第三十話　開戦

　　　　～島崎　目線～
矢田部がいなくなってから2カ月が過ぎた。
悠人くんは主人公補正できっと生きているだろう。
でも、矢田部は？
普通あんなところから落ちたら死んじゃう。
彼が落ちた瞬間、私の頭は真っ白になった。
なにも出来ず、ただ彼が落ちていく様を見ていた。
彼が消えたと同時に自分の意識が戻った。

気づいたら私は部屋にいた。
そして、泣いていた。
何もできなかった自分への怒りと彼を死なせてしまった悲しみで叫んでいた。

それから私は必死に練習して強くなった。
王様に頼み夜中までひたすらダンジョンで切って、撃って、守って、殺してきた。
ただひたすら泣くのを我慢し、鍛錬を続けた。

「エナガさん、あんまり無理しちゃだめですよ！」
「ありがとう、ティアラさん。私は大丈夫ですので気にしないでください」

開戦まで残り1カ月、ついに戦闘機が完成した。
彼の工房には他にもバイクや他の武器などの
設計図がありグスタフさんに頼みそれらを作ってもらった。

「エナガちゃん、これを……」
「こ、これは？」
「ヤガラス君の工房に設計図があったんだ。すごい仕組みだよこれ。握ると魔力に反応して中にある魔石が回転してその魔石の属性攻撃が出せるようになっているんだ」

私はその設計図を見た。
この剣の名前はどうやらエーギタロスというらしい。
剣のつかの部分には鳥の絵が彫られていた。
どう意味かは分からなかったが次の文を読んで私は目を見開いた。

【武器案：エーギタロス】
【使用者　島崎　恵奈賀】

今日だけは泣いていいかな。
いいよね。

開戦当日、私はクラスは違えどみんなと王国騎士団の大群と国の冒険者の皆さんと魔王軍の大群を前にしていた。どうやら冒険者の間で注目されているパーティーがあるらしい。
おそらく悠人くんのパーティーだろう。いつの間にか麻衣ちゃんもいなくなっている。

練習の成果もあり私は王城一番の戦士となった。
私の腰にはあいつの剣があり覚悟を決めたその瞬間だった。
開戦の合図がなった