神獣殺しの精霊使い

ミナト日記

第15話 飛行艇

「それで、この人は誰なの?」


 帰ってそうそう、リアからそう訪ねられてから、一日が立った頃、2人はあっという間に打ち解けてしまい、今では唯一無二の親友となっていた。




☆☆☆


「それではそろそろ、王国に向かおうと思います。報奨金は後日届ける様に頼んでおくので、これで失礼します。色々とお世話になりました」


 精霊と契約をして、神獣を倒して家路について次の日、俺とルシアは、ヒートとリアに見送られて飛行場に来ていた。
 この世界は、科学力と言ったものは精霊が居たため乏しく、飛行機は存在しては居なかった。だが、風の精霊使いにより考案された、熱気球と風の組み合わせにより、空を飛んで移動することは可能なそうだ。


「いや、そうかしこまる必要はないぞ。これでも元冒険者だからな、久しぶりにスリルのある体験ができて良かったよ。それに神獣殺しのお陰で大量の金が貰えるからな」
「うん、寂しくなるけど、今までありがとう。とっても楽しかったよ!」


 2人は、そう言いながら俺たちに大きな袋をそれぞれ渡してきた。持ってみると、思ったよりも重たい。これはなんだろう?


「確か、お前は防具とかは持ってなかったよな?」
「はい、そうでけど」
「なら、よかった。その袋の中にはお前と精霊用の防具一式と軍資金、あと昼用の弁当を入れといたから、役立ててくれ」
「弁当がわたしが作ったから、ちゃんと全部食べて残さないでね!」
「わかったよ。二人ともありがとうございました」
『ありがとー』


 俺は二人から貰った袋を、昨日教えてもらった魔法袋に入れた。そして代わりに、朝ヒートから貰った、飛行艇のチケットを2枚取り出した。


「それでは、そろそろ行きます。本当に今までありがとうございました」
「ありがとー」
「ああ、達者でな。お前のいく先に良い未来があることを」
「元気でね……また、今度来てね!」
「ああ、わかった。また来るよ、約束する」


 俺はルシアと一緒に飛行艇のゲート付近に歩いていく。後ろを振り向くと二人は元気よく手を振ってくれていた。




「お客さま、失礼ですが、チケットをお見せいただいても構わないでしょうか?」
「はい」


 俺は先ほど取り出した、チケットを2枚、受付員に見せ、登場口に向かい階段を上っていく。階段の床には、赤い絨毯が綺麗に敷かれており、それだけ、この飛行艇が高価な物だということがわかる。


 それもそのはずだ。昨日の夜、ヒートにこの世界の科学力について聞いたが、冷蔵庫や洗濯機は存在してはいなかった。試しにそんな機械があったら便利ですよねと聞いても、精霊の力を借りたほうが早いと思うぞといわれるくらい、この世界は精霊の力に頼っている。
 だからこの世界は科学力が乏しい、そのため、こんななんてこともない飛行艇に見えるが、その開発資金には多額の金が使われており、さらに一回飛ぶのに高段者の風使いが何十人も必要だそうだ。


 そんなに効率の悪い、移動方法なら地面を歩いていった方が安く済むのではないのかという声も上がりそうなものだが、残念ながら、王国とこの町を結ぶ道には、龍の巣と呼ばれる、高レベルの龍がたくさん住む山があるそうで、歩いて通るのは限りなく0に近いとヒートは言ってたな。確か、精霊神クラスじゃないと、通ることが出来ない道だとか。
 そんなわけで、俺たちは飛行艇に乗り込んでいた。




 飛行艇内部は思ったよりも広々としていた。両脇には大きな窓が広がり、中央には高級そうな椅子がたくさん並んでいた。
 奥の方には、さらに高級な個室があるそうだが、あれは王族用や貴族用なので、俺たちは入ることは不可能だそうだ。


 早速、椅子に座り、ヒートから貰った防具の一覧を魔法の袋上で見てみる。袋ごとに詰め込んだのにも関わらず、綺麗に並んでいた。
えーと。


【魔法銃A・魔法服C・昼食・10万アルス】


 ふむふむ。
 魔法銃は昨日使ったから良いとして、魔法服って何だろう。
 あれ? 
 一覧を見ると、なぜか100番に一枚の紙が入っている。


【説明書】


 説明書?これはなんだろう?
 俺は早速、実現化してみる。すると、A4サイズ程の一枚の紙が現れた。紙には細かく文字が書かれており、一枚の地図が書かれていた。
 だが、何が書いているのかはわからない。


「なあ、ルシアはこの紙の文字は読めるか?」
『読めますよ…代わりに読みましょうか?』
「ああ、頼む」
『えーとですね、これは防具の説明と王国城の場所を示す地図ですね。まずは魔法服の説明からですね。魔法服は精霊による攻撃の3割を軽減する力があるそうです。あとは打撃攻撃も2割程度軽減する服のことだそうです。鎧とは異なり、一度身に付ければ見えないし、触ることも出来ないから気にはならないそうです。』


 なるほどな、一見すると2割、3割程度変わらないと思いがちになりそうだが、この世界ではいつ何が起きるかはわからないし少しでも身の安全を守れるっていうのはいいな、
 それに、一度身に付ければ消えてしまい気になららくなると言うもの良いな。


『それで、後は王国城に向かう道の案内書です。こちらは、まだ必要ではないですね』
「そうか。ありがとう、ルシア」
『いえいえ、この程度造作も無いことですよ』


 はあ、確かヒートの話では、王国に着くには半日はかかるそうだし、少し休むか。


「ルシアは眠くはならないのか?」
『眠く? 精霊には起きる、眠るといったのはありませんよ? 私が数千年眠りについたのは、なんか別の原因だと思いますし』
「そうか、じゃあ俺は寝るから、何かあったら教えてくれるか」
『いいですよー』
「じゃあ」


……







 そして俺は柔らかい椅子に倒れ込み、そして深い眠りに落ちた。





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