神獣殺しの精霊使い
第11話 野生の精霊
俺とヒートは精霊が居るとされている場所に来ていた。
日が暮れたせいか辺りは真っ暗でよく見えない。
「地図によるとこの辺らしいですね」
「ああ、だが地図の位置表示は最大100mの誤差があるからもしかしたらもう少し遠いかもしれん」
「100mも誤差があるんですか?」
「ああ、そうだ。だが森をやみくもに探し続けるよりは効率がいいだろう」
「そうですね……ん? あれ何してるんですか?」
ヒートは辺りの細い木、数本に長さ2mはあるだろう光る細い布を巻いていた。
「ああ、地図の場所がわかる様にしておこうと思ってな。これから最大100m程度離れることになるから目印があった方がいいだろう。それにこれで方向がわかるしな」
「方向?」
「ああ、北は赤い布、南は青い布、西は緑の布、東は黄色の布と言った具合に木にまいとけばわかりやすいだろ」
なるほどな、確かにこのままこのあたり周辺を適当に歩いて探すよりは北方向、南方向と探した方が効率はいいかもしれない。
ヒートって頭いいんだな。
「あとはこれだ。」
「石ですか?」
「ああ、一回北方向に行って、だいたい120歩くらい歩いたら近くの木の近くに置いておけ」
「これは何の役に立つんですか?」
「これはだな魔法道具の一つでだな、今いる場所から北、南、東、西方向にほぼ同じ距離に石を置くとだな中心から石までの距離が半径となり円が出来るんだ。そしたらこの地図に白い線で丸が表示されるようになるんだ」
「へえ、これがあれば100m先まで行かなくて済むようになるってことですか、便利ですね」
「ああ、まあ、石を置いてこなければならないってのが面倒だがな」
「じゃあ、俺はどの方向に行けばいいですかね?」
「ああ、北と東方向に置いてきてくれ。俺は南と西に置いてくるから」
「はい」
俺はヒートから石を2つ受けとった。
色は白色で綺麗だ。そして思ったよりも軽いな。
「ああ、そうだ。あと地図も持っていけ」
「いいんですか?」
「ああ、お前が契約しないと意味が無いからな。それに神獣が近づいているからそれを見ればいざとなったら逃げれるだろ」
「わかりました」
「ああ、そうだ二つとも置いたらあとはその辺を探せ。ここに戻ってくる必要はないからな」
「はい」
俺は頷き北方向に走っていく。
辺りは暗いが移動中ヒートからもらった、空飛ぶ火の玉のおかげで数m先なら見えるようになっている。
この火の玉はヒートが契約した炎の精霊によって作られたようで半日は明かりが持つ便利な物だということだ。
暗闇に輝く一つの火の玉。
まるで太陽みたいだな。
そう考えるうちに120を数えた。
この辺だな。
俺はヒートからもらった白い石を置いた。
すると白色だった石が光はじめ赤色となった。
ヒートが言う通りならこれで北の場所の登録は完了したはずだ。
……俺はもと来た道を引き返す。
次は東か。
北と同じく東にも石を置いた。
すると同じように赤く光った。
……しばらく待つと石が青色となった。
これで4つ全ての登録が終わり地図に丸い円が表示されるはずだけど。
俺は地図を開き確認してみる。
すると白く輝く線が増えていた。
俺は試しに移動してみると俺のアイコンである青が動いていた。そして白色の丸い線を越えてしまった。
うん、これなら精霊が居る場所を通り過ぎることもないだろう。
ふと、神獣を探すと地図の端の方に赤い点があり、ゆっくりとだが俺たちの方に近づいてきていた。
どうやら、神獣は俺たちのことを諦めたわけではないようだ。
まったくしつこい奴だ。
まあでも、これだけ離れてたら来るのに30分以上はかかりそうだ。それだけの時間があれば精霊を見つけることは出来るだろ。
……俺はまずは北と東の間の付近を探すことにする。
…………。
……。
…。
「見つかんねえええええ」
俺は精霊が見つからないことによるストレスで発狂した。
予想では100m程度の誤差など大したことが無いだろうと思ってたがどうやら違ったらしい。いくら円の中を隅々まで探しても精霊は見つけることが出来なかった。
ヒートが言うには野生の精霊は木の中に住んでおり、その木は他の木に比べ幹や枝が太く、また微妙に明かるいらしい。
だが俺が見つける木はどれもこれも細い木ばかりである。
たまに見つけるも光っておらず外ればかりだ。
本当にこの森に精霊は居るのだろうか?
たしか伝承では居ると言われているが、所詮は伝承。噂みたいなものだ。
もしかしたら昔の人々が作った嘘かもしれない。
それかもうすでに誰かが契約した後なのかもしれない。
……ひとまず俺は地図をもう一度確認してみる。
すると神獣がすぐそばに来ていることが分かった。
距離的には2キロ程度だろうか、さっきは8キロはあったはずだからかなり近づいたことになる。
それにしても神獣はどうやって俺たちを追っているんだろう?
俺たちはけもの道を通ったから植物を踏み倒してきた。だからそれに気づいた神獣がその道を通っているのかな。
はあ、こんなことなら隠蔽工作をしとけばよかった。
だが嘆いたところで何も変わらない。
はあ。
ひとまずはヒートと合流するか。
地図によるとこの辺りに精霊は居るらしいが発見できないし、神獣から一回逃げたほうがいいだろう。
よし。
俺は地図の青い点を探す。
すると俺から20.30m近くを移動している点があった。
おそらくヒートだろう。
そして俺から1キロ程度離れたところに赤い点があった。
神獣だ。思ったよりも近づいているな。
それになんだか移動スピードが速くなっている気がする。
さっきまではゆっくり移動していたのに倍くらいになったような気がする。
まあ気のせいだろう。
俺はそう思うことにし、ヒートの所に行くことにする。
――― - ―――
地図のおかげかヒートは簡単に見つかった。
ヒートは俺に気づくなり走ってくる。
「どうだ、見つかったか?」
「いえ、残念ながら見つからないです。それよりも神獣との距離が1kmを切ったので知らせに来ました」
「そうか、もうそんな近くまで来ていたか。だけど逃げるわけにはいかないぞ、下手したら探している精霊が神獣によって喰われてしまう可能性があるからな。そしたらもう俺たちは何も出来なくなる」
「……そうですか。確かにそうですね」
てっきり神獣が近づいてきたから逃げるのかと思っていたがそれはダメみたいだ。
祠の精霊と同じように喰われる……確かにその通りだ。
例え、俺たちが逃げたとしても神獣が追ってくるという保証は無い。
むしろ、精霊の存在に気づいたら神獣は俺たちではなく精霊を狙うのかもしれない。
神獣にとって精霊は食べ物なのだ。
俺たちは食べ物ではない……と思いたい。
たしか……神獣は精霊を食べることで生命エネルギーに変換し活動してい る。
これは精霊が持つ莫大な力を利用しているのだろう。
人には魔力はあるが精霊の持つ力とは違うような気がする。
例えれば、神獣は車、精霊は石油、人は灯油みたいなものだろうか。
神獣が動くためには必要なエネルギーは精霊と人、どちらの力でもいいがどちらが効率がいいかと言われれば精霊の方だろう。
人をたくさん喰えばエネルギーは少しずつだがたまるだろう。
だが精霊を食べれば一瞬でたまるのだ。
なら、人ではなく精霊を狙うだろう。
だからヒートの言う通り神獣から逃げるのではなく精霊を探した方がいいのかもしれない。
「わかりました、ギリギリまで探しましょう」
「ああ、その方がいいだろう」
「……それで北方面には精霊はいませんでした。南方面もそうですか?」
「南にもそれっぽいのは無かったな、あと西、東もそれとなく探したが無かった」
「そうですか……本当に精霊は居るんでしょうか?」
もしやこの地に精霊はいないかもしれない。
地図が間違っているという可能性もあるし
それこそ、この点滅する点は精霊ではないのかもしれない。
だがヒートは首を縦に振り言う。
「ああ、いるはずだ。地図は絶対だからな」
「絶対ですか?」
「ああ、現に地図が正しいおかげで俺を探すことが出来たんだろ?」
「そうですけど」
ヒートは自信たっぷりに言い切った。
たしかにヒートの言うことは間違えていないように聞こえる。
だけど、なぜだろうか。
なんだが違和感がある。
地図に関してはヒートの言うとおりだ。
移動中のヒートを簡単に探すことが出来たのは明らかに地図のおかげだ。
ヒートの言う通り地図は正しいのだろう。
だから地図の点滅する場所に精霊が居ないということは無いらしい。
だけどなんだか違和感がある。
俺は何が気になってるんだろう。
「それに、この地図は昔旅をしていた際に有名な商人に売ってもらったものだ。少なくとも偽物と言うこともあり得ない」
「ふーむ」
「いったい何が気になるんだ?」
ヒートは苛立ちながら俺を問いただす。
確かにこの近くには神獣が近づいてきているのだ。
焦る気持ちもわからなくはない。
だけど、この違和感が精霊を見つける手掛かりになっているような気がするのだ。
うーむ。
俺はもう一度地図を見てみる。
すると俺たち二人の青い点と神獣の赤い点、そして精霊の点滅する点が表示される。
いたって普通だ。
何もおかしくは無い。
俺とヒートは近くに表示されているし、距離的にも2mくらいしか地図でも離れていない。
「あの、この地図って拡大することは出来ないんですか?」
「拡大?できるぞ、地図に右手で触れればその部分を中心にして拡大、左でを触れればその部分を中心に拡小される」
「なるほど」
俺はさっそく俺とヒートの付近を拡大してみる。
拡大しても近くに居るためか点と点の距離は変わらない。
そして拡大し続けると、二つの大きな点が表示された。
下の方には距離という項目が増えていた。
俺は距離の項目を触れてみる。
すると選びたい点と点を触れてくださいと書かれている。
俺はさっそくヒートと俺を触れて距離を測る。
すると1mと表示された。
どうやら地図として間違えてはいないようだ。
俺は神獣との距離も調べてみる。
すると800mと表示された。
だが先ほどとは違く誤差は10mとなっている。
これがヒートの言うところの誤差と言うやつだろう。
うん、あれ?
もしかしてだけど?
「あの、一つ聞きたいんですがいいですか?」
俺は隣に座っているヒートに訪ねる。
ヒートもこのまま適当に探し続けるのは無理なことがわかっているのか、先ほどまでとは違く冷静になっていた。
「なんだ?」
「いえ、この地図を今まで使ったことはありますか?」
「ああ、あるぞ。まだ俺が旅人だった頃、50人以上の盗賊団に出会ってしまったことがあってだな、その際に逃げる時に使ったんだ。結果的に逃げることには成功したが、居ないはずの所から盗賊が出てきてビックリしたものだ。そのときだな、この地図が誤差があると気づいたのは」
「その時に地図は拡大はしましたか?」
「拡大?するわけないだろ。例え100m近くのどこにだれが居るか知っていても50人から逃げれないしな」
なるほどな、ヒートに聞いてやっと違和感の正体がわかった。
つまりはあれだ。
ヒートの言葉から察するに、この地図の使い方次第で誤差は変わるのだ。
例えばA点からB点に行きたいとする。
その時、距離が遠いほど地図は拡小させて、今自分がどこにいるのかわかる様にする。
結果的に簡単にB点に行くことが出来る。
だが考えてみても欲しい。
B点に着いたとしても地図は拡小してるのだ。
ということはだ、地図ではA点がB点のすぐ目の前まで来るようにしても、実際は距離がまだあるのだ。
だから正確なB点に行くためには地図を拡大してみる必要がある。
するとさっき俺とヒートの距離を測ったみたいに誤差が無くなる。
簡単に考えると大雑把にとらえるには拡大する必要はないが、細かい場所に行くためには地図を拡大させる必要があるのだろう。
だからヒートは俺に100m程度の誤差があると言ったのだろう。
確かにこの地図は半径が10kmある。だから拡大しなかったらいくら近くとはいえそれくらいの誤差は生じるだろう。
俺はヒートに考え付いた結論を話してみる。
全て話し終えるとヒートはなるほどなと言った。
「確かにその話の通りならば、見つからないのもうなずけるな。だが、それにしても拡大するなど考えたことが無かった……それなら精霊は最初に訪れた場所ではなく少し離れた場所なのか」
「はい」
俺は地図を拡大し精霊と俺たちがギリギリ地図の中に移るようにする。
距離検索をしてみると移動距離は60m、誤差は0.8mと表示された。
これなら簡単に精霊を見つけれるだろう。
それに、拡大する前に神獣との距離を測ると450mだったから、おそらくなんとかなるだろう。
俺とヒートはせまりくる神獣よりも先に精霊と出会うため地図を使いその場に行くことにする。ヒートが言うには森に居る精霊は上級精霊のため契約を結べれば神獣は倒せる可能性が高いということだ。
まあ、何にせよ精霊と契約を結ぶために俺たちは精霊の場所に向けて走り出す。
日が暮れたせいか辺りは真っ暗でよく見えない。
「地図によるとこの辺らしいですね」
「ああ、だが地図の位置表示は最大100mの誤差があるからもしかしたらもう少し遠いかもしれん」
「100mも誤差があるんですか?」
「ああ、そうだ。だが森をやみくもに探し続けるよりは効率がいいだろう」
「そうですね……ん? あれ何してるんですか?」
ヒートは辺りの細い木、数本に長さ2mはあるだろう光る細い布を巻いていた。
「ああ、地図の場所がわかる様にしておこうと思ってな。これから最大100m程度離れることになるから目印があった方がいいだろう。それにこれで方向がわかるしな」
「方向?」
「ああ、北は赤い布、南は青い布、西は緑の布、東は黄色の布と言った具合に木にまいとけばわかりやすいだろ」
なるほどな、確かにこのままこのあたり周辺を適当に歩いて探すよりは北方向、南方向と探した方が効率はいいかもしれない。
ヒートって頭いいんだな。
「あとはこれだ。」
「石ですか?」
「ああ、一回北方向に行って、だいたい120歩くらい歩いたら近くの木の近くに置いておけ」
「これは何の役に立つんですか?」
「これはだな魔法道具の一つでだな、今いる場所から北、南、東、西方向にほぼ同じ距離に石を置くとだな中心から石までの距離が半径となり円が出来るんだ。そしたらこの地図に白い線で丸が表示されるようになるんだ」
「へえ、これがあれば100m先まで行かなくて済むようになるってことですか、便利ですね」
「ああ、まあ、石を置いてこなければならないってのが面倒だがな」
「じゃあ、俺はどの方向に行けばいいですかね?」
「ああ、北と東方向に置いてきてくれ。俺は南と西に置いてくるから」
「はい」
俺はヒートから石を2つ受けとった。
色は白色で綺麗だ。そして思ったよりも軽いな。
「ああ、そうだ。あと地図も持っていけ」
「いいんですか?」
「ああ、お前が契約しないと意味が無いからな。それに神獣が近づいているからそれを見ればいざとなったら逃げれるだろ」
「わかりました」
「ああ、そうだ二つとも置いたらあとはその辺を探せ。ここに戻ってくる必要はないからな」
「はい」
俺は頷き北方向に走っていく。
辺りは暗いが移動中ヒートからもらった、空飛ぶ火の玉のおかげで数m先なら見えるようになっている。
この火の玉はヒートが契約した炎の精霊によって作られたようで半日は明かりが持つ便利な物だということだ。
暗闇に輝く一つの火の玉。
まるで太陽みたいだな。
そう考えるうちに120を数えた。
この辺だな。
俺はヒートからもらった白い石を置いた。
すると白色だった石が光はじめ赤色となった。
ヒートが言う通りならこれで北の場所の登録は完了したはずだ。
……俺はもと来た道を引き返す。
次は東か。
北と同じく東にも石を置いた。
すると同じように赤く光った。
……しばらく待つと石が青色となった。
これで4つ全ての登録が終わり地図に丸い円が表示されるはずだけど。
俺は地図を開き確認してみる。
すると白く輝く線が増えていた。
俺は試しに移動してみると俺のアイコンである青が動いていた。そして白色の丸い線を越えてしまった。
うん、これなら精霊が居る場所を通り過ぎることもないだろう。
ふと、神獣を探すと地図の端の方に赤い点があり、ゆっくりとだが俺たちの方に近づいてきていた。
どうやら、神獣は俺たちのことを諦めたわけではないようだ。
まったくしつこい奴だ。
まあでも、これだけ離れてたら来るのに30分以上はかかりそうだ。それだけの時間があれば精霊を見つけることは出来るだろ。
……俺はまずは北と東の間の付近を探すことにする。
…………。
……。
…。
「見つかんねえええええ」
俺は精霊が見つからないことによるストレスで発狂した。
予想では100m程度の誤差など大したことが無いだろうと思ってたがどうやら違ったらしい。いくら円の中を隅々まで探しても精霊は見つけることが出来なかった。
ヒートが言うには野生の精霊は木の中に住んでおり、その木は他の木に比べ幹や枝が太く、また微妙に明かるいらしい。
だが俺が見つける木はどれもこれも細い木ばかりである。
たまに見つけるも光っておらず外ればかりだ。
本当にこの森に精霊は居るのだろうか?
たしか伝承では居ると言われているが、所詮は伝承。噂みたいなものだ。
もしかしたら昔の人々が作った嘘かもしれない。
それかもうすでに誰かが契約した後なのかもしれない。
……ひとまず俺は地図をもう一度確認してみる。
すると神獣がすぐそばに来ていることが分かった。
距離的には2キロ程度だろうか、さっきは8キロはあったはずだからかなり近づいたことになる。
それにしても神獣はどうやって俺たちを追っているんだろう?
俺たちはけもの道を通ったから植物を踏み倒してきた。だからそれに気づいた神獣がその道を通っているのかな。
はあ、こんなことなら隠蔽工作をしとけばよかった。
だが嘆いたところで何も変わらない。
はあ。
ひとまずはヒートと合流するか。
地図によるとこの辺りに精霊は居るらしいが発見できないし、神獣から一回逃げたほうがいいだろう。
よし。
俺は地図の青い点を探す。
すると俺から20.30m近くを移動している点があった。
おそらくヒートだろう。
そして俺から1キロ程度離れたところに赤い点があった。
神獣だ。思ったよりも近づいているな。
それになんだか移動スピードが速くなっている気がする。
さっきまではゆっくり移動していたのに倍くらいになったような気がする。
まあ気のせいだろう。
俺はそう思うことにし、ヒートの所に行くことにする。
――― - ―――
地図のおかげかヒートは簡単に見つかった。
ヒートは俺に気づくなり走ってくる。
「どうだ、見つかったか?」
「いえ、残念ながら見つからないです。それよりも神獣との距離が1kmを切ったので知らせに来ました」
「そうか、もうそんな近くまで来ていたか。だけど逃げるわけにはいかないぞ、下手したら探している精霊が神獣によって喰われてしまう可能性があるからな。そしたらもう俺たちは何も出来なくなる」
「……そうですか。確かにそうですね」
てっきり神獣が近づいてきたから逃げるのかと思っていたがそれはダメみたいだ。
祠の精霊と同じように喰われる……確かにその通りだ。
例え、俺たちが逃げたとしても神獣が追ってくるという保証は無い。
むしろ、精霊の存在に気づいたら神獣は俺たちではなく精霊を狙うのかもしれない。
神獣にとって精霊は食べ物なのだ。
俺たちは食べ物ではない……と思いたい。
たしか……神獣は精霊を食べることで生命エネルギーに変換し活動してい る。
これは精霊が持つ莫大な力を利用しているのだろう。
人には魔力はあるが精霊の持つ力とは違うような気がする。
例えれば、神獣は車、精霊は石油、人は灯油みたいなものだろうか。
神獣が動くためには必要なエネルギーは精霊と人、どちらの力でもいいがどちらが効率がいいかと言われれば精霊の方だろう。
人をたくさん喰えばエネルギーは少しずつだがたまるだろう。
だが精霊を食べれば一瞬でたまるのだ。
なら、人ではなく精霊を狙うだろう。
だからヒートの言う通り神獣から逃げるのではなく精霊を探した方がいいのかもしれない。
「わかりました、ギリギリまで探しましょう」
「ああ、その方がいいだろう」
「……それで北方面には精霊はいませんでした。南方面もそうですか?」
「南にもそれっぽいのは無かったな、あと西、東もそれとなく探したが無かった」
「そうですか……本当に精霊は居るんでしょうか?」
もしやこの地に精霊はいないかもしれない。
地図が間違っているという可能性もあるし
それこそ、この点滅する点は精霊ではないのかもしれない。
だがヒートは首を縦に振り言う。
「ああ、いるはずだ。地図は絶対だからな」
「絶対ですか?」
「ああ、現に地図が正しいおかげで俺を探すことが出来たんだろ?」
「そうですけど」
ヒートは自信たっぷりに言い切った。
たしかにヒートの言うことは間違えていないように聞こえる。
だけど、なぜだろうか。
なんだが違和感がある。
地図に関してはヒートの言うとおりだ。
移動中のヒートを簡単に探すことが出来たのは明らかに地図のおかげだ。
ヒートの言う通り地図は正しいのだろう。
だから地図の点滅する場所に精霊が居ないということは無いらしい。
だけどなんだか違和感がある。
俺は何が気になってるんだろう。
「それに、この地図は昔旅をしていた際に有名な商人に売ってもらったものだ。少なくとも偽物と言うこともあり得ない」
「ふーむ」
「いったい何が気になるんだ?」
ヒートは苛立ちながら俺を問いただす。
確かにこの近くには神獣が近づいてきているのだ。
焦る気持ちもわからなくはない。
だけど、この違和感が精霊を見つける手掛かりになっているような気がするのだ。
うーむ。
俺はもう一度地図を見てみる。
すると俺たち二人の青い点と神獣の赤い点、そして精霊の点滅する点が表示される。
いたって普通だ。
何もおかしくは無い。
俺とヒートは近くに表示されているし、距離的にも2mくらいしか地図でも離れていない。
「あの、この地図って拡大することは出来ないんですか?」
「拡大?できるぞ、地図に右手で触れればその部分を中心にして拡大、左でを触れればその部分を中心に拡小される」
「なるほど」
俺はさっそく俺とヒートの付近を拡大してみる。
拡大しても近くに居るためか点と点の距離は変わらない。
そして拡大し続けると、二つの大きな点が表示された。
下の方には距離という項目が増えていた。
俺は距離の項目を触れてみる。
すると選びたい点と点を触れてくださいと書かれている。
俺はさっそくヒートと俺を触れて距離を測る。
すると1mと表示された。
どうやら地図として間違えてはいないようだ。
俺は神獣との距離も調べてみる。
すると800mと表示された。
だが先ほどとは違く誤差は10mとなっている。
これがヒートの言うところの誤差と言うやつだろう。
うん、あれ?
もしかしてだけど?
「あの、一つ聞きたいんですがいいですか?」
俺は隣に座っているヒートに訪ねる。
ヒートもこのまま適当に探し続けるのは無理なことがわかっているのか、先ほどまでとは違く冷静になっていた。
「なんだ?」
「いえ、この地図を今まで使ったことはありますか?」
「ああ、あるぞ。まだ俺が旅人だった頃、50人以上の盗賊団に出会ってしまったことがあってだな、その際に逃げる時に使ったんだ。結果的に逃げることには成功したが、居ないはずの所から盗賊が出てきてビックリしたものだ。そのときだな、この地図が誤差があると気づいたのは」
「その時に地図は拡大はしましたか?」
「拡大?するわけないだろ。例え100m近くのどこにだれが居るか知っていても50人から逃げれないしな」
なるほどな、ヒートに聞いてやっと違和感の正体がわかった。
つまりはあれだ。
ヒートの言葉から察するに、この地図の使い方次第で誤差は変わるのだ。
例えばA点からB点に行きたいとする。
その時、距離が遠いほど地図は拡小させて、今自分がどこにいるのかわかる様にする。
結果的に簡単にB点に行くことが出来る。
だが考えてみても欲しい。
B点に着いたとしても地図は拡小してるのだ。
ということはだ、地図ではA点がB点のすぐ目の前まで来るようにしても、実際は距離がまだあるのだ。
だから正確なB点に行くためには地図を拡大してみる必要がある。
するとさっき俺とヒートの距離を測ったみたいに誤差が無くなる。
簡単に考えると大雑把にとらえるには拡大する必要はないが、細かい場所に行くためには地図を拡大させる必要があるのだろう。
だからヒートは俺に100m程度の誤差があると言ったのだろう。
確かにこの地図は半径が10kmある。だから拡大しなかったらいくら近くとはいえそれくらいの誤差は生じるだろう。
俺はヒートに考え付いた結論を話してみる。
全て話し終えるとヒートはなるほどなと言った。
「確かにその話の通りならば、見つからないのもうなずけるな。だが、それにしても拡大するなど考えたことが無かった……それなら精霊は最初に訪れた場所ではなく少し離れた場所なのか」
「はい」
俺は地図を拡大し精霊と俺たちがギリギリ地図の中に移るようにする。
距離検索をしてみると移動距離は60m、誤差は0.8mと表示された。
これなら簡単に精霊を見つけれるだろう。
それに、拡大する前に神獣との距離を測ると450mだったから、おそらくなんとかなるだろう。
俺とヒートはせまりくる神獣よりも先に精霊と出会うため地図を使いその場に行くことにする。ヒートが言うには森に居る精霊は上級精霊のため契約を結べれば神獣は倒せる可能性が高いということだ。
まあ、何にせよ精霊と契約を結ぶために俺たちは精霊の場所に向けて走り出す。
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