勇者に殺された俺はどうやら迷宮の主になったようです

ミナト日記

迷宮の復旧 01



 迷宮の被害は大きく壁は崩壊し瓦礫が床に散らばっている。
 それを部下たちはせっせと修復に掃除をし、一刻も早い復旧に取り組んでいた。
 だが、当然のことながら元通りになるわけが無く、前よりも少し広めの部屋になるとのことだ。


「アルジサマ、コウジノオワリデス」
『おつかれ、休んでくれ』
「アリガトウゴザイス」


 と、ゴブリンキングが来たから賞賛すると嬉しそうだ。
 やっぱり、モンスターとはいえ感情があるのか。
 それとも、そういう回路になっているだけなのか。
 よくわからない。


「(アルジサマ、メイキュウへノミチ、モトドオリ)」
『頑張ったな、休んでくれ』
「(ソウシマス)」


 と今度はスライムキングがくねくねしながら来たから同様に褒めてみる。
 だが、表情は変わらず、いまいちわかりづらい奴だ。
 だが、最初に比べて少し大きくなったようだ。
 冒険者とは一回も戦ってないのにも関わらず。
 これも、工事の賜物とでもいうことか。


『迷宮管理権限・能力鑑定』


 ふと、俺は能力鑑定スキルを発動する。
 これだけ、大きくなったということは能力もそれなりに上がったのかもしれない。




【迷区のゴーレム】
 ・攻撃値5・防御値50・魔力値1
 ・スキル
  ‹迷区の主D›・‹自動回復C›・‹打撃耐性A›・‹衝撃緩和A›・〈迷区の創造〉
【ゴブリン】
 ・攻撃値5・防御値1・魔力値0・器用値10
 ・スキル
  ‹迷区の恩恵›・‹俊敏増加E›・‹自己回復E›・〈迷区の造形D〉
【スライム】
 ・攻撃値1・防御値10・魔力値2
 ・スキル
  ‹迷区の恩恵›・‹雷耐性C›・‹打撃耐性S›・‹自己回復E›・〈岩石融解D〉




 ええと、まずは俺の能力だが……。
 値は変化なしで、〈迷区の創造〉がスキル欄に増えただけか。
 確か、自分だけの不可侵区を作る能力だよな。


 で、部下たちはゴブリンキングだけ器用値が増えて。
 スキルはそれぞれが〈迷区の造形D〉と〈岩石溶解D〉か。
 どうりで最近、迷宮の壁とか地面に文様が描かれている訳だ。
 それに、削った岩々をスライムたちが食べていたが、あれはスキルのお陰だったということか。
 まあ、俺の岩の分は取っておいてくれるし良いか。




 それにしてもとくに能力は変わっていないな。
 それなら、どうしてモンスターたちが少し大きくなったのだろうか。
 もしかして、俺が縮んだとか?
 それはないか、岩が小さくなるはずがない、というか毎日岩を摂取しているから逆に大きくなっているはずだ。
 ということは……。


 うん、わからない。
 こういう時には人工知能に聞いてみるか。


『なあ、人工知能さん』
「―どうしました?―」
『スライムやゴブリンが大きくなっていないか?』
「―はい―」
『なんで大きくなった?』
「―迷区の主がレベルアップし、Dになったためです。基本的に迷区の主のレベルにより、配下のモンスターも成長します―」
『あれ、ああほんとだ。つまりは、迷区の主Aとかになれば、勝手にもっと強くなるということか?』
「―はい、ですがモンスター固有値も関わるため、状況によります―」


 なるほど、ということはモンスターが大きくなっているのに能力が上がっていないのは普通ということか。
 でも、そうなら。


『迷区の主ってどうすればAまで上がるんだ? そもそもどうやって俺はDになったんだ? たぶん今回は何も表示されなかったけど』
「―理解不能……ですが、私の推測でもよろしいですか?―」
『ああ頼む』
「―主が特別な存在だから、ということではないです。他の迷区の主に関しても、理解不能です。それこそ、この世界を創世しモノにしかわかりません―」


 はぁ。
 結局は、分からずか。
 だが俺の迷宮だけが特別というわけではないということだ。


 そして大きくなった原因だが。
 もしかしたら、ほんとに迷宮工事が関わっているのかもしれない。
 昔、ピラミッドが巨大なのは権力の象徴とか聞いたことがあるけど、それに似た感じで迷宮が巨大なほど迷区の主の力も上がるのかもしれない。




 ……さっきからしれないのオンパレードだが。
 それでも、少しでも強くなることは大事だろう。
 いつ、またあの勇者が来るとも限らない。
 それに、このまま最弱の迷区の主としてアンリ様に会うのはプライドが許さない。




 ……とりあえず、もう少し迷宮を大きくしてから考えよう。



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