仮面舞踏会 ~隠密優等生《オタク》な俺と生徒会長《おさななじみ》の君と~
レポート13:『ひと段落』
「……で、どうしてこうなった?」
いつも通り、放課後に生徒会室へと集まった四人。
一部は複雑そうな表情をし、一部は笑顔で、一部は平然とし、当の本人は違和感だらけにも席へ着いている。
会長席とは別に設けられた四席。
対面するように配置づけられた机は廊下側に二名、窓側に二名と会長席という構図で。
会長席に長重、そちら寄りに松尾と対面するように自分が座り、自分の隣に氷室がいる。
氷室の向かい、もしくは松尾の隣。
その席は今まで空だった。
にも関わらず、金髪ロングの見知らぬ男子生徒が居座っている。
とても理解の行き難い光景だった。
「えっと、今日から生徒会に加わった『富豪聖』くん。私たちと同じ2年生でクラスは4組。庶務募集の張り紙を見て、来てくれたの」
「はあ……」
長重の説明に合点は行くもイマイチ納得は行かない。
というよりも、隣にいる氷室が目を瞑って笑いを堪えていることにより、氷室(こいつ)の仕業なのだと理解する。
すると何やら視線を感じ、そちらを見れば、富豪が嫌らしい笑みを向けていることに気づく。
出会って早々、いきなり鋭い目つきで睨みつけられ、蛇に睨まれた蛙のような感覚がする。
初対面の相手に何を持ってしての行動なのか疑問が絶えない。
「ん……?」
そこへふと、丸めた紙が飛んできて、周りの顔を秘かに窺い、松尾からのものだと察する。
紙を開いてみれば、わかりやすい一文が記載されていた。
『浮気騒動の犯人』
――なるほどなぁ……って意味わかんねぇし!?俺を睨む要素はどこ!?
深まる謎に嘆息し、唖然としながら隣にいる氷室に目を向ける。
相変わらず黙秘権を行使する氷室に顔を顰めると、静かに折り畳んだメモ用紙を渡される。
『お前もか』と内心呟きながら広げてみれば、
『すまんww』
――笑笑じゃねぇよ!?
心の内、全力で叫びをあげていた。
「ゔ、ゔん」
「……?」
ふと、長重の咳払いが聞こえ、我に返る。
四人の視線は会長席に佇む長重に集中し、
「それじゃあ、新たな仲間も加わったことだし、やりますか!」
長重の手にある目安箱とそのたった一言で、皆の頬が綻ぶ。
心機一転。
生徒会室の席が1か月をかけて埋まり、ようやく本腰を入れて活動を開始できると口にせずとも伝わってくる。
これからさらに波乱を巻き起こす予感しかしないが、この空気感が嫌いじゃなかった。
たとえ、いつか終わりが来る関係であっても、今はただ楽しんでいたいと思う。
長重の記憶を取り戻す期限は高校を卒業するまで。
長重といられるのは、その間だけ。
終われば自分はいなくなる。
そういう約束だから。
「……んじゃ、やるか」
複雑な心境ながらも、『今だけは』と誰に対するでもなく、嘘をつく。
和やかな空気の中で、一人フードという名の仮面を被っている。
偽りだらけの存在――『真道鏡夜』。
ここのどこにも自分がいない。
『真道鏡夜』などという人物は、この世に存在しない。
ただ理想の中にいる彼を象っただけの偽物。
彼が生きた高校生活は全て、幻想へと変わってしまう。
彼の目的はただ一つ。
それ以外は何モノでもなく、欺瞞に満ちている。
長重美香が戻った時、真道鏡夜はいなくなる。
ただそれだけの物語だ――。
          
いつも通り、放課後に生徒会室へと集まった四人。
一部は複雑そうな表情をし、一部は笑顔で、一部は平然とし、当の本人は違和感だらけにも席へ着いている。
会長席とは別に設けられた四席。
対面するように配置づけられた机は廊下側に二名、窓側に二名と会長席という構図で。
会長席に長重、そちら寄りに松尾と対面するように自分が座り、自分の隣に氷室がいる。
氷室の向かい、もしくは松尾の隣。
その席は今まで空だった。
にも関わらず、金髪ロングの見知らぬ男子生徒が居座っている。
とても理解の行き難い光景だった。
「えっと、今日から生徒会に加わった『富豪聖』くん。私たちと同じ2年生でクラスは4組。庶務募集の張り紙を見て、来てくれたの」
「はあ……」
長重の説明に合点は行くもイマイチ納得は行かない。
というよりも、隣にいる氷室が目を瞑って笑いを堪えていることにより、氷室(こいつ)の仕業なのだと理解する。
すると何やら視線を感じ、そちらを見れば、富豪が嫌らしい笑みを向けていることに気づく。
出会って早々、いきなり鋭い目つきで睨みつけられ、蛇に睨まれた蛙のような感覚がする。
初対面の相手に何を持ってしての行動なのか疑問が絶えない。
「ん……?」
そこへふと、丸めた紙が飛んできて、周りの顔を秘かに窺い、松尾からのものだと察する。
紙を開いてみれば、わかりやすい一文が記載されていた。
『浮気騒動の犯人』
――なるほどなぁ……って意味わかんねぇし!?俺を睨む要素はどこ!?
深まる謎に嘆息し、唖然としながら隣にいる氷室に目を向ける。
相変わらず黙秘権を行使する氷室に顔を顰めると、静かに折り畳んだメモ用紙を渡される。
『お前もか』と内心呟きながら広げてみれば、
『すまんww』
――笑笑じゃねぇよ!?
心の内、全力で叫びをあげていた。
「ゔ、ゔん」
「……?」
ふと、長重の咳払いが聞こえ、我に返る。
四人の視線は会長席に佇む長重に集中し、
「それじゃあ、新たな仲間も加わったことだし、やりますか!」
長重の手にある目安箱とそのたった一言で、皆の頬が綻ぶ。
心機一転。
生徒会室の席が1か月をかけて埋まり、ようやく本腰を入れて活動を開始できると口にせずとも伝わってくる。
これからさらに波乱を巻き起こす予感しかしないが、この空気感が嫌いじゃなかった。
たとえ、いつか終わりが来る関係であっても、今はただ楽しんでいたいと思う。
長重の記憶を取り戻す期限は高校を卒業するまで。
長重といられるのは、その間だけ。
終われば自分はいなくなる。
そういう約束だから。
「……んじゃ、やるか」
複雑な心境ながらも、『今だけは』と誰に対するでもなく、嘘をつく。
和やかな空気の中で、一人フードという名の仮面を被っている。
偽りだらけの存在――『真道鏡夜』。
ここのどこにも自分がいない。
『真道鏡夜』などという人物は、この世に存在しない。
ただ理想の中にいる彼を象っただけの偽物。
彼が生きた高校生活は全て、幻想へと変わってしまう。
彼の目的はただ一つ。
それ以外は何モノでもなく、欺瞞に満ちている。
長重美香が戻った時、真道鏡夜はいなくなる。
ただそれだけの物語だ――。
          
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