井戸の中【完】
7
翌日、学校へ行った俺は智が大事にしているペンケースをコッソリと盗んだ。
智が筆箱代わりに使っている、少し変わった型のこのポーチ。
海外旅行に行った親戚からのお土産だとかで、そんな話しを教室で自慢気にしていた智を思い出す。
俺は手元のポーチを宙にかざすと、パッと手を離して井戸の中へと落とした。
ポーチの行方を目で追って見ていると、それは井戸の底へ着く瞬間、まるで何かに吸い込まれるようにして忽然と姿を消した。
「……ざまぁみろ」
何とも不可解なその現象を不思議に思いながらも、爽快感からフッと鼻から息を漏らしてほくそ笑む。
「ーーおいっ!! 公平っ!! 」
ーーー!?
突然の声に驚いた俺は、ビクリと肩を揺らすとゆっくりと後ろを振り返った。
「ペンケース盗んだのお前だろっ!! 」
そう言った智は、酷く怒った顔で俺に向かって突進してくる。
既の所でそれをかわすと、俺は智を睨んで口を開いた。
「……そんなの知るかよ! 」
「お前以外に誰がいるんだよっ! 貧乏人がっ!! 」
掴みかかって殴ろうとする智をかわしながら、必死にその場で転げ回る。
何とか立ち上がって逃げようと背を向けたその時、グイッと背後から髪を掴まれ、痛みに思わず顔が歪む。
くそっ……!
頭にきた俺は、手元に転がる石を掴んで後ろを振り返った。
振り向きざまに、力任せにその手を振り上げる。
ーーーゴッ!
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