不死
戦
あれから七十年たった。
周りに知り合いは殆どいなくなったが、また新しい知り合いが出来ては消え、その繰り返しだ。
そして、ようやく俺は、すべての技術において、それらの頂点を越えることに成功した。
魔術に至っては、五十年前から俺がずっと頂点だ。
まぁ、それらを教えてくれた人たちは既に故人だが…
しかし、最近はまた色々なものを習っている。どちらかと言えば戦闘特化した訓練。
槍術、棒術、弓術、槌術、鎖術、刀術、召喚術、などなどだ。
「ラビエンテさんー」
「ん?」
あれは召喚術を教えてくれるやつだな。
「どうした」
「はぁっ、王都ニンベルグに、王都バーサクが戦争を宣言してきました」
「はぁ?何故?」
「お前たちが不死を匿っているのが分かった。直ちに回収する。従わなければ全面戦争に出てもいい、とのことで…」
「あぁ、そういう」
「王はそれを認めず…」
「分かった…いつ頃だ?戦争開始は」
「多分」
◇
一月が経った。
しかし、王都ニンベルグの動きは全くと言って良いほどにない。
どういうことだ?
王都バーサクの兵士たちは疑問に思う。
こんなにらみあうような戦では無駄にこちらが戦力を減らしているだけだな、と。
ならば、何故我々はいつまでもここにいて、いつでも戦えるようにしているのだろうか。
──が、王曰く
不死はイレギュラーである。警戒は怠れない、とのこと。
そんな中、一人の兵士、ラルグは胡座をかいて、慢心していた。
目の前には多くの兵。仮に突っ込んできても、誰かが反応して分かるし、別にそこまで徹底する必要はねぇだろう、と。
さらに、仮に突っ込んできても、それが不死という異常な輩であれば、皆対応出来ないに決まっている。
ラルグの考えは概ね正しいと言えなくもない。が、正しくは無い。
不死という異常な輩でなくとも、普通の雑兵が来ることも考えられる。
王都バーサクと王都ニンベルグでは、人口的にニンベルグの方が多い。故に、バーサクから歩を進めるのは少々不利。
ならば、向こうの食料や戦力の低下を図り、待機するというのもまた一考の余地がある選択肢の一つではあった。
しかし、不死というイレギュラーがいるのなら話は別では無いか。
ラルグはそろそろ退屈になってきたので、周りの兵に話しかける。
「なぁ、不死ってのはどんなやつだと思う?」
「さぁな?だが不死というくらいだし──ベボゴッ」
「…は?」
ラルグは何も理解出来なかった。
理解を拒んだ。
急に、はなしかけていた兵の頭部が弾け飛んだのだから。
周りに脳漿をぶちまけ、血とともに大量の変な液を浴びる。
「え、あ」
そして、周りを見て気がつく。
(俺の周りに誰一人立ってねぇ)
全員、死んでいた。
死に方は様々だが、胴体に風穴を開けられた者、両腕が消滅し、失血死したもの、喉元を掻き切られ、死んだもの。
「…?なんで…なんでだ」
何故気付かなかった?気付けなかった?
涙声になりながらも、これは報告するべき事態だと、ラルグは撤退を始めるが、
「!?」
急に地面がぶつかってきた。
否。
転んだ。
ガクッと力が抜けたのだ。
「?」
何かに躓いただろうか、と足下を確認し、ラルグは後悔した。
「あ、あぁぁあ」
自分の脚が無くなっていた。
大量の血が溢れる。
「よっ」
「あぷ」
軽快な声とともに、ラルグの頭部は爆散した。
眼球や、脳髄が飛び出しながら。
「うげぇ、気持ち悪いですぅ」
「まぁまぁ…しかし、流石だな」
◇
ニンベルグ側では、大したことはしていなかった。
戦争に向かわせたのは、おおよそ十人程度。
が、全て国の最高戦力。
しかし、その十人程度でさえ戦わない。
主に戦うのは、一人。
「この俺だけだ!ガハハ!」
ラビエンテ一人である。
魔術戦においては、敵う者なし。
対戦術においても天才的であり、魔術を抜きにしても、最高戦力と十二分に呼べる程の者。
「さぁて、そろそろ仕掛けるか」
一月も待ったのは、色々な準備があったのと、相手がそろそろ不安になってくるころだと見計らって、である。
「いくぜ、お前ら」
「おうっ!!」
ラビエンテの後ろに続くのは、ラビエンテに戦術を教えているものたち。が、実際にはラビエンテの方が強いので、序列的にはこうなる。
「先制を仕掛けるとするか。まぁ、お前たちクラスなら、多少対策はとってるだろぅが、それ以外の雑兵にはとってないだろうな。99-5 時間停止」
瞬間、全てが止まる。
が、動ける者たちがいた。
「おお、これが時間停止…なんか動きづらいっすね」
「まぁ、多少はな…じゃ、いってくる。20-4 疾風」
ドンと勢いよくラビエンテは飛び出していった。
「はえ~」
そして、その先に見える、小さな子集団を攻撃する。
攻撃手段は様々だが、訓練で習ったことをすればいい。
「ほっ、よっ」
ありとあらゆる殺戮を終えた後、ラビエンテは再び駆け抜ける。
「…ラビエンテさん、一人残してますよ…」
「わざと…かしら?」
「さぁ…とりあえず殺しておきますか…よっ」
男は両脚を無くした男にたいして肘で頭を撃ち抜いた。
「うげぇ、気持ち悪いですぅ」
「まぁまぁ、しかし、流石だな」
動きが速すぎる。これは、決着がつくのが速そうだ、とそう男は思った。
周りに知り合いは殆どいなくなったが、また新しい知り合いが出来ては消え、その繰り返しだ。
そして、ようやく俺は、すべての技術において、それらの頂点を越えることに成功した。
魔術に至っては、五十年前から俺がずっと頂点だ。
まぁ、それらを教えてくれた人たちは既に故人だが…
しかし、最近はまた色々なものを習っている。どちらかと言えば戦闘特化した訓練。
槍術、棒術、弓術、槌術、鎖術、刀術、召喚術、などなどだ。
「ラビエンテさんー」
「ん?」
あれは召喚術を教えてくれるやつだな。
「どうした」
「はぁっ、王都ニンベルグに、王都バーサクが戦争を宣言してきました」
「はぁ?何故?」
「お前たちが不死を匿っているのが分かった。直ちに回収する。従わなければ全面戦争に出てもいい、とのことで…」
「あぁ、そういう」
「王はそれを認めず…」
「分かった…いつ頃だ?戦争開始は」
「多分」
◇
一月が経った。
しかし、王都ニンベルグの動きは全くと言って良いほどにない。
どういうことだ?
王都バーサクの兵士たちは疑問に思う。
こんなにらみあうような戦では無駄にこちらが戦力を減らしているだけだな、と。
ならば、何故我々はいつまでもここにいて、いつでも戦えるようにしているのだろうか。
──が、王曰く
不死はイレギュラーである。警戒は怠れない、とのこと。
そんな中、一人の兵士、ラルグは胡座をかいて、慢心していた。
目の前には多くの兵。仮に突っ込んできても、誰かが反応して分かるし、別にそこまで徹底する必要はねぇだろう、と。
さらに、仮に突っ込んできても、それが不死という異常な輩であれば、皆対応出来ないに決まっている。
ラルグの考えは概ね正しいと言えなくもない。が、正しくは無い。
不死という異常な輩でなくとも、普通の雑兵が来ることも考えられる。
王都バーサクと王都ニンベルグでは、人口的にニンベルグの方が多い。故に、バーサクから歩を進めるのは少々不利。
ならば、向こうの食料や戦力の低下を図り、待機するというのもまた一考の余地がある選択肢の一つではあった。
しかし、不死というイレギュラーがいるのなら話は別では無いか。
ラルグはそろそろ退屈になってきたので、周りの兵に話しかける。
「なぁ、不死ってのはどんなやつだと思う?」
「さぁな?だが不死というくらいだし──ベボゴッ」
「…は?」
ラルグは何も理解出来なかった。
理解を拒んだ。
急に、はなしかけていた兵の頭部が弾け飛んだのだから。
周りに脳漿をぶちまけ、血とともに大量の変な液を浴びる。
「え、あ」
そして、周りを見て気がつく。
(俺の周りに誰一人立ってねぇ)
全員、死んでいた。
死に方は様々だが、胴体に風穴を開けられた者、両腕が消滅し、失血死したもの、喉元を掻き切られ、死んだもの。
「…?なんで…なんでだ」
何故気付かなかった?気付けなかった?
涙声になりながらも、これは報告するべき事態だと、ラルグは撤退を始めるが、
「!?」
急に地面がぶつかってきた。
否。
転んだ。
ガクッと力が抜けたのだ。
「?」
何かに躓いただろうか、と足下を確認し、ラルグは後悔した。
「あ、あぁぁあ」
自分の脚が無くなっていた。
大量の血が溢れる。
「よっ」
「あぷ」
軽快な声とともに、ラルグの頭部は爆散した。
眼球や、脳髄が飛び出しながら。
「うげぇ、気持ち悪いですぅ」
「まぁまぁ…しかし、流石だな」
◇
ニンベルグ側では、大したことはしていなかった。
戦争に向かわせたのは、おおよそ十人程度。
が、全て国の最高戦力。
しかし、その十人程度でさえ戦わない。
主に戦うのは、一人。
「この俺だけだ!ガハハ!」
ラビエンテ一人である。
魔術戦においては、敵う者なし。
対戦術においても天才的であり、魔術を抜きにしても、最高戦力と十二分に呼べる程の者。
「さぁて、そろそろ仕掛けるか」
一月も待ったのは、色々な準備があったのと、相手がそろそろ不安になってくるころだと見計らって、である。
「いくぜ、お前ら」
「おうっ!!」
ラビエンテの後ろに続くのは、ラビエンテに戦術を教えているものたち。が、実際にはラビエンテの方が強いので、序列的にはこうなる。
「先制を仕掛けるとするか。まぁ、お前たちクラスなら、多少対策はとってるだろぅが、それ以外の雑兵にはとってないだろうな。99-5 時間停止」
瞬間、全てが止まる。
が、動ける者たちがいた。
「おお、これが時間停止…なんか動きづらいっすね」
「まぁ、多少はな…じゃ、いってくる。20-4 疾風」
ドンと勢いよくラビエンテは飛び出していった。
「はえ~」
そして、その先に見える、小さな子集団を攻撃する。
攻撃手段は様々だが、訓練で習ったことをすればいい。
「ほっ、よっ」
ありとあらゆる殺戮を終えた後、ラビエンテは再び駆け抜ける。
「…ラビエンテさん、一人残してますよ…」
「わざと…かしら?」
「さぁ…とりあえず殺しておきますか…よっ」
男は両脚を無くした男にたいして肘で頭を撃ち抜いた。
「うげぇ、気持ち悪いですぅ」
「まぁまぁ、しかし、流石だな」
動きが速すぎる。これは、決着がつくのが速そうだ、とそう男は思った。
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