神獣殺しの精霊使い

ミナト日記

第43話 王族と真実

 小型飛行艇内部の空間は思ったよりも広く、二人掛けのソファに俺たち、向かい側に王国兵のギールにリーナ、そして一際豪華な椅子にマレイアが座っていた。
 流石はお姫様待遇というとこだろうか。
 テーブルにはお菓子と紅茶が置かれ、それにいち早くルシアとマレイアは手を伸ばし、大食い大会と化そうとしていた。
 それに二人は苦笑しつつも、大量のお菓子を持ってくる。
 俺も食べてみるが、とても美味しい。
 クッキーだと思ったが内部にはとろけるハチミツが混ざり、甘味とサクサクがたまらない。
 と、本題を忘れるところだった。危ない危ない。




「一ついいですか、たしか王国は黒龍と魔族の攻撃によって……王族の方々は、その――」
「ええ、確かに王はお亡くなりになられてしまいました。ですが、王族一族全滅は嘘の情報です。あの時にすぐに生存を発表する未来もありましたが――」
「流石にまた魔族に攻め込まれて来たら、精霊神でも限界だったということさ。なんせ、奴らの狙いは王族の殲滅だったからな」


 立て続けに凄いことを教えられて面食らってしまう。


「王族の殲滅……ですか?」


 確かに王族はガリレア王国の要である。
 だが、そこまでして殲滅する必要があるのだろうか。
 殲滅するとなると、敵の戦力大分削れてしまうはずだ。普通は王を殺せばそれでいいのではないのか?


「あの、何故敵は王族を滅ぼそうとしたんですか?」
「国土争いよ、魔族共は我らガリレア王国の豊かな土地を奪いに来ているの。そのために私たち王国兵が日々追い払い、時には相手国に乗り込んで戦争をしているのよ。これはまあ、あまり公開されている情報ではないから黙っておいてくれると助かるわ」
「でも、それで王族が狙われる理由には――」
「それが成りうるのさ、王族は我らの誇であり、神みたいなものさ。それが壊され蹂躙され、壊滅されることは、国が亡びるよりも悲しいことなのだよ」
「それにね、王族が壊滅するなんて、それはもう国の終わりを示しているのよ。なんだって、王族のいる場所は国の中枢の王城なのよ。そこが殲滅されるということは、もう国の負けのようなものよ」


 そうか、つまりは強大な戦力を誇るガリレア王国の最深部である王城が襲われていることは相当な危機であるということか。


「でも、マレイア姫は一命を取り留めた。それも本当にギリギリの瀬戸際でね、あの時あの場所に炎神、風神、闇神の御三方が居なければ……」
「それだけではないのだ。リーナ師匠の回復魔法のお陰でもあるのだ」
「そうだぞ、リーナ。お前も英雄さ」


 と、二人に言われ少し顔を赤く染めるリーナさん。
 だが、すぐに真面目な顔へと戻り。


「つまりは、王族は我らの命のようなものです。ですから、王を守れなかったのは悔しいですが、でも二人は生きていられてよかったのです」
「でも、それを俺に教えてもよかったんですか?」
「ええ、数日中にはカリア様が再建したラルス国へと帰還し、大々的に発表する予定ですので大丈夫ですよ。それに二人は姫様の恩人ですので」


 どうやら、信頼に値する評価を受けているようだ。
 それにしても、なんだか次々と情報を手に入れて、目が回りそうだ。


「あれ、そう言えば、なぜマレイア姫はここにいたんですか?」
「それは……」


 なぜか黙り込んでしまうリーナさん、それにギールさんも少しばかり気まずそうだ。


「それは、私のせいなのだ。私が、私が――」
「いえ、そのようなことはありません。すべては我らの責任であります」
「ええと、どういうことですか?」
「私が勝手に決めたのだ。雷鳥電王の羽が欲しくて」
「あの鳥の羽?」
「ええ、現在シーラ姫は魔族の毒に侵され、生死を彷徨っているのです。それを直すためには不死の鳥とも呼ばれる神種【雷鳥電王】の羽が必須なのです。私がもっと高位の回復魔法を扱えれば……」
「そう自分を責めるな、リーナ。ともあれ、俺たちは雷鳥電王の討伐へと来ていたのさ」
「でもそのせいで、皆は……死んだのだ。うぅ…」


 と、マレイアが泣きじゃくる。
 その姿は今までの姿からは想像もつかない。
 もしかしたら、今まで耐えていたのかもしれない。
 なんせ、部下がほぼ壊滅したのだ。かなり心にダメージを負ったのだろう。


「マレイア姫のせいではありません……最初は私たちと一緒に、それこそ数十人で来たのですが、酷い濃霧に、魔族と獣の群れに遭遇してしまいまして、いつの間にかに私たちがはぐれてしまったのです」
「俺とリーナも、途中魔帝国の強者数体と出会い、戦闘し、気づいたら見失い。それから探すもなかなか見つからなくて、今日ようやく会えたという訳さ。流石に雷鳥電王に襲われているとは思いもしなかったけどね」
「そうだったんですか。でも、じゃあこれでシーラ姫は助かるんですか?」
「ああ、そうさ」


 どうやら、何か隠し事をしていると思ったのは辺りだったということか。
 それに、救援が速かったのも既に一緒に来ていたからということか。
 だが、三人以外は全滅。
 俺とルシアは運が良かっただけなのかもしれない。
 もしかしたら、俺たちもこうなる可能性はあったのだ。




「それで、二人はなぜバルバスク大陸に来ているの?」


 と、当然ながら聞かれる。


「自分たちは――――」


――――
――





 今までのことを説明し終える頃にはすっかり暗くなっていた。 
 そして、俺たちは王都ラルスまで一緒に連れて行ってもらえることとなったのだった。



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