不死

ノベルバユーザー428326

不死

俺の名は不死。今日はいつになくテンション高めである。
実は俺は惑星誕生から現在に至るまでのながぁい間を、ずーっと生き続けている不老不死なんだ。
ま、なんでそうかは覚えてないがな。
俺の家は洞窟の中にある。ま、洞窟の中は広くて結構くらしやすい。特に食べ物とかをとってくるわけじゃないし、睡眠もこれといって必要ではないからな。
というより、俺の視点から言えば、人間の感じる欲というものが不思議に思えてくるほどだ。


「ガハハ…てか超快適だな」

洞窟内は快適。超快適だ。俺にとってはな。
ま、普通の人間なら三日ももたねぇだろうからな。

さぁて、まぁ、そんな快適な生活をしてる俺は、まぁ特にやることもねぇからたまに近くにある村によったりする。

なんと、この洞窟の近くには五つもの村々がある。

はは、おもしれぇな。わくわくもんだなぁ。

「さて、今日はあそこにいくか」

あそこ、まぁこっから一番近い村だな。
そこは一番よく行く村だし、俺のことを知ってるやつも多い。てか村人全員知ってるんじゃねぇかなぁ。ガハハ。

その村の名前は『モリ村』と言う。

「モリ村、モリ村…」

猛ダッシュで駆け抜ける。おっと、辺りの木々を削っちまった。

「よぉ、村長」

「おぉ、これは不死様」

「あぁん?俺の名前はラビエンテだっつーの」

「いえいえ、そんな滅相な呼び方は出来ませぬ…」

「あぁ、そうかい!んで、あの村娘はどうした?ガハハ」

「はぁ、それが…」

…ふむふむ。


…!?
なにぃ!?

「病気…だと!?」

「はい…村でも不治の病と呼ばれる病にかかってしまい…」

「…少し…診せてくれ」

「は、はぁ」



「がッ、がはっ…」

「吐血か…まぁ内臓系ダメージが激しいな…何か心当たりは?外傷的ではないな」

「…いえ、急に…」

「そうか」

村長、の娘。
本当は俺の嫁になるはずだったのにな。

そうだ!俺と村長の娘は約束をしていた!

「なぁ、村娘、俺の嫁になれ!」

「はぁ?何言ってんですか、あなたは」

「はっはー、全くそんなこといっちゃってー」

「え、本当に気持ち悪いです…」

「照れてるんだろー、もぅ~」

と言うことがあったのだ!

「村娘、死ぬなよ…少し診る…」

ふっ!診目

「ふむ、ふむふむ」

あぁ、これは…

「大丈夫だ、村長、確かに治るのに時間はかかるが、不治というわけではない…おそらくその見た医者が悪かったんだろう」

「本当ですか…!あぁ、流石は不死様だぁ」

「おう。まぁちと治療が必要だから、村長は席を外してくれないか?」

「…む、わ、分かりました」

「あぁ、ありがとな」

村長は部屋から出て行った。
ここは、村長の家である。



「さて、と村娘…俺が分かるな?」

「…嘘ね」

「…ん?」

「私が治るって…嘘でしょ」

おお。
いきなりバレたか。
まぁ、そりゃあそうか。

「…うん、まぁそうだな」

そう言うと、村娘は、しおれた顔をした。

「…ほらやっぱり」

なんだ。悟ってるじゃないか。希望を持っているならわかるが…ならば何故、悲しむ必要があるのだろうか。

如何せん、理解できない。

「自分の身くらい自分が一番よく分かるだろう。それも窮地であれば窮地であるほどにな」

「…」

「余命は、半年…もない、といったところだ」

宣告。
死の宣告。

「…!」

「そして、治療はほぼ不可能」

「そん…な」

「が、しかし!」

「?」

「唯一一つだけ、助からないでもない方法がある」

「え…」

「が、等価交換。お前は莫大な何かを失うが…いいか?…それはな…ゴニョゴニョ…」

「…少し…考えさせて」

「分かったぜ!」



三ヶ月後。
洞窟内に何者かが侵入した。

「誰だ?」

「モリ村の者です。村娘が…!」



「そうか、もうここまで進行していたとはな…殆ど何も分からないだろうに…」

「……ふ、…」

「?」

「不死…お願い…あ、たし、は」

「ん」

「アタシは…死に…たい」

「…ふぅ、そうか…分かった」

「それと、俺の名前はラビエンテだ…死後に天使と神々の祝福がありますように…ではな」

その数日後。訃報が入った。
まぁ、助かるわけがなかったのだがな。

この世は都合良くできていない。
そもそも、都合の良い、というのは、人それぞれ違う。
悪にとっては、善が苦しむことが、都合が良いことだとしても、善にとっては、悪が苦しむことが都合の良いことなのだから。

都合がよい、のは、村娘にとって、かもしれないな。

そうだ。奇跡によって、人が助かるわけでも、ピンチになったからといって誰かが助けに来てくれるわけでもない。
窮地になればなるほど、秘められた力を発揮するわけでもない。
結果論。
まぁ、この場合少々違うが。
努力が報われる。この言葉は穴だらけであり、また同時に穴がない。

馬鹿が考え出したのだろう。
しかし、それでも、人間の中では、良い言葉、として認定されているらしいが。

俺には、人間がなかなか理解出来ない。

「何故死にたかったのだろうか。尊い死を選びたかったのか。それとも俺のことを怖がったのか…それとも精神が憔悴してまともな判断が出来なかったか…それとも俺のように……いや、そこまで悟ってはないな、きっと…ガハハ。」

しかし、気分が悪い。そろそろこの居場所も捨てるか。

「さてと、もうここに用はない。さて、どこに行ったものか。あぁ、あそこがいいな」












この話は今から、凡そ、一億年前の話である。

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