井戸の中【完】

邪神 白猫




 ーーードサッ

「……っ」

 そのまま智に引きずられるようにして裏庭へと連れ込まれると、突然突き飛ばされてその場に尻餅を着く。

 再び三人に囲まれた状況になった俺は、智達を見上げると睨みつけた。

「性病のくせに生意気なんだよっ! 」

 そんな態度が気に食わなかったのか、智は顔を歪ませると右足を大きく振り上げた。

 ーーードカッ

「っ……?!うぅ……」

 あまりの痛さに、蹴られたお腹を抑えて倒れ込む。
 そんな俺の足元から靴を剥ぎ取った智は、ニヤリと笑って口を開いた。

「罰としてこれは没収しまーす! 返して欲しかったら取ってみなー! 」

 そう言ってゲラゲラと笑う智は、俺の靴を持ったままおどけて見せる。

「……っ返せよ! 」

 お腹を抑えたまま、よろけながらに立ち上がった俺を見た智達は、靴をパンパンと打ち鳴らすと挑発する素振りを見せた。

「取れるもんなら取ってみろー! 」

 そう言って駆け出した智達。
 俺は裸足のまま智達の後を追いかけると、広い裏庭を懸命に走る。

「……返せっ……返せよーっ! 」

 必死になって追いかける俺を見て笑う智達は、草が生い茂った場所へと入って行くと一際大きな声を上げた。

「あっ! なんかいいもの発見ー! 」

 ーーー!?

 少し遅れて追いついた俺の目に飛び込んできたのは、智のすぐわきにある何とも不気味な井戸。

 生まれてからずっとここで暮らしているとはいえ、裏庭といってもほぼただの山状態のこの場所。
 勿論、俺はこんな井戸が存在しているなんて今の今まで知らなかった。



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