話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

異世界なう―No freedom,not a human―

逢神天景@小説家になろう

71話 モグラなう

 ふー……と長い息を吐いて剣に意識を集中させる。『刀剣乱舞』は十回斬る度に威力がリセットされてしまうので、こうしていちいちかけ直さないといけないのだ。


「そうか、では仕方ない」


 冬子たちが突っぱねたからか、少し残念そうな顔をした領主が立ち上がり――エネルギーが集まっていく。


「……魔力が集まっていってますデスね」


「ならばその前に!」


 全身の痺れを無視し、『激健脚』を発動する。力を込めて距離をつめようとして――地面が唐突に盛り上がり、そこに足を引っ掛けてしまったせいでバランスを崩してしまった。


「なっ!」


(詠唱していなかったのに――『職スキル』か!)


 冬子は辛うじて転倒するのを防いだが、その隙に逆に間合いをつめられてしまう。見た目に反して、なかなか素早い動きだ。


(リューさんの話では魔法師だったはずだが――クッ)


 腰の入ったパンチが飛んでくる。顔面に飛んできた拳をなんとか防ぐが、重い。ちゃんと鍛えている人間の拳というよりは、単純に身体能力が高いものの拳だ。
 少し後ずさり、体勢を立て直そうとしたところで――眼前に土塊が飛んできた。崩れた体勢でもなんとか剣を振るい――なんとなく予感がしたので『断魔斬』を使うと斬ることが出来た。


「――『断魔斬』で、斬れた……? まさか、魔法?」


「ヨホホ……そうなると、無詠唱で魔法を放っていることになるデスが……」


「その通りだ」


 驚く暇も与えないとばかりに、さらに何発も飛んでくる土塊。リューさんは咄嗟に炎の壁でそれを防ぎ、冬子も『断魔斬』で斬って防ぐ。


「ぐっ……」


 ロクマンから受けたダメージのせいで上手く剣に力が乗らない。変な斬り方をしてしまったせいか手が痺れた。


「ほう、今のを防ぐか。ますます我が愛人に加えたくなった」


 少し嬉しそうな顔の領主。余裕を見せた笑みが気に食わない。


「愛も無いのに愛人か。なかなかに悲しい生き方だな」


 ニヤリと笑って言い返すと、リューさんは苦笑いして杖を構える。


「ヨホホ……さて、詠唱速度がピーシーよりも速いデスね。魔法自体の速度はあまり速くないのですが……。その辺はキョースケさんに似ていますデスね」


 詠唱速度は早いというよりも無詠唱。何も言わずに手を掲げるだけで先ほどから魔法を撃ってきている。逆に言うと、その手を掲げるというアクションは必要なようだ。


「あんな下衆が京助に似ているなんて思いたくはないですが……確かに、京助と同じで無詠唱で魔法を撃っていますね」


 冷静に考えながら、冬子も剣を構える。体は痺れているものの、まったく動けないほどじゃない。
 リューさんも言っていた通り魔法はそこまで速くない。しっかりと見極めながらならば対処はそう難しくはないはずだ。


「はっ!」


 足元に注意しつつ、冬子はもう一度踏み込む。足をとられなければ速度は冬子の方が早い。領主がこちらに向けて手をかざしてきたが、それを無視して『飛斬撃』と『剣蹴激』を同時に放つ。しかし、それらは地面から生えてきた土の壁に阻まれてしまった。


「『大いなる恵みの力よ、魔法使いリリリュリーが……』」


「遅い!」


 リューさんの詠唱の途中で領主の土塊がそれを邪魔するように飛んでいく。リューさんは詠唱が速いと言えど、詠唱をせねばならない。京助の無詠唱は「詠唱するよりは早い」というよりも「詠唱していることに気づかない」ということが利点になっているような感じだがこの領主は違う。リューさんの魔法に後出しで反応している。


「リューさん!」


「ヨホホッ!」


 しかし、リューさんも無詠唱で炎の壁を作り出した。
 火山の噴火のように地面から噴き出す炎の壁が土塊を全て燃やし尽くす。驚く領主と冬子を後目にリューさんは詠唱を始めた。


「『大いなる恵みの力よ、魔法使いリリリュリーが命令する。この世の理に背き、炎の弾を撃ちだせ! ファイヤーボール』!」


 京助がよく使うファイヤーバレットよりも大きく、しかし速度が若干遅い火球が飛び出て領主へと向かっていく。だが、領主の目の前の地面が隆起しすべて防がれてしまう。
 ピーシーのように技で防いだのではなく物量で防いでいる。


「ヨホホ……? さすがに今のを止めるのは面倒デスね」


 苦笑しているリューさん。一見余裕そうだがその額には汗が滲んでいる。
 かくいう冬子もやはり動きが鈍っていることを自覚する。連戦なことと、ロクマンもピーシーもあっさりと倒せるほどに弱い相手ではなかったことのせいで、こうまで苦戦している。
 ふう、と一息いれてからリューさんに問いかける。


「炎の壁を、無詠唱で……?」


「無詠唱ではないデスが……まあ、あれも技術デス」


 ……? まあ、よく分からないけれどもどうにか出来るらしい。
 冬子は少し頭を振って切り替える。今はとにかく領主を倒さねば。


「シッ!」


 自分が前衛になりリューさんに決めてもらうしかない、と考えて踏みこむと、今度は上から土塊が降ってくる。


「『断魔斬』!」


 しかし、いくら威力が高くとも魔法である限りは『断魔斬』で斬れないものはない。土塊を切り裂きさらに突っ込んで行こうと――


「ダメだな、久々だからどうしても加減が分からん」


 ――した、ところで無詠唱で巨岩の熊が四体ほど地面から出てきた。


「ふむ……『ロック・ベアー・クラッシュ』は久々だ。ほれ、いくがいい」


 どうも、領主の魔法らしい。一体一体が相当な大きさを誇っているが……魔法であるならば『断魔斬』で斬れないわけがない。
 冬子はそう思って剣を構えたところで――


「ごふっ!」


 ――地面から唐突に現れた土の槍で吹き飛ばされた。


(岩の熊に、気を取られ過ぎた!)


 みぞおちに当たった土の槍のせいで息が出来ない。しかも吹っ飛ばされた時に背中を強く打ち付けてしまった。
 息が出来ないまま――それでも前を見て体勢を戻そうとしたところで、さらに細かい礫が飛んできて剣を弾かれてしまう。


「トーコさ――グッ!」


 リューさんは炎の壁を生み出して防ごうとしていたが、あの熊はそれでは防げない程の強さだったらしい。威力は削れたものの、完全に衝撃を殺すことが出来ずにリューさんも壁に叩きつけられてしまう。


「このっ!」


 冬子は即座にアイテムボックスから予備の剣を取り出し、襲いかかろうとしていた二体目の巨岩の熊を斬り飛ばす。魔法である以上『断魔斬』の敵ではない。土の槍のダメージは抜けていないが、斬るだけで倒せるならば問題は無い。


「数秒もたせてくださいデス!」


「ああ! おおおおお!!」


 さらに『断魔斬』で斬る。岩の熊は爪を振り下ろしたり噛みついたりといった攻撃はしてこないで体当たりばかりしてくるので軌道だって読みやすい。
 熊自体の威力というか硬さはあったが、『刀剣乱舞』の効果で威力の上がった『飛竜一閃』の敵ではなかった。最後の一体を斬り飛ばしたところで構え直し一息つく。
 そのことを喜ぶ間もなく、領主から土の弾丸や槍が飛んでくるので、それらも剣で防ぐ。


「『大いなる恵みの力よ、魔法使いリリリュリーが命令する。……』」


 リューさんの詠唱が終わるまではまだ守り抜かなければならない!
 冬子はリューさんと領主の間に仁王立ちになり、領主からの全ての攻撃を斬り防ぐ。土塊を剣で斬り、土の槍は突くようにして散らす。
 転がってくる岩石は下から斬り上げ、隆起した地面は踏みつぶす。すべてが魔法だから防げているが、もし『職スキル』だったらどうなっていたことだろうか。
 なんとか時間を稼いでいると、リューさんの詠唱が完了した。


「『この世の理に背き、我が眼前の敵を薙ぎ払い燃やし尽くす、紅蓮の獅子を! ブレイズ・レオ・ファング』!」


 リューさんの眼前に現れる巨大な紅蓮の獅子。先ほどまでの岩の熊よりも圧倒的な存在感を誇っている。
 雄叫びを上げ、獅子が領主へと飛びかかる。ガバッと開けた口から覗く牙はすべてを粉々にしてしまいそうな迫力を感じる。


「ふむ……」


 領主は動けない、これは決まったはずだ――!


「いけ!」


 轟! と獅子が領主を飲み込んだ。骨も残りそうにないくらいの業火……これは殺してしまったかもしれない。


「やったか!」


 思わず口を突いて出た。そして言った瞬間にこうも悟る。
 ――あ、フラグだ、と。
 周囲が焼けこげ、灰すらも燃え尽きているような惨状だが……その中から、ビリビリとした殺気がぶつけられた。


「ヨホホ……効いてないのは、とても、とても困りますデスね……」


 煙が晴れたそこには……岩の壁でリューさんの魔法を防いだ領主がたたずんでいた。当然無傷で。服に煤一つつけずに。


「化け物なのか……ッ!」


 リューさんは息切れなんてものではなくぜぇぜぇと言っている。もう魔力がだいぶ少なくなっているんではないだろうか。


(私も人のことは言えないがな……)


 先ほどまでの攻防でだいぶ体力を使ってしまった。腕を上げて構えるだけで精いっぱいだ。
 しかし、一方の領主は大して疲れた様子もない。先ほどと変わったことと言えば……せいぜい、領主の周りの地面が抉れていることくらいだろうか。


「ふむ、なかなかいいな。さて、そろそろ終わらせようか」


 余裕な領主の声。


(万事休すか……っ!)


 リューさんの前に躍り出る冬子。魔法ならば『断魔斬』で――


「貴様は魔法が効かないんだったな。では」


 ――そう思った瞬間、領主の足元が隆起して領主の身体を高速で押し上げてきた。


(先ほどの高速移動はこれだったのか!)


 剣を構えていても振ることが出来ない。眼では追えても体がついていかない。
 眼前に迫る、領主の拳――


(京助っ!)


 心の中で、京助の名前を呼ぶ。疲れ切った体では、もはや京助を信じることくらいしかできない。
 せめてリューさんを庇うように彼女に蔽いかぶさったところで――


「やれやれ」


 ――ゴッ! と物凄い衝撃音とともに天井から何かが降ってきた。そしてその何かは冬子と領主の間に割り込み、領主の拳を片手で受け止める。
 物凄い衝撃波が辺りに響くが、受け止めた当人はこゆるぎもしていない。
 こんな芸当が出来るのはもちろん――


「京助!」


「遅くなったね、冬子」


 ――もうもうと土煙を上げて 冬子の頼れるヒーローが現れた。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 さて、どういう状況かな。
 目の前にいる男――冬子のことを殴ろうとしていた男が領主、なんだろう。貴族らしく肥え太っているが、運動不足な感じはあまりしない。この拳からもなかなかの力を感じるしね。見かけによらず武闘派なのかもしれない。


「大丈夫? 冬子、リュー」


「ああ、なんとかな」


「ヨホホ……ちょっと、来るのが遅いデスよ?」


「これでも急いで来たんだけどねぇ」


 天井を見上げる。俺はリャンを倒してから、面倒だったので大きな魔力に向かって一直線に床をぶち抜いてきたのだ。
 おかげでショートカットに成功したようで、冬子とリューが無事でよかった。


「ちょっと領主を舐めていたかな」


 俺がため息をつくと、ミシリ、と拳にさらに力が乗った。


「貴様、何者だ?」


 鋭い眼光で俺を睨み据える領主。俺はそれに向かって活力煙の煙を吹きかけた。


「ぬっ」


 険しい顔になる領主。それでも目を閉じないのはさすがと言っておこうか。


「俺の名前はキョースケ・キヨタ。はぐれの救世主だよ」


 そして領主の拳を掴んでいる手に力を籠める。


「よくもまあ……俺の大切な人を傷つけてくれたね」


 体内で魔力が荒れ狂うのが分かる。今にも暴発しそうな怒りを抑え込み、全て魔力へ注ぎ込んでいく。練り上げた魔力を左手に集中させ――


「――ぶっ飛べ」


 エクスプロードファイヤが領主の腹に当たって爆発を起こした。後方へ吹っ飛ぶ領主に向かってさらに炎の弾を叩きこむ。


「『ショットガンファイヤ』」


 小さな炎の弾が高速で領主に迫るが、領主はそれを土塊で相殺する。あれ、無詠唱で撃てるのか……まさか、魔族?


(カカッ! 違ェナァ! アリャァ『職スキル』ダゼェ!)


 なるほど、『職スキル』か。


「無詠唱、とかそんな風な『職スキル』かな?」


 俺は活力煙を咥え直し、煙を吸い込む。どちらにせよ厄介な敵になりそうだ。
 警戒していると、領主は何事も無かったかのように立ち上がって俺に問いかけてきた。


「キョースケと言ったな。何の用があってここに来た。その女どもの仲間か?」


 至極まっとうなことを訊いてくる領主。
 顔を見るとイライラが増すので、俺は少し目をそらしつつ答えた。


「仲間だよ。そして目的は察しの通り、お前が拉致した奴隷たちの解放かな」


「フン……なるほどな。そこにいる二人も強いと思っていたがバックにこんな奴がいたとは」


 領主は納得したかのような笑みを浮かべると、俺に向かって手を差し出してきた。


「どうだ? 私の手駒にならないか。そこにいる二人には断られてしまったんだが……女も金も思うがままだぞ」


「残念だけど、俺はいいかな。それよりも……」


 轟! と俺の周りに風と炎が巻きあがった。渦を巻くように発生したそれらは、俺の怒りを表しているかのようだ。


「俺は、お前にムカついてるんだよね」


 全身の筋肉を一度に連動させたダッシュを使って一瞬で近づくと、そして顔面に思いっきり右こぶしを叩きつける。『天駆』と同じ要領で威力を増させた俺のパンチは領主の顔面に突き刺さり、後方へ吹き飛ばす。
 ゴッ……と放物線を描いて壁に叩きつけられた領主はべちゃりと床にへばりついた。
 領主をボコボコにしたいのはやまやまだけど、それよりも冬子とリューの治療が先だ。特に、リューなんてその……ちょっと、きわどい感じになってるし。
 俺がそう思ってアイテムボックスから回復薬を出したところで、


「キョースケ、お主……大丈夫かのぅ?」


「キアラ」


 俺が空けた大穴からキアラが下りてきた。ふわりと着地すると、領主の方を見る。


「なるほど、この地下空間はそのためぢゃったか」


 領主を見るなり納得したような声を出すキアラ。何か知っているのだろうか。


「何か知ってるの?」


「知っておるも何も、有名ぢゃ。妾はトーコとリューの治療をするでの、ヨハネスに訊くとよい」


「了解」


「それと」


「ん?」


 キアラがさらに神妙な顔になって俺に耳打ちしてきた。


「(ここは空気が薄い。できれば魔法は水を使え)」


「(……了解)」


 たしかに、なんとなく息苦しいと思った。おかげでさっきのエクスプロードファイヤも少し威力が弱まってしまった。


(仕方がない)


 取りあえず使用魔法に関しては……風も大丈夫だろうね、威力も落ちるけど。その辺は仕方が無いと割り切って切り替える。
 冬子たちは心配だけど、キアラが見てくれるなら安心だ。そう思って領主の方へ向くと、領主がむくりと起き上がった。ずっと地面にへばりついているから何しているんだと思っていたら……どうも、ダメージが消えているようだ。


「面倒だね」


 とはいえ神器は最後まで使いたくない。俺は心の中でヨハネスに問いかける。


(あれ、どんな『職スキル』?)


 俺が問うと、間伐入れずにヨハネスが答えてくれた。


(カカッ! アレは『土竜』ダナァ!)


(モグラ?)


 モグラとは……変な能力名だな。


(『土術師』系の魔法職が稀に覚えラレル『職スキル』ダゼ。『地中深ければ深いほど詠唱速度と身体能力、回復力が上がる』スキルだ!)


 なるほど、だからこんなに地中深くに拠点を構えて居たわけか。
 俺が納得していると、領主は立ち上がると同時に俺に向かって手を差し出してきた。


「最後だ。私の手駒になる気は無いかね?」


「鬱陶しいね。しつこい男はモテないよ?」


 俺はそう言うと、領主に向かって距離をつめた。
 領主はその行動を読んでいたのか、地面から槍を射出してくる。たしかに速い、魔昇華をしている俺並みの詠唱速度だ。
 土の槍を水で払い除け、もう一歩踏み出そうとしたところで――地面が隆起した。


(チッ)


 俺はコケる前に『天駆』でそれを躱す。空中を走り出した俺にも面喰わず、領主はさらに土塊を撃ってくる。
 俺は『三連突き』でそれを相殺し、そのまま領主に向かって槍を突き出す。
 ガッ! と巨大な岩を突いたかのような感覚がしたかと思ったら地面から岩の盾が出てきて領主の身体を守っていた。


「ありゃりゃ」


「フン!」


 ゴッ! と風を切る音と共に領主の拳が顔面に飛んでくる。首を傾けてそれを躱し、風の弾丸を領主の背中から叩き込んで――そのすべてを岩壁に阻まれた。
 やるな、と思いながら俺はバックステップで距離を開け、『飛槍激』を放つ。これも岩壁に阻まれるが、岩壁が一瞬領主の目隠しになってくれた。
 その隙に『天駆』で上に飛び上がり、真上から領主に向かって『音速突き』を繰りだした。


「くっ!」


 領主はさすがにまずいと思ったのか、横っ飛びでそれを回避する。しかしその回避を読んでいた俺は、風の弾丸で弾き飛ばした。


「ぐうう!」


 呻く領主。それを逃すわけにはいかない。さっさと決めないとまた地面に張り付いて回復されてしまう。
 俺は『ウォーターウィップ』で周囲を攻撃するが、岩壁で阻まれてしまった。あの岩壁の硬度凄いな……。


(凄い硬度だな)


(カカッ! ドレホド地下ダト思ってる!? コンダケ深ケリャソウソウ抜けねぇゾ『土竜』ハ!)


 なるほどね。


「効かぬな。……どうだ? 降参するか?」


「冗談はやめてよ。こっちは早くぶちのめしたくてうずうずしているってのに」


「――フン、そうか。ならば……命は無いと思え」


 ユラリ、と殺気を出してくる領主。ふうん、ここからが本番ってわけか。なら、俺もそろそろ本気を出そうか。


「魔昇華」


 コーン……と木と木が打ち合う音に似た音が響いて、俺の魔力が荒れ狂っていく。噴出する激流のような魔力を制御し、自分の周りに纏っていく。


「さて、領主。俺はまだ土魔法の使い手とはやり合ったことがなくてね」


 こきっ、と首を鳴らすと同時に魔昇華が完了する。角が片方だけ生え全身に力がみなぎるような感覚がする。
 活力煙の煙がぶち抜いた天井に溶けていく。


「――俺の経験値になってくれよ?」



「異世界なう―No freedom,not a human―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く