シェアハウス【完】
6
「本当に女の人なんだね」
「え?」
「三万なんてどう考えても安すぎるでしょ? 女目当てのキモいオヤジかなんかだと思ってたからさぁ……。三万なんて安すぎだし、何か裏があるんじゃないかって思ってた」
そう言って安心したかのように小さく溜息を漏らす香澄。
「確かに……そんな事考えてもいなかったよ」
「もうっ! 真紀はもっとちゃんと慎重に考えるべきだよ。周りの意見もちゃんと聞きなよね」
口を尖らせて怒りながらも、「でも、家見つかって良かったね」と言ってくれる香澄。
「ごめんね。……ありがとう香澄」
顔を覗き込んで微笑みかけると、少しだけ照れた様な素振りを見せた香澄は、「ホント、真紀は世話が焼けるよね」と言いながら携帯をロッカーにしまった。
「今日は週末だからきっと混むね。怠いなぁ……。そろそろ時間だね、行こっか」
ぶつくさと文句を言いながら壁に掛かった時計を見た香澄は、そう言うとロッカーに鍵を掛けて扉の方へと歩いて行く。
それを見た私は、自分のロッカーに鍵を掛けると香澄を追うようにして扉から出た。
そのまま廊下を抜けて店内を覗いてみると、既に夕飯時という事もあってかとても混雑している。
それを確認した私は一度小さく深呼吸をすると、「……よし、頑張ろう」と呟いてからホールへと続く道を一歩踏み出したーー。
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