シェアハウス【完】
8
部屋に入るとフワリと良い香りがして、空腹だった私のお腹は匂いにつられて音を鳴らした。
それを聞いた静香さんは、「やっぱり作っておいて良かった」とクスリと笑った。
恥ずかしくなった私は赤くなった顔を俯かせると、「……すみません、ありがとうございます」と小さな声でお礼を告げた。
ダイニングに着くと、そこには夜食とは思えない程のたくさんの料理が用意されていた。
湯気が出ているのを見ると、私が帰宅するのを見計らって作ってくれたのがわかる。
ここに引っ越して来てからというもの、夕食は毎日静香さんが用意してくれている。
引っ越し当日、静香さんが振る舞ってくれた手料理にとても感激した私。
料理のできない私は、久しぶりに食べる手料理に実家を懐かしみ、静香さんの作るとても美味しい料理に感謝し喜んだ。
そんな私を見た静香さんは、『私料理が趣味なの。遠慮なく食べてね』と優しく微笑んでくれた。
そんな出来事を思い出す。
きっとあの時の私を見て、静香さんはこうして毎日作ってくれているのだと思う。
そんな静香さんの優しさに、私は感謝の気持ちでいっぱいだった。
「静香さん、本当に毎日ありがとうございます」
席に着いた私は、料理を前に今一度お礼を伝えた。
コメント