不死

ノベルバユーザー428326

魔術

海を泳いで三年近く。
とある孤島にたどり着く。そこにはちらほらと集落が見られた。

「ハッハー、一応人はいるのか」

さてと、挨拶でもするか。



二十年後。

「さぁて、今日は何をするか」

「ラビエンテさん、あの、大変です」

「んぁ?」

「なんでも、漁に出た男達が…」

俺は今、この村の村長候補になっていた。
まあ、二十年も住んでたらそうなるかもなぁ、はは。おまけに外の情報も多く持ってるわけだしなぁ。

「漁に出た男達が、どうしたぁ?」

「いえ、なんか、とりあえずラビエンテさんを呼んで、と」

「分かったぜー、行ってみるぜー」

この島の漁場は一カ所しかないからな。

ハッハー。
走って数分で着いたぜー。

「んで、なんだー、いきなり俺をよんでー」

「…!ラビエンテはん」

「ん、なんだ、おい」

そこには見知らぬ男達がいた。なかなかに良いがたいしてやがる。
んまぁ、見た目からこの島の住人じゃねぇだろぅな。

「お前たち、誰だ?」

「私達は、とある国の命令でここまで来た。お前を連れてこいとの命令でな」

「俺?誰だ?そんなことするやつとは知り合いじゃねぇな」

「とにかく来い」

「んお」

体を無理やり引っ張られる。

かなりの力じゃねぇか。この雑兵が。

「やめてください!」

「…なんだ、お前は」

「それはこっちのセリフです。いきなりラビエンテさんを連れ去ろうとして!」

「連れ去る?何を言うか。ただの帰郷だ」

「帰郷?」

「よく考えてみろ。お前幾つだ?」

「21ですが」

「お前が赤ん坊の時から、こいつは何か変わったか?」

「…」

「分かったか?こいつは、#不老__・__#なんだよ」

「…実験にでも使うつもりですか!」

「…それはお前の知るところではない」

…あーあー、めんどくせー。

「リルヴァか?」

「…?」

兵ははてなと首を傾げる。

「何のことを言ってるのかは知らんが、とにかく連れて行くからな」

「そんな、ラビエンテさん!」

「おー、みんなすまねーなぁ、ちといってくるー」

まぁ戻ってくることは無いだろぅなー。



「ここは、どこだったっけか」

「ここは王都、ニンベルグだ」

「そんなとこあったっけ、てか俺を連れて来いって言った奴どいつだよ、会わせろよ」

「ふん、直にくるさ」

「そうかい」

よく分からない白い部屋で待たされた。というかここは王都なのだろうか。だとしたら本当に何年ぶりにくるだろう。初代国王は生きているだろうか。というか、船に乗ってからの記憶があまりない…

──ガチャ

「あら、捕まえられたのね!」

「はっ、こちら、不老不死でございます」

「あなたが不老ね」

目の前に出てきたのは、化粧の少しきつめな女だ。はっ、なんだこいつ。

「知り合いか、あんた。誰だ?俺はしらねぇんだがな」

「まぁ、それもそうね。悠久の時を生きるあなたは、殆どの人間を忘れているでしょうから。でもね、この王都初代国王のことは覚えているでしょう?」

「ん、あぁ、あいつは印象的な方だったからな」

「今はもう五十八代目だけど、太古の文献が発見されたの」

「あぁ」

「考古学者に解読させたら、なんでも、不老の存在がこの世にはある、そしてそれを手に入れた国こそ勝つ、って書いてあったのよ」

「へぇ、そうかい」

「だから、あなたを捕まえたの」

「…ふぅん、でもよく分かったなぁ」

「ウチの最高の魔術師に頼んだの」

ふぅん、魔術ねぇ。

「…ん?魔術?なんだそれ!」



「…え」

「───え」

「───え」

俺以外の皆が固まった。

「…?どうした」

「ま、魔術を知らないの…?」

「あぁ」

「それ、数学知らないみたいなものよ」

「馬鹿にしているのか?だが本当に知らないんだよなぁ、教えてくれよ」

「はぁ、教わるなら…」

女がパンパンと手を叩く。

すると、また別の女が現れた。童女である。

「なんだ、このガキ」

「一応立派な魔術師よ」

「へぇ、あぁ、魔法使いみたいなものか」

「…なによ、知ってるじゃない」

「いや、俺の時代は、マジシャンといってな、まぁ、ただの騙し芸だな。それが流行ってた時もあったんだよ」

「へぇ…まぁ、とにかく今はあまりあなたに干渉しないでおくわ。ってことでこれからあなたは王都在住の不老不死、ラビエンテとして生きて貰うわ」

「目的は?」

「そうね、あなたを最高の戦士にすることかしら。これから、毎日国の最高兵士たちと毎日戦わせるから…ま、最高の暮らしもさせてあげるから、等価交換ね」

「なんだそれ」

「あ、最後にあなたの不死性を確かめて良い?」

「ん、あぁ」

女は腰にあったナイフを抜き取り、容赦なくずぷりと俺の腹にナイフを差した。

相当な力だ。

「痛いなぁ」

「そう、ナイフが抜けないんだけど…」

「ん、あぁ、抜いてみろよ」

「ふん」

すかっ、と空回りしたように、女はどたっと尻餅をつく。
まるで、綱引きをしていたら、片方が急に力を抜いて、自分から転ぶように。

「え、ない…」

「あぁ、一緒に再生した」

「…なによそれ」

最高じゃない、と女は言った。

「あと、この魔術師はあなたの専属の家庭教師みたいなものだからね」

「はいはい、このガキが?」

「死ね」

ガクッ…意識飛んだわ。

「なにすんだよ」

「すごい、ホントに生きてる」

「あぁ?もしかして今の一瞬で俺を一回殺したのか?」

「そう」

なんだよ、王都。

「くふふ、ガハハ」

楽しそうじゃねぇか!



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