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「S」

クエスト 0:『記憶の欠片』

暗がりの部屋。差し込む淡い光。そよ風により靡く白いカーテン。

机に向かい、3つのディスプレイに映し流される動画・音楽・ラジオ。同時視聴し、それぞれを別ページへと変更すると、キーボードをカタカタと打ち始める。

画面にあるのは、ライブ配信の動画、作業中のワード、SNSのホーム。

それぞれに映し出されるものに頬を緩ませ、動かしていた手を止めると、打ち終わった文章をコピー機へとかけていく。

立ち上がり辺りを見回す。目に映るのは平凡に広がるいつもの見慣れた風景。

そのことに名残惜しさを感じつつも、印刷終了を示す点滅に気づき、コピー機から印刷用紙を取り出す。

再び机へと向かうと、慣れた手つきで手紙状に折りたたんでいく。

折りたたんだいくつかの紙を机へ並べると、ある程度のものは部屋の隙間という隙間の隅々に差し込んでいく。

一通り終わり、一息つくと、そのうちの一つを手にドアノブを掴む。

ゆっくりと開放すると、不思議にもまた笑みを浮かべて部屋を後にする。


外へ出ると、ぶっきらぼうにも家から少し離れた交差点へとやってくる。

信号が変わるのを待っていたのだが、ぼんやりしていたからなのか、それとも集中していたからなのか、あっという間に信号は変わって点滅しているという状態だった。

早歩きで向こう側へと渡って行くと、一つの音に耳は傾けていた。

それは一歩、また一歩と進むにつれて、次第に大きくなっていくものだった。

無表情に、それでいて、現状に少しの感動を覚えながら、近づいてくるものに気づいた。

いや、それは心待ちにしていたもの。何故なら、わかりきっていたものだから。

気づいていながら、近づいてくるものに目を瞑って身を委ねている。コンマ数秒の出来事。


――そう、


気づいた時にはもう、身体は宙を舞って空をかいていた。

視界はぼやけ、耳は聞こえず、何も考えることができない、圧倒的浮遊感。

そんな意識が朦朧とする中で、わかっていることがあるとすれば、曲がり角から飛び出すバイクに、勢いよく跳ね飛ばされたことだけだった。

          

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