勇者に殺された俺はどうやら迷宮の主になったようです

ミナト日記

迷宮の挑戦 01

 迷宮の門が固定されてから一日が過ぎようとしていた。
 が、今の所は誰も訪れてこない。


 てっきり冒険者の一人くらいは来ると思っていたため、予定外だ。
 部下たちも最初はやる気に満ち溢れていたが、今じゃあ、迷宮内の増築を始めてしまった。何でも、地下空間を作っているそうだ。




【迷宮管理権現】
【迷宮内に近づく影あり】


 と、脳裏に突然流れた。
 どうやら、ようやくお出ましのようだ。


『各モンスターよ、配置につけ! 敵が来るぞ』
「「「「ハイ」」」」


 さてさて、最初のお客様のご来店だ。
 俺たちの強さを図るのにうってつけの相手になるといいなぁ。


 因みに、一週間かけて部下たちの能力値は徐々に上がり、今では全員が俺の攻撃値を越えてしまっている。
 まぁ、防御値はまだまだ俺が上だが。
 それでも、駆け出し冒険者くらいなら、なんとか相手をできるだろう。
 それこそ、俺が出る幕じゃない。
 いや、俺が負けたら崩壊してしまうから、部下が負けても俺が出陣するわけにはいかないのだが。
 でも、俺の耐久力なら一回くらいは戦っても……




 と、そんなことを考えている場合ではなかった。


『迷宮管理権限・創造』


 と、呟くと足元付近に青い文様が浮かび上がり、少しずつ俺の体が地面に呑まれていく。そして、俺の体が完全に地下空間に落とされていく。
 なんでも、これが迷宮の主にのみ与えられる不可侵空間らしい。
 迷宮の主以外の干渉を禁ずるとのこと。
 だから、安心して俺は部下たちを見られるという訳だ。


『では、頼むぞ!』
「「「「ハッ!!!!」」」」


 部下に投げかけ、完全に地の底の空間へと身を沈める。
 これにより、もう誰にも俺を認識することは出来ないはずだ。




☆~☆~☆~




 ゴーレムの迷宮。
 第一の間へと続く道の一つ。


「ああ、ったくメンドクせえなぁ」
「黙れ、全く少しは静かにせい」
「おい爺、それは同じだぞ? ったく、頭までもが逝かれたか……はぁっ」
「その口を縫い付けてやろうかの」
「はっ、ヘボ爺は黙って俺の後をついて来ればいいんだよっ!」
「ふぬっ! 若造が調子に乗りよって――」


 と、ケンカ腰に歩く二つの人影。
 一人は老人であり、腰には古ぼけた短剣が差し込まれていた。
 一人は若者であり、手には銀色に輝く弓が握られていた。


 どちらも、初心者冒険者にはとても見えない。
 とくに老人は、鋭い眼孔でトラップを簡単に看破していく。


 もう少しで、第一の間についてしまうだろう。
 それを、俺は地中から眺めていた。


『迷宮管理権限・能力鑑定』


 と、俺は能力鑑定スキルを発動する。
 これで、相手の強さを調べることができるというものだ。


【……】
【……】


 だが、名前が表示されない。それどころか、何も調べることが出来ない。
 どういうことだ?


「ふぬ、どうやら相手から接触しようとしたらしいの」


 と、老人がふと足を止め、下を見る。その眼孔は鋭く、冷や汗がやばい。
 それに、鑑定スキルを使ったのがバレてるじゃん!


『(おい、人工知能さん、これはどういうことだ?)』
「―どうとは?―」
『(鑑定って、相手にばれるの?)』
「―通常は無理です、ですが、相手がより上の鑑定眼を持つ場合、気づかれる場合があります―」
『(ってことは、相手は相当な手練れということか?)』
「―肯定。私の知能によれば、相手は勇者クラスの可能性がありますね―」


 勇者?
 それは、つまりはアンリ様やあのクソ斧勇者と同じ強さの持ち主ということか。
 でも、現勇者に老人はいないはずなんだよな。
 ってことは、もしかして、あの老人って……元勇者?




「ふぬ、まあよい。全てを破壊しつくせば来るだろう」


 やばい、ややばい!
 絶対にあの老人がやややばいっ!


『迷宮管理権限・テレパシー』
『全部下に次ぐ。地下空間に非難せよ。これは命令だ! 誰も相手を威嚇するな。急いでその場から撤退せよ!』
「ドウイウコトデスカ」
『理由は後で話す。だから撤退だ。地下に行け!』
「ハイ」


 続々と、部下たちが作り上げた地下空間へと入っていく。そして、最後のゴブリンが逃げた後に迷宮管理権限により、岩々で完全に封をする。
 そして、その直後。
 第一の間の広場に撃風が巻き起こり、辺りに亀裂が入り、壁が崩れていく。


「ふぬ、感が鈍ったかの? なにも手ごたえなしじゃ」
「はっ、どうやら外れ迷宮らしいな。ったく、こんな奥地にある迷宮だから少しは期待したが……外れか」
「ふぬ、先程のも気のせいかのぉ」


 と、二人が第一の間に入ってくる。
 老人の手には短剣が握られ、若者の手には矢が当てられた弓がある。


「ふぬ、これだけ破壊しても主が怒らないとなると、ここは外れのようじゃな」
「ったく、俺が言ったとおりだろ? こんな山奥にある迷宮なんてどうせ、外れだって」
「ふぬ、だが、王区の側にある迷宮なのだ。これも、必要なことじゃ」
「ああ、はいはい。もう、いいだろ? 帰るぞ」
「主は勝手にせい、後は儂が見てくるとするかのう」


 と、若者だけが出口に向かっていく。
 どうせなら、老人にお帰り願いたいのだが、そんな俺の希望は破られ、破壊されながら、次々と奥の部屋へと向かっていく。
 そして、最後の部屋へとたどり着く老人。


「ふぬぬ、これが最後かの。宝箱は空箱、辺りも質素。破壊しても主が現れない。どうやら、廃棄された迷宮のようじゃな。先ほどの視線もトラップの効果ということかの?」


 と、呟く老人。
 どうやら、俺が出ていかなかったためか、勘違いしているようだ。
 それか、俺の迷宮は他の迷宮とは異なるから、老人もわからないのか。


「ふぬ、まあよいか」


 と言い、帰っていく老人。
 そして、侵入者が完全に外へと出ていく。


『はあぁぁぁああああ』


 長い息を吐き、安堵する。
 一時はどうなるかと、思ったがなんとかなったようだ。



「勇者に殺された俺はどうやら迷宮の主になったようです」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く