異世界なう―No freedom,not a human―
37話 試練の間なう⑥
「私はみんなの役に立っていないんです! 呼心ちゃんのように凄い回復魔法が使えるわけでもない! 天川くんのように凄い攻撃力があるわけでもない! 加藤君のように便利な魔法があるわけでもない! 助けられたところで、みんなの役に立てるわけじゃないんです!」
新井の叫び声で、俺はなるほどと思う。
――このままやる気がないままだと困るな。
俺がどうしたものかと思っていると、新井はさらに続ける。
「冬子ちゃんのように一人で敵陣に飛び込めるような素早さがあるわけでもない、阿部君のように索敵ができるわけでもない、清田君のように魔法でも普通の戦いでも出来るとかでもない! それなのに! 私は清田君を危険な目にあわせて、呼心ちゃんはまだ目を覚まさないんです! 役立たずの私のせいで!」
……だからといって、恩返しだのなんだのになるのは変な話だと思うけど。
叫びながらポロポロと涙を流す新井を見て、俺は一つため息をつく。
「そ、その、新井? そういうわけじゃなくてだな……」
佐野がなんかなだめようとしているらしいけど、オロオロするだけで役に立っていない。相変わらずマニュアル外の襲撃に弱いね。
空美も焦りで取り乱していたけど、今回の取り乱し方はどちらかというと罪悪感と自己評価の低さだからなあ。
……こういうの、苦手なんだけどね。なんで俺が。
主人公キャラである天川がこういうことするべきでしょ? そんでフラグを立てるの。じゃなきゃおかしいじゃん。
けどまあ、次の扉の向こうにいる敵が今までより弱いとは思えない。戦えるメンツは多い方がいい。
ここはなんとか宥めるのが吉だろうね。
「ねえ、新井。落ち着いて」
言葉で言ってもわかりそうにないので、空美にやった時みたいに魔力を放出してぶつける。
「ひぅっ?」
ビクッと身をすくませて泣き止む新井。
その隙に俺はぐっと肩を掴んで落ち着かせようと新井の目を見る。
「新井、今は少し疲れてるだけだ。取りあえず、一度深呼吸して。ほら、吸って」
俺が言いながら自分も深呼吸すると、新井も深呼吸を始めた。
「吸って~……吐いて~……。はい、吸って~……吐いて~……。どう? 落ち着いた?」
「え、あ、はい……」
「そりゃよかった。さて、じゃあ落ち着いたところでいくつか確認していい?」
じっと目を見て話せば、人間案外落ち着くものだ。コミュ障を除く。
新井は完全に落ち着きを取り戻した感じで、俺の目を見返してきた。よしよし。
アイテムボックスから活力煙を出して、咥える。
「そうだ、新井も吸う?」
「へ? た、タバコですか?」
「ううん。疲労回復薬だから健康に問題があるわけじゃないよ。どう?」
「じゃ、じゃあ……」
もう一本活力煙を出して、新井に咥えさせる。
そして人差し指にポッと火を灯し、お互いの活力煙に火を付ける。
「ふぅ~、うん。異世界に来てから吸い始めたけど、美味しくていいよこれは」
甘い匂いはするけど、あのタバコ臭さが無いからいいよね。
「そうですね……甘くて美味しいです」
「あれ? 新井は平気なの? 煙」
てっきり佐野みたいに、全然ダメダメだと思ったのに。
俺の疑問に答えるように、新井は少し照れくさそうに頬を掻く。
「じ、実は……父がタバコを吸うんですけど、小さいころから酔っぱらった父に何度か吸わされたことがあって」
「ああ、だから慣れてるのか」
というか、それは普通に犯罪。よい子のみんなはマネしないように。若いうちに喫煙しない方がいいって父さんも言っていたし。
「はい。まあ、タバコは嫌いなんですけど……これは美味しくていいですね。私も、塔から出たら買いに行きたいです」
「そう、よかった。活力煙、誰もいいって言ってくれなくて寂しかったんだよね」
マルキムは葉巻派だし、実はああ見えてリューも喫煙者だ。
マリルはそもそも煙を受け付けないって言っていたし。
俺が少しうれしく思っていると、何故か佐野が俺に手を突き出してきた。
「き、清田! ……その、私にも一本よこせ」
「へ? ……いいけど、佐野煙ダメじゃなかったっけ……」
というか、一度吸わせたときに盛大にむせていたような。
「い、いいから!」
不思議に思いつつも、俺はアイテムボックスから活力煙を出して佐野に渡す。
そして、火をつけてやるけど……
「すぅ~……ゲホッ、ゲホッ! ふう、うん、美味いな!」
「いや、嘘でしょ、涙目じゃん、めちゃめちゃむせてたじゃん」
「むっ、むせてない! 涙目でもない!」
「いや、ごまかせないから。この状況覆らないから」
なんで無理して吸おうとするのか……
佐野は何度も吸ってはむせる、吸ってはむせるを繰り返していた。……ホント、何してるんだか。
別に体に害があるもんでもないらしいから、特に辞めさせる必要もないけどさ。
「まあ、佐野は放っておこう。――新井?」
「は、はいっ!」
「さっき、自分のことを役立たずと言ってたよね。なんでそう思うの?」
俺が活力煙をふかしながら訊くと、新井は目を伏せて恥ずかしそうに……というか、恥じ入るようにぼそぼそとしゃべりだした。
「だって……詠唱に時間がかかるし、氷を出したり、凍らせたりしかできないし……みんなみたいにいろんなことができるわけじゃないですし……」
「それが、なんでダメなの?」
「え?」
「というか、そもそも異世界人の中で一番他のパーティーから必要とされる人って誰だと思う? 実力、というか能力面だけを見て、ね」
俺の問いに少しだけ新井は考える仕草をしてから……慎重に答える。
「えっと、天川君か、呼心ちゃんか、加藤君……ですか?」
「確かに、その三人もありがたがられるだろうね。だけど一番ありがたがられるのは新井、君だよ。外でAGをやってる俺が言うんだから間違いない」
「えっ!?」
新井が驚きに目を見開く。
俺はそれに畳みかけるようにして、説明していく。
「まず、新井の『職』である氷結者……これは、めったにいないレア職業だ。正直、回復職よりも少ない」
「そうなんですか?」
「そう。しかも……氷を操れるってことは、凄いアドバンテージだ。本来、洞窟のような狭くて空気の通り道が無い場所では……どんな攻撃魔法が重宝されると思う?」
「えっ……それは、清田君みたいな炎魔法じゃないん……ですか?」
俺は指で罰を作って、にやりと笑う。
「はずれ。正解は土魔法と風魔法。狭い洞窟で炎なんて使ったら、一瞬で酸素が無くなっちゃうよ」
「あっ! そ、そうか……って、だったらなんで清田君があんなに炎魔法を使っても大丈夫なんですか?」
「気を付けてるからね。敵を殺したら炎が残らないようにしたり、雑魚処理には極力槍を使うようにしたり。でもどれだけ気を付けていたとしても、使わないにこしたことはないよ」
それに、と俺は苦笑い気味に火を灯す。
「そもそも、外で戦うときも森みたいな木が多い場所で戦うことが多い。今のところは大丈夫だけど……火が木に燃え移れば、火事が起きる。そういうことを考えると、炎魔法はかなり神経を使って使わなきゃいけない魔法なんだよ」
ただ外の場合は、水魔法……否、水魔術が使える俺からすればそんなに気にすることじゃないんだけどね。火が燃え移ってもすぐに消せばいいから。
「となると、風魔法か土魔法か水魔法で攻撃するのが基本なんだけど、土魔法ってのは天川みたいに岩を出せるわけじゃない。よほどの使い手じゃないと槍のように形成できないし、水魔法じゃ質量に欠ける。風魔法は撃つというよりも斬るだから、体表が固い敵や、でかい敵には戦いづらい」
「そ、そうなんですか……」
「だから、結局リスクをとっても炎魔法で攻撃することが多いんだ。かなり使いこなさないとほかの魔法じゃ決定打を与えづらいからね。……そこで、氷魔法の出番というわけさ」
「へ?」
「氷魔法ってのは、延焼の危険もない、しかも質量はあるから威力も高く、やろうと思えば斬ることもできるでしょ? つまり、一番安全でなおかつ威力もある魔法というわけ。わかった?」
刃のようにして放つ魔法を使っているのも見た。水の汎用性に、風の鋭さ、土の質量。まさにいいとこどりだ。
「そ、そうなんですか……で、でも、呼心ちゃんみたいに欠損まで治せる回復魔法を使える方がいいんじゃないですか?」
「そもそも、アレは異世界人の圧倒的ステータスが無かったら即死だからね。そんな魔法必要ないんだよ。というか空美は全然戦闘できないでしょ? 常に守りが必要な回復職なんて、よほどじゃないと使ってくれるパーティーは少ないよ」
このパーティーなら阿辺や難波をヒーラーの守護役に回す余裕があるからいいけど、本来なら回復職はある程度自衛出来ないといけない。敵を倒せないまでも、避けたり退けたり時間を稼ぐくらいの実力は必要だ。
それを全くしない空美は、そこまで実力のある回復職扱いされないんだよ。もっとも、街で医者をやる分には問題ないけどね。
「か、加藤君は……」
「アイツは器用貧乏でしょ。むしろ、アイツじゃなきゃできないことってある?」
大賢者のオリジナル職魔法はあるみたいだけど、どれもこれも本職には遠く及ばなかったりする。無論、チートであることに変わりはないんだけどね。
「う……あ、天川君は……」
「あんな攻撃力は必要ない。そもそも、塔の外で、Bランク以上の魔物と何度出会った? あの程度の身のこなしなら、いくらでも他がいる。なんなら、佐野の方が回避も攻撃の当て方もよほど上手だよ。攻撃力なんてものは一定以上になると、強くても弱くても一緒になるからね」
敵の耐久力が10なら、10の攻撃をすればいいんであって、20も30も必要ない。
むしろ、5の攻撃を二回当てる技術の方が、圧倒的に必要とされる。天川のやってることも、俺のやってることも、ステータスに任せて物量作戦しているに過ぎないからね。
下手な鉄砲……というか大砲、数を撃てば当たるし、当たれば一撃。そんなものは求められていない。
「よって、新井。君が一番、あの状況で死ぬべきじゃなかった。むしろ、なんでそんなに自己評価が低いのかがよくわからないよ」
「だ、だって……」
「新井、自信を持ちなよ。大丈夫、守られるべきじゃなかったなんてありえないんだから」
俺は微笑んで、頭を少しなでる。
元の世界ならセクハラ一直線だけど、今の状況なら平気だろう。雰囲気的に。
「けど、あそこで油断してやられたのは反省しなきゃいけないよ。今度から気を付けるように」
少し皮肉気に笑って、俺は言ってみる。
新井はそれに元気よく返事して、くすくすと笑いだした。
「どうしたの?」
「あ、いえ……清田君、そんなことも言うんですね」
そんなこと? ああ、今みたいに励ましたことか。
と言っても、そもそも新井がいなくなられると困るわけだから言っただけで、別に新井のためじゃないしな……外だったら絶対に放っておくし。
そもそも、これが難波とか木原とか白鷺だったとしても放っておいただろうしね。壁役なら俺でも出来るし。
氷魔法なんてレアな魔法が使えるんだから、そりゃあここでリタイアされちゃ困るんだよ。主人公である天川のハーレムにそのうち入るんだろうし。
だから、俺は上に煙を吐きながらなんとはなしに言う。
「今日は特別だよ。そもそも、相手が新井じゃなかったら放っておいたし」
「へ?」
「新井じゃなかったら言わないし、新井だから言ったんだよ」
あとは、佐野でも言ってたかな。
というか、他の奴らだったらそもそも話聞かないだろうし……無駄なことをするつもりはあんまりないからね。
「新井に死なれちゃ困るし」
俺の生存率を上げるためにも、ちゃんと実力がある人は残しておかなきゃいけない。
さっきのウインラビットが数体とかになったら俺一人じゃ話にならないしね。
俺がやれやれと思いながら活力煙をふかしていると、なんでか新井が顔を真っ赤にしていた。
「あれ? どうしたの? そんなに顔を真っ赤にして」
「ふぇ!? あ、いえ、その! その……」
しかもワタワタと慌てだした。
何してるんだろう。
不思議に思っていると、なにやら向こうの方が騒がしくなってきた。
「あ、空美が目覚めたみたいだね」
「ほ、ホントですか!? こ、呼心ちゃん!」
新井が血相を変えて空美の方へと走り出す。おお、速い速い。さすがはチート異世界人勢。魔法職と言えど、ステータスは並みの剣士なんかより断然高い。
ふぅ~、と煙を吐き出す。さて、俺はもう少し休もうかな。
取りあえずもう一度座り込むと、何故か影ができた。
というか、目の前に佐野が仁王立ちしていた。活力煙を咥えたまま。
正直、かなり迫力があります……
「え~っと、佐野? ど、どうしたの?」
「清田……」
前髪で目が隠れている佐野。後ろからは、ゴ、ゴ、ゴ、ゴと書き文字が見えるようだ。
……あ、あれ?
「……そうか、お前はメガネっ娘がいいのか? え? 清楚系メガネっ娘がいいのか!? 空美の次は新井か!?」
な、なんかすごい怒ってる! しかもわけわかんないことで!
「ちょ、どうしたのさ、佐野。そんなに何か俺したっけ?」
「そうだよなあ。ああいうメガネかけてるかわいい子がいいんだもんな! しかも新井は胸があるしな! 結局男は胸か!」
なんか日笠○子さんみたいなこと言いだしたし。
何かしたっけ……と思いながら、苦笑いを浮かべる俺。
「お、落ち着いて佐野。何がどうしたのさ?」
「うるさい! 普段ならお前はあんなこと言わないだろう! それなのに、なんで新井にだけはあんなことを言うんだ! おかしいじゃないか!」
「いや、なにもおかしいことは無いよ……単純に、戦力が下がることを心配しただけ。別に新井が心配だったわけじゃないよ。次の扉から出てくる敵が、今までみたいに俺一人で勝てるとは限らないしね」
そう言いつつ、なんで励まそうと思ったかをざっと説明する。
「な、なるほど……そういう意図があったのか」
「そうだよ。何もないのに俺があんなめんどくさいことをするとでも?」
「だから不思議だったんだが……まあ、そういうことなら納得がいった。けど、そんなに新井は重宝されるものなのか?」
「うーん……たぶん、一番重宝されるのは阿辺じゃないかなあ」
「へ?」
「一般的なパーティーでは、普通、夜は交代で見張りをしながら眠るんだ。けど、阿部のおかげでそれがいらないでしょ? だから、一番重宝されるのは阿辺かな」
見張りがいらないとかマジで凄すぎる。
こうして一週間も塔に潜っていられる最大の功労者は阿辺に違いない。だって、普通なら休憩中でも精神が休まることは無いのに、阿辺がいるだけで相当精神を休められる。
ただ野外で一週間キャンプするだけでも相当キツイのに、戦闘になる可能性のある場所での野営だ。普通は三日か四日で音を上げる。
しかし阿辺がいれば、その制限を容易く突破出来るんだ。
「だから、阿辺だよ。どんなパーティーでも重宝される。二番目は間違いなく井川。あいつのテレポートってのは移動距離をどんどん伸ばせるからね」
ただ、結界師である阿辺と違って、転送系のスキルを持っている奴は――むちゃくちゃ少ないけど――完全にいないというわけじゃない。そのせいで二番目だ。
「な、なるほど……じゃあ、逆に一番重宝されないのは?」
「うーん……」
そもそも異世界人ってだけで全員強いし、アイテムボックスなんていう完全チートアイテムすら持っているんだから、重宝されないなんてありえないんだけど……。
「皆は役割がしっかりしているからね。だから、その役割がかぶらない限り誰でも重宝されるはずだよ」
「役割か」
「そう、役割。このパーティーにはそもそもシーフがいないっていうのが変なんだけどね。あ、シーフって誰かいた?」
「一応、一人はいたな。ただ女子なのと……シーフが何かよく分かってなかったことも相まって参加していない」
「残念。まあ、今のパーティーを役割別にしてみるとね」
俺は懐から紙を取り出す。
「まず、前衛職が、佐野、木原、天川、俺、難波、白鷺。後衛職が、空美、新井、阿辺、井川、加藤、王女様」
さらさらとペンを走らせる。PCで打つ方が得意なんだけど、今はいいだろう。
「で、これをさらに役割に分けると、遊撃が木原、白鷺。壁が難波と……まあ、どこでも出来るけど便宜的に俺。メインアタッカーが佐野と天川」
メインアタッカーの中でもさらに分けるなら、天川が削り役で佐野をフィニッシャーに据えるのがベストだろう。
「後衛は役割があんまりかぶってないから、無理やり分類することになるけど……。ヒーラーが空美と王女、バフとかのサポートが加藤と、一応阿辺。魔法でのアタッカーが新井、井川」
「なるほど?」
「まあ、だからこの役割に合致するところなら、誰でも重宝されるってわけさ。結局、人には得意不得意があるからね」
「……じゃあ、新井に言ったのは?」
俺は肩をすくめて少し苦笑いする。
「まるっきり嘘ってわけじゃないけど……本当でもない。まあ、気休めってところかな」
「清田……」
なんか佐野が成長を見守る母親みたいな目で見てきた。
なんでだよ。
「まあ、いいでしょ、そんなことは……」
「おーい、佐野―、清田―、空美の回復しだい行くぜー! 準備しとけよー!」
向こうから白鷺の声が聞こえてきた。なるほど。
(そろそろ、最後の扉か……)
試練というだけあって、なんだかんだここまでも楽な戦いだったわけじゃなかった。傍から見たら俺が一人で無双してたけど、実際はそんなに余裕だったわけじゃない。
だからまあ、否応なく緊張感は高まる。
「佐野、武器の手入れは?」
「いつでも戦える。清田は?」
「その質問なんて言うか知ってる? 愚問って言うんだよ」
「……そうか」
じっと、三枚目の扉をにらみつける。
大量のCランク、Aランクと強さが徐々に上がってきている。
まさか……次はSランクとは言わないだろうね。
(あーあ……)
嫌な予感が、最高潮だ。
新井の叫び声で、俺はなるほどと思う。
――このままやる気がないままだと困るな。
俺がどうしたものかと思っていると、新井はさらに続ける。
「冬子ちゃんのように一人で敵陣に飛び込めるような素早さがあるわけでもない、阿部君のように索敵ができるわけでもない、清田君のように魔法でも普通の戦いでも出来るとかでもない! それなのに! 私は清田君を危険な目にあわせて、呼心ちゃんはまだ目を覚まさないんです! 役立たずの私のせいで!」
……だからといって、恩返しだのなんだのになるのは変な話だと思うけど。
叫びながらポロポロと涙を流す新井を見て、俺は一つため息をつく。
「そ、その、新井? そういうわけじゃなくてだな……」
佐野がなんかなだめようとしているらしいけど、オロオロするだけで役に立っていない。相変わらずマニュアル外の襲撃に弱いね。
空美も焦りで取り乱していたけど、今回の取り乱し方はどちらかというと罪悪感と自己評価の低さだからなあ。
……こういうの、苦手なんだけどね。なんで俺が。
主人公キャラである天川がこういうことするべきでしょ? そんでフラグを立てるの。じゃなきゃおかしいじゃん。
けどまあ、次の扉の向こうにいる敵が今までより弱いとは思えない。戦えるメンツは多い方がいい。
ここはなんとか宥めるのが吉だろうね。
「ねえ、新井。落ち着いて」
言葉で言ってもわかりそうにないので、空美にやった時みたいに魔力を放出してぶつける。
「ひぅっ?」
ビクッと身をすくませて泣き止む新井。
その隙に俺はぐっと肩を掴んで落ち着かせようと新井の目を見る。
「新井、今は少し疲れてるだけだ。取りあえず、一度深呼吸して。ほら、吸って」
俺が言いながら自分も深呼吸すると、新井も深呼吸を始めた。
「吸って~……吐いて~……。はい、吸って~……吐いて~……。どう? 落ち着いた?」
「え、あ、はい……」
「そりゃよかった。さて、じゃあ落ち着いたところでいくつか確認していい?」
じっと目を見て話せば、人間案外落ち着くものだ。コミュ障を除く。
新井は完全に落ち着きを取り戻した感じで、俺の目を見返してきた。よしよし。
アイテムボックスから活力煙を出して、咥える。
「そうだ、新井も吸う?」
「へ? た、タバコですか?」
「ううん。疲労回復薬だから健康に問題があるわけじゃないよ。どう?」
「じゃ、じゃあ……」
もう一本活力煙を出して、新井に咥えさせる。
そして人差し指にポッと火を灯し、お互いの活力煙に火を付ける。
「ふぅ~、うん。異世界に来てから吸い始めたけど、美味しくていいよこれは」
甘い匂いはするけど、あのタバコ臭さが無いからいいよね。
「そうですね……甘くて美味しいです」
「あれ? 新井は平気なの? 煙」
てっきり佐野みたいに、全然ダメダメだと思ったのに。
俺の疑問に答えるように、新井は少し照れくさそうに頬を掻く。
「じ、実は……父がタバコを吸うんですけど、小さいころから酔っぱらった父に何度か吸わされたことがあって」
「ああ、だから慣れてるのか」
というか、それは普通に犯罪。よい子のみんなはマネしないように。若いうちに喫煙しない方がいいって父さんも言っていたし。
「はい。まあ、タバコは嫌いなんですけど……これは美味しくていいですね。私も、塔から出たら買いに行きたいです」
「そう、よかった。活力煙、誰もいいって言ってくれなくて寂しかったんだよね」
マルキムは葉巻派だし、実はああ見えてリューも喫煙者だ。
マリルはそもそも煙を受け付けないって言っていたし。
俺が少しうれしく思っていると、何故か佐野が俺に手を突き出してきた。
「き、清田! ……その、私にも一本よこせ」
「へ? ……いいけど、佐野煙ダメじゃなかったっけ……」
というか、一度吸わせたときに盛大にむせていたような。
「い、いいから!」
不思議に思いつつも、俺はアイテムボックスから活力煙を出して佐野に渡す。
そして、火をつけてやるけど……
「すぅ~……ゲホッ、ゲホッ! ふう、うん、美味いな!」
「いや、嘘でしょ、涙目じゃん、めちゃめちゃむせてたじゃん」
「むっ、むせてない! 涙目でもない!」
「いや、ごまかせないから。この状況覆らないから」
なんで無理して吸おうとするのか……
佐野は何度も吸ってはむせる、吸ってはむせるを繰り返していた。……ホント、何してるんだか。
別に体に害があるもんでもないらしいから、特に辞めさせる必要もないけどさ。
「まあ、佐野は放っておこう。――新井?」
「は、はいっ!」
「さっき、自分のことを役立たずと言ってたよね。なんでそう思うの?」
俺が活力煙をふかしながら訊くと、新井は目を伏せて恥ずかしそうに……というか、恥じ入るようにぼそぼそとしゃべりだした。
「だって……詠唱に時間がかかるし、氷を出したり、凍らせたりしかできないし……みんなみたいにいろんなことができるわけじゃないですし……」
「それが、なんでダメなの?」
「え?」
「というか、そもそも異世界人の中で一番他のパーティーから必要とされる人って誰だと思う? 実力、というか能力面だけを見て、ね」
俺の問いに少しだけ新井は考える仕草をしてから……慎重に答える。
「えっと、天川君か、呼心ちゃんか、加藤君……ですか?」
「確かに、その三人もありがたがられるだろうね。だけど一番ありがたがられるのは新井、君だよ。外でAGをやってる俺が言うんだから間違いない」
「えっ!?」
新井が驚きに目を見開く。
俺はそれに畳みかけるようにして、説明していく。
「まず、新井の『職』である氷結者……これは、めったにいないレア職業だ。正直、回復職よりも少ない」
「そうなんですか?」
「そう。しかも……氷を操れるってことは、凄いアドバンテージだ。本来、洞窟のような狭くて空気の通り道が無い場所では……どんな攻撃魔法が重宝されると思う?」
「えっ……それは、清田君みたいな炎魔法じゃないん……ですか?」
俺は指で罰を作って、にやりと笑う。
「はずれ。正解は土魔法と風魔法。狭い洞窟で炎なんて使ったら、一瞬で酸素が無くなっちゃうよ」
「あっ! そ、そうか……って、だったらなんで清田君があんなに炎魔法を使っても大丈夫なんですか?」
「気を付けてるからね。敵を殺したら炎が残らないようにしたり、雑魚処理には極力槍を使うようにしたり。でもどれだけ気を付けていたとしても、使わないにこしたことはないよ」
それに、と俺は苦笑い気味に火を灯す。
「そもそも、外で戦うときも森みたいな木が多い場所で戦うことが多い。今のところは大丈夫だけど……火が木に燃え移れば、火事が起きる。そういうことを考えると、炎魔法はかなり神経を使って使わなきゃいけない魔法なんだよ」
ただ外の場合は、水魔法……否、水魔術が使える俺からすればそんなに気にすることじゃないんだけどね。火が燃え移ってもすぐに消せばいいから。
「となると、風魔法か土魔法か水魔法で攻撃するのが基本なんだけど、土魔法ってのは天川みたいに岩を出せるわけじゃない。よほどの使い手じゃないと槍のように形成できないし、水魔法じゃ質量に欠ける。風魔法は撃つというよりも斬るだから、体表が固い敵や、でかい敵には戦いづらい」
「そ、そうなんですか……」
「だから、結局リスクをとっても炎魔法で攻撃することが多いんだ。かなり使いこなさないとほかの魔法じゃ決定打を与えづらいからね。……そこで、氷魔法の出番というわけさ」
「へ?」
「氷魔法ってのは、延焼の危険もない、しかも質量はあるから威力も高く、やろうと思えば斬ることもできるでしょ? つまり、一番安全でなおかつ威力もある魔法というわけ。わかった?」
刃のようにして放つ魔法を使っているのも見た。水の汎用性に、風の鋭さ、土の質量。まさにいいとこどりだ。
「そ、そうなんですか……で、でも、呼心ちゃんみたいに欠損まで治せる回復魔法を使える方がいいんじゃないですか?」
「そもそも、アレは異世界人の圧倒的ステータスが無かったら即死だからね。そんな魔法必要ないんだよ。というか空美は全然戦闘できないでしょ? 常に守りが必要な回復職なんて、よほどじゃないと使ってくれるパーティーは少ないよ」
このパーティーなら阿辺や難波をヒーラーの守護役に回す余裕があるからいいけど、本来なら回復職はある程度自衛出来ないといけない。敵を倒せないまでも、避けたり退けたり時間を稼ぐくらいの実力は必要だ。
それを全くしない空美は、そこまで実力のある回復職扱いされないんだよ。もっとも、街で医者をやる分には問題ないけどね。
「か、加藤君は……」
「アイツは器用貧乏でしょ。むしろ、アイツじゃなきゃできないことってある?」
大賢者のオリジナル職魔法はあるみたいだけど、どれもこれも本職には遠く及ばなかったりする。無論、チートであることに変わりはないんだけどね。
「う……あ、天川君は……」
「あんな攻撃力は必要ない。そもそも、塔の外で、Bランク以上の魔物と何度出会った? あの程度の身のこなしなら、いくらでも他がいる。なんなら、佐野の方が回避も攻撃の当て方もよほど上手だよ。攻撃力なんてものは一定以上になると、強くても弱くても一緒になるからね」
敵の耐久力が10なら、10の攻撃をすればいいんであって、20も30も必要ない。
むしろ、5の攻撃を二回当てる技術の方が、圧倒的に必要とされる。天川のやってることも、俺のやってることも、ステータスに任せて物量作戦しているに過ぎないからね。
下手な鉄砲……というか大砲、数を撃てば当たるし、当たれば一撃。そんなものは求められていない。
「よって、新井。君が一番、あの状況で死ぬべきじゃなかった。むしろ、なんでそんなに自己評価が低いのかがよくわからないよ」
「だ、だって……」
「新井、自信を持ちなよ。大丈夫、守られるべきじゃなかったなんてありえないんだから」
俺は微笑んで、頭を少しなでる。
元の世界ならセクハラ一直線だけど、今の状況なら平気だろう。雰囲気的に。
「けど、あそこで油断してやられたのは反省しなきゃいけないよ。今度から気を付けるように」
少し皮肉気に笑って、俺は言ってみる。
新井はそれに元気よく返事して、くすくすと笑いだした。
「どうしたの?」
「あ、いえ……清田君、そんなことも言うんですね」
そんなこと? ああ、今みたいに励ましたことか。
と言っても、そもそも新井がいなくなられると困るわけだから言っただけで、別に新井のためじゃないしな……外だったら絶対に放っておくし。
そもそも、これが難波とか木原とか白鷺だったとしても放っておいただろうしね。壁役なら俺でも出来るし。
氷魔法なんてレアな魔法が使えるんだから、そりゃあここでリタイアされちゃ困るんだよ。主人公である天川のハーレムにそのうち入るんだろうし。
だから、俺は上に煙を吐きながらなんとはなしに言う。
「今日は特別だよ。そもそも、相手が新井じゃなかったら放っておいたし」
「へ?」
「新井じゃなかったら言わないし、新井だから言ったんだよ」
あとは、佐野でも言ってたかな。
というか、他の奴らだったらそもそも話聞かないだろうし……無駄なことをするつもりはあんまりないからね。
「新井に死なれちゃ困るし」
俺の生存率を上げるためにも、ちゃんと実力がある人は残しておかなきゃいけない。
さっきのウインラビットが数体とかになったら俺一人じゃ話にならないしね。
俺がやれやれと思いながら活力煙をふかしていると、なんでか新井が顔を真っ赤にしていた。
「あれ? どうしたの? そんなに顔を真っ赤にして」
「ふぇ!? あ、いえ、その! その……」
しかもワタワタと慌てだした。
何してるんだろう。
不思議に思っていると、なにやら向こうの方が騒がしくなってきた。
「あ、空美が目覚めたみたいだね」
「ほ、ホントですか!? こ、呼心ちゃん!」
新井が血相を変えて空美の方へと走り出す。おお、速い速い。さすがはチート異世界人勢。魔法職と言えど、ステータスは並みの剣士なんかより断然高い。
ふぅ~、と煙を吐き出す。さて、俺はもう少し休もうかな。
取りあえずもう一度座り込むと、何故か影ができた。
というか、目の前に佐野が仁王立ちしていた。活力煙を咥えたまま。
正直、かなり迫力があります……
「え~っと、佐野? ど、どうしたの?」
「清田……」
前髪で目が隠れている佐野。後ろからは、ゴ、ゴ、ゴ、ゴと書き文字が見えるようだ。
……あ、あれ?
「……そうか、お前はメガネっ娘がいいのか? え? 清楚系メガネっ娘がいいのか!? 空美の次は新井か!?」
な、なんかすごい怒ってる! しかもわけわかんないことで!
「ちょ、どうしたのさ、佐野。そんなに何か俺したっけ?」
「そうだよなあ。ああいうメガネかけてるかわいい子がいいんだもんな! しかも新井は胸があるしな! 結局男は胸か!」
なんか日笠○子さんみたいなこと言いだしたし。
何かしたっけ……と思いながら、苦笑いを浮かべる俺。
「お、落ち着いて佐野。何がどうしたのさ?」
「うるさい! 普段ならお前はあんなこと言わないだろう! それなのに、なんで新井にだけはあんなことを言うんだ! おかしいじゃないか!」
「いや、なにもおかしいことは無いよ……単純に、戦力が下がることを心配しただけ。別に新井が心配だったわけじゃないよ。次の扉から出てくる敵が、今までみたいに俺一人で勝てるとは限らないしね」
そう言いつつ、なんで励まそうと思ったかをざっと説明する。
「な、なるほど……そういう意図があったのか」
「そうだよ。何もないのに俺があんなめんどくさいことをするとでも?」
「だから不思議だったんだが……まあ、そういうことなら納得がいった。けど、そんなに新井は重宝されるものなのか?」
「うーん……たぶん、一番重宝されるのは阿辺じゃないかなあ」
「へ?」
「一般的なパーティーでは、普通、夜は交代で見張りをしながら眠るんだ。けど、阿部のおかげでそれがいらないでしょ? だから、一番重宝されるのは阿辺かな」
見張りがいらないとかマジで凄すぎる。
こうして一週間も塔に潜っていられる最大の功労者は阿辺に違いない。だって、普通なら休憩中でも精神が休まることは無いのに、阿辺がいるだけで相当精神を休められる。
ただ野外で一週間キャンプするだけでも相当キツイのに、戦闘になる可能性のある場所での野営だ。普通は三日か四日で音を上げる。
しかし阿辺がいれば、その制限を容易く突破出来るんだ。
「だから、阿辺だよ。どんなパーティーでも重宝される。二番目は間違いなく井川。あいつのテレポートってのは移動距離をどんどん伸ばせるからね」
ただ、結界師である阿辺と違って、転送系のスキルを持っている奴は――むちゃくちゃ少ないけど――完全にいないというわけじゃない。そのせいで二番目だ。
「な、なるほど……じゃあ、逆に一番重宝されないのは?」
「うーん……」
そもそも異世界人ってだけで全員強いし、アイテムボックスなんていう完全チートアイテムすら持っているんだから、重宝されないなんてありえないんだけど……。
「皆は役割がしっかりしているからね。だから、その役割がかぶらない限り誰でも重宝されるはずだよ」
「役割か」
「そう、役割。このパーティーにはそもそもシーフがいないっていうのが変なんだけどね。あ、シーフって誰かいた?」
「一応、一人はいたな。ただ女子なのと……シーフが何かよく分かってなかったことも相まって参加していない」
「残念。まあ、今のパーティーを役割別にしてみるとね」
俺は懐から紙を取り出す。
「まず、前衛職が、佐野、木原、天川、俺、難波、白鷺。後衛職が、空美、新井、阿辺、井川、加藤、王女様」
さらさらとペンを走らせる。PCで打つ方が得意なんだけど、今はいいだろう。
「で、これをさらに役割に分けると、遊撃が木原、白鷺。壁が難波と……まあ、どこでも出来るけど便宜的に俺。メインアタッカーが佐野と天川」
メインアタッカーの中でもさらに分けるなら、天川が削り役で佐野をフィニッシャーに据えるのがベストだろう。
「後衛は役割があんまりかぶってないから、無理やり分類することになるけど……。ヒーラーが空美と王女、バフとかのサポートが加藤と、一応阿辺。魔法でのアタッカーが新井、井川」
「なるほど?」
「まあ、だからこの役割に合致するところなら、誰でも重宝されるってわけさ。結局、人には得意不得意があるからね」
「……じゃあ、新井に言ったのは?」
俺は肩をすくめて少し苦笑いする。
「まるっきり嘘ってわけじゃないけど……本当でもない。まあ、気休めってところかな」
「清田……」
なんか佐野が成長を見守る母親みたいな目で見てきた。
なんでだよ。
「まあ、いいでしょ、そんなことは……」
「おーい、佐野―、清田―、空美の回復しだい行くぜー! 準備しとけよー!」
向こうから白鷺の声が聞こえてきた。なるほど。
(そろそろ、最後の扉か……)
試練というだけあって、なんだかんだここまでも楽な戦いだったわけじゃなかった。傍から見たら俺が一人で無双してたけど、実際はそんなに余裕だったわけじゃない。
だからまあ、否応なく緊張感は高まる。
「佐野、武器の手入れは?」
「いつでも戦える。清田は?」
「その質問なんて言うか知ってる? 愚問って言うんだよ」
「……そうか」
じっと、三枚目の扉をにらみつける。
大量のCランク、Aランクと強さが徐々に上がってきている。
まさか……次はSランクとは言わないだろうね。
(あーあ……)
嫌な予感が、最高潮だ。
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