……万が一ということもありますし。電話でもしてみませんか?」
京助の実力を疑ってはいないが、この前の覇王の例もある。離れて行動したのは不用心だったのではないかと今さら思ったのだ。
「トーコさんも、私もキアラさんも覇王レベルの強さを持つ人がマスターと戦い始めたら気配で分かりますよ。マスターが本気になっていないということはそこまでの脅威は無いということです」
「そうぢゃ。もしもそんなことになっておったら真っ先に飛び出しておる」
なかなかドライなことを言う二人。しかし……そう言いながら、ピアがケータイを取り出していた。何だかんだ言って心配なのだろう。
「ただ、まあ……心配は心配ですね」
少し憂いを帯びた顔。見ればキアラも似たように少し顔を曇らせていた。
「そうぢゃな」
ふぅと心配そうなため息。二人とも素直じゃない――
「ああ、やっぱり二人も京助のことが心配に――」
「ええ、本当に心配です」
「そうぢゃな、京助が今頃女を押し倒しているかもしれん」
「ってなんでそうなる!?」
「マスターも年頃ですからね」
「いや一応京助の安否を心配しろ!?」
思わず口調が荒くなる。というかピアに至っては仮にも好きな相手ではないのか。
なんて思っていると、ピアはひょいと肩をすくめてケータイを突き出してきた。
「トーコ、ハッキリ言ったらどうですか」
「な、なにをだ」
「本当はマスターの安否なんかどうでもいいんでしょう?」
「な……わ、私は本気で京助のことが心配で――」
「ほっほっほ。トーコよ、ピアはこう言いたいのぢゃ」
キアラがにたりと笑って冬子の耳元に口を寄せてくる。
「心配と――そう言って、本当はキョースケの声が聞きたいだけなんぢゃろ?」
「な、なななんあななな何をバカなことを!?!?」
「乙女ぢゃのう」
「ですねぇ」
うんうんと頷く二人。
「…………わ、私は別に……その……」
「ほれほれ……素直になるんぢゃ」
「ええ……認めれば楽になりますよ……?」
ガシッと肩を組まれながらそんなことを囁かれる。
「わ……私は……」
「かけたいんぢゃろ……?」
「ええ……自らの欲望に忠実になればいいんですよ……」
「やりたいと言ったらどうぢゃ……?」
「う、うう……」
……なんで仲間に電話をかけたいだけなのに、こんなにもいけないことをしている気分にならなくちゃならないのだろう。
「そんなこと言うなら私がかけますが? そしてマスターに『その……ま、マスターの声が聞きたくって……』と超可愛いボイスで言います。これでマスターの心は私の物です」
「いやピアの中の京助はどれだけチョロいんだ」
「ピアよ、チョロイン代表に言われておるぞ?」
「逆に見習いたいです」
「だ、誰がチョロインだ!」
はぁ……と大きくため息をついて、アイテムボックスから自分のケータイを取り出した。
「……べ、別に、その、京助の声が聞きたいとかじゃないです。単純に心配だからかけるんです」
「意地っ張りぢゃのぅ」
「これがなかなか進展しない理由の一つですよね、間違いなく」
「う、うるさいですよ!?」
そう言いながら冬子は京助のケータイに電話をかける。
……後ろ2人が生暖かい眼で見守っているのは無視して。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
俺が寝てしまったティルナをどうしようかと思案していると、ケータイに電話がかかってきた。
……電気を使って無いのに電話って言ってもいいのだろうか。
「まあいいか。もしもし、冬子?」
『もしもし。ああ、良かった。無事みたいだな』
「そりゃ俺がAランク魔物くらいに後れを取るとでも?」
『はは。まあ無事なら良かった。ただほら、京助は一人だからな。少し心配になったんだ』
冬子の安堵する声。ふむ、まあ心配をかけたなら謝った方がいいかな。
「ごめんね、冬子。心配かけたみたいで」
そう言いながら活力煙の煙を吸い込んで、紫煙をくゆらせる。下に寝転がっているティルナのことをどうにかしないと――
『良かった。そうそう、キアラさんが訊けと言っていたんだが――』
「うん?」
『――女に迫られたりしていないよな?』
「はうぁっ?」
ぽろっ、と活力煙を地面に落としかけて慌ててキャッチする。だいぶ情けない声が出てた気がするけど……その……?
(え、いや、その、体は男だからセーフ!?)
『……京助?』
おっと、何故か冬子の声が一段階低くなった。ナンデダロウネ。
(怒っテルンジャネェカァ!?)
(うん、わかってるよ?)
ヨハネスに心の中で突っ込みながら、なんで冬子に怒られなくちゃならないんだと思い直す。
そもそも、俺は何も言っていないのだからバレるはずもないのだし。バレたところで別に問題はないわけだし。
『……京助。何か隠してないか?』
「いや? 特に何も?」
『そうか……? まかり間違っても色仕掛けをかけられたりしていないよな?』
なるほど、冬子はエスパー的な何かに目覚めたらしい。
とはいえここで心を乱す程俺も愚かじゃない。いつも通り冷静な対応を――
『キョースケ。言っておくが、妾は全部見ていたからの?』
「だ、だったら俺が押し倒されただけって分かるでしょ……ってしまっ」
『京助!?』
「OK、冷静に。落ち着こう冬子。俺たちには言葉がある。言葉があるということはつまり意思の疎通が出来るということだ。文明的な現代人としては話し合いで解決するべきだ。そうは思わない?」
『マスター。話は聞こえていました。……その、別に構いませんがもっと慎みというか』
リャンまでなんか言い出した。
『京助が難しそうな言葉を使う時は何かを誤魔化す時だ』
うん、ヤバいねこれ。何がヤバいのか分からないけど事情を説明しないと許してもらえなさそうな空気だ。
「あー……じゃあ、帰ったら説明するよ。言っておくけど、俺今回も悪くないからね?」
『む……まあ、分かった』
納得してくれたらしい冬子の声。俺は悪くないのに浮気した亭主の気分だ。取りあえず仕事を完遂させよう。
「ま、仕事中だから一旦切るよ。ちなみに領主と会ったんだけどさ」
『ああ、新しい領主と会ったのか。どんな人だった?』
「とんでもない食わせ者だね。今まで戦ったことが無い人種だ」
味方なら頼もしいんだろうが――アレが敵に回るとなるとどうなるのか予想もつかない。色仕掛けをしてきたことも含めてね。
「ま、詳しいことは後でね」
『ああ。……たっぷりとな』
流れてなかったかー。
俺はケータイを切り、ゴーレムに近づく。せっかく魔魂石を壊さないように倒したんだからいただいておかないとね。
そんなことを思いながら魔魂石を取り出す。少し大きめな傷がついているけど、魔力が漏れている様子は無い。致命的な傷じゃなかったのかな。
なんて思いながら魔魂石を検分していると「うむ……」とティルナが目を覚ました。
「ああ、起きたんだね」
……のんびり見てないで魔魂石をアイテムボックスにしまっちゃえば良かったかな。
「えっと……キョースケ様。私は?」
「ハルバードゴーレムの攻撃の余波で気絶してたんだよ。ごめんね、守り切れなくて」
サラッと嘘をついて手を差し伸べると、彼女は少しだけぽかんとした顔をしてから俺の手を取った。
「でも倒してくださったんですよね、私を守りながら」
「……まあ、そうなるのかな?」
嫌な流れだ、そう思いながら俺は手を振りほどこうとしたところで――逆にグッと手を掴まれてしまった。
「ありがとうございます、なんとお礼を言ったらいいのか」
「それが俺の仕事だから気にすることじゃない。それよりも手を放してくれると嬉しいかな?」
「いえ、お礼がしたいので――」
「いいから」
俺は少し乱暴に振りほどき、魔魂石を指さす。
「それよりも、アレはこちらでもらっていいの?」
討伐依頼で採取できた魔魂石をどうするかは、依頼主によって異なる。ギルドが出しているクエストであれば基本的に自分の物だが、依頼主によっては魔魂石が必要で討伐クエストを出した場合もあるので魔魂石をどうするかについては依頼主に直接尋ねることが推奨されている。
……もっとも、今回は依頼時に何も言われてないから依頼主が知らないところで「壊しちゃった☆」と言えばぎってもバレないんだけど。あんまり行儀がいいことじゃないけどね。
「ああ、ハルバードゴーレムの魔魂石ですね。……Aランク魔物の魔魂石は貴重です、こちらで引き取ってもよろしいですか?」
残念、いい金になるのに。
「……いいよ。なかなかいい具合に採れたと思うんだけど」
「ええ、傷一つありません」
「?」
結構大きめの傷がついてるのに……傷一つない?
もしかして、傷がついていることを知っていたのかな?
「……まあいいか」
俺は活力煙を咥えて火をつける。煙を大きく吸い込んで吐きだすと、ほんの少しだけ煙が揺れた。……風が吹いたね。
「ティルナ、領主には会いに行った方がいいかな?」
「いえ、私から報告しておくので大丈夫でございます。お疲れ様でした」
「ん。……じゃあ、俺は行くね。それとも護衛が必要かな?」
「最低限の自衛は出来ますのでご安心ください」
「そう。じゃあ行くね」
そう言って俺は『三毛猫のタンゴ』に向かって歩き出す。活力煙の煙をくゆらせながら、周囲の気配に注意しつつ。
――誰かが押し倒してくるかもしれないからね。
~~~~~~~~~~~~~~~~
取りあえずそのまま俺はAGギルドまで来ていた。充分距離をとってからは透明化して空を駆けたけど。
ここで冬子たちと合流してから――マリルの問題に着手しよう。
冬子たちはギルドの中にいるらしいので、さっさと中に入っ――
パキン!
「――――――――――ッ!?」
――指輪によって生み出された防御壁が破られた。やっと魔力を感じることが出来た、誰かに狙撃された――!?
(まずい、どこから? いや、まず防御を――)
(振り向クナッ! 右後方、首筋の後ろに風を纏った指を左カラ右に払エ!)
どういう意味だ――とか考える暇も無く、俺はヨハネスに言われるままに指で払う。するとちょうど人差し指と中指で何かを挟むことに成功し、それを思いっ切り打ち払うことでギリギリ逸らすことに成功した。
(カカカッ……ヤベェゼ、キョースケ)
(分かってる、にしてもヤバいね)
俺の索敵半径は0.5キロ。覇王と戦って以降は魔力を『視』る眼で常に周囲を警戒していた。しかしそれですら気づけなかった。
今払ったのは――恐らく、矢。しかし魔力で構成されているように見える。これほどの威力の矢を撃ちだしているのに魔力が一切使われていないとは思えない。つまりこの矢は、俺が感知できる0.5キロ圏内の外から撃たれたものであると考えられる。
「ヨハネス、矢の方向は」
(カカカッ、右後方34.5度ダ)
俺は人差し指に風を集める。索敵半径内に敵がいるのなら確実に撃ち抜ける。そうでなくとも、「撃たれるのではないか」と構えている今なら、0.5キロ先から来る矢なんて打ち落とすことが出来る。
矢がさらに数発飛んでくるが、俺は周囲の人に当たらないように風で弱めつつ逸らし射手のいる場所を探す。
「こんな街中で攻撃をしかけてくるってのは――魔族じゃなさそうだね」
かと言って獣人ってことは無いだろう。あの矢は明らかに魔力由来だ。となると人族、しかも腕前からしてAランク以上か。
今度は十数発の矢が――先ほどの倍以上の速度で飛んできた。
「――ッ!? ハッ!」
魔術は間に合わない。裂帛の気合と共に、槍だけで全てを弾く。ギリギリだった。これ以上の速度でこられたら――
(チッ! キョースケ!)
「分かってる!」
――槍を俺の前で回転させて円状の壁を作り出して矢を弾く。しかしこれじゃあ弾く場所が選べない、周囲に被害が出てしまう。
「飛んで索敵を――」
「っと、落ち着け」
雨あられと降ってきた矢を何とか防ぎ、足に風を纏って空へ駆けだそうとしたところで――後ろから肩を叩かれた。
「ッ!?」
殺気だっていた俺が思わず攻撃しようとしたところで――それがギルドマスターであったことに気づく。
「……何か知ってるんですか?」
「ああ、犯人はSランクAGや。そろそろ来ると思うで」
SランクAGは最初に喧嘩を売らなくちゃならないっていう決まりでもあるんだろうか。
けどSランクAGか……と思って、そういえば覇王の一件以降、アンタレスに派遣されたとかなんとか言ってたね。
「たしか……覇王が来たって件を受けて来たっていう」
「せや。――来たで」
ギルドマスターがそう言った瞬間、ふわりと俺とギルドマスターの前に真っ黒なマントを羽織った男が降り立った。
その男が立ち上がると、マントが背中にある鎧のような部分にしまわれた。収納式マントなんだ、便利だね。
黒くタイトなズボンに(今はパンツって言うんだっけ? ズボンがパンツならパンツはなんry)、黒いノースリーブのこれまたぴちっとしたシャツ。その上から何故か黒いワイシャツを羽織りだした。……いやどんだけ黒いの。中学生が考えた「ぼくのかんがえたさいこうにかっこいい主人公」かよ。キ〇トをリスペクトしすぎでしょ。
……志村は黒いコートだったけど、こいつも異世界人かな?
なんせ――髪の色と瞳の色まで黒だ。しかもアジア系と西洋系のハーフみたいな顔。
「お初お目にかかる、ミスター京助。私はアトラ・ブラックフォレスト。SランクAGで一応『黒のアトラ』と呼ばれている。しがない弓兵だが、よろしく頼む」
今――俺の名前を『キョースケ』ではなく『京助』と発音した。こいつマジで異世界人なんじゃ……?
なんて俺が思っていると、ギルドマスターがアトラの肩をポンと叩いた。
「というわけで、こいつがギルドから派遣されたSランクAG、『狩人のタロー』や」
「……ギルドマスター、昔の異名で呼ぶのはやめてくれ……。あと、タローもやめてもらいたいのだが……」
ものっすごい苦虫を嚙み潰したような顔になるアトラ。……タロー、か。ますます異世界人なんじゃないかと思うレベルだね。
「じゃあタロー」
「だからタローと呼ばないでいただこうか、ミスター京助」
ジト目をむけられるが、むけたいのは俺の方だ。
なんて思っていると、ギルドの建物の中から冬子たちが出てきた。
「京助! ……まあ、無事だろうな」
「マスターですからね」
「そうぢゃのぅ」
「皆もっと心配してくれていいんだよ?」
薄情じゃないかなって思うんだけど。
「ああ、彼女たちが君のパーティーメンバーか」
タローがそう言うと、いきなりリャンの右手をとって手の甲にキスをしだした。
「?」
リャンがポカンとしていると、さらに今度はキアラの右手の甲に、そして冬子の右手の甲にキスをし出した。
「お初お目にかかる、美しいお嬢さん方。私はアトラ・ブラックフォレスト。いかがかな? 今夜、素敵なディナーでも」
イケメンフェイスで、パチンとウインクしながらそんなことを言いだしたタロー。
冬子は顔を真っ赤に――するかと思いきや、思いっきりタローの手を弾くと、底冷えするような顔で睨みつけた。
「生憎だが――私はそんな尻軽ではない。夜の相手ならほかを探せ」
「私はマスターの物ですので。二、三度死んでから出直してきてください」
「ほっほっほ。そうぢゃの、せめて一人に絞った方が良いぞ? 妾からのアドバイスぢゃ」
三者三様の答えを返すが――タローは堪えた様子も無くフッと口元に笑みを浮かべた。
「では、またの機会に――ところで、ミスター京助」
「……何?」
「この槍は何だね?」
どうも俺が首筋に当てた槍がお気に召さないらしい。
俺は槍を押し当てたまま、肩をすくめる。
「俺の仲間に手を出さないでくれる?」
「フッ……女とは奪い、落とすものだ。君にとやかく言われる筋合いは無いな」
「あっそう。……取りあえず、仲良くはなれないみたいだね」
俺は槍を降ろし、活力煙に火をつける。取りあえず落ち着かないとね、相手はSランクAGだ。どんな手を持っているかわかったもんじゃない。
「取りあえず……君に話がある。付いて来てもらおうか」
「構わないよ。……ちなみに、あの襲撃になんの意味が?」
「何、ただの戯れさ。ギルドマスターにも話は通していたのでね」
戯れで殺されかけちゃたまったもんじゃないよ。
そう言って建物内に入っていくタロー。
「……じゃ。また行ってくるからもう少しだけ待ってて」
俺が三人にそう言うと――冬子が鋭い瞳を俺に向けてきた。これ……彼に怒っているのかと思ったら、戦闘モードになってるね。
建物の中に入ろうとした俺の耳もとにこそっと口を近づけてきた。
「京助、気を付けろよ」
「そりゃ気を付けるけど――」
「彼は最大限警戒していた私とピアの利き手をとって、あまつさえキスまでしてきた。相当な達人だぞ。見た目はあんなに若いのに」
――なるほど、冬子が警戒するってことは……武術系か。そっち方面には俺は疎いんだよね。分からなくは無いけど。
武術を嗜んでいる人間は、理にかなった動きをする。戦闘を繰り返すことによって身に着けたソレとはまた違う、無駄のない動き。俺やマルキム、リャンは戦闘家タイプで、冬子やギルドマスターは武術家タイプだ
さっきギルマスにからかわれていたところからみて、彼の弟子とかだったりしてね。
「分かった、気を付ける」
「ああ。……あと、それは抜きとして……怒ってくれて、嬉しかったぞ」
「へ?」
最後だけボソボソと言った冬子は、何故か今になって顔を真っ赤にしてサッと離れてしまった。
……何だったんだろうか。
取りあえず……さっさと終わらせてマリルの話を進めないと。
三人でアンタレスへと戻りながら冬子が呟いた。
「京助は大丈夫でしょうか」
「別にAランク魔物くらいにやられるたまではあるまい」
「私もそう思っていますが……万が一ということもありますし。電話でもしてみませんか?」
京助の実力を疑ってはいないが、この前の覇王の例もある。離れて行動したのは不用心だったのではないかと今さら思ったのだ。
「トーコさんも、私もキアラさんも覇王レベルの強さを持つ人がマスターと戦い始めたら気配で分かりますよ。マスターが本気になっていないということはそこまでの脅威は無いということです」
「そうぢゃ。もしもそんなことになっておったら真っ先に飛び出しておる」
なかなかドライなことを言う二人。しかし……そう言いながら、ピアがケータイを取り出していた。何だかんだ言って心配なのだろう。
「ただ、まあ……心配は心配ですね」
少し憂いを帯びた顔。見ればキアラも似たように少し顔を曇らせていた。
「そうぢゃな」
ふぅと心配そうなため息。二人とも素直じゃない――
「ああ、やっぱり二人も京助のことが心配に――」
「ええ、本当に心配です」
「そうぢゃな、京助が今頃女を押し倒しているかもしれん」
「ってなんでそうなる!?」
「マスターも年頃ですからね」
「いや一応京助の安否を心配しろ!?」
思わず口調が荒くなる。というかピアに至っては仮にも好きな相手ではないのか。
なんて思っていると、ピアはひょいと肩をすくめてケータイを突き出してきた。
「トーコ、ハッキリ言ったらどうですか」
「な、なにをだ」
「本当はマスターの安否なんかどうでもいいんでしょう?」
「な……わ、私は本気で京助のことが心配で――」
「ほっほっほ。トーコよ、ピアはこう言いたいのぢゃ」
キアラがにたりと笑って冬子の耳元に口を寄せてくる。
「心配と――そう言って、本当はキョースケの声が聞きたいだけなんぢゃろ?」
「な、なななんあななな何をバカなことを!?!?」
「乙女ぢゃのう」
「ですねぇ」
うんうんと頷く二人。
「…………わ、私は別に……その……」
「ほれほれ……素直になるんぢゃ」
「ええ……認めれば楽になりますよ……?」
ガシッと肩を組まれながらそんなことを囁かれる。
「わ……私は……」
「かけたいんぢゃろ……?」
「ええ……自らの欲望に忠実になればいいんですよ……」
「やりたいと言ったらどうぢゃ……?」
「う、うう……」
……なんで仲間に電話をかけたいだけなのに、こんなにもいけないことをしている気分にならなくちゃならないのだろう。
「そんなこと言うなら私がかけますが? そしてマスターに『その……ま、マスターの声が聞きたくって……』と超可愛いボイスで言います。これでマスターの心は私の物です」
「いやピアの中の京助はどれだけチョロいんだ」
「ピアよ、チョロイン代表に言われておるぞ?」
「逆に見習いたいです」
「だ、誰がチョロインだ!」
はぁ……と大きくため息をついて、アイテムボックスから自分のケータイを取り出した。
「……べ、別に、その、京助の声が聞きたいとかじゃないです。単純に心配だからかけるんです」
「意地っ張りぢゃのぅ」
「これがなかなか進展しない理由の一つですよね、間違いなく」
「う、うるさいですよ!?」
そう言いながら冬子は京助のケータイに電話をかける。
……後ろ2人が生暖かい眼で見守っているのは無視して。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
俺が寝てしまったティルナをどうしようかと思案していると、ケータイに電話がかかってきた。
……電気を使って無いのに電話って言ってもいいのだろうか。
「まあいいか。もしもし、冬子?」
『もしもし。ああ、良かった。無事みたいだな』
「そりゃ俺がAランク魔物くらいに後れを取るとでも?」
『はは。まあ無事なら良かった。ただほら、京助は一人だからな。少し心配になったんだ』
冬子の安堵する声。ふむ、まあ心配をかけたなら謝った方がいいかな。
「ごめんね、冬子。心配かけたみたいで」
そう言いながら活力煙の煙を吸い込んで、紫煙をくゆらせる。下に寝転がっているティルナのことをどうにかしないと――
『良かった。そうそう、キアラさんが訊けと言っていたんだが――』
「うん?」
『――女に迫られたりしていないよな?』
「はうぁっ?」
ぽろっ、と活力煙を地面に落としかけて慌ててキャッチする。だいぶ情けない声が出てた気がするけど……その……?
(え、いや、その、体は男だからセーフ!?)
『……京助?』
おっと、何故か冬子の声が一段階低くなった。ナンデダロウネ。
(怒っテルンジャネェカァ!?)
(うん、わかってるよ?)
ヨハネスに心の中で突っ込みながら、なんで冬子に怒られなくちゃならないんだと思い直す。
そもそも、俺は何も言っていないのだからバレるはずもないのだし。バレたところで別に問題はないわけだし。
『……京助。何か隠してないか?』
「いや? 特に何も?」
『そうか……? まかり間違っても色仕掛けをかけられたりしていないよな?』
なるほど、冬子はエスパー的な何かに目覚めたらしい。
とはいえここで心を乱す程俺も愚かじゃない。いつも通り冷静な対応を――
『キョースケ。言っておくが、妾は全部見ていたからの?』
「だ、だったら俺が押し倒されただけって分かるでしょ……ってしまっ」
『京助!?』
「OK、冷静に。落ち着こう冬子。俺たちには言葉がある。言葉があるということはつまり意思の疎通が出来るということだ。文明的な現代人としては話し合いで解決するべきだ。そうは思わない?」
『マスター。話は聞こえていました。……その、別に構いませんがもっと慎みというか』
リャンまでなんか言い出した。
『京助が難しそうな言葉を使う時は何かを誤魔化す時だ』
うん、ヤバいねこれ。何がヤバいのか分からないけど事情を説明しないと許してもらえなさそうな空気だ。
「あー……じゃあ、帰ったら説明するよ。言っておくけど、俺今回も悪くないからね?」
『む……まあ、分かった』
納得してくれたらしい冬子の声。俺は悪くないのに浮気した亭主の気分だ。取りあえず仕事を完遂させよう。
「ま、仕事中だから一旦切るよ。ちなみに領主と会ったんだけどさ」
『ああ、新しい領主と会ったのか。どんな人だった?』
「とんでもない食わせ者だね。今まで戦ったことが無い人種だ」
味方なら頼もしいんだろうが――アレが敵に回るとなるとどうなるのか予想もつかない。色仕掛けをしてきたことも含めてね。
「ま、詳しいことは後でね」
『ああ。……たっぷりとな』
流れてなかったかー。
俺はケータイを切り、ゴーレムに近づく。せっかく魔魂石を壊さないように倒したんだからいただいておかないとね。
そんなことを思いながら魔魂石を取り出す。少し大きめな傷がついているけど、魔力が漏れている様子は無い。致命的な傷じゃなかったのかな。
なんて思いながら魔魂石を検分していると「うむ……」とティルナが目を覚ました。
「ああ、起きたんだね」
……のんびり見てないで魔魂石をアイテムボックスにしまっちゃえば良かったかな。
「えっと……キョースケ様。私は?」
「ハルバードゴーレムの攻撃の余波で気絶してたんだよ。ごめんね、守り切れなくて」
サラッと嘘をついて手を差し伸べると、彼女は少しだけぽかんとした顔をしてから俺の手を取った。
「でも倒してくださったんですよね、私を守りながら」
「……まあ、そうなるのかな?」
嫌な流れだ、そう思いながら俺は手を振りほどこうとしたところで――逆にグッと手を掴まれてしまった。
「ありがとうございます、なんとお礼を言ったらいいのか」
「それが俺の仕事だから気にすることじゃない。それよりも手を放してくれると嬉しいかな?」
「いえ、お礼がしたいので――」
「いいから」
俺は少し乱暴に振りほどき、魔魂石を指さす。
「それよりも、アレはこちらでもらっていいの?」
討伐依頼で採取できた魔魂石をどうするかは、依頼主によって異なる。ギルドが出しているクエストであれば基本的に自分の物だが、依頼主によっては魔魂石が必要で討伐クエストを出した場合もあるので魔魂石をどうするかについては依頼主に直接尋ねることが推奨されている。
……もっとも、今回は依頼時に何も言われてないから依頼主が知らないところで「壊しちゃった☆」と言えばぎってもバレないんだけど。あんまり行儀がいいことじゃないけどね。
「ああ、ハルバードゴーレムの魔魂石ですね。……Aランク魔物の魔魂石は貴重です、こちらで引き取ってもよろしいですか?」
残念、いい金になるのに。
「……いいよ。なかなかいい具合に採れたと思うんだけど」
「ええ、傷一つありません」
「?」
結構大きめの傷がついてるのに……傷一つない?
もしかして、傷がついていることを知っていたのかな?
「……まあいいか」
俺は活力煙を咥えて火をつける。煙を大きく吸い込んで吐きだすと、ほんの少しだけ煙が揺れた。……風が吹いたね。
「ティルナ、領主には会いに行った方がいいかな?」
「いえ、私から報告しておくので大丈夫でございます。お疲れ様でした」
「ん。……じゃあ、俺は行くね。それとも護衛が必要かな?」
「最低限の自衛は出来ますのでご安心ください」
「そう。じゃあ行くね」
そう言って俺は『三毛猫のタンゴ』に向かって歩き出す。活力煙の煙をくゆらせながら、周囲の気配に注意しつつ。
――誰かが押し倒してくるかもしれないからね。
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取りあえずそのまま俺はAGギルドまで来ていた。充分距離をとってからは透明化して空を駆けたけど。
ここで冬子たちと合流してから――マリルの問題に着手しよう。
冬子たちはギルドの中にいるらしいので、さっさと中に入っ――
パキン!
「――――――――――ッ!?」
――指輪によって生み出された防御壁が破られた。やっと魔力を感じることが出来た、誰かに狙撃された――!?
(まずい、どこから? いや、まず防御を――)
(振り向クナッ! 右後方、首筋の後ろに風を纏った指を左カラ右に払エ!)
どういう意味だ――とか考える暇も無く、俺はヨハネスに言われるままに指で払う。するとちょうど人差し指と中指で何かを挟むことに成功し、それを思いっ切り打ち払うことでギリギリ逸らすことに成功した。
(カカカッ……ヤベェゼ、キョースケ)
(分かってる、にしてもヤバいね)
俺の索敵半径は0.5キロ。覇王と戦って以降は魔力を『視』る眼で常に周囲を警戒していた。しかしそれですら気づけなかった。
今払ったのは――恐らく、矢。しかし魔力で構成されているように見える。これほどの威力の矢を撃ちだしているのに魔力が一切使われていないとは思えない。つまりこの矢は、俺が感知できる0.5キロ圏内の外から撃たれたものであると考えられる。
「ヨハネス、矢の方向は」
(カカカッ、右後方34.5度ダ)
俺は人差し指に風を集める。索敵半径内に敵がいるのなら確実に撃ち抜ける。そうでなくとも、「撃たれるのではないか」と構えている今なら、0.5キロ先から来る矢なんて打ち落とすことが出来る。
矢がさらに数発飛んでくるが、俺は周囲の人に当たらないように風で弱めつつ逸らし射手のいる場所を探す。
「こんな街中で攻撃をしかけてくるってのは――魔族じゃなさそうだね」
かと言って獣人ってことは無いだろう。あの矢は明らかに魔力由来だ。となると人族、しかも腕前からしてAランク以上か。
今度は十数発の矢が――先ほどの倍以上の速度で飛んできた。
「――ッ!? ハッ!」
魔術は間に合わない。裂帛の気合と共に、槍だけで全てを弾く。ギリギリだった。これ以上の速度でこられたら――
(チッ! キョースケ!)
「分かってる!」
――槍を俺の前で回転させて円状の壁を作り出して矢を弾く。しかしこれじゃあ弾く場所が選べない、周囲に被害が出てしまう。
「飛んで索敵を――」
「っと、落ち着け」
雨あられと降ってきた矢を何とか防ぎ、足に風を纏って空へ駆けだそうとしたところで――後ろから肩を叩かれた。
「ッ!?」
殺気だっていた俺が思わず攻撃しようとしたところで――それがギルドマスターであったことに気づく。
「……何か知ってるんですか?」
「ああ、犯人はSランクAGや。そろそろ来ると思うで」
SランクAGは最初に喧嘩を売らなくちゃならないっていう決まりでもあるんだろうか。
けどSランクAGか……と思って、そういえば覇王の一件以降、アンタレスに派遣されたとかなんとか言ってたね。
「たしか……覇王が来たって件を受けて来たっていう」
「せや。――来たで」
ギルドマスターがそう言った瞬間、ふわりと俺とギルドマスターの前に真っ黒なマントを羽織った男が降り立った。
その男が立ち上がると、マントが背中にある鎧のような部分にしまわれた。収納式マントなんだ、便利だね。
黒くタイトなズボンに(今はパンツって言うんだっけ? ズボンがパンツならパンツはなんry)、黒いノースリーブのこれまたぴちっとしたシャツ。その上から何故か黒いワイシャツを羽織りだした。……いやどんだけ黒いの。中学生が考えた「ぼくのかんがえたさいこうにかっこいい主人公」かよ。キ〇トをリスペクトしすぎでしょ。
……志村は黒いコートだったけど、こいつも異世界人かな?
なんせ――髪の色と瞳の色まで黒だ。しかもアジア系と西洋系のハーフみたいな顔。
「お初お目にかかる、ミスター京助。私はアトラ・ブラックフォレスト。SランクAGで一応『黒のアトラ』と呼ばれている。しがない弓兵だが、よろしく頼む」
今――俺の名前を『キョースケ』ではなく『京助』と発音した。こいつマジで異世界人なんじゃ……?
なんて俺が思っていると、ギルドマスターがアトラの肩をポンと叩いた。
「というわけで、こいつがギルドから派遣されたSランクAG、『狩人のタロー』や」
「……ギルドマスター、昔の異名で呼ぶのはやめてくれ……。あと、タローもやめてもらいたいのだが……」
ものっすごい苦虫を嚙み潰したような顔になるアトラ。……タロー、か。ますます異世界人なんじゃないかと思うレベルだね。
「じゃあタロー」
「だからタローと呼ばないでいただこうか、ミスター京助」
ジト目をむけられるが、むけたいのは俺の方だ。
なんて思っていると、ギルドの建物の中から冬子たちが出てきた。
「京助! ……まあ、無事だろうな」
「マスターですからね」
「そうぢゃのぅ」
「皆もっと心配してくれていいんだよ?」
薄情じゃないかなって思うんだけど。
「ああ、彼女たちが君のパーティーメンバーか」
タローがそう言うと、いきなりリャンの右手をとって手の甲にキスをしだした。
「?」
リャンがポカンとしていると、さらに今度はキアラの右手の甲に、そして冬子の右手の甲にキスをし出した。
「お初お目にかかる、美しいお嬢さん方。私はアトラ・ブラックフォレスト。いかがかな? 今夜、素敵なディナーでも」
イケメンフェイスで、パチンとウインクしながらそんなことを言いだしたタロー。
冬子は顔を真っ赤に――するかと思いきや、思いっきりタローの手を弾くと、底冷えするような顔で睨みつけた。
「生憎だが――私はそんな尻軽ではない。夜の相手ならほかを探せ」
「私はマスターの物ですので。二、三度死んでから出直してきてください」
「ほっほっほ。そうぢゃの、せめて一人に絞った方が良いぞ? 妾からのアドバイスぢゃ」
三者三様の答えを返すが――タローは堪えた様子も無くフッと口元に笑みを浮かべた。
「では、またの機会に――ところで、ミスター京助」
「……何?」
「この槍は何だね?」
どうも俺が首筋に当てた槍がお気に召さないらしい。
俺は槍を押し当てたまま、肩をすくめる。
「俺の仲間に手を出さないでくれる?」
「フッ……女とは奪い、落とすものだ。君にとやかく言われる筋合いは無いな」
「あっそう。……取りあえず、仲良くはなれないみたいだね」
俺は槍を降ろし、活力煙に火をつける。取りあえず落ち着かないとね、相手はSランクAGだ。どんな手を持っているかわかったもんじゃない。
「取りあえず……君に話がある。付いて来てもらおうか」
「構わないよ。……ちなみに、あの襲撃になんの意味が?」
「何、ただの戯れさ。ギルドマスターにも話は通していたのでね」
戯れで殺されかけちゃたまったもんじゃないよ。
そう言って建物内に入っていくタロー。
「……じゃ。また行ってくるからもう少しだけ待ってて」
俺が三人にそう言うと――冬子が鋭い瞳を俺に向けてきた。これ……彼に怒っているのかと思ったら、戦闘モードになってるね。
建物の中に入ろうとした俺の耳もとにこそっと口を近づけてきた。
「京助、気を付けろよ」
「そりゃ気を付けるけど――」
「彼は最大限警戒していた私とピアの利き手をとって、あまつさえキスまでしてきた。相当な達人だぞ。見た目はあんなに若いのに」
――なるほど、冬子が警戒するってことは……武術系か。そっち方面には俺は疎いんだよね。分からなくは無いけど。
武術を嗜んでいる人間は、理にかなった動きをする。戦闘を繰り返すことによって身に着けたソレとはまた違う、無駄のない動き。俺やマルキム、リャンは戦闘家タイプで、冬子やギルドマスターは武術家タイプだ
さっきギルマスにからかわれていたところからみて、彼の弟子とかだったりしてね。
「分かった、気を付ける」
「ああ。……あと、それは抜きとして……怒ってくれて、嬉しかったぞ」
「へ?」
最後だけボソボソと言った冬子は、何故か今になって顔を真っ赤にしてサッと離れてしまった。
……何だったんだろうか。
取りあえず……さっさと終わらせてマリルの話を進めないと。
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