第一話　真実とミッション

「君に頼みがある。単刀直入に言おう。田村たむら 悠人はると
を主人公にしてくれ」
「……」
「こりゃ全然聞いてないな」

とりあえず今の状況を整理しよう。俺は悠人(はると漢字ふりがな)
を虐めから守ってて、その後教室の床が光ってよし、キタコレと思っていて、気づいたら俺は真っ白な部屋の中一人の美少女と二人っきり……というわけでもなく、目の前には素晴らしいほどのイケメンがいる。ちっ、男か。
とりあえず、深呼吸しよう。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！！！」



「落ち着いたか」
「まぁ、はい。……あの、あなたは誰ですか」
「ため口でいいよ。私はこの世界を作ったアレクサンダーというものだ」

白衣を身にまとった男はそう言った。

「……神……なんですか？」
「まぁ、そうとも言えるね。実際、私が作ったからな。実は君たちの世界は私たちの世界に似せたデータなのだ」
「え、どういうこと……？」
「つまり、君らの世界は『コンピューター』の中だ」

は？こいつは何を言ってるんだ？
なんだ、これはSAN値でも減らせばいいのか？
って、そういう場合じゃない。
とりあえず質問をしていこう。

「それよりここはどこですか。いや、割とマジで」
「あぁ、ここは前に作ったテスト部屋だ」
あ～、うん、わかんない。
「まぁ、とりあえずそこに座って落ち着いてくれ」

後ろを見ると突然、椅子が出てきた。
混乱していてもしょうがないので、俺は座ることにした。

「よし、とりあえず改めて自己紹介しよう。私の名前はアレクサンダー＝フォイダー。この世界を作った物理学者だ。この世界は粒子コンピューターという機械の中にいあるのだ。まぁ、わかると思うが君を呼んだのは私だ、矢田部やたべ 谷鴉やがらすくん」
「あの、えっと、なんで俺なんですか？」
「あぁ、それはだね。私の研究の一環だ。安心したまえ君たちにはできるだけ関わらないよう努力する」
「いや、もうこの時点で大変なことだと思いますよ」

話を要約すると
実は彼の今回の研究は“ラノベのようなことが起きたら人間は一体どうなるのか”というものなのだそうだ。彼の世界は娯楽が少ないため、ラノベにありそうなことを実際起こしたらどうなるのかと思ったらしい。

しかしあのように主人公がラッキースケベなどが起こる確率なんてほとんど０に等しい。そこで俺が悠人を主人公のような状態にさせる。という事らしい

「つまりあなたが言いたいのは、俺が重要人物になってあいつを主人公にするということ。ということですね。でも何で俺らをえらんだのですか？」
「ランダムだ」
「えぇ、いきなり呼んでおいてそんな風にお願いされても……」
「もちろん報酬をやろ一一」
「やります」

報酬と聞いてはやらなければならない！

「おぅ、そうか。ありがとう。そうだな、何か一つ願いでも叶えてあげよう。あぁ、ちなみに君たちの行動は全て、記録するつもりだ」
「えぇ……、そういう趣味があったんですか。キャッ、エッチ……」

やはりやめておくべきだろうか。流石に変態の手伝いは精神が狂う。

「違う！そうじゃない！研究記録として君たちの動きを見るだけだ」
「えぇ、でも……」
「矢田部やたべ　谷鴉やがらす
　16歳。高校生　演劇部に所属し、好きな人は一一」
「あぁぁ！はいはい！ワカリマシタ……」

どうやら俺はやらなければならないらしい。

「そういえば、見るのはあなた一人だけなんですか？」
「いいや、私を含めて17人だ」
　
なるほど、つまり俺は本の中にいる一人のキャラクターってことか。はぁ、とりあえず、いくつか準備しなくてはな。幸い彼は主人公に向いている。これがいわゆる“舞台裏“ってことだな。なるほど。

とりあえず見ている科学者のみんなに自己紹介しよう。
今回の主人公の補佐になった俺こと矢田部やたべ 谷鴉やがらす
である。今回から見ている研究者のみんなにわかりやすくするために、俺がナレーターになろう。わかる範囲で説明などはしていくつもりだ。
そうだ！

「なぁ、俺に準備時間をくれ」
「いいだろう私もできるだけ協力するつもりだ。だがそれができるのは最初のこの時間だ。」
「わかった。とりあえず明日また呼んでくれ」
「いや、もう一回だけ今日を繰り返してやろう。君は朝起きると元の世界で布団の中だ。わかったね」

すげぇ、そんなこともできるのかよ
そう考えていると、目の前が真っ暗になり体がすーっと軽くなった。