井戸の中【完】
4
ーーードサッ
「……っ」
そのまま智に引きずられるようにして裏庭へと連れ込まれると、突然突き飛ばされてその場に尻餅を着く。
再び三人に囲まれた状況になった俺は、智達を見上げると睨みつけた。
「性病のくせに生意気なんだよっ! 」
そんな態度が気に食わなかったのか、智は顔を歪ませると右足を大きく振り上げた。
ーーードカッ
「っ……?!うぅ……」
あまりの痛さに、蹴られたお腹を抑えて倒れ込む。
そんな俺の足元から靴を剥ぎ取った智は、ニヤリと笑って口を開いた。
「罰としてこれは没収しまーす! 返して欲しかったら取ってみなー! 」
そう言ってゲラゲラと笑う智は、俺の靴を持ったままおどけて見せる。
「……っ返せよ! 」
お腹を抑えたまま、よろけながらに立ち上がった俺を見た智達は、靴をパンパンと打ち鳴らすと挑発する素振りを見せた。
「取れるもんなら取ってみろー! 」
そう言って駆け出した智達。
俺は裸足のまま智達の後を追いかけると、広い裏庭を懸命に走る。
「……返せっ……返せよーっ! 」
必死になって追いかける俺を見て笑う智達は、草が生い茂った場所へと入って行くと一際大きな声を上げた。
「あっ! なんかいいもの発見ー! 」
ーーー!?
少し遅れて追いついた俺の目に飛び込んできたのは、智のすぐ傍にある何とも不気味な井戸。
生まれてからずっとここで暮らしているとはいえ、裏庭といってもほぼただの山状態のこの場所。
勿論、俺はこんな井戸が存在しているなんて今の今まで知らなかった。
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