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「S」

クエスト11:『集結』

少しの沈黙が流れ、マサは落ち着きを取り戻すと開いている口を動かした。

「……確かそこって、何もないエリアとして有名な場所だよな。ただその周りには、文字通りの氷山地帯が広がってて、高レベルモンスターがうようよいるっていう」

「ああ」

「でも、そこってさぁ……」

言いづらそうに口を噤むマサ。『わかっている』と手で合図するブルーノ。

そのことにイフがまたも疑問符を浮かべれば、ブルーノが地図を取り出し、北に位置する目的地を指さすと、その訳を口にした。

「北の大神殿を取り囲む氷山地帯。そこは迷路のように入り組んでいるんだが、入口は東西南北と四つに分かれている。そして、それぞれの入口にはとある看板があってな。それが《冒険者ローム》たちを刺激するテキスト表記で、挑発に乗った奴等がいるんだが、マサの言った通り、高レベルモンスターに次々とやられていった。その後、ネット掲示板などに情報が拡散され、その噂を聞きつけて新たに挑戦する者が現れた。その中の一人が、モンスターを回避しながら進んで行ったところ、神殿の麓までたどり着き、中に入ったんだが、そこには何もない空間が広がっているだけだった。そんで、《Creator's》の《テイル》も一度、レベル上げがてら試しに行ってみたらしいんだが、敢え無く撤退。今も尚、《剣士の国:ミーン》の王座に君臨している《テイル》ですら、手に負えないクエスト。そのレッテルのおかげか、今は挑戦する者はおらず、いつしか攻略不可のクエだなんて呼ばれている」

「へー。ちなみにモンスターの平均レベルってどのくらいなんだ?」

「90」

「うん、ちょっと。ボスレベルがモブってどういうことなんでしょうか?」

「安心しろ。今回の目的は戦闘じゃない」

「そら行ったら即死ですもの」

「さっきも言った通り、そこにはお前の記憶が眠っている」

「ああ」

「だからだ」

「……?」

「そこはあえてクリア不可能な設定にしてあるんだよ」

「はぁっ!?なんで……」

「さぁな」

「さぁなって、お前……」

「言ったろ?作ったのはお前だと」

「そうだけどさ……」

「……と、そろそろ時間だな」

「ん?なんかあんのか?」

「お前らに合わせたい人……いや、お前に会いたい人と言った方が正しいか。とにかく来い」

「え?」

立ち上がるブルーノ。その姿に顔を見合わせるイフとマサ。

置いて行かれていることに気が付くと、すぐさま席を立つ二人だった。

酒場:《ハウント》を出て、表の街道に立っていると時刻は午後6時20分を示した。

「そろそろ来るはずなんだが……」

辺りを見回すブルーノ。

その後ろでは、イフとマサが疑問符を浮かべて並び立っている。

「お、そろそろ来るみたいだぞ」

メッセージが来てか、そう答えるブルーノ。

そのためイフは、誰が来るのか尋ねようと、


「おい、結局誰が――――」


来るんだよと、そうイフが口にしようとした時だった。


「――コ~~~ウ~~~~ちゃ~~~~んっ!!」


イフの言葉は、近づいてくるもう一つの声によって遮られた。

「うぉおぁあっ!?」

「イフっ!?」

それと同時に、イフは正体不明の声主に凄まじい勢いで突き飛ばされ、酒場:《ハウント》のスイングドアを蹴り飛ばし、店内の端から端を横断するように転がっていった。

そのことにマサは驚愕し、ブルーノは額に手を当て沈黙していた。

「やっぱりこうなったか……」

予想通りの展開に気が滅入っているブルーノ。


――そして、


「――当たり前だろー?桜花はコウのこと大好きなんだから」


その理由を口にしながら、もう一人の人物は現れた。

「……そうなんだけどな」

そのとこに対し、嫌気と呆れを浮かべながらにブルーノは返事をするのだが、店の中が騒がしく、中を覗いてみれば、その光景に自然と頬が緩んでいた。

「お、おい」

押し倒され、床に仰向けになっているイフ。

起き上がろうにも、突如として現れた美女が上に乗っており動けない。

「ふふふ♪コ~ウ~♪」

そして彼女は、甘えるようにしがみつき、猫のように頬を擦り付ける。

そのことに若干胸がときめきつつも、周りからの視線が痛く、離れる様子もないもので、『どうしたもんかねぇ』と空を仰ぎ見て、ため息が零れたイフだった。

一方で、マサはと言えば、この光景を見るなり唖然とし、「うん……」と頬を緩ませ微笑する。内心、この光景に思う事があるとすれば、


――爆ぜろ。


ただその一言のみだった。


店内にいても飛び行く視線が痛いため、再び表へと出ると、ブルーノの隣には先ほどの謎の美女二人が並び立っていた。

先ほど飛びついてきた一人は、茶色い長髪に白色の和ロリ・和ゴスのような服装で、その隣にいるもう一人は、金髪にローブを身に纏った格好をしていた。

「ゔ、ゔん。紹介しよう。短剣やメイスも使えるが、メインはレイピア・サーベル系を使う《blossam《ブロッサム》》。そして、基本接近戦メインのダガー使い《獅子猫(レオーネ)》だ」

「よろしくね♪」

「よろしくー」

謎の美女二人。

軽い挨拶を済ませ、わかったことがあるとすれば、どちらもマイペースな人ということ。

「はあ……」

そのため、いろいろと呆気に取られ、気の無い返事をするマサ。
同様にイフも、挨拶をしようと口を開くのだが、

「よろしうおぉあっ!?」

言い終える間もなくブロッサムに抱き着かれ、尻餅をつくと、先の展開がまた再開された。


――パシャッ。


途端、シャッター音のようなものが鳴り響き、マサが音のする方へ視線を向ければ、ブルーノが何やら撮影をしていた。

「……あー、何やってんだ?」

嫌な予感が働きながら、恐る恐るブルーノに尋ねるマサ。

するとニタリという笑みが浮かべられ、

「証拠写真☆」

それは今までに見たことの無い爽やかな笑顔へと変化した。

「まさか……」

「悲報!イフの浮気発覚!これはスクープですよ、マっさん!」

「俺を共犯者にすんじゃねぇよっ!?というか、やっぱそれか!」

「こいつをリリィに見せれば……」

「おいよせ……っ!それだけはマジでよせ……っ!!」

「……何故?」

「そんなイノセントな目で俺を見るな……っ!じゃなくて、お前も制作者ならわかるだろう……っ!?リリィは異常なまでにイフに執着してるんだぞ……っ!もし、イフが他の女となんかあった場合……」

「イフが、どうかしたんですか……?」

「「……」」

硬直する二人。


ぎこちなく振り向けば、そこに佇む一人の少女――リリィ。


問われた理由を答えられず、マサとブルーノは互いに目を逸らして視線をゆっくりと背後にいるイフたちへと戻す。

「……」

指し示された二人の視線を追うように、その光景を目にしたリリィ。

『今彼女はどんな顔をしているのだろうか』とマサが表情を窺ってみれば、

「……で、これはどういう状況ですか?」

「……っ」

予想通りの反応がそこにはあった。

「ふふふ……❤」

満面の笑み。ただそれは、全く持って逆の意味でのもの。
浮かべられるは、薄暗い表情の中つくられる、影に染まりきった笑顔だった。


――そして、


「……写真、いらなかったな」

「そういう問題じゃない……」

目的地に着く前にして、この場に凍り付いた二人だった。





世紀末の覇者、爆裂嫉妬神バースト・ヤンデ・ラーなリリィの誤解を解き、北の大神殿:《ログロスト》へと進んでいく一行。

草原、荒野、砂漠と、ブルーノの案内のおかげかその道中でモンスターと遭遇することがなく、暇を持て余したマサはふと、イフへと尋ねる。

「なぁイフ」

「なんだ?」

「また何を眺めているんだ?」

「……ああ、これか」

《ログロスト》へと進んでいく中、イフの隣にはブロッサムと和解したリリィがいるのだが、イフの視線は表示されるメニューウィンドウへと向けられていた。

「復習」

「復習?」

返された言葉に疑問符を浮かべるマサ。視界のものに複雑さを睨みつけるイフ。
そこにあったのは、この世界のゲーム内容についてのことで、二つ目のメモだった。


メモ2


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


・ユニークスキル・エクストラスキルなどを共有することを《シェアスキル》と言い、剣技を《ソードスキル》という。


・HPゲージの上限は99999


・スキルには10段階のレベルが存在し、クエストによって上げることができる。武器の場合は止めなどでソードスキルを放った場合に経験値が貰え、クリティカルヒットの数だけアップする。


・《最速会得者(ファスト・マスター)》 … ユニークスキルが被った者の中で、そのスキルを一番に制作し且スキルレベルをMAXにした者に与えられる称号。これにより被ったスキルでも、効力を下げることなく使用可能にする。


・ガチャ … ランクB以上S以内(『?』は稀にでるかも?)
1回200円(10連2000円)


・コスチュームチェンジ … ver.cat、elfe、mermaid、maid&Butler、Undeadなど。


・ダメージシュミレーター … imvの技術を応用した疑似痛覚システム。パーセントパラメーター表式で、これが通常0のところ、ロックが解除されると段階ごとにリアルに伴うほどの痛みの錯覚を起こす。


・大陸ごとにあるクエストを別名、試験、依頼、ミッション、試練などとも呼ぶ。


――etc.


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


後半に載せられた誰も知らない情報。
そのため、複雑さを覚えながらイフはマサへと言葉を紡ぐ。

「この前ブルーノから貰ったパスワードIDで開いたメモだ。俺の過去の記録、記憶の欠片……《フラグメント》とでも言うか」

「《フラグメント》ねぇ……じゃあ差し詰め、お前はシーカーってところか」

「シーカー?」

「探求者ってことだよ。記憶の探求者、《フラグメント・シーカー》。意味合いとしては少し違うが、なんかかっこいいだろ?」

「……」

マサの言葉に少し呆れを浮かべるイフ。


――ただ、


「そうだな」

その表情は、屈託のない笑みだった。

そんな彼等の他愛もない言動を後ろから眺めながら、三人はふと言葉を交わしていた。

「イフは、良い友達に出逢えて……恵まれてるね」

嬉しそうに口を開くレオーネ。

「ああ、そうだな」

その言葉にブルーノは平然と答え、

「うん……」

ブロッサムも、その喜びに浸っていた。

そして会話はまた二人へと戻り、マサはとある疑問を口にした。

「そういえば……」

「何だ?」

「さっきブロッサム、コウって叫んでたけど……知り合いか?」

「さぁな」

「……結局、あの二人って何者なんだろうな」

自然と、後ろにいる二人へと振り返ろうとするマサ。


――だが、


「それは俺が教えてやろう」

「ウァウッ!?」

瞬時にブルーノが傍に現れ、驚きを浮かべるマサ。

それを気にすることなく、ブルーノは淡々と話しを進めていった。

「さっきの紹介では、あまりにも不十分だったからな。どっかのイフ一直線な奴のせいで」

「う~……だって~……」

「……まぁ、それはさておき本題へ入ろう」

「ああ」

「では、改めて。俺たち三人の自己紹介をさせてもらう」

「三人?」

「結局、お前にも俺について教えられてなかったしな。だから、改めてだ」

「なるほど」

相槌を打つイフ。

すると三人が並び立ち、ブルーノは微笑を浮かべて先頭を切った。

「俺の名前は《Bulue《ブルー》-no《ノ》》こと『あおさぎ
《らい》』、歳は19。双剣使いのプログラマーだ」

「私の名前は《blossam《ブロッサム》》こと『さくおう』、19歳。レイピア・サーベル系を使うけど基本的何でもできるよ。趣味は絵を描くこと。大好きなのはコウちゃん!」

「あたしの名前は《獅子猫(レオーネ)》こと『しまこう』、同じく19。武器は括り棒・ダガー系で、接近戦が得意……というかそれしかできない。趣味は音楽かな」

「……あー、なぁ、前聞いたこととあんま変わんねぇぞ?」

「話は最後まで聞け。というか、今の聞いて気づかなかったのか?」

「……?」

もう一度三人を見回すイフ。

いつも変わらず冷静沈着に腕を組んでいるブルーノ。満面の笑みで手を振るブロッサム。呑気そうに意味深な笑みを浮かべるレオーネ。

ブルーノの言葉をもとにイフは思考を働かせる。

彼等の放った台詞。そこには必ず何かがある。


考え込み、出た答えが一つ――。


――それは、


「まさか……っ」

驚き、顔を上げるイフ。

するとブルーノは、図星だというように微笑を浮かべていた。

「そういうことだ」

「ん?結局、どういうことだ?」

「……?」

疑問符を浮かべるマサとリリィ。

「イフ?」

「……っ」

マサに話題の矛先を問われ、息を詰まらせるイフ。

目を閉じ、意を決してイフはその問いに答えることにする。

「……つまりこいつらは、俺と同じ《製作者ゲームマスター》ってことだ」

「へー……えっ!?どっからそうなった!?」

「はしょりすぎだバカ」

「イテッ」

ブルーノからイフに軽いチョップが下された。

気を取り直し、冷静な判断の下、イフは率直な意見と個人的な判断を口にする。

「よく考えろよマサ。俺の上位互換みたいなブルーノが、美女二人連れてんだぜ?普通に考えて有り得ねぇだろ」

「まぁ、確かに」

「……」

納得を浮かべるマサ。沈黙を浮かべ、眉をピクリと動かすブルーノ。

傍ではブロッサムとレオーネがクスクスと笑いこけているが、イフは気にすることなく話を続ける。

「二人に対する気軽さと親しみの態度から、知り合いだということは断定付けられる」

「うん、それでそれで?」

興味津々のマサ。

人間観察により養われた、イフの観察眼による解説にマサは関心を持っているようなのだが、イフがこの先の言葉を口にするには少しばかりの躊躇があった。

それでも、言葉にしなければ伝わらないため、イフは視線を美女二人に移すと口を開いた。

「……そしてこの二人は、俺を知っている」

「ああ、そうだな」

「そこから、ブルーノの知り合い=俺の知り合いということになり、俺たち四人はお知り合いという関係がわかる」

「ふむふむ」

「さらに、この三人の特徴。プログラマーに、絵描きに、音楽家。それを含めると答えは自然と絞られる」

「ごくりっ……」

唾を飲み込むマサ。


――そして、


イフはここまでの要点をまとめ上げる。

「つまり、ここにいる四人は関係を持っており、しかもそれは仲の親しいもので、特徴を組み合わせると必然的に俺の幼馴染ということになるんだ。そしてその幼馴染は、このゲームの製作に関与している。だから……」

「《製作者ゲームマスター》になる、と……」

「そういうわけだ」

「なるほどねぇ……」

「何か質問は?」

「いや、特には」

「よろしい」

チラリと視線をブルーノ含めた三人へと移すイフ。

そこには『さすが』とでもいうように、こちらを眺める三人の姿がある。

そうやって、イフの類稀なる観察眼による和やかな説明も終わったところで、再度歩みを進めようとする一行。


――なのだが、


「なぁ、イフ」

「なんだ?」

それを踏み止まらせるようにして、ブルーノはイフへとある提案をしていた。

「ちょっとこいつを試したいんだが……」

視界にウィンドウがスライドされ、その内容に目を通すイフ。

すると互いに、ニヤリと微笑する。

二人が何やらコソコソとやっていることに、周りは疑問符を浮かべるのだが、返ってきたのは爽やかな笑みだった。

「ブロッサム、レオーネ。ちょっとこれを試したいんだが、協力してくれ」

「何これ……《costume《コスチューム》》?」

「ああ。今度アップデート予定の追加システム――《costume》。まぁ、百聞は一見に如かず。試してみればわかる」

「わかった」

ブルーノの説明に疑問符を浮かべながらも、躊躇なく操作していく二人。

捜査終了と共に辺りを一瞬の光が包み込み、晴れた先にあったのは、二人の頭にピョコリと生えたケモ耳と背後からくねくねと動く尻尾があるということだった。

「これって……猫?」

「獣人?」

変身した二人。

自分の姿に不思議を感じているものの、あまり驚きは見られなかった。

それもそのはず。このゲームでは、アバター作成時にプレイヤーの想像力を用いて自由な存在になることができる。そのため、種族などの類は一切存在しない。


――のだが、


「そいつは試作品だが、完成度の高い《ver.cat》のコスチュームだ。作った目的としては……イフ」

「ああ」

「「……?」」

二人の背後に立ったイフ。


――そして、


「ほい」

「ひゃぁっ!?」

「ふにゃぁっ!?」

容赦なく、二人の尻尾を掴み取った。

「な、何するんだコウ!」

「そうだよビックリしたよ!」

「すまん」

平然と謝るイフ。

目尻に涙を浮かべ、尻尾を撫でながら不機嫌にも二人は気を取り直す。

「もう……それで?これが何だって言うのさ」

「目的として、俺らみたいにユニークモードを使わない、もしくは使えないプレイヤーへの配慮……すなわち、支給品アイテムの拡張。で、その実験」

「私たちで試すなよ!」

「そうだよ!もう!」

「残念、イフは大喜びだったのに……」

「え……?」

せめぎ合う三人。
だがふとして、後ろに立つイフへと振り返る美女二人。
そのことにブルーノはニヤリと秘かに頬を緩ませ、イフは言葉通り落ち込みオーラを放つ。

その結果、何が起こるのかを分かっていながら。

「イフは、猫耳好きなの?」

「ネコ、好き」

「なんで片言?」

「そっかぁ……猫好きなんだ~♪」

ツッコミを入れたレオーネ。その傍ら、イフ可愛さに和んでいるブロッサム。

するとブロッサムは拳を握り締め、目をキラキラと輝かせながら決意する。

「決めたよ、私このままでいい!」

「はぁ……あたしは外させてもらうよ」

ブロッサムのイフ一直線にため息を溢しながら、コスチュームを解除しようと操作するレオーネ。


――だが、


「あれ?外れないよ……?」

現状に疑問符を浮かべ、そのことに嫌な予感と共に焦りと動揺が生まれてくる。

「まさか……っ」

冷や汗が頬を伝う中、察したのかレオーネは先ほどコソコソしていた二人へと視線を移す。

そこには「「ふっ……」」と、怪しげに笑みを溢す案の定の二人の姿があった。

「お前ら図ったなーっ!?」

「何を言う。俺はちゃんと最初に行ったぞ。試作品の実験だと」

「……」

「ただ解除不能のコスチュームってだっただけで」

「それただの失敗作じゃないか!」

「俺は失敗作なんぞつくらん」

「完成度が高いんじゃなかったのか!」

「完成度の高い失敗作だな」

「やっぱ失敗作じゃん!」

「ま、お前にとっては、だけどな」

「……?」

視線をふと、会話から外れた二人へと移すブルーノ。それにつられて振り返るレオーネ。

そこには、仲睦まじくも和んでいる二人と、その傍で嫉妬の炎に駆られたリリィを抑えるマサの姿があった。

「……」

視線をそっとブルーノへと戻したレオーネ。

瞳に映るは、この光景に頬緩ませているブルーノの姿がある。

そのせいか自然と自分の頬も緩んでしまい、微笑を浮かべて許してしまう。

「……は~あ、仕方ないな。今回ばかりは許してやるよ」

「えっ嘘マジで?」

「うん」

「やったね」

いつも通りの冷静沈着。落ち着きのあるおチャラけた態度。高みがかった気分。
微笑しながら溢す言葉は何とも彼らしいもので、そのことにレオーネは呆れと笑みを浮かべてしまう。

並び立ち眺める、レオーネとブルーノ。

和気藹々と騒ぎ立てるこの空間と光景。道中で起きた仕組まれたハプニング。
ただそれはこの場を和ませるもので、嫌いじゃない。それをブルーノは作り出した。

『やられたな』という思いと同時に、改めて『やっぱりこいつは凄いな』と思うレオーネ。

そんな和やかな空気に浸っていると、ブルーノはふと口を開く。

「そのコスチューム、どう?」

「うーん、変な感じかな。頭の上に耳があって、後ろには尻尾があって……」

「それは何より」

「……?」

「だってそれ、ダメージシュミレーターの技術を応用して作ってるからな。ちゃんと疑似感覚器官装置が働いてるってことだ。脳内に錯覚を起こさせるっていうな」

「つまりどゆこと?」

「そいつの真の目的は、俺がイフのために作った『リアルなケモ耳美少女を目の保養として現実のものにする』っていう、そういう仕様でつくられた失敗作ってこと」

「……ん~?」

ブルーノのドヤ顔で放たれた言葉に微笑し、表情筋を引きつらせるレオーネ。

この後、ブルーノが首根っこを掴まれ宙吊りにされたのは言うまでもない。

          

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