未来

ふぁーむ

いつもの日常2

 「おっはよー!」
校門前でどんっ!と誰かに後ろから突き飛ばされ、美穂はよろめいた。思わず眺めていた単語帳から目を離し後ろを振り返る。

「ああ、やっぱり鈴葉…。」

「え、何嫌そうな顔してんの!?
天下の鈴葉様に朝から会えたんだよ?
もっと喜ぶべき!」

夏が近づいて来たと言っても朝方はまだ肌寒い。
ブレザーとまではいかないがセーターを来ている生徒もいる中、鈴葉はシャツを腕まくりしている。寒くないのかな?と思いつつ

「背中超痛いんですけど…。」
と笑いながら答える。

「美穂、貧弱すぎるんだよー。勉強ばっかりしてないでもっと食べて、運動して、体力つけないと!私達受験生なんだから!」

握りこぶしを上下に振りながら話す鈴葉。

そんな鈴葉の頭にポンっと手が降りる。
「おめーが力強すぎなんだよ。全員がおめーみたいにハンドボールで鍛え上げられてると思うなよ。」

美穂の幼馴染みの井村琢磨だ。
美穂と琢磨は幼稚園の頃からの付き合いで鈴葉とは高校で知り合った。

「は?力強すぎって普通だし!
フ・ツ・ウ!」

「いやいや、体力測定の握力で45超えててどこが普通なんだよ。
学年で一人だけだったらしいぜ。女で40超え。ゴリラじゃんか?ゴ・リ・ラ!」

鈴葉は顔を赤くして口を膨らませる。
琢磨はそんな鈴葉の姿がおかしくてケラケラと笑っている。

美穂は二人のその様子を見てクスッと微笑み再び単語帳に視線を落とした。

美穂は恋愛には疎いが決して鈍感な訳ではなかった。

鈴葉と琢磨が両思いなのは伝えられてはいないものの薄々気付いてはいた。
早く付き合っちゃえばいいのに、と内心ではいつも思いながらも、おせっかいなんだろうな、と思い何も言えないのである。


「ねえねえ!本読んだ?」
鈴葉がワクワクした顔で聞いてくる。
一瞬何のことか分からなかったがすぐに昨日呼んだ恋愛小説のことだと気付いた。

「あー…、面白かったよ。何かこう、ザ・青春!って感じで。」と身ぶり手振りで感想を伝える。

「やっぱり、そうだよねー!よかったよねー!女子の夢が詰まってるっていうか?理想っていうか?めっちゃドキドキするよね!」

興奮しながら話す鈴葉に機械的な頷きだけを返す。


そのまま三人で三年生の階に行きそれぞれのクラスに入る。

美穂のクラスはその階の一番奥の教室である。自分のクラスに入り席につく。


今日も一日が始まる。

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